PRIDE指標とは?LGBTQ+への取り組み指針やゴールド認定の企業一覧を紹介
セクシュアルマイノリティである「LGBTQ+」の当事者の方は、社会や企業の偏見・不寛容などで「生きづらさ」を感じてしまうことがあるかもしれません。そこで、LGBTQ+当事者がはたらきやすい職場を実現するために策定されたのが「PRIDE指標」です。
PRIDE指標は、LGBTQ+に関する企業の取り組みを評価指標となります。点数により、「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」のそれぞれのランクに認定された企業は「LGBTQ+当事者にとってはたらきやすい」といえます。そこで本記事では、PRIDE指標の詳細や認定企業の一例などについて解説します。
目次
企業の「PRIDE指標」とは
PRIDE指標について、まずは次のポイントから解説します。
- 企業のLGBTQ+に対する取り組みへの評価指標
- LGBTQ+当事者がはたらきやすい職場の実現が目的
企業のLGBTQ+に対する取り組みへの評価指標
「PRIDE指標」とは、企業のLGBTQ+に対する取り組みへの評価指標のことを指し、読み方は「プライド指標」です。LGBTQ+とは「性的マイノリティ・性的少数派」を意味し、次の「性的マイノリティ」の各要素の頭文字を並べたものになります。
Lesbian(レズビアン) | 性的指向が女性に向く女性 |
Gay(ゲイ) | 性的指向が男性に向く男性 |
Bisexual(バイセクシュアル) | 性的指向が両性に向く人 |
Transgender(トランスジェンダー) | 身体的な性別と性自認が異なる人 |
Queer/Questioning(クイア/クエスチョニング) | 性的指向が分からない・決めていない、もしくは既存のカテゴリに当てはまらない人 |
+(プラス) | 上記以外の多様な性のあり方を包含したもの |
2016年に「一般社団法人work with Pride」という団体により、PRIDE指標が策定されました。
LGBTQ+がはたらきやすい職場の実現が目的
PRIDE指標は次のような目的のために策定されました。
- LGBTQ+がはたらきやすい職場を実現するために、企業がガイドラインとして活用できるようにするため
- 本指標に対する企業や組織の取り組み事例を募集し、優れた企業を表彰してLGBTQ+がはたらきやすい職場づくりを応援するため
- 取り組み事例からベストプラクティスを公開し、LGBTQ+がはたらきやすい職場づくりについて社会に認識してもらうため
つまり、LGBTQ+がはたらきやすい職場の実現が目的だということです。LGBTQ+であることによって、職場でいやがらせや差別的言動を受けたことがあったり、同性パートナーであることで家族手当といった福利厚生が使えなかったりする場合、転職先を選ぶ際の基準にしてみるとよいでしょう。
LGBTQ+がはたらきやすい企業とは?PRIDE指標の5つの要素
PRIDE指標は、LGBTQ+当事者がはたらきやすい職場であるかを評価するために、次の5つの要素から構成されています。言い換えれば、これらを満たしている企業はLGBTQ+当事者にとって「はたらきやすい企業」であるということです。
- Policy:行動宣言
- Representation:当事者コミュニティ
- Inspiration:啓発活動
- Development:人事制度やプログラム
- Engagement/Empowerment:社会貢献と渉外活動
Policy:行動宣言
「Policy:行動宣言」は、LGBTQ+がはたらきやすい環境づくりを行うことについて、企業が表明できているかどうかを評価するためのものです。企業や組織の一部だけが取り組むのではなく、全体が一丸となって取り組むべきであることを、社内外が理解している必要があります。
これにより、LGBTQ+当事者は就職・転職活動を行うときに企業情報を見て、「LGBTQ+に対する理解がある」と安心して応募できるため、求職者の職場選びの参考になるでしょう。
Representation:当事者コミュニティ
「Representation:当事者コミュニティ」は、社内にLGBTQ+当事者のためのコミュニティや相談窓口があるかどうかを評価するためのものです。また、LGBTQ+の理解者や支援者である「アライ(Ally)」を増やす、もしくは顕在化するための取り組みを行うことも評価対象となります。
当事者コミュニティがあることにより、LGBTQ+当事者は悩みの共有や適切な専門家への相談がしやすくなり、職場ではたらき続けるために欠かせない「安心感」が得られるでしょう。
Inspiration:啓発活動
「Inspiration:啓発活動」は、LGBTQ+への理解を促進するために、社内で何らかの取り組みを行っているかどうかを評価するためのものです。社内でLGBTQ+への理解が深まることで、当事者に対する差別的な対応がなくなるため、LGBTQ+当事者が安心してはたらきやすい職場環境の実現につながります。
Development:人事制度やプログラム
「Development:人事制度やプログラム」は、以下のような社内の人事制度や各種プログラムについて、LGBTQ+当事者も同等の扱いが受けられるかどうかを評価するためのものです。
休暇や休職 | 結婚・育児・養子縁組・家族の看護や介護など |
支給金 | 慶事祝金・弔事見舞金・家族手当・家賃補助など |
赴任 | 赴任手当や赴任休暇、語学学習補助など |
その他の福利厚生 | 社宅・家族割・ファミリーデー・保養所など |
この項目で評価される企業は、例えば同性パートナーも家族手当の対象となります。公平なシステムを構築することで、LGBTQ+当事者がそうでない人と同様に、権利や制度・サービスを享受できるようになるのです。
Engagement/Empowerment:社会貢献と渉外活動
