既往歴とは?履歴書でどこまで書く?現病歴との違いと正しい書き方を解説
既往歴(きおうれき)とは、過去にかかった病気やケガの履歴を指し、履歴書や問診票、保険の加入手続きなどさまざまな場面で記入を求められる重要な情報です。
しかし実際には、「どこまで書けばいい?」「完治しているものも対象?」「書かないとどうなる?」と迷う方も多いのではないでしょうか。特に転職・就職活動では、履歴書での既往歴の伝え方次第で、業務への影響や必要な合理的配慮の判断が変わることがあります。
本記事では、既往歴の基本的な意味や現病歴との違いに加えて、履歴書・医療機関・保険それぞれの場面でどこまで書くか、判断基準や書き方を具体例付きで解説します。あわせて、既往歴を記載しない場合のリスクや、(転職・就職活動で)企業に正しく状況を伝えるためのポイントも紹介します。
目次
既往歴とは?
まずは既往歴の基本的な定義と対象となる内容を整理しましょう。
既往歴の定義
「既往歴(読み方:きおうれき)」とは、過去にかかった病気やケガ、またはそれに伴う治療歴のことです。現時点ですでに治癒・安定しているものが対象となるのが一般的で、医療機関の問診票や健康診断、履歴書や保険の告知など、さまざまな場面で記入を求められる重要な情報です。
既往歴については、「どこまでが既往歴に含まれるのか」「軽い症状や完治したものも書くべきか」など、判断に迷いやすいポイントが多く存在します。
既往歴に含まれるもの・含まれないもの
既往歴に該当するかどうかは、次の表を目安に判断できます。
| 判断 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 該当する (要記載) |
医療的に重要な病歴 | がん・糖尿病・手術歴 |
| 状況による (医師に相談) |
症状や影響で判断 | 出産・事故・アレルギー |
| 該当しない (基本的に記載不要) |
軽度・一時的な症状 | 風邪・軽い体調不良 |
迷った場合は「再発リスクがあるか」「現在の生活に影響するか」を基準に判断しましょう。
精神疾患や発達障害も既往歴に含まれる
既往歴には身体疾患だけでなく、精神疾患や発達障害も含まれます。
- うつ病
- 双極性障害
- 適応障害
- ADHDやASD
これらは再発リスクや「配慮の必要性」や「業務適性」の判断など就労環境への影響の観点から、重要な既往歴として扱われます。
既往歴・現病歴・既往症の違い
既往歴と似た言葉として「現病歴」や「既往症」がありますが、意味や使われ方が異なります。特に、医療機関の問診票や就職・転職活動時の履歴書では、これらの違いを正しく理解していないと、適切な判断が行われない可能性があります。
既往歴と現病歴の違い
既往歴と現病歴の違いは、「現在もその病気が続いているかどうか」です。それぞれの違いは以下のとおりです。
- 過去に発症し、現在は治癒または症状が安定している
- 現在の治療や通院は基本的に不要
- 再発リスクの有無が判断ポイントになる
- 現在も治療や通院が継続している
- 発症から現在までの経過や症状の推移を含む
- 現在の就労や生活への影響が重視される
例えば、過去にうつ病を発症した場合、現在は安定していれば既往歴に該当しますが、現在も通院や治療が続いているのであれば現病歴に該当します。特に就職・転職活動では、「現在の状態(現病歴)」がより重視されるため、状況を具体的に整理しておくことが重要です。
既往歴と既往症の違い
既往歴と既往症の違いは、「履歴(経過)」を指すか「病気そのもの」を指すかという点です。例えば、糖尿病に関して記載する場合は、次のような違いが生じます。
既往歴:〇年に糖尿病を発症し、〇○や○○などの治療を行い、現在は安定
