社交不安障害(社会不安障害)の方に向いている仕事は?自分に合った仕事の見つけ方

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「社交不安障害(社会不安障害)」は、人前で極端な緊張や不安を感じて、日常生活に支障が出てしまう疾患です。本記事では、社交不安障害の概要や原因について解説します。そのうえで、不安を感じることなくはたらくためのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

社交不安障害とは?

「社交不安障害(Social Anxiety Disorder:SAD)」は、人前で強い不安・恐怖・緊張を感じ、何か失敗してしまうのではないかと過度に恐れてしまう疾患です。不安障害の一種で、社交不安症や社会不安障害とも呼ばれます。数人や1対1の対話でも過度な不安を感じ、日常生活・社会生活に支障をきたしてしまうことが、社交不安障害の大きな特徴です。

社交不安障害の主な症状

社会不安障害の主な症状には、次のようなものがあります。

  • 対人恐怖症
  • 赤面恐怖症
  • 発汗恐怖症
  • 場面恐怖症
  • 書痙(しょけい)

他人とのコミュニケーションに恐怖を感じる対人恐怖症、対話時に顔が紅潮する赤面恐怖症は、社会不安障害の代表的な症状です。

また、人前に出て緊張すると汗を大量にかいてしまう発汗恐怖症や、特定の場面で平常時のように振る舞えなくなる場面恐怖症などが出ることもあります。

社交不安障害のある方に向いている仕事・職種

社交不安障害のある方に向いている仕事・職種として、次のようなものが挙げられます。

  • 研究職
  • ITエンジニア
  • 清掃員・警備員
  • 事務職・翻訳家
  • Webデザイナー・ライター

研究職

研究職は他人との対面コミュニケーションが求められる場面が少なく、個人の自律性が尊重されるため、社会不安障害の原因となるストレス要因を軽減しやすい職種です。業務内容も実験やデータ分析・資料作成など一人で集中できるものが多いため、人間関係で不安を感じるリスクを軽減できるでしょう。

ITエンジニア

ITエンジニアは、IT関連のスキルや論理的思考・問題解決能力が重視される場面が多く、個別の課題解決や作業が中心となる職種です。コミュニケーションが求められる場面が少ないため、社会不安障害の要因となるストレスを軽減しやすいでしょう。

ただし、システムエンジニアやプログラマなど、チームのメンバーとの情報共有・意見交換が求められる場面はあるため、対面コミュニケーションが不要というわけではありません。

清掃員・警備員

清掃員や警備員は、個別で業務を遂行する職種なので、自分のペースではたらきやすい職種です。清掃員は建物の清掃業務、警備員は施設の監視業務など、いずれも対人接触が少ない業務が基本となります。コミュニケーションが要求される場面が少ないため、不安やストレスを軽減しやすいでしょう。

事務職・翻訳家

事務職は文書処理・データ入力・スケジュール管理など、個別の課題解決がメインとなります。他人と対面コミュニケーションを取る機会が少ないため、対人関係のストレスを軽減することが可能です。イレギュラーな業務が少なく、突発的な対応を求められることも少ないため、安心してはたらきやすい傾向があります。

Webデザイナー・ライター

WebデザイナーやWebライターは、個別のプロジェクトに取り組み、期日までに成果物を納品することが求められる職種です。業務の中で、大勢を前にするコミュニケーションが必要な場面は少なく、ストレス要因を軽減しやすくなります。また、Web系の仕事はフリーランスとしても活動しやすいため、自身にとって快適な環境ではたらけることも魅力です。

社交不安障害のある方に向いている働き方とは?

在宅勤務の様子

社交不安障害のある方に向いている、次のような仕事についてご紹介します。ただし、仕事の向き不向きには個人差があるため、自身の症状や得意分野も踏まえて検討してみましょう。

  • 対人関係が少ない仕事
  • 定型業務が多い仕事
  • 在宅でもできる仕事
  • 勤務時間の融通が利きやすい仕事

対人関係が少ない仕事

常に人と接する機会があると、そのたび不安を覚えてしまいます。人との接触機会の少ない業務であれば、対人ストレスを感じる機会自体が減るでしょう。

定型業務が多い仕事

強い不安を感じている状態で、都度変化する状況へ臨機応変に対応するのは難しいでしょう。そこで、日々の業務量や環境が一定で、コツコツこなせる仕事を選ぶことで不安を軽減できる可能性があります。

在宅でもできる仕事

人の視線や評価が気になったり、人の輪の中にいると緊張や不安を覚えたりする方は、在宅でも勤務がしやすい仕事を選ぶことで、不安を減らせるかもしれません。近年はさまざまな分野でデジタル化が進み、リモートワークや在宅勤務がしやすい環境が整っています。

