【調査】精神障害・発達障害のある方の職場の悩み|障害開示のジレンマに迫る
障害のある方のための転職・就職エージェント「dodaチャレンジ」では、精神障害・発達障害といった外見では分かりにくい障害のある方300名を対象に、職場での困りごとや障害開示に関するアンケート調査を実施しました。その結果、障害開示により合理的配慮を受けやすくなる一方で、偏見や不利益への不安から開示に踏み切れない方も多いという実態が浮かび上がりました。業務内容そのものより、職場での人間関係や周囲の理解不足が、障害開示の壁になっていることが分かりました。
この記事では、当事者の声から、障害開示のジレンマとその背景を整理しつつ、はたらきやすい職場選びのヒントを読み解きます。
- 精神障害・発達障害のある方の職場の悩み1位は「対人関係・コミュニケーション」(36.3%)で「業務内容・業務量」(4.7%)を大きく上回った
- 「障害を開示してはたらいている」と回答した方は51%。一方で、「開示したいと思っているが開示していない」「開示するつもりはない」という方は49%と、開示非開示の比率は約半数だった
- 障害を開示していない背景には「偏見を持たれそう」「評価や待遇に影響しそう」「配慮を求めても理解されなさそう」といった不安の声があった
- 障害開示に抵抗を感じている方がいる一方で、開示が「はたらきやすさ」や「安心感」につながったという声も寄せられた
調査概要
調査日 :2026年5月15日
調査方法:インターネットアンケート調査(Freeasy)
調査対象:精神障害または発達障害のある方
サンプル数:300名
<調査結果の引用・転載時のお願い>
本記事の調査結果や画像を引用する場合は、「dodaチャレンジ」の名前を明記のうえ、引用元として以下のリンク設置をお願いいたします。
https://doda.jp/challenge/contents/column/301.html
目次
精神障害・発達障害のある方の職場での最大の悩みは「周囲とのコミュニケーション」
職場での困りごとに関する設問の結果、最も多かったのは「対人関係・コミュニケーション(36.3%)」でした。一方で「業務内容や業務量」に関する悩みは4.7%にとどまっており、実務スキルよりも環境・コミュニケーション要因の課題が大きいことが伺えます。次点の「職場の理解や障害への配慮不足(14.7%)」を含め、周囲の理解不足や人間関係の構築が、障害のある方がはたらくうえで大きな壁になっていることが分かりました。
つまり、障害のある方にとって「仕事そのもの」よりも「周囲との関係性」が職場での最大の悩みだといえます。実務能力の問題というよりも、職場の理解や合理的配慮といった「環境」がはたらきやすさを大きく左右するからです。障害のある方がはたらきやすさを実現するには、配慮事項を事前に共有できる環境や、障害への理解がある職場を選ぶことが重要だといえます。
全体の約半数が障害を開示できていない実態。その背景にある不安とは?
職場での障害の開示状況について尋ねた結果、「開示している」と回答したのは全体の半数を超える51%でした。開示する範囲や職場の状況・環境にもよりますが、一般的には、自分の障害に関する情報を周囲に共有することで、より適切な合理的配慮のもとではたらけるようになります。
一方で、全体の28.7%が「開示したいと思っているが開示していない」、20.3%が「開示するつもりはない」と回答しています。つまり、全体の半数近くとなる49%が精神障害・発達障害があることを開示せずにはたらくことを選択していました。
ここで着目したいのは「開示しない」のではなく、「開示したいのにできない」方が約3割存在する点です。自分らしくはたらきたいと思いながらも、障害があることを隠さざるを得ないというジレンマを抱えている方も少なくありません。
こうしたジレンマへの対応策のひとつとして「セミオープン就労」という方法が挙げられます。セミオープン就労とは、配属先の上司や人事担当者、社内に配置されている産業医・保健師といった産業保健スタッフなど、業務調整や配慮に関わる一部の関係者に、必要に応じて、または段階的に情報共有することです。開示範囲を限定することで、センシティブな情報を全体に広めることなく、必要な配慮やサポートを受けやすくなり、はたらきやすさの向上につながります。
セミオープン就労は、企業と本人の合意が前提となる働き方であり、まだ対応していない企業や職場もあります。とはいえ、開示方法の選択肢が一つではないことを知っているだけでも、不安の軽減につながるでしょう。
障害を開示できない理由とは?当事者が抱えるリアルと障害開示の重要性
ここからは、本調査の結果をさらに深く読み解いていきましょう。
障害を開示していない方は「理解・配慮不足」や「休みづらさ」が課題に
