発達障害がある大人に向いている仕事とは?職場選びの方法やコツを解説
発達障害がある大人で、「仕事で失敗が多い」「職場でのコミュニケーションが取りづらい」「就職・転職活動がうまくいかない」といった悩みを抱えている人は、決して珍しくありません。
実は、発達障害にはいくつかの種類があります。自身の能力を発揮できる適職を探すためには、発達障害の特徴について理解することが大切です。そこで本記事では、発達障害の種類や特徴、向いている仕事を探すコツについて解説します。
目次
大人の発達障害とは
「発達障害」は、脳機能の発達に関係する障害を指す用語であり、基本的に行動や思考に特性があります。そのため、自身と周囲の人々の間で、行動や考え方のミスマッチが生じ、日常生活や仕事などに影響が出ることが珍しくありません。なお発達障害は生まれつきのものですが、子どもと大人では受ける影響の傾向が異なることから、「大人の発達障害」と呼ばれることがあります。
大人の発達障害の特徴
大人になってから、自身に発達障害があることに気づく人も少なくありません。また、就職活動をしているときや就職後に、周囲との違いに気づいて自認するケースもあります。一般枠で就職してから発達障害があることに気づき、就労移行支援事業所などで職業準備性を整えて、障害者雇用で転職をするケースも多いです。なお、大人の発達障害はセルフチェックでも判断できるので、ぜひ以下の記事も参考にしてみてください。
大人の発達障害の種類
ひとくちに大人の発達障害といっても、実は次のように複数の種類に分けることができ、それぞれ障害特性が異なります。
- ASD(自閉スペクトラム症)
- ADHD(注意欠如・多動症)
- LD/SLD(学習障害/限局性学習障害)
ASD(自閉スペクトラム症)
「ASD(自閉スペクトラム症)」は、対人関係やコミュニケーションなどに困難を感じやすい発達障害です。他者の感情や考えを理解しづらかったり、興味関心に著しい偏りやこだわりがあったりすることが特徴です。また、同じことの反復に安心を感じやすく、感覚が過敏もしくは鈍麻な傾向もあります。
ASDがある人は、興味関心がある分野において優れたパフォーマンスを発揮することが多いです。ちなみに、以前は「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」「自閉症」などに分類されていたものが、統一された診断名がASDです。
ADHD(注意欠如・多動症)
「ADHD(注意欠如・多動症)」は、次のような特徴がある発達障害です。
不注意 | ひとつのことに集中し続けることが難しい |
衝動性 | 思ったことを後先考えずに言動に移しやすい |
多動性 | 長時間同じ場所にじっとすることが難しい |
上記のような障害特性から、業務で段取りを組むのが難しかったり、集中力を欠いてミスをしてしまいやすい傾向があります。
LD/SLD(学習障害/限局性学習障害)
「LD/SLD(学習障害/限局性学習障害)」は、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算」「推論」の能力のうち、ひとつ以上について困難を感じる発達障害です。例えば、文字を読むことができない「失読症(ディスレクシア)」や、字がうまく書けない「書字表出障害(ディスグラフィア)」など、その障害特性はさまざまです。なお、前述したASDやADHDを伴う場合もあるため、適切な診断と対策が必要になります。
発達障害がある大人の仕事上の困りごと・対策
大人の発達障害がある人は、仕事において次のような困りごとを抱えやすいと考えられています。なお、診断名が同じでも困りごとは人によって変わるため、医師の診断のもとで対策を考えることが大切です。
ASDの場合
ASDのある人は次のような困りごとを仕事で抱えやすい傾向があります。
- 暗黙のルールや「空気」が分からず対人関係で悩む
- あいまいな指示を受けると「何をすべき」かが理解しづらい
- 突然の環境や指示の変更に対応することが難しい
- 光や音などの影響に過敏で集中できないことがある
明確にされていないことを理解するのが難しいため、社内ルールや業務フローなどは明文化してもらい、あいまいな指示を受けたときは具体的な内容を確認することが大切です。例えば「早めに」という指示があったときは、「何日の何時までに」という期限を決めてもらうといいでしょう。
臨機応変な対応が難しいときは、できるだけ早く知らせてもらうことや、対応の時間を十分にもらうことが必要です。感覚が過敏な場合は、サングラス・イヤーマフ・ノイズキャンセリング機能付きヘッドホンなどの使用許可をもらうと、安心してはたらきやすくなります。
ADHDの場合
ADHDのある人は次のような困りごとを仕事で抱えやすい傾向があります。
- スケジュール管理が苦手で期限に遅れがち
- 業務の優先順位がつけられず混乱する
- マルチタスクが苦手で並行作業が困難
- ケアレスミスを何度も繰り返してしまう
「いつの間にか納期を過ぎていた」ということを防ぐために、スケジュール管理アプリなどの通知機能を利用しましょう。マルチタスクが苦手で複数業務を同時進行できない場合は、紙やアプリのTODOリストを活用して、やるべきことを順番にこなすことが大切です。
集中力が持続しない場合は、デスク上に不要なものをいっさい置かないことや、短時間ごとに休憩を取ることを意識しましょう。ケアレスミスが多いのであれば、焦らずゆっくり業務ができる時間をもらったり、第三者にダブルチェックを頼んだりするのがおすすめです。
LD/SLDの場合
LD/SLDの人は次のような困りごとを仕事で抱えやすい傾向があります。
- 漢字の多い書類やメールが読みづらい
- 正確にメモを取ることが難しい
- 計算が求められる業務の遂行が困難
基本的には各種デジタルツールの活用で解決できることが多いです。例えば、漢字が読みづらい場合は文書にフリガナを追加することや、メールの場合は音声読み上げ機能の活用が効果的です。計算が求められる場面では、電卓やパソコンで計算を自動化するといいでしょう。メモを取るのが困難な場合は文字起こしソフトの活用や、テキスト形式で指示を送付してもらうと解決できます。
