精神障害があり仕事が続かない方へ|原因と長続きする職場の見つける方法
近年、支援制度の拡充に伴い、障害のある方の社会的な自立が進みつつあります。ただ、精神障害者の就職後の定着率は依然として低い傾向にあり、はたらきたいのにはたらき続けられないという方も少なくありません。
今回は、精神障害があると仕事が続かなくなりやすい理由を明らかにするとともに、長続きさせるために押さえておくべきポイントを解説します。
目次
精神障害とは
まず、精神障害に関する基本情報を確認していきましょう。
精神障害の特性
精神障害とは、脳の何らかの器質的・機能的な異常により、心身に不調や変化が生じている状態です。脳の病気であり、気の持ちようや、本人の努力の問題ではありません。
精神障害がある方の人数は、2023年時点で603万人、有病率は20人に1人の割合です。発症の原因はさまざまですが、ストレスが関与しているケースが多く、障害の種類によっては適切な治療で寛解が見込めます。
出典:厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部 精神・障害保健課 「精神保健医療福祉の現状等について」
精神障害の種類
精神障害には、主に次の7種類に分けられます。
精神障害の種類 | 症状の特性 |
---|---|
気分障害 (うつ病、双極性障害など) |
気持ちの落ち込みや意欲減退、激しい変調を特性とする |
統合失調症 | 幻覚・妄想などの陽性症状と抑うつといった陰性症状を主な特性とする |
てんかん | 脳の過剰興奮による突然のけいれんや失神などの発作を主症状とする |
依存症 | アルコールやギャンブルなど正常な範囲を明らかに逸脱した依存を主症状とする |
パニック障害 | 突発的かつ過度な不安感によるパニック発作と予期不安およびその回避行動を特性とする |
高次脳機能障害 | 脳の損傷により記憶力や注意力、遂行機能などに困難が生じる |
発達障害 | ASD・ADHD・LDの3種類があり、生まれつきの脳の機能不全による発達の凹凸を特性とする |
上記のような精神障害は、精神障害者保健福祉手帳のほか、症状・特性によっては身体障害者手帳の交付対象となります。
精神障害者の雇用状況
民間企業における精神障害の雇用数は、2002年以降、右肩上がりで増加中です。国・地方公共団体においても、2023年6月1日時点で約70〜100%が法定雇用率を達成しています(出典:内閣府|第2節 雇用・就労の促進施策|第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり|令和6年版 障害者白書)。また2023年の障害者雇用促進法の改正に伴い、雇用の機会と環境改善の拡充が期待できるでしょう。
しかし、精神障害のある方の平均勤続年数は、身体障害者・知的障害者の約半数となる5年3ヶ月です。したがって、就職できても、長期定着につながりにくいことが伺えます(出典:厚生労働省|令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書)。
精神障害があると仕事が続きにくい要因
続いて、精神障害があるとなぜ長期就労が困難になりやすいのか、その特性を踏まえて解説します。
通院や体調不良などで仕事を休みがち
精神障害があると、治療のための定期的な通院が必要です。また特性により、仕事に行けないほどの体調不良が生じることもあるでしょう。心身の不調で就業の継続が困難になりやすいほか、度重なる通院や仕事を休みがちになることで、職場に居づらくなり辞めてしまうケースも少なくありません。
周囲から理解されにくい
精神障害のある方が無理なくはたらき続けるには、適切な配慮やサポートを要するシーンもあるでしょう。しかし、精神障害は外からは分かりづらい病気です。目に見えない症状を、他者へ正確に伝えるのは容易ではありません。
そのため、周囲に自身の特性が正しく理解されないことで苦しむ方も多い傾向にあります。また見当違いの配慮や、無責任・努力不足といったあらぬ誤解を受けることもあるでしょう。理解されないつらさから、職場に居づらくなったり、症状のさらなる悪化を招いて就業が不可能になったりすることも珍しくありません。
障害があることをクローズにしている
精神障害があっても、就業の際にそれをオープンにする義務はないため、一般雇用枠ではたらく選択肢もあります。実際に、障害者雇用枠の仕事は一般雇用枠と比べ求人数が少なく、求める条件に合う仕事が見つかるとは限らないため、障害があることを開示しないで就活する方もいるようです。
しかし障害を開示しないままはたらき始めると、適切な合理的配慮が得られず、特性上難しい職務や環境に配置されたり、通院・治療の妨げになったりすることも少なくありません。また、障害を開示していないこと自体がストレスとなり、不安感から症状の悪化や二次障害を招くケースもあります。