勤務時間の融通が利きやすい仕事

フレキシブルな勤務時間が認められている職場では、体調や症状に合わせて働き方を調整しやすくなります。ラッシュアワーの渋滞や満員電車は、不安障害のある方にとって大きなストレスになるものです。出勤時間を変えることでこのストレスを軽減し、社会不安障害の症状を改善しながらはたらきやすくなるでしょう。

社交不安障害のある方に向いていない働き方

人それぞれに得意不得意があり、「この仕事は社交不安障害のある方に向かない」と一概に断定することはできません。しかし次のような働き方は、社交不安障害がある方には難しいと考えられています。

  • 対人関係が多い仕事
  • マルチタスクが求められる仕事
  • 異動や転勤の多い仕事

対人関係が多い仕事

多くの職種の中には、「コミュニケーションや対人調整業務などが中心」という仕事もあります。強い対人不安がある人にとって、それらの仕事はストレス要因が多い可能性があります。

マルチタスクが求められる仕事

仕事で一度に複数の用件をこなす場合、マルチタスクへの対応力が求められます。状況変化へ対処したり、用件について人に確認を取ったりする機会が増えるため、社交不安障害のある方が抱えるストレスを増やしてしまうかもしれません。

異動や転勤の多い仕事

日常的に強いストレスを感じている社交不安障害のある方にとって、異動や転勤などの環境変化はさらにストレスを増やしてしまう可能性があります。

社交不安障害のある方が仕事で抱える悩み

不安をかかえる女性

社交不安障害の傾向が見られても、子どもの頃は「すぐ顔が赤くなる子」「口下手な子」と思われるくらいで、社会生活に困難を感じることは少なかったでしょう。

しかし社会人となってはたらくうちに、不安や緊張感のコントロールが難しく感じ始めることもありえます。ここでは、社交不安障害のある方が仕事で感じやすい次のような悩みについて解説します。

  • 人前で話すことに強い不安や緊張を感じる
  • 周囲の視線が気になり業務に集中できない
  • 電話対応に恐怖を感じる
  • 会議室など人が多く集まる場所に行けない
  • 異動や転勤などによる環境の変化が怖い
  • 同僚や上司に症状を理解してもらえない

人前で話すことに強い不安や緊張を感じる

学生時代までは、自身で選ばない限り人前に出る機会は頻繁にはありません。しかし社会人になると、自己紹介や業務におけるプレゼンテーションなど、人前に出て話す機会が増えます。そのような場面で緊張して話せなくなったり、その何日も前から不安で何も手につかなかったりするなどで、悩みを深めてしまうことがあります。

周囲の視線が気になり業務に集中できない

オフィスでは多くの人が集まって業務を行っています。社交不安障害があると、対人恐怖によって室内の人たちの視線が気になることがあります。不安さえなければ集中して取り組めるはずの業務も手につかなくなり、仕事がはかどらず悩みを抱えてしまうかもしれません。

電話対応に恐怖を感じる

社交不安障害は、電話への苦手意識という形でも現れることがあります。電話対応のたびに強い緊張を感じ、ひどく疲れてしまうこともあるでしょう。また実際に通話する際に声が震えたり、言葉に詰まったりするなどの失敗体験から、より悩みが深くなる場合もあります。

会議室など人が多く集まる場所に行けない

対人不安が強くなると、人前に出る機会の有無にかかわらず、周りに多くの人がいる状況自体を避けたくなります。会議など人が集まる機会があるたびに体調を崩すことや、通勤電車や駅の人混みに恐怖を感じて出勤が困難になることもあるでしょう。

異動や転勤などによる環境の変化が怖い

社会不安障害がある人は、慣れない環境や対人関係に強い不安を感じるため、異動や転勤による環境変化が大きなストレスとなります。そのため、異動や転勤が多い職種や職場の場合は、それだけストレス要因も増えてしまうでしょう。

同僚や上司に症状を理解してもらえない

社会不安障害は一般的な認知度が低い疾患なので、その症状について職場の同僚や上司などから、症状に対する理解を得るのが難しいことがあります。そのため、困ったときに助けを求めることも難しくなり、一人で問題を抱えてしまうことも珍しくないでしょう。

社交不安障害と付き合いながら仕事を続けていく方法

背伸びをする女性

社交不安障害がある方は、「仕事を続けられるだろうか」と将来に不安があるでしょう。ここでは、できるだけ困りごとを減らして仕事を続けるために重要な、次のポイントについて解説します。

  • 医師や上司へ相談する
  • 生活リズムを整える
  • リラックスできる方法を見つける
  • 通勤ストレスを減らす
  • 無理せずに休む

医師や上司へ相談する

社交不安障害の症状に心当たりがある場合、早めに心療内科や精神科を受診してみることをおすすめします。まだ症状が軽い段階であっても、不安が少しでも生活に支障をきたしているのであれば、現状を医師に相談してみましょう。治療が必要かどうかを判断してもらえます。