障害の開示状況(Q2)別に、職場での困りごと(Q1)としてどの回答が選ばれているかを見てみると、障害開示の有無にかかわらず、最も多いのは「対人関係・コミュニケーション」でした。「開示している」方は全体の22.3%、「開示したいが開示していない」方は6.3%、「開示するつもりはない」方は7.7%が回答しています。
また、「開示したいが開示していない」方が抱える悩みとして「職場の理解や障害への配慮不足(6.3%)」「キャリアプランや収入への不安(5.7%)」が目立ちました。「開示するつもりはない」方では「休みがとりにくい(5.7%)」「キャリアプランや収入への不安(1.6%)」などの悩みが挙げられています。
つまり、精神障害・発達障害があることを開示していない方にとって、対人関係・コミュニケーションに関する悩みに加え、障害への理解や必要な配慮が十分に得られないことや、キャリア形成への不安が課題となっています。
偏見や不利な扱いへの不安が障害開示の壁に
今回の調査では、精神障害・発達障害のある方にとって職場での障害開示のハードルを高める要因に、「不利な扱いへの不安」や「偏見への恐れ」が挙がりました。具体的には、次のような不安や悩みが寄せられています。
【自由回答】
※調査結果より一部抜粋
・「ただただ偏見を持たれることが怖い」(30代・男性)
・「どう思われるか、ということがどうしても気になってしまう」(30代・男性)
・「以前の職場に開示して特に意味がなかったので、隠すことでもないが積極的に言うことでもないと思い開示していない。開示した際に相手側が抱くイメージが実態とはまるで異なり、要らない配慮や不快な対応がなされる可能性が高い場合も多い。結果、開示した場合に本人にとってマイナスにはたらく可能性を考慮して開示していない」(30代・男性)
・「今後のキャリアや給与に響くので」(40代・女性)
・「余計な偏見やフィルターで変に特別扱いされたり差別されたりしたくない。説明すると話が長く複雑になるから、相手に迷惑をかけるし、話しても理解されない。自分の事を話すことに強い恐怖や不安を感じる」(40代・女性)
・「自分が病気だと白い目で見られてからかわれそう」(50代・女性)
・「評価が下がり、給与が下がり、退職に追い込まれるから」(50代・男性)
障害開示によって合理的配慮を受けやすくなる一方で、不当な評価や待遇、退職の強要など、評価・給与・キャリア面で不利にはたらくことへの懸念の声もありました。障害開示により、あらぬ偏見を持たれることへの不安を感じる方は少なくありません。
また、精神障害や発達障害は、外見からは分かりにくいため、過去に開示しても理解が得られなかったり、十分な配慮につながらなかったりした経験がある方もいます。こうした背景から、開示に慎重になるのも自然なことだといえます。
障害開示が安心感につながった声も
「開示=不利な扱いを受ける」という懸念がある一方、障害を開示したことで「配慮を受けやすくなった」「気持ちが楽になった」という声も寄せられています。実際に、障害を開示してはたらいている方から「開示してよかったこと」として、次のような意見が挙がりました。
【自由回答】
※調査結果より一部抜粋
・「困ったことがあった時、社内の誰かに助けてもらえる」(20代・女性)
・「無理しないように声をかけてくれた」(30代・女性)
・「特性を理解してもらってはたらくことができている」(30代・女性)
・「無理をさせられそうになった時に、無理ができない正当な理由として説明できる」(30代・女性)
・「開示しても信頼できる上司が多いから、シフト面などで考慮してもらえる」(30代・女性)
・「隠してはたらく心理的負担が減り、周囲の理解を得ながら安心してはたらける」(30代・女性)
・「障害を理解してくれ、通院がしやすい」(30代・男性)
・「みんなの理解が得られ、助力が得られる」(40代・男性)
・「苦手なことを理解してくれる」(40代・男性)
・「障害者雇用で障害者だけの部署に所属している。障害を理解してもらえているので、得意なことと苦手なことを理解したうえで業務を調整してくれる」(40代・女性)
・「何かトラブルが起きた時に対処しやすい」(40代・女性)
・「病気に対する理解が広まった。体調が悪いときは休暇をとれるようになった」(50代・男性)
・「開示した結果、ほぼフルリモート勤務が実現した」(50代・男性)
・「会社がカウンセラーを月1回面談させてくれるようになった」(50代・男性)
・「心身の状況を同僚が理解してくれ、仕事がスムーズになる」(50代・男性)
特性により難しさを感じる場面や体調の波に対する理解が得られることで、業務内容や業務量の調整、定期的な通院による休暇取得などの適切な配慮を受けられるという声がありました。 このように、自らの障害を開示し、適切な合理的配慮が受けられる環境に身を置くことで、安定した就労につながりやすくなっていると考えられます。つまり、障害のある方の職場での困りごとを減らすには、「障害開示」と「精神障害・発達障害に理解のある職場選び」が鍵だといえます。