既往症:糖尿病
実際には厳密に区別されていないケースもありますが、正確に理解しておくことで書類作成時の精度が高まるでしょう。
既往歴をどこまで書くかの判断基準
既往歴について多い悩みが「どこまで書くべきか分からない」という点でしょう。すべての病気やケガを記載する必要はなく、提出先や目的に応じて適切に選ぶ必要があります。「現在の症状」と「医療・業務上の重要性」の観点で判断すると過不足なく整理できます。
書くべき既往歴の判断基準
既往歴として記載すべきかどうかは、「現在の生活に影響する可能性があるか」で判断します。例えば、次のような既往歴は原則として記載が必要です。
- 定期的な通院や治療が必要か
- 体力・集中力・作業内容に影響する可能性があるか
- 再発リスクがあるか
また、すでに治療していても再発リスクがある疾患については、状況に応じて記載することが望ましいでしょう。特に医療機関や保険の場面では、診療やリスク評価に影響する可能性があるため「問題ない」と自己判断せず、既往歴は広めに記載することが基本です。
書かなくてもよいケース
現在の業務などに影響がない既往歴は、通常は記載の対象外となります。
- 完全に治癒しており、その後の生活に影響がない
- 通院や治療がすでに終了している
- 一時的な症状(風邪・軽い体調不良など)のみ
例えば、過去のアレルギーやケガであっても、現在の健康状態や仕事に影響がなければ、基本的に記載は不要です。「過去にあったか」ではなく、「現在や将来に影響があるか」という視点で判断することが重要です。
判断に迷うケースの考え方
「書くべきか迷う」場合は、次の観点で判断すると整理しやすくなります。
- 現在も症状や通院があるか
- 再発の可能性があるか
- 仕事への影響や配慮が必要か
上記のうちひとつでも当てはまる場合は、記載を検討しましょう。
- 医療機関・保険(安全性やリスク評価が重要なため迷ったら記載する)
- 履歴書・就職活動(業務への影響や配慮が基準となるため 「どう伝えるか」も含めて整理する)
判断に迷った場合は、「生活や仕事に影響する可能性があるか」で判断すると整理しやすくなります。
【ケース別】既往歴の書き方
提出先や目的によって、既往歴で求められる情報の粒度や範囲は異なります。履歴書・医療機関・保険それぞれ判断軸が異なるため、それぞれに適した書き方を理解しておくことが重要です。
履歴書での既往歴の書き方
履歴書に記載する既往歴は、業務遂行への影響や必要な配慮を伝えるための情報です。履歴書には基本的に「健康状態」という枠があるため、そこに既往歴を記載しましょう。医療機関の問診票のように網羅的に記載するのではなく、次のような企業が判断に必要な情報に絞って記載するのが基本です。
- 現在も通院や症状があるか
- 業務に影響する可能性があるか
- 企業に配慮してほしい点があるか
既往歴がなく健康な状態である
既往歴がなく健康な場合は、以下のように簡潔に記載します。
■記入例
健康状態:良好
過去に軽微な病気やケガがあっても、現在の業務に影響がない場合は基本的に記載不要です。なお、空欄は避けて必ず「良好」と明記してください。
既往歴はあるが業務に支障がない
既往歴があっても現在は完治・安定しており、業務に支障がない場合は「良好」と記載します。
■書き方のポイント
・現在の業務に影響がないことを明記する
・必要に応じて補足を加える
・過剰に詳細を書かない
■記入例
・健康状態:良好
・現在は業務に支障なく就業可能
通院歴や服薬歴が比較的最近まである場合は、 「現在は問題なく就業可能」であることを補足すると安心です。また、精神疾患などで通院が継続している場合は、「良好」「業務に支障なし(通院継続中)」などと記載しておくと、必要に応じて合理的配慮を受けやすくなります。