また、理解があって信頼できる上司や同僚がいる場合は、困りごとを相談する方法もあります。誰かに話すだけでも不安を和らげることができ、上司に話すことで何らかの配慮が受けやすくなるかもしれません。上司や同僚へいきなり話すことが不安なら、産業医や企業内カウンセラーにまず相談するのもいいでしょう。

生活リズムを整える

食生活や睡眠時間などのライフスタイルが乱れていると、心身のバランスを崩しやすくなります。睡眠時間をしっかり取ることや食習慣の改善、適度に運動する機会を設けるなど、生活リズムの見直しを図ってみましょう。

リラックスできる方法を見つける

緊張する機会ばかりが増え、それを和らげる機会がないと疲れやストレスがどんどん積み重なってしまいます。感じた緊張を緩和する機会を設けることも、心身のバランスを整える助けになるでしょう。ゆっくり入浴やストレッチをしたり、深呼吸する習慣を作ったりするだけでも適度なリラクゼーションになります。

通勤ストレスを減らす

前述したとおり、通勤時の混雑がストレスとなっている可能性もあります。電車に乗る時間帯や通勤手段を変える、自宅やサテライトオフィスで仕事をするなど、通勤や仕事の仕方を見直すことも1つの方法です。時差出勤・フレックスタイム制・テレワークなど柔軟にはたらきやすい制度があるかどうか、勤務先へ確認してみるといいでしょう。

無理せずに休む

症状が悪化している場合は、無理をせずに休むことも重要です。業務量やはたらく環境が合わず、体調が不安定な状態ではたらき続けると、さらに社会不安障害の症状が悪化してしまいます。

まずは職場へ相談して業務量や環境を調整してもらい、一時的に休暇を取ることを検討しましょう。休職する場合は、その間の給与支払や健康保険からの傷病手当金など、会社の制度について事前に確認してください。

社交不安障害のある方におすすめの転職支援機関・サービス

社交不安障害のある方にとって、就職・転職活動は面接試験を受ける必要があるため、大きなストレスや不安になり、なかなか踏み切れないかもしれません。そこで次のような転職支援機関・サービスを活用するのがおすすめです。

  • 障害者雇用枠
  • 就労移行支援事業所
  • 障害者向けの転職エージェント

障害者雇用枠

障害者手帳がある場合は障害者雇用枠を利用すると、合理的配慮が受けやすい環境ではたらくことができます。障害をオープンにして転職活動を行うので、職場の理解を得やすいこともメリットです。

障害者雇用枠で自分に合う仕事を見つけるには、サポート実績が多く知見が広い就職・転職のプロによるサポートを受けるのがおすすめです。例えば学生時代に不登校、社会人でパワハラを経験して不安障害を発症した30代の男性が、dodaチャレンジの就職支援によって適職に就き、不安なくはたらき続けることを実現できたという事例もあります。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、はたらくための知識やスキルの習得に加えて、就労に向けた総合的なサポートを求職者に提供している機関です。

転職後も定着支援として、困りごとや悩みの相談ができるので、社会不安障害の症状に悩む方でも安心して利用しやすいことが魅力です。ただし、就労移行支援事業所では求人の紹介は行っていないため、転職活動は専門の機関で行う必要があります。

パーソルダイバースが運営するの「ミラトレ」は、障害のある方の適切な就労をかなえるための就労移行支援事業所です。適職に就いて安定したはたらき方を実現するために、さまざまな支援を行っています。見学・相談は無料ですので、パーソルダイバースのサポート力をぜひ体験してみてください。

障害者向けの転職エージェント

社会不安障害のある方が自分に合う仕事・職場を見つけるためには、「障害者向けの転職エージェント」の活用もおすすめです。

専門知識があるキャリアアドバイザーに相談することで、どのような仕事・職場ではたらくことでストレスを軽減できるかといったことを、詳しく知ることができます。さらに、社会不安障害の症状や個人の特性に合う働き方の提案が受けられるので、安心して転職活動ができるでしょう。

パーソルダイバースの「dodaチャレンジ」では、社会不安障害などの精神疾患に理解のあるキャリアアドバイザーが、自身に合う仕事を紹介してくれるので、自身に合う職場が探せます。

社会不安障害の方の転職にはdodaチャレンジがおすすめ!

社会不安障害があると、人前で過度の緊張や不安を感じるため、どうしても現職を続けるのが難しくなることもあるでしょう。その場合は自身に向いている仕事を知り、専門知識に基づいたサポートを受けることで、適したはたらき方が見つかるはずです。

dodaチャレンジ」の転職支援サービスでは、専門知識のあるキャリアアドバイザーが一人ひとりの就職・転職を支援します。あなたに合った求人情報を探してご紹介するほか、面接・応募書類作成のサポートや面接対策、個別のご相談なども行いますので、安心して転職活動に臨めるでしょう。

公開日:2022/1/6
更新日:2024/12/25
監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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