難病がある方の働き方とは?おすすめの仕事やより良くはたらくための工夫

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難病だと診断され「治療で仕事ができないのでは?」「会社に報告すると解雇されるかもしれない」と悩んでいませんか。難病を患っているからといって、はたらけないということは決してありません。病気と付き合いながらできる仕事はたくさんありますし、難病患者に対するサポート制度も整っています。自分に合う仕事を見つけ、体調管理を徹底しながらであれば、仕事と治療の両立は可能です。

今回は、難病のある方が仕事を探す際のポイントと、利用できる就労支援制度について解説します。

難病とは

ままず、難病とはどのようなものか、理解を深めていきましょう。

難病の定義

「難病」とは、特定の難治性疾患の総称です。発症の原因が不明で長期療養を要し、現時点では有効な治療法や特効薬が確立されておらず、完治が難しい希少な病気と定義されています(出典:難病の患者に対する医療等に関する法律|e-Gov法令検索)。

ただし、診断の要件に生命維持や自立生活の困難などは含まれないため、通院治療や服薬で症状を抑えながら日常生活を送っている方も少なくありません。

難病の種類と症状

厚生労働省の資料「失語障害がある場合の認定方法について」および「身体障害者障害程度等級表」によると、失語症がある場合は障害者手帳の交付対象となります

難病には、数百種類の疾患があります。その内、診断基準が確立されているものの、国内の患者数が国の定める数に満たない348(2025年4月1日現在)の難病を「指定難病」といいます。特に患者数が多く報告されているのは、次のような病気です。

  • パーキンソン病
  • 潰瘍性大腸炎
  • 全身性エリテマトーデス
  • クローン病
  • 後縦靱帯骨化症
  • 重症筋無力症
  • 全身性強皮症
  • 皮膚筋炎/多発性筋炎
  • 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)
  • 多発性硬化症/視神経脊髄炎

難病は、その時代の医療水準や社会事情によって区分が流動的です。先天性の疾患もありますが、後天性のものも多く存在し、誰しも発症の可能性があります。

難病があると仕事ができない?

結論として、難病の治療と仕事の両立は不可能ではありません。病気の種類や症状の程度によっても異なりますが、必ずしも入院治療や絶対安静を要するとは限らないからです。病気の有無はプライバシーに関わることなので、現在勤めている会社や、就活時の応募先への報告義務もありません。そのため、社会的・経済的な自立や自己実現、生きがいのため就労を希望している難病患者も大勢います。実際に、通院や治療の継続により症状が安定し、経過観察と並行して就労している方も少なくありません。

ただ、先述のとおり治療で症状を抑えられても完治は難しいうえ、特性ゆえの困り事が生じることもあります。体調面の理由から、一般就労枠でのフルタイム勤務が難しい方もいるでしょう。また、病気を開示しないまま就職し、体調の悪化ではたらき続けることが困難になったりすることもあるようです。したがって、疾患ごとの特性に合わせた環境調整が受けられ、無理なくはたらける仕事を見つけることが大切だといえます。

難病を患っている方がはたらきやすい仕事の特徴

ここでは、難病にかかった方が、どのような仕事ならより良くはたらき続けられるのかを考えていきましょう。

心身への過度な負担がない

一般的に、難病があると疲れやすく、体力的な支障を感じやすい傾向にあります。個人差はありますが、肉体労働や外回りの多い営業職、立ち仕事の多い販売職などは不向きです。労働環境および業務内容が体力を多く必要とする仕事は、心身に過度な負担をかけ、体調や症状の悪化を招く恐れがあります。

病気で身体的な負荷を避けたい方におすすめの仕事は、事務やデータ入力、コールセンターなどのデスクワーク全般です。また、在宅勤務が可能なWeb系の仕事も、体調や通院などの都合に合わせてはたらけるでしょう。

勤務日数・時間が柔軟に調整できる

難病のある方がはたらくときは、勤務日数や時間が適正なのはもちろん、制限され過ぎない仕事をおすすめします。難病の種類や程度によっては、一般的な就労日数・時間への対応が難しく、通院や治療の妨げになることもあるからです。

時短勤務やフレックスタイム制など、フルタイムより時間的な拘束が厳しくない働き方なら、体調に合わせて柔軟にはたらけるでしょう。また、通勤ラッシュによる負荷やストレスが避けられるため、体調の悪化が防げるほか、症状が出ているときの対処もスムーズになります。

休憩や休暇がとりやすい

病気の種類にもよりますが、難病では患部の痛みのほか、倦怠感や疲労感、発熱などの全身症状が生じやすい傾向にあります。無理すると体調を崩したり、病気の症状が出たりしやすいため、勤務時間中であっても適切な休憩が不可欠です。

場合によっては仕事を休んで休養する必要があるので、休憩や休暇がとりやすい仕事だとはたらきやすいといえます。

合理的配慮が得られる

合理的配慮とは、病気や障害のある方とそうでない方が、公平かつ互いにより良くはたらくための調整です。例えば、特性に応じた配置や業務量・時間の配分、スロープや手すり、サポートツールの導入のような物理的な配慮を指します。

