精神障害者は採用されないって本当?雇用の実態と可能性を広げる就活対策

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精神障害があると、就職が難しい、採用されないといわれることがあります。結論として、精神障害者がまったく採用されないというのは正しい情報ではありません。とはいえ「はたらきたくても就職先がなかなか決まらない」「求人へ応募しても面接にすら進めない」などと悩んでいる方がいるのも事実です。

今回は、精神障害者が採用で不利になることがあるといわれる背景と、不採用が続くときの対処法を解説します。

精神障害者の採用は年々増加している

公的な調査結果から、精神障害者雇用の現状を探っていきましょう。

精神障害者の雇用率

厚生労働省の調べによると、2024年6月1日時点で民間企業に雇用されている障害者の人数は、前年比5.5%増となる67万7,461.5人でした。法定雇用率を達成している企業は46%です。そのうち、精神障害者の人数は15万717人と前年比で15.7%増加しており、特に伸び率が大きくなっています。

また、公的機関および独立行政法人でも、雇用障害者数・実雇用率ともに前年比を上回る結果です。データからみると、精神障害者を含む障害者雇用の状況は年々改善されていることが伺えます(出典:令和6年 障害者雇用状況の集計結果|厚生労働省)。

精神障害者の採用が進む背景

近年、精神障害者の採用が進んでいる背景には、主に次の4点が関係しています。

  • 障害者雇用の義務化
  • ダイバーシティ経営の促進
  • 人手不足の深刻化
  • 就労系の障害福祉サービスの充実

現在、企業には障害者雇用で一定の法定雇用率を達成することが義務付けられています。2018年には当初含まれていなかった精神障害者も対象に加わり、障害者雇用の機会がさらに拡大しました。併せて、近年は人材の多様性を目指す「ダイバーシティ経営」促進により、障害を「個性」として前向きに捉えた採用が進んでいます。

また、少子高齢化による人手不足が深刻化する中で、新たな働き手としての障害者の価値が高まってきています。さらに、最近は以前と比べ障害福祉サービスが拡大しました。適切なサポートが得られる機会が増えたことで、特性に合わせてより良くはたらき続けられる方が増えてきているのです(出典:令和6年版 労働経済の分析─人手不足への対応─ |厚生労働省)。

「精神障害者は採用されない」は嘘!でも…

ここまで説明してきたとおり、精神障害者の雇用はどんどん拡大し、労働環境の改善も進んでいます。しかしその実態は、決して甘くありません。

正社員が少ない

2023年に実施された調査によると、雇用されている精神障害者のうち正社員の割合は32.7%、発達障害者では36.6%でした。いずれも前年よりは増加しているものの、全体の約6割を正社員が占める身体障害者と比べると、圧倒的に少ない割合です(出典:令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します|厚生労働省)。

平均賃金が低い

同調べでは、精神障害者および発達障害者の平均賃金が身体障害者と比べ低いことが分かりました。身体障害者の平均賃金が23万5,000円であるのに対し、精神障害者の平均賃金は14万9,000円、そのうち発達障害者は13万円です。さらに、同年度における一般枠での労働者の平均賃金である31万8,300円と比べると、一般的な水準から大きく下回っていることが分かります。

障害者の雇用者数は年々増加傾向にあり、時短勤務のような雇用形態も含むため一概にはいえませんが、精神障害者の経済的な自立の難しさが伺えます(出典:令和5年賃金構造基本統計調査の概況|厚生労働省)。

精神障害者が採用時に不利になる企業側の要因

精神障害のある方が採用時に不利になることがあるのは、自分自身の問題ではなく、企業側の事情が関係していることもあるようです。

知識不足による抵抗感

これから障害者雇用を進める企業にとって、障害のある方への対応は未知の領域です。特に、精神障害のような目に見えにくい障害の場合、個々の特性に合わせた適切な配慮や接し方が分かりづらい傾向にあります。そのことが、精神障害者の雇用に対する抵抗感へつながっていると考えられます。