「Engagement/Empowerment:社会貢献と渉外活動」は、社内だけではなく社外に対しても、LGBTQ+への理解を促進するための活動を行ったかどうかを評価するためのものです。これにより、社内のみならず社外および社会的にもLGBTQ+への理解が深まり、LGBTQ+当事者にとってはたらきやすい・生きやすい環境の実現につながります。
企業がPRIDE指標ゴールドに認定されるための基準
PRIDE指標に認定されるための基準について、次のポイントから解説します。
- ブロンズ・シルバー・ゴールドの3段階がある
- ゴールド認定の企業は「レインボー認定」も
- PRIDE指標で得点するための基準
ブロンズ・シルバー・ゴールドの3段階がある
PRIDE指標には3段階のランクがあり、「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」という区分になっています。企業がPRIDE指標に認定されるためには、前述した指標についてトータルのスコアとして、ブロンズは3点・シルバーは4点・ゴールドは5点以上を獲得する必要があります。3点未満の場合は、PRIDE指標の認定が受けられません。
ゴールド認定の企業は「レインボー認定」も
PRIDE指標でゴールド認定を受けた企業は、「レインボー認定」も取得できる可能性があります。レインボー認定とは、LGBTQ+当事者が自分らしくはたらける職場や社会の実現に向けて、中長期的にコミットしている企業が受けられるものです。言い換えれば、PRIDE指標の認定を受けた企業のなかでも、レインボー認定を受けた企業は特にLGBTQ+当事者への配慮が充実しているということです。
PRIDE指標で得点するための基準
PRIDE指標で得点するための基準は、次のようになっています。ただし、本記事の内容は2024年度の「PRIDE指標2024」のものであるため、詳細についてはwork with Prideの公式サイトをご参照ください。
Policy:行動宣言 | 9項目中4つ以上の該当で1点 |
Representation:当事者コミュニティ | 6項目中3つ以上の該当で1点 |
Inspiration:啓発活動 | 11項目中5つ以上の該当で1点 |
Development:人事制度やプログラム | 項目1〜7のうち3つ以上、8〜15のうち4つ以上、16〜21のうち3つ以上の該当で1点 |
Engagement/Empowerment:社会貢献と渉外活動 | 10項目中3つ以上の該当で1点 |
つまり、企業がPRIDE指標のゴールド認定を受けるためには、5つの要素すべてで得点する必要があるということです。
PRIDE指標ゴールド認定の企業の一覧
work with Prideが発表した「PRIDE指標2024認定企業・団体一覧」によると、2024年度にPRIDE指標ゴールド認定となった企業は388社です。全体の傾向について、次のポイントから見ていきましょう。
- さまざまな大手企業がPRIDE指標ゴールド認定を受けている
- 5年連続でPRIDE指標ゴールド認定を受けた企業もある
さまざまな大手企業がPRIDE指標ゴールド認定を受けている
次のようにさまざまな大手企業が2024年度のPRIDE指標ゴールド認定を受けています。また、「岡崎市」や「国立市」のような地方公共団体もPRIDE指標ゴールド認定を受けています。
ソフトバンク株式会社では、結婚休暇や慶弔見舞金などの社内制度が同性パートナーにも適用可能で、SOGI(性的指向と性自認)による差別禁止規定が明確化されるなど、LGBTQ+フレンドリーな企業風土が根付いています。
またアストラゼネカ株式会社では、LGBTQ+への理解を深めるための研修や、コミュニティ活動・社内制度の整備を行っており、同性パートナーも各種制度を利用できるなど、ダイバーシティが尊重されています。
アストラゼネカ株式会社|LGBTフレンドリー企業インタビュー
このように、LGBTQ+当事者がはたらきやすい環境を整える企業が増えており、今後さらに多くの企業がLGBTQ+当事者への理解・配慮を深めていくことが期待できるでしょう。
5年以上連続でPRIDE指標ゴールド認定を受けた企業もある
ヤマハ株式会社や株式会社アシックス、ソフトバンク株式会社、パーソルダイバース株式会社のように、5年以上連続でPRIDE指標ゴールド認定を受けた企業の事例もあります。こうした企業では、LGBTQ+への理解を社内で深め、多様性を尊重した企業活動や制度が浸透しているため、LGBTQ+当事者がはたらきやすい環境だといえるでしょう。LGBTQ+当事者の方が就職や転職を検討する際は、ぜひPRIDE指標を比較・検討要素にしてみるのがおすすめです。
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PRIDE指標は、LGBTQ+に対する企業の取り組み姿勢を示し、「ゴールド認定」や「レインボー認定」を受けている企業は、LGBTQ+当事者がはたらきやすい環境が整っていると考えられます。そのため、転職の際はぜひPRIDE指標の認定状況にも注目してみましょう。
これから転職を目指すLGBTQ+当事者の方には、パーソルダイバースの転職支援サービス「dodaチャレンジ」のご利用がおすすめです。パーソルダイバースはPRIDE指標ゴールドを5年連続受賞しており、LGBTQ当事者かつ障害がある方のための転職・就職支援サービスである、「LGBTQ当事者かつ障害がある方のための転職・就職支援サービス」を展開しています。
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公開日:2024/11/27
- 監修者:木田 正輝(きだ まさき)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
- 旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士