業務に影響をきたす既往歴がある
業務に影響する可能性がある既往歴は、「経緯・現在の状態・必要な配慮」をセットで記載します。
■書き方のポイント
・発症時期を明記する
・現在の状態を具体的に書く
・必要な配慮を明確に伝える
■記載項目
・発症時期
・疾患名
・現在の状態
・必要な配慮
■記入例
・2022年:腰椎椎間板ヘルニアを発症
・現在は回復しているが、重量物の運搬には配慮が必要
・2020年:うつ病を発症
・現在は安定しており月1回通院
・業務可能だが、残業配慮を希望
■避けたい記載例
・うつ病あり(情報不足で判断できない)
・ヘルニア(配慮が分からない)
病名だけでなく、「どの程度影響があるか」「どのような配慮があればはたらけるか」まで明示することが重要です。
医療機関での既往歴の書き方
医療機関では、安全性の観点から「関係する可能性があるものは記載する」が基本です。
- 発症時期
- 疾患名
- 治療内容
- 現在の状態
手術歴・アレルギー・服薬・慢性疾患・精神疾患は優先して記載しましょう。
生命保険での既往歴の書き方
生命保険では「告知義務」があり、指定期間内の既往歴を正確に記載する必要があります。
- 発症時期
- 治療期間
- 医療機関名
- 現在の状態
未申告や誤りは契約解除・保険金不払いの可能性があるため注意してください。
既往歴を書かないとどうなる?具体的なリスク
「不利になるのではないか」と考え、既往歴の記載をためらってしまうケースもあるでしょう。しかし、既往歴を記載しないと、提出先ごとに次のようなリスクがあります。
| 分野 | 影響 |
|---|---|
| 就職 | 評価・雇用継続に影響 |
| 医療 | 誤診や治療ミスの可能性 |
| 保険 | 契約解除・保険金不払い |
転職・就職でのリスク
既往歴を隠したまま就労すると、後から業務に支障が出た場合に不利益となる可能性があります。個人の健康情報は、個人情報保護法における「要配慮個人情報」に該当するため、採用選考で業務と無関係な事項を判断材料とすることは原則として認められません。
- 業務遂行が困難になる
- 人事評価に影響
- 雇用継続の判断に影響
医療現場でのリスク
既往歴を正確に伝えないと、診断や治療に誤りが生じる可能性があります。
- 薬の選択ミス
- 治療方針の誤り
- 安全性の低下
手術歴・慢性疾患・精神疾患は特に重要です。
保険加入時のリスク
既往歴の未申告や誤記載は、重大な不利益につながる可能性があります。
- 契約解除
- 保険金不払い
「知らなかった」「軽い症状だと思った」などは理由にならないため、迷ったら申告が基本です。
既往歴はバレる?企業側の確認方法
既往歴は申告しなければ分からないと思われがちですが、以下のような場面で判明する可能性があります。
- 健康診断や産業医面談
- 業務上の支障や体調変化
- 本人からの申告や相談
特に注意が必要な、企業側が既往歴を把握するパターンを解説します。
健康診断・産業医面談での把握
健康診断や産業医面談を通じて、既往歴が確認される場合があります。
- 健康診断で異常が見つかる
- 産業医面談で既往歴や通院状況を確認される
- 就業上の配慮のために情報共有される
業務上の支障から判明するケース
業務への影響をきっかけに、既往歴が明らかになることもあります。
- 体調不良による欠勤・早退が続く
- 業務パフォーマンスに影響が出る
- 配置や業務見直しのためヒアリングされる
事前に共有されていない場合、「事前に分かっていれば対応できた」と判断される可能性があります。
既往歴は転職・就職活動の採用選考に影響する?