現在の仕事で合理的配慮を得ることが難しいときは、病気・障害を開示し、理解の深い職場へ転職を検討することも選択肢の一つです。もし障害者手帳を取得できる場合は、障害者雇用枠の仕事へ就職すれば、合理的配慮を得てはたらける可能性が高まります。

難病のある方が無理のない働き方を実現する5つの工夫

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難病を患っている方が無理のないワークスタイルを確立するにあたっては、次の5つのポイントに留意してください。

  • 主治医のアドバイスを仰ぐ
  • 自身の病気や障害の特性を正しく理解する
  • 職業準備性を高める
  • 障害者手帳の取得を検討する
  • 就労支援サービスを活用する

主治医のアドバイスを仰ぐ

難病にかかった方が、仕事探しやはたらき始める前にまずやるべきことは、主治医への相談です。自分でははたらけると思っていても、実際には厳しい場合があります。

現状、自身がはたらける状態なのかや、どのような働き方が適しているのかを、医学的な視点からアドバイスしてもらいましょう。そのうえで、休憩や休養、通院時間を確保し、無理なくはたらける方法を見つけることが、難病のある方の就活の第一歩です。

自身の病気や障害の特性を正しく理解する

一口に難病といっても、その種類や症状の程度は人それぞれです。適した仕事や環境、業務内容も異なるため、自らがはたらきやすい方法を見つけることが重要だといえます。

まずは、症状や体調の悪化が生じやすい条件、その際の適切な対処法なども踏まえ、自己分析を深めることから始めてみてください。そのうえで、自身の特性と必要な配慮を分かりやすいようにまとめておくことで、周囲からの理解も得やすくなります

職業準備性を高める

「職業準備性」とは、就労の前提となる基礎的な力やスキルのことです。具体的には、健康・生活管理能力などの能力を含め、職業ごとに求められる技術やコミュニケーション力を指します。

職業準備性の向上を図ることで、企業が求める人材になれる可能性が高まります。規則正しい生活の徹底や、先を見通してはたらく準備を整えることで、症状や体調の悪化を防ぎ、計画的かつより良くはたらけるようになるでしょう。

自分で対策を考えるのが難しいときは、主治医や就労移行支援事業所、就労支援サービスのキャリアアドバイザーとも相談しながら検討してみてください。

障害者手帳の取得を検討する

難病により、国が定める所定の症状や程度を満たしている場合は、障害者手帳を取得し、合理的配慮を得てはたらくという選択肢もあります。障害者手帳がないとはたらけないわけではありませんが、一般就労だと、周囲へ求める理解や配慮に限界がある場合があります。

障害者手帳を取得することで、障害者雇用枠の仕事への応募が可能になり、合理的配慮を得ながらはたらく選択肢が広がります。また障害者手帳があれば、医療費や税金、公共料金の軽減などのさまざまな障害福祉サービスが受けられるため、生活上の困り事が減らせるでしょう。

就労支援サービスを活用する

現在、国内では、難病のある方のより良い就業をサポートするさまざまな障害福祉サービスが提供されています。障害者向けの就労支援の代表例は、以下のとおりです。

就労支援サービス名 概要
ハローワーク 特性に応じた就業・就活相談や地域の関係機関と連携した包括的な支援が受けられる
難病相談支援センター ハローワークと連携した難病患者就職サポーターによる就労・継続に関する支援が受けられる
地域障害者職業センター 就労や職場適応およびその準備に関する支援とリハビリテーションが受けられる
障害者就業・生活支援センター 地域内での就業・生活に関する相談支援が受けられる
就労移行支援事業所 所定の期間内で一般就労に必要なスキルやマナーが身につけられる

上記のほか、障害者手帳を取得している場合は、障害者専門の転職・就職エージェントの利用も可能です。障害者雇用のプロのノウハウを活かし、よりパーソナライズした就活支援が受けられるようになります。

難病があっても働き方の可能性は広げられる

障害者雇用ではたらく職場のイメージ

難病を患っていると制限されることもありますが、特性や症状に合わせてはたらける仕事に就くことで、無理なく活き活きと活躍できます。今の仕事が自分にあっていないと悩んでいるなら、就労支援事業所といった障害福祉サポートを受けてみてはいかがでしょうか。

難病で障害者手帳を取得している方の仕事探しは「dodaチャレンジ」へご相談ください。専任のキャリアアドバイザーが、より良くはたらける仕事探しをお手伝いします。また、系列の就労移行支援事業所「ミラトレ」では、仕事の上手な進め方、障害との向き合い方、自分に合った仕事の探し方など、各分野の専門家が連携し合い、一人ひとりに配慮しながら職業準備性を高めます。現状を踏まえ、あなたが最も輝く働き方を見つけるサポートを提供しますので、まずはお気軽にお問い合わせください。


公開日:2025/7/31

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
  • dodaチャレンジで、専任のキャリア
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