本来、障害のある方が合理的配慮を求めることは正当な権利であり、決してわがままではありません。企業には合理的配慮の提供が法律で義務づけられており、誰もが 公平な就労の機会を得られる社会の実現が目指されています。
しかし、障害の有無や特性の内容といったパーソナルな情報は、自ら申告しない限り、周囲に伝わりにくいものです。そのため、障害を開示しないことを選んだ場合、必要な理解や配慮が十分に得られず、はたらきづらさにつながるケースもあります。あらかじめ障害を開示し、必要な配慮を求めることは、自分だけでなく、会社や周囲にとってもより良い環境づくりにつながるのです。
はたらきやすさを実現する鍵は「理解ある環境の確保」と「支援制度・サービスの活用」
今回の調査から、障害開示によって合理的配慮を受けやすくなる一方で、開示する行為自体に抵抗を感じる方も少なくないことが分かりました。個人的な悩みを共有しづらい環境にいることが障害開示の壁となり、偏見や不利な扱いに対する不安につながっていると考えられます。
精神障害・発達障害のある方のはたらきやすさは、「開示するかどうか」とあわせて、「どのような職場を選ぶか」に大きく影響されます。 そのため、障害を開示するには「精神障害・発達障害への理解の深さ」という視点で仕事を選ぶことが大切です。しかし、自分の力だけで精神障害や発達障害に理解のある職場を見極めたり、情報を集めたりするのは容易ではありません。こうした背景から、仕事や転職活動について相談できる先を確保しておくことが、はたらきやすさを実現するうえで重要なポイントとなります。
気軽に相談でき、専門的なアドバイスを得る手段となるのが「ハローワークの障害者窓口」や「障害者雇用に特化した転職・就職支援サービス」などの活用です。こうした支援を利用することで、障害開示に関する相談や求人の紹介、就職後の定着支援まで、幅広いサポートが受けられます。必要に応じて就労支援サービスを活用すれば、障害への理解が深く、個々の特性に応じた合理的配慮が提供される職場を見つけやすくなります。そのような職場ではたらくことで、人間関係や働き方、キャリアプランなどに関する悩みの軽減につながる場合があります。
「はたらきたいけれど周囲の目や扱いに対する不安が強い」「障害開示の仕方や範囲に悩んでいる」「精神障害・発達障害に理解のある仕事・職場を見つけたい」……このような悩みを抱えている方は少なくありません。そのような場合は、「dodaチャレンジ」のような障害のある方のための転職・就職支援サービスに相談してみるのも一つの方法です。障害や障害者雇用の専門知識を持つキャリアアドバイザーなど、第三者の視点を取り入れながら自身の特性や希望する働き方を整理することで、これまで気づかなかった選択肢が見えてくることもあります。一人で悩みを抱え込まず、自分に合った支援を活用しながら、安心してはたらき続けられる職場環境を見つけていくことが大切です。
■本調査に関する考察:戸田 幸裕
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
今回の調査で印象的だったのは、会社に障害を開示したいと思っているが開示していない方が少なからずいること、そして障害を開示していない方の多くが「理解されないのではないか」「評価やキャリアに影響するのではないか」といった不安を抱えていることです。
転職支援の現場では、障害の有無そのものよりも、企業が個々の特性を理解し、必要な配慮について対話できる環境かどうかが、就業後の定着や活躍を大きく左右すると感じています。開示か非開示かを無理に二択で考える必要はありません。開示する相手や範囲を調整しながら、自分に合った働き方を模索する方法もあります。大切なことは、一人で悩みを抱え込まないことです。自分の特性や希望を整理しながら、安心してはたらける環境を模索するために、信頼できる相手に相談したり、支援を活用することも有効な方法です。自分らしくはたらける職場との出会いが、長期的なキャリア形成につながると考えています。
まずは、キャリアアドバイザーに転職相談を
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就職について不安なことも
障害者雇用の知りたいことも
キャリアドバイザーが親身にお話をうかがいます
公開日:2026/07/07
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員
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