クリエイターTehuが語る、プログラマへの道の断念

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掲載日：2013.09.30

iPhoneアプリの新作開発を行っていたTehuだったが、さらに高性能なアプリを開発した若者が世界中に現れていることを知る。彼らは幼少時からコンピューターに慣れ親しんでいる根っからのプログラマーたちばかり。「自分とは決定的に何かが違うと感じてしまった。灘に入ったときと同じ感覚でした」

しかしアプリ制作は、Tehuに別の視点を教えてくれた。「アプリにはプログラム技術のほか、デザインとマーケティングも必要だと分かった。プログラムをやめても、僕にはまだデザインとマーケティングが残っていたんです」

有名になりたいという目立ちたがり屋精神から、今度は『Tehuのオールナイトニホン』というインターネット番組を開始する。アップル製品の発表会を同時翻訳したり、自分がそのとき夢中になっていることを話したり。第1回目にして、累計入場者数は2万人を超えた。「もともとしゃべりも得意でした。この番組が成功したことで、自分はほかの人と違うんだなって調子に乗ったんです（笑）」

自分はアプリの開発だけで終わらなかったという事実が、自信につながった。番組を続けるにつれTwitterのフォロワーがどんどんと増え、発言力が増していく。校内校外を問わず、さまざまな依頼が舞い込んでくるようになった。デザイン、ディレクション、プロデュース、記事執筆。会いたいと言ってくれる人も多くなっていった。
「まるでシリコンバレーのピッチのように、いろんな方々が輝かしい経歴と共に自己紹介してくれました（笑）。その紹介が終わった後、僕は彼らに必ず『で？』と聞き返したんです。すると、8割方の人は黙ってしまいましたね」

しかし残りの2割の人たちは、「で？」と聞かれるとさらに続きを語ってくれた。面白いと思った人とだけ、交流を深めていく。その姿勢は、今も変わらないという。

Tehuはなにも、話し掛けてきた人とだけつながっているわけではない。むしろ彼は、自ら進んで声を掛けていくほうだ。それが顕著に表れているエピソードがある。ここで鍵となったのは、iPadだ。

2010年4月に、アメリカで初代iPadが先行発売された。どうしても手に入れたいと思ったTehuは、Twitterで「友人のためにアメリカからiPadを持ち帰ってくる人がいる」という情報を得る。その当人にいきなり、「iPadが欲しいので、アメリカから持って帰ってくださらないでしょうか」という内容のリプライを送った。半日ほどたった頃にOKの返事。そのときのTehuは知らなかったのだが、アメリカから帰国する予定のその人物とは、Evernote日本法人会長の外村仁氏だった。

すでにiPhoneアプリを開発した日本の中学生がいるというニュースを知っていた外村氏は、「あの子か」とiPad代理購入を快く承諾。TehuはiPadの受け渡しを機に外村氏と会い、堀江貴文氏など有名人に次々と紹介されていった。
「知らない人にiPadを買ってきてくれなんて普通言わないですよね（笑）。でも僕はプライドがないから。ただiPadが欲しかっただけなんです。外村さんの名前は聞いたことはあったけど、誰なのかは調べてなくて。後から、Evernote日本法人の会長だと知って驚きましたね」

「プライドがない」を強調するTehuだが、このiPadのエピソードは“行動力がある”おかげとも言える。
思いついたら即行動。これは今も変わらない。
「確かに、本当に行動力がある人間は、基本的にプライドがないと思ってます。何かをやる以上、絶対に誰かとコラボレーションしないといけない。変なプライドがあったら、人の助けなんて借りないでしょうから」

Tehuの行動力は、目を見張るものがある。有名か無名かは関係ない。Twitterで知り合った若者に自分の居場所を教え、初対面の若者たちと街中で会話することもある。中でも彼に刺激を与えたのが、「女子大生との鍋会」への参加だったという。