視覚障害のある方に向いている仕事とは?就職・転職時に相談できる支援機関もご紹介
視覚障害のある方が就職・転職を検討するときは、まずご自身がはたらける職種や業界について考えるかもしれません。実際に、視覚障害者の方はどのような業界や職種で活躍しているのでしょうか。
この記事では、視覚障害者の雇用状況や視覚障害のある方に適した仕事、そして就職・転職を考える際に相談できる支援機関などをご紹介します。
目次
視覚障害者の雇用状況
視覚障害者の方は、どのような業界・職種で活躍しているのでしょうか。ここでは、視覚障害のある方の現在の雇用状況や、就業件数が多いとされる業界などをご紹介します。
企業に勤めている視覚障害者の数
厚生労働省の「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業で勤務している視覚障害者の総数は13,697人です。民間企業以外の公的機関などではたらいている方はこの結果には含まれていないため、実際に就業している視覚障害者の方の人数はもう少し多いと考えられるでしょう。
視覚障害者の活躍が多い業種・業界
上記の13,697名を産業別で見ると、「医療、福祉」がもっとも多く3,616人です。次いで「製造業」が2,503人、「卸売業、小売業」が1,602人と、これら3業界で就業している人が多い状況が伺えます。
視覚障害の区分と特徴
視覚障害=見えにくさ、とひと口にいってもその症状や障害特性はさまざまです。一般的には形の識別、色の識別、明るさなどに対して困難が生じている状態を指しますが、障害の程度によって見えにくさは異なります。
ここでは、複数ある視覚障害の症状や特徴について、かんたんにご説明します。
全盲
目がまったく見えず(視力がまったくなく)、光を感じることも難しい状態を指します。健常者が「視覚障害者」と聞いてイメージするのは、全盲の状態が一般的でしょう。
弱視(低視力)
視力が極端に低く、眼鏡やコンタクトレンズなどの矯正器具を用いても視力の補完が難しい状態を指します。
視野狭窄
視野(目で見える範囲)に欠損のある状態を指します。視野の欠損状況は人によってさまざまで、視野の中央が欠けて見える人もいれば右側・左側が欠けている人もいますし、まだらに欠けて見えるケースもあります。
このような障害があること自体を知らない人が多いため、理解を得にくい傾向にあります。
視覚障害のある方ができること・困難なこと
視覚障害のある方は、業務上どんなことができ、どんなことをすることが難しいのでしょうか。ここでは、視覚障害者の方が仕事のなかでできることや困難なことを、それぞれご紹介します。
視覚障害のある方ができること
・会話(聴覚や触覚などを使ったコミュニケーションを含む)
・PC作業、タイピング
・非視覚的な方法で(耳で聞くなどして)情報を収集すること など
視覚障害のある方が困難なこと
・人の表情や視線を理解すること
・乗り物や機械の運転、操縦
・視覚情報が必要となる読み書き など
なお、読み書きに関しては下記のようなソフトやツールを活用することで対応が可能となります。
【PCの場合】
画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)、画面拡大ソフト、音声データ作成ソフト、点字ディスプレイ など
【書籍や紙の書類の場合】
拡大読書器、眼鏡型拡大鏡 など
視覚障害のある方に向いている仕事
視覚障害のある方に適した仕事には、どのようなものがあるのでしょうか。視覚障害者は集中力が高い方が多いほか、聴覚や触覚に長けていることが多く、それが強みとなります。
ここでは、視覚障害のある方に適した仕事をご紹介します。
あんま、鍼、灸
従来、視覚障害者の方がはたらきやすい職種として挙げられてきたのがこの仕事で、「あんま、はり、きゅう」の頭1文字ずつを取って「あはき」と呼ばれます。今も視覚障害者の方の就労者数が多い仕事ではありますが、晴眼者の就業数も増えているため、視覚障害者が占める割合は減少傾向にあります。
オフィス事務・バックオフィス業務
一般的なデスクワークも、視覚障害のある方にとってはたらきやすい仕事になってきました。これは近年になり、読み上げソフトなどのサポートツールが増えてきたためです。
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エンジニア・プログラマー
基本的なデスクワークに加え、プログラミングなども視覚障害のある方にとってはたらきやすい仕事のひとつです。総務省による、視覚障害のある方にプログラマーとしての就業を促進する支援事業もあります。
参照:
総務省|若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業|視覚障害者もプログラミングで科学へジャンプ
視覚障害のある方の就職・転職先選びの注意点
視覚障害のある方が一般企業ではたらく際には、仕事そのものに加えて通勤ルートや業務以外の職場環境にも気を配る必要があります。ここでは、視覚障害のある方が就職先を選ぶときにチェックしたい、仕事内容以外の注意点や、必要な条件をご紹介します。