精神障害のある方が続けやすい仕事の特徴
精神障害のある方の長期定着を実現するには、特性に合わせてはたらきやすい仕事を見つけることが大切です。ここでは、精神障害のある方がはたらきやすい仕事・職場の特徴を紹介します。
合理的配慮が得られる
就労の継続に欠かせない要素は、職場で合理的配慮が得られることです。合理的配慮とは、障害のある方とそうでない方が互いにより良くはたらけるよう、特性に応じた環境調整を提供することを指します。
障害のある方への合理的配慮は雇用主の義務ですが、現時点ではまだすべての職場で徹底されているとは限りません。障害者の受け入れ態勢が整った職場なら、合理的配慮が得やすく、過度なストレスを感じることなくはたらけるでしょう。
フレキシブルにはたらける
精神障害のある方には、通勤方法や時間が限定され過ぎず、柔軟にはたらける仕事が適しています。具体的には、フレックスタイム制や時短勤務、在宅勤務など、ワークスタイルが自ら選択・調整できる仕事です。くわえて各種休暇制度の整った仕事なら、通院や体調管理がしやすいでしょう。フレキシブルな職場を選ぶことで、体調や通院などの都合に合わせてより良くはたらけるはずです。
相談窓口が設置されている
精神障害のある方がはたらく際は、産業医やカウンセラー、社内の相談窓口など、相談体制が整っている職場が好ましいといえます。仕事や就業に関する困り事が相談できる窓口を確保しておけば、万が一トラブルが発生したときでも安心です。
精神障害のある方が仕事を長続きさせるコツ
精神障害のある方が無理なくはたらきつづけるために、次の3つのポイントを意識してみてください。
- 自己と他己の理解を深める
- 就業と治療を両立する
- 就労定着支援を受ける
自己と他己の理解を深める
特性に合わせてより良くはたらくには、自身の障害を周囲に説明し、理解を求めることが大切です。そして周囲に分かりやすく説明するためにも、特性に対する自己理解を深めなければなりません。自分にできることやできないこと、得手不得手を正しく把握し、どのようなサポートが必要なのかを説明することで、周囲の理解がさらに深められます。障害特性や配慮事項をまとめた「ナビゲーションブック」を作成するのもおすすめです。
就業と治療を両立する
長期就労のキーポイントは、はたらきつつ、通院および治療を両立させることです。忙しさや自己判断で通院と治療・服薬をストップすると、症状の悪化や、より重篤な二次障害の発症を招き、就業自体が困難になってしまいかねません。医師の指導に従って治療を続けることで、自らの体調の変化や限界に気づきやすくなり、自己管理の徹底につながるでしょう。
特に精神障害がある方は、特性により疲れやすいほか、頑張り過ぎてストレスを溜めがちです。定期的に通院していれば、仕事上で生じた困り事に関する相談やアドバイスも受けられるため、就業と治療が両立しやすくなるでしょう。
就労定着支援を受ける
現在、障害のある方を対象とする公的・民間のさまざまな就労定着支援サービスが展開されています。
公的な就労定着支援は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスです。専門の支援員から、最長3年間に渡り、就職後の定着および生活面のサポートが受けられます。ただし、公的な就労定着支援が受けられるのは、就労移行支援や就労継続支援といった特定の事業所のみです。また、世帯収入に応じた自己負担額の支払いが必要になる点にも注意してください。
民間の就労定着支援サービスの代表格といえば、障害者専門の転職・就職エージェントです。専門的な知識を持つキャリアアドバイザーが、自己分析やエントリーシート作成などの就活準備から面接、定着まで全面的にサポートします。利用条件は、基本的に障害者手帳を取得していることのみ。障害者本人と企業の間に立ち、支援や調整を行うため、困ったことがあればいつでも相談できます。
精神障害のある方が長く続けられる仕事を見つけるなら「dodaチャレンジ」
精神障害があると、その特性が長期就業の妨げとなることもあるでしょう。定着のためには、周囲からの適切な配慮を得て、治療を続けながらはたらくことが大切です。支援サービスを活用して自己理解を深め、より良くはたらける仕事を見つけましょう。
障害者手帳を取得している方の仕事探しは「dodaチャレンジ」へおまかせを。障害者雇用のプロである専任のキャリアアドバイザーが、就活準備から入社後の定着まで、自分らしいワークスタイルの実現を完全無料でサポートします。まずはお気軽にご登録ください。
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公開日:2025/5/29
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員