大人の発達障害がある人に向いている仕事・職場
大人の発達障害がある人には、次のような仕事・職場が向いていると考えられます。
ASDの場合
ASDがある人には、次のような仕事がおすすめです。
- 自身の興味関心が活かしやすい仕事
- 他人とのコミュニケーションが少ない仕事
- 業務内容が一定でマニュアルがある仕事
ASDの大きな特徴が、興味関心が深い分野について、抜群の集中力を発揮できることです。そのため、例えばIT分野に興味があるのであれば、プログラマやシステムエンジニアなどが向いています。また、他人とのコミュニケーションが苦手なことが多いため、営業職よりデスクワークや研究職などを選ぶほうが安心です。臨機応変な対応が難しいこともあるため、業務内容が一定で明確なマニュアルがあることも大切になります。
ADHDの場合
ADHDがある人には、次のような仕事がおすすめです。
- 業務時間がフレキシブルな仕事
- 毎日少しでも違うことができる仕事
- 慎重さより行動力が求められる仕事
時間やスケジュールの管理が苦手な傾向があるため、フレックスタイム制や在宅勤務など、業務時間がフレキシブルな仕事が理想的です。また、さまざまなことに意識が向きやすいため、毎日少しでも違うことができる仕事が好ましいでしょう。慎重さや細かな作業ではなく行動力が求められる仕事のほうが、障害特性をうまく活かしやすくなります。
LD/SLDの場合
LD/SLDがある人には、次のような仕事がおすすめです。
- ツールやアプリのサポートが得やすい仕事
- 苦手な分野の業務が避けやすい仕事
- 厳しいノルマの達成が求められない仕事
自身の苦手分野に関する業務が少ない、あるいは避けやすい仕事を選ぶことが重要です。LD/SLDがある人が苦手とする分野はそれぞれですが、いずれの場合もツールやアプリのサポートを得ることで対策しやすくなります。そのため、ツールやアプリの使用が認められる、合理的配慮が得られる職場を選ぶこともポイントです。また、ツールなどの活用でほかの人より業務に時間がかかることが多いため、ノルマが厳しくないほうが好ましいでしょう。
大人の発達障害がある方が活用できる転職サービス
前述した対策法を実施しても「はたらきづらさ」を感じる場合は、転職を検討してみましょう。大人の発達障害がある方は、次のような転職サービスが利用できます。
- 発達障害者支援センター
- 就労移行支援事業所
- 障害者向けの転職エージェント
発達障害者支援センター
「発達障害者支援センター」は、発達障害のある方を対象として、日常生活や仕事のサポートを提供する機関です。2024年時点で全国に90カ所前後があり、地方自治体・社会福祉法人・NPO法人などが運営しています。なお障害者手帳は必須ではなく、ハローワークとの連携もあるため、転職について気軽に相談することができます。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得、転職活動のサポートを提供している機関です。転職後も定着支援としてスタッフと定期的に連絡ができるため、困ったことや悩みがある場合の精神的なサポートも得やすいことが魅力です。なお、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動は別途ハローワークなどで行う必要があります。
障害者向けの転職エージェント
障害者向けの転職エージェントは、障害者の就労に特化したサービスで、自身の希望や適性に合う求人の紹介が受けられます。キャリアアドバイザーに無料で相談して、自身の障害特性に合わせた適切な転職先について知ることも可能です。また、転職活動で欠かせない履歴書や面接などの対策サポートも受けられるので、安心して就職活動ができるでしょう。ここでは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」の事例をご紹介します。
Tさんは学生生活から周囲に馴染めず、40代になって初めてASDと診断されました。dodaチャレンジに相談することで、自身の障害特性に合う「安心してはたらける環境」が手に入ったのです。
T.Y.さん 40代(大阪)ASDのある方の転職成功ストーリーはこちら
Mさんの場合は、周囲とのコミュニケーションがうまく取れなかったり、仕事のミスが多かったりすることに悩みを抱えていました。しかし、30代になってADHDと診断されてから、前向きに転職活動できるようになりました。さらに、dodaチャレンジのキャリアアドバイザーに相談することで、自身の強み・持ち味を活かせる職場が見つかったのです。
M.S.さん 40代 ADHDのある方の転職成功ストーリーはこちら
このように、障害者向けの転職エージェントを利用することで、自分に合う職場を探すことができます。
発達障害がある方の転職は「dodaチャレンジ」がおすすめ
ひとくちに発達障害といっても、大きく分けて「ASD」「ADHD」「LD/SLD」の3種類があり、それぞれ障害特性が大きく異なります。そのため、自身の障害特性を理解したうえで、対策しやすい仕事・職場を選ぶことが大切です。
発達障害がある方が転職を目指すときは、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」がおすすめです。dodaチャレンジでは、さまざまな障害のある方が安心してはたらける企業の求人を紹介しています。キャリアアドバイザーへの相談も無料で行えるので、この機会にぜひご相談ください。。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を
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でお気軽にご相談ください
転職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2024/10/30
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士