精神障害者に対する誤った先入観

「精神障害者は仕事を休みがち」「定着しづらい」といった先入観から、採用を差し控える企業も存在するといわれています。実際に、2017年に発表された資料によると、精神障害者の定着率は1年後の定着率は49.3%です。特に、一般求人に障害非開示で就職した場合の定着率が低い傾向にあります。その一方で、障害者雇用枠で採用された場合は64.2%です。つまり、適切な労働条件や環境、配慮があればはたらき続けられることが分かります(出典:障害者雇用の現状等|厚生労働省職業安定局)。

それにもかかわらず「精神障害者=すぐに辞める」という偏ったイメージが先行しているせいで、精神障害がある方の雇用の妨げになっているのです。

精神障害者がより良くはたらける仕事に採用されるためにできることは?

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精神障害のある方が無理なく、自分の強みを活かしてはたらくための就活準備として、次の4つのポイントを押さえましょう。

  • 障害特性への自己理解を深める
  • 精神障害者保健福祉手帳を取得する
  • 障害者向け転職・就職エージェントに登録する
  • 就労移行支援事業所を利用する

障害特性への自己理解を深める

精神障害のある方が特性を活かして無理なくはたらくためには、自分自身が障害を理解し、受け入れることが重要です。一口に精神障害といっても、一人ひとり特性が異なるため、一般的な対策や配慮だけでは就活・就業がうまくいかないこともあるでしょう。

自身が自らの障害を正しく把握し、適切に説明や文章化できるようになることで、周囲の理解も促し、互いにより良い関係性が構築できるようになります。

精神障害者保健福祉手帳を取得する

一般枠での就労では採用および定着が難しい場合は、精神障害者保健福祉手帳を取得し、障害者雇用枠での就労を検討するのも一つの方法です。障害者手帳があれば、障害者雇用枠の求人に応募できるようになり、合理的配慮を得ながらはたらける可能性が高まります

また障害者手帳があると、等級に応じたさまざまな経済的支援が受けられるので、日常生活における困難の解消にもつながるでしょう。

障害者向け転職・就職エージェントに登録する

障害者手帳を取得すれば、障害者向けの転職・就職エージェントの利用が可能になります。障害者向け転職・就職エージェントとは、障害者雇用枠の求人の紹介と、個々の特性に応じた就活サポートを提供する民間サービスです。よりパーソナライズされたサポートや「非公開求人」の紹介などが受けられるので、就労の選択肢が大きく広がります

また、サービスの利用を通し、障害者雇用のプロと一緒に自分自身や特性を見つめ直すことで、障害への理解促進にもつながるでしょう。サービスによっては就職後の相談やアドバイスも提供しているので、より良い仕事で長期的にはたらき続けられる可能性が高まります。

就労移行支援事業所を利用する

精神障害があり安定した就労が難しい方や、就業にあたっての生活習慣や心構えに不安のある方は「就労移行支援事業所」の利用を検討してみるとよいでしょう。就労移行支援事業所とは、障害者手帳を持っていなくても利用できる通所型の就労支援サービスを指します。実習や職場見学から実践的なスキルが学べるほか、ビジネスマナーや就活のノウハウなどの職業準備性を身につけるサポートが受けられるため、就労を目指す方の助けとなるはずです。

「障害特性を強みとして活かせるスキルを身につけたい」「長く活躍し続けられるよう自身の能力を高めたい」と考えている方は、パーソルダイバースの就労移行支援「ミラトレ」で学んでみませんか。各分野の専門家が連携し合い、スキルアップとあなたに合った働き方を見つけるお手伝いをします。

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障害者がはたらきやすい環境が整えられつつあるとはいえ、まだ十分に浸透しているとはいえません。特に、精神障害のある方が就業する際は、一般的な就活対策ではなかなかうまくいかないこともあるでしょう。

大切なのは、個々の特性を踏まえたステップアップです。そして、採用されることが最終目的なのではなく、より良くはたらき続けることが大切だといえます。障害者専門の支援サービスを活用し、より良くはたらける仕事探しと、長期的な定着を目指しましょう。

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公開日:2025/8/28

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
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