既往歴を記載することで「選考に不利になるのではないか」と不安に感じる方は少なくありません。既往歴が転職・就職活動の採用選考にどのように影響するかを解説します。
採用では「業務適性」として判断される
企業は、入社後に安定してはたらけるかを重視し、既往歴を「業務適性」の観点で判断されることがあります。
- 業務に支障が出る可能性があるか
- 長時間勤務や負荷に耐えられるか
- 合理的配慮が必要か
書き方によって評価は大きく変わる
既往歴は、書き方や伝え方次第で印象が大きく変わります。
■避けたい記載例
うつ病の既往歴あり
■良い例
2020年にうつ病を発症。現在は通院・服薬により安定しており、業務に支障はありません。
このように、現在の状態を具体的に示すことで、企業側に安心してもらいやすくなります。
転職・就職時に既往歴を開示するメリット
既往歴を適切に伝えることで、はたらきやすい環境につながります。
- 適切な業務配置を受けられる
- 合理的配慮を受けやすくなる
- 長期的に安定してはたらきやすくなる
例えば、「長時間労働は再発リスクがある」と伝えることで、勤務時間や業務内容の配慮を受けられる可能性があります。既往歴は「隠すかどうか」ではなく、「どう伝えるか」が重要です 。
精神障害・発達障害がある方の履歴書における既往歴の例文
精神障害や発達障害も既往歴に含まれるため、転職・就職時に作成する履歴書で、「過去」「現在の状態」「業務への影響」などを具体的に記載することが重要です。
うつ病の場合
うつ病は再発リスクや就業継続性が懸念されやすいため、「安定しているか」「どの程度コントロールできているか」を具体的に記載します。
<寛解・安定している>
■記入例
◯年にうつ病を発症し、約1年間の通院および服薬治療を行いました。現在は状態が安定しており、主治医にも「寛解状態で就労可能」と診断されています。
<通院継続中・軽微な配慮が必要>
■記入例
◯年にうつ病を発症し、現在は月1回の通院を継続しています。症状は安定していて就労は可能ですが、定期通院のため勤務時間の調整をご相談する場合があります。
適応障害の場合
適応障害は「環境要因との関係性」が重要視されるため、どのような環境なら問題ないかを記載します。
<回復済み・安定している>
■記入例
◯年に職場環境の変化をきっかけに適応障害を発症しましたが、治療と環境調整により回復し、現在は安定しており就業に支障はありません。
なお、適応障害のある人の働き方については、次の記事も参考にしてください。
発達障害の場合
発達障害は「治癒」ではなく特性という観点から、「診断歴」「具体的な配慮事項」「業務遂行可能性」を整理して記載します。
<軽微な配慮で業務可能(ADHDの場合)>
■記入例
ADHDの診断歴がありますが、現在は自己管理により業務遂行に支障はありません。タスク管理ツールを活用し、業務の抜け漏れ防止に努めています。
<軽微な配慮で業務可能(ASDの場合)>
■記入例
ASDの診断歴があり、指示は口頭だけでなくテキストでも共有いただくことで、より正確に業務を遂行できます。
発達障害は「どのような工夫で業務に対応できているか」を具体的に示すことが重要です。なお、発達障害の特性に合った仕事の探し方については、次の記事も参考にしてください。
障害があって履歴書での既往歴の伝え方に不安がある方へ
「既往歴の伝え方に不安がある」という方は少なくありません。既往歴の伝え方は、転職・就職活動の結果だけでなく、入社後のはたらきやすさや定着にも大きく影響します。そのため、「どこまで伝えるべきか」「どのように説明すればよいか」といった点に不安がある場合は、次のような相談先で第三者のサポートを活用することも有効です。
| サービス | 進め方 |
|---|---|
| 就労移行支援 | 就職準備から進めたい人向け |
| ハローワーク | 自分で求人を探したい人向け |
| 転職・就職エージェント | サポートを受けながら進めたい人向け |
特に「既往歴の伝え方に不安がある」「自分に合う職場を見つけたい」という方は、転職・就職エージェントの利用が適しています。転職・就職エージェントでは、次のようなサポートが得られるため、安心して就職活動を進めやすくなるでしょう。
- 既往歴や健康状態の整理
- 配慮事項の言語化
- 企業とのマッチング
例えば「dodaチャレンジ」では、精神障害や発達障害のある方の支援実績が豊富で、キャリアアドバイザーによる書類添削に加え、キャリアアドバイザーからの「推薦状」が企業に提出される点も魅力です。この推薦状により、実績・人柄・配慮事項などの正確さがフォローされ、履歴書や職務経歴書だけでは伝わらない、あなたの魅力や適性が企業側に伝わりやすくなります。サービスごとにサポート内容や求人の特徴が異なるため、複数を比較したうえで、ご自身の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
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公開日:2026/07/06
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員
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