通勤のしやすさ
ます、家から職場までの通勤ルートを確認しましょう。視覚障害があることで大きなハードルとなる要素がないか、安全に往復できるかどうかを確認しておく必要があります。
通勤に電車を利用する場合は、通勤時間帯の駅の混雑具合や、線路への転落を防止するホームドア設置の有無を確認しましょう。バスを利用するのであれば、バス停付近の点字ブロック敷設状況や、バス会社での障害者向けサポートなどを調べておくと安心です。
建物内のレイアウト・設備
オフィスが入っている建物の規模やレイアウト、設備なども職場選びのポイントのひとつとなります。
オフィスの建物の規模が大きい場合、建物の入口から職場までや、オフィス入口からデスクまでの経路が分からなくなることもありえます。建物全体のレイアウトも、階によって大きく異なるなどあまり複雑だと、階を間違えたときに混乱したり怪我をしたりする恐れがあります。
また、建物の出入口や内部に点字ブロックがあるかどうか、階段や廊下に手すりがあるかどうかといった移動時の安全面にかかわる設備についても、確認しておくと良いでしょう。
視覚障害のある方が応募企業をチェックする際のポイント
視覚障害のある方が就職・転職活動時に企業研究や職場見学をする際は、どのような点に注目すると良いのでしょうか。応募したい企業が障害についての理解や知識を持っているかどうかは、ぜひ確認をしたい項目かと思いますが、なかなか求職者自身で確認するのは難しいものです。
ここでは、視覚障害者の方が企業を見るときのポイントをご紹介します。
障害者・視覚障害者の採用実績
その企業が、障害に対して理解を示しているかどうかを見るためには、過去の採用実績も1つの指標になります。障害者の採用実績が多く、視覚障害者の方の採用実績もあれば、はたらき方などを考慮してもらいやすいといえます。
職場環境の配慮
アクセシビリティの確保がされているかどうかを確認することで、企業全体の視覚障害への理解度がある程度推し量れます。職場やその付近に段差などの物理的なバリアがないかどうか、音声案内などで障害のある方にも利用しやすくなっているかどうかなどを、面接や職場訪問時に確認しておくと良いでしょう。
職場にどのような支援機器や支援技術が導入されているかも、応募の時点で確認できるとベターです。
視覚障害のある方が就職・転職時に活用したい支援機関
視覚障害者の方は、就職・転職の際に複数の支援機関を利用することができます。ここでは、視覚障害のある方が利用可能な支援機関と、その支援内容やメリットをご紹介します。
障害者就業・生活支援センター
障害のある方の暮らしや就労に関する、総合的な支援を行う機関です。社会福祉法人や公益法人、NPO法人などによって運営されており、障害のある方の困りごとや悩みに対し相談を受け付けるなどのサポートを行っています。
ハローワーク(公共職業安定所)
国が運営する就労支援機関で、一般の方の就職・転職をサポートしてくれるほか、障害者の方のための窓口もあります。窓口担当者は障害者の就職に関する専門知識があり、個別の相談に応じてくれます。
就労移行支援事業所
一般的な職場への就労をめざす障害者の方のために、就労に必要な技能や知識の習得をサポートしてくれる施設です。定められた2年間という期間内で、職業訓練や就労支援、就労した後の定着支援などを行ってもらえます。
障害者向け就職・転職エージェント
いわゆる就職・転職エージェントの障害者向けに特化したものです。障害者手帳をお持ちの方向けに専門の就職・転職支援を行ってくれる民間のサービスです。その多くが無料で利用でき、障害者雇用枠での就職・転職に関する総合的なサポートを実施しています。
専任のキャリアアドバイザーが付き、求職者の方の障害特性や意向に合わせた求人紹介を行ってもらえるほか、就活に欠かせない面接対策などのアドバイスも受けられます。
まとめ
視覚障害のある方が就労できる仕事は、IT技術の進歩などにともなって年々増加してきました。視覚障害者の方にとっては、就職・転職の選択肢が広がっているといえるでしょう。
就活をする際も、まずはご自身の障害を踏まえてできること・できないことを把握することが大事です。それを前提に自己分析や求人探しを行っていくこととなりますが、就活に際して困ったことがあればまずは支援機関に相談するのがおすすめです。
dodaチャレンジは、障害者専門の就職・転職エージェントで、多くの視覚障害者の方の就職支援実績があります。障害者の方の就職事情を熟知したキャリアアドバイザーがさまざまな相談に応じていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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公開日:2023/4/4
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士