私は大学~大学院で法律を学び、地方銀行に入行しました。銀行の法務部で3年勤めたのですが、少しずつ金融業務は自分には合わないと戸惑いを感じることが多くなりました。将来的に、より法律に深く携わるキャリアを形成したいという思いが高まったタイミングで、思い切って転職することにしました。
幸いにも、すぐに地元の市役所に転職することができ、新たなキャリアのスタートを切りました。法律に加えて、行政の経験も積めると考えていたのですが、この転職が、思っていた通りには進まない。
市役所での勤務も3年目となったころ、私の業務は徐々に多岐にわたるようになり、量も増えていきました。私は、仕事を覚えるのに時間がかかり、マルチタスクはうまく進められず、気持ちにゆとりがなくなっていきました。寝ているときも歯を食いしばるようになっていたようです。顎に痛みが出るようになり、歯医者に行くと、「歯を食いしばるのは、精神的なものが背景にあるかもしれない」と言われ、精神科の受診をすすめられました。
大人の「発達障害」の診断で納得
精神科ではうつ病と、合わせて発達障害(ADHD)の診断も受けました。主治医からADHDの特性を聞くと、自分に当てはまることが多かったので、これまでなんとなく感じていた周りとの違和感は、「そういうことだったのか」と納得したことを覚えています。
1ヶ月休職してうつ病の症状は落ち着いたので、市役所に復職しました。職場には、うつ病の診断を受けたことは伝えましたが、発達障害については伏せました。その時は、ADHDについては、特性を自分自身で理解していれば対処できると考えていたからです。しかし、復職後の配置換えもうまくはいきませんでした。税金の徴収や生活保護の不正受給者対応などの業務担当となり、いっそうストレスを感じることも多くなりました。そして、改めて転職を考えるようになりました。
心配する家族のため、市役所に勤務しながら転職活動を始める
市役所を辞めることについて、最初は家族から反対されました。特に母は心配しましたね。次の会社が決まれば、家族も安心すると思っていましたし、このときはまだ、「法務系の仕事であれば、今より問題なくはたらける、そつなくこなせるだろう」と考えていました。縁があって、大手メーカーの法務系の部署に転職をしたのが、30代前半のころです。
「スキルが足りない」入社前とのイメージのギャップに自信を喪失…
念願叶って、企業法務に就いた私ですが、入社して早々、周りの社員のレベルの高さに圧倒されてしまいました。学生時代や金融時代に築いた法務関連の土台はあると思っていましたが、やはり、マルチタスクをこなすビジネススキルは周囲に大きく及びません。それまでも、複数業務を並行することや、新しいことの習得に、人よりも苦手意識はありましたが、ここまでギャップを感じたのは初めてでした。私の業務に対する上司のフォローは、明らかに他の社員よりも多く、私は自信をなくし自己肯定感も下がっていきました。そしてそれに伴い、うつ症状が再発してしまいました。服薬により症状を抑えながら仕事をしていましたが、仕事の成果を出すことができず、だんだんと会社に居づらくなっていきました。