発達障害のある方が仕事を辞めたいと思ったら?仕事が続けられないときの退職以外の選択肢
仕事をしている発達障害のある方は少なくありませんが、自分には合わない気がして、辞めたいと感じることもあるでしょう。実際にはたらいてみないと分からないことも多いため、採用された後にミスマッチが生じ、なかなか仕事が続かないと悩んでいる方もいるかもしれません。
今回の記事では、発達障害のある方によくある仕事上の悩みを踏まえ、辞めたいと思ったときの対処法を紹介します。
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目次
発達障害の特徴
発達障害とは、脳機能に何らかの不全があることで、発達に凹凸が生じる先天性の精神障害です。ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)の3種類に分類され、それぞれ以下のような特性があります。
発達障害の種類 | 特性 |
---|---|
ASD (自閉スペクトラム症) |
物事の捉え方に関する強いこだわりとコミュニケーションの困難 |
ADHD (注意欠如・多動症) |
不注意と多動・衝動性 |
LD (学習障害) |
知能に問題がないにもかかわらず生じる特定の学習の困難 |
なお、国際的な診断基準「DSM-5」におけるLDの正式な診断名は「SLD(限局性学習症)」です。しかし、一般的には従来のLDが用いられることが多いため、本記事ではそれに準じた表現としています。
発達障害の特性やその程度は、人によってさまざまです。いずれの障害も明確な原因は不明であり、現在の医療では完治できないといわれています。
発達障害があっても、子どものうちは見過ごされ、大人になって仕事を始めてから気づくケースも珍しくありません。特性に対する自他の無理解などにより、社会生活で悩みを抱えている方が大勢います。生きづらさから、うつ病や不安障害、適応障害などの二次障害を発症する恐れもあるため、迅速かつ適切な治療と支援が必要です。
発達障害のある方が仕事を辞めたいと感じる理由
発達障害があると、その特性により、職場でのコミュニケーションに困難が生じやすくなります。本人としては頑張っているにもかかわらず、うまくいかないことが続くと、辞めたいと感じるようになるのも仕方のないことでしょう。
ここでは、発達障害のある方によくある仕事上での困り事について解説します。
業務内容が合わない
仕事の向き不向きは誰しもあるものですが、発達障害があると強いこだわりや衝動、不注意などの特性による困り事が生じやすいので、それが顕著です。業務内容が自分に合わないと、失敗やミスを繰り返してしまいやすくなります。結果、仕事の評価が下がったり、ストレスからモチベーションが低下したりすると、仕事が嫌になってしまうのも無理はありません。
発達障害の特性による業務への適性の問題は、本人の努力だけで解決するのは極めて困難です。そのため、就活で自分に合う仕事が選べるかどうかは、障害のある方にとって死活問題だといえます。
職場の人間関係がうまくいかない
発達障害の中でもASDやADHDのある方は、人間関係で悩みを抱えがちです。本人に悪気はなくとも、特性によりコミュニケーションや意思疎通がうまくいかず、周囲との不和が生じやすくなります。円滑な人間関係が築けないと、職場にいづらくなり、仕事を辞めたくなってしまうでしょう。
職場で孤立すると、仕事がやりづらくなるほか、そのこと自体が大きなストレスです。特に、発達障害の特性への理解や合理的配慮の得られない職場だと、障害のある方本人に大きな負担を強いるでしょう。
発達障害があることを周囲に伝えていない
障害があることを開示せずに就職することは可能ですが、周囲に特性を伝えていないと、適切な配慮が得られません。周囲からの配慮やサポートなしでは、発達障害の特性による困り事が表面化しやすくなりがちです。
また、障害があることを伝えずに就職した場合、時間が経つほど特性が目立ってきてしまい、周囲に感づかれることも少なくありません。会社としても障害があることを知らずに採用しているため、後から知ったことで困惑し、トラブルの引き金になってしまうかもしれません。
発達障害のある方が仕事を辞めたいと思ったときの選択肢
発達障害の特性が理由で仕事を辞めたいと感じたとき、次の3つの道が選択肢となります。
- 仕事を続ける
- 休職する
- 転職する
仕事を続ける
仕事を辞めたいと思ったときは、まず続けられる方法がないか考えてみてください。
例えば、これまで障害を隠してはたらいていたなら、これを機にオープン就労を検討するのもよいでしょう。障害特性に対する合理的配慮が得られたり、適切な担当や部署に変えてもらったりすることで、ぐっとはたらきやすくなるかもしれません。
仕事を続けるうえで、最も大切なのは自己理解を深めることです。自分にできること・できないことを明確にし、上司や職場に理解を求めれば、解決策が見つかる可能性が高まります。
休職する
仕事を辞めたい気持ちが続くことで、職場に行けないほどの心身の不調が出ている場合は、いったん休職することを検討してみてください。
休職とは、労働者が病気やけが、自己都合などで中長期的に仕事を休める制度です。雇用契約を維持したまま、従業員に課される労働の義務が一定期間免除されます。
休職制度の有無や条件、手続きなどは就業先によって異なるため、検討している方は職場の上司や人事担当者に相談してみるとよいでしょう。
転職する
業務の調整や職場の環境改善が期待できず、仕事の継続・休職のいずれも難しい場合は、転職へ向けて活動を開始することをおすすめします。大切なのは、自分らしくはたらけることです。無理して心身を病んでしまう前に、思い切って転職を検討してみてはいかがでしょうか。
発達障害のある方が仕事を辞めたいと悩んだ場合に相談できる窓口
現在の仕事とのミスマッチや職場の人間関係などに悩んでいるなら、公的機関や障害者専門の窓口で、仕事について相談してみるのも一つの方法です。発達障害がある方の就業や健康に関する相談窓口として、次のような機関が設けられています。
- 発達障害者支援センター
- 精神科・心療内科
- 就労移行支援事業所
- 障害者専門の転職・就職エージェント
発達障害者支援センター
発達障害支援センターとは、発達障害のある方の保健や医療・福祉、労働などの総合支援窓口です。自治体直営と委託事業の2種類の事業所があり、令和6年11月現在、全国に109施設が設置されています(出典:発達障害者支援センター・一覧|発達障害情報・支援センター)。
発達障害者支援センターでは、地域のハローワークをはじめとする公的機関と連携したサポートを受けることが可能です。そのうち就労支援では、障害特性と就業適性への理解を深めるサポートが得られるほか、就労先へ赴いての環境調整アドバイスが行われることもあります。
精神科・心療内科
仕事を辞めたいと悩むあまり心身に不調をきしているなら、すみやかに精神科や心療内科を受診し、専門医やカウンセラーに相談することをおすすめします。心の病は、早期受診が鉄則です。対応が遅れると、悪化してうつ病といった重篤な病気を発症する恐れがあります。
また、休職や退職を検討している際も、かかりつけ医に相談してみてください。医師の診断書を発行してもらうことで、話し合いや手続きがスムーズになるでしょう。
就労移行支援事業所
障害特性や二次障害により仕事が長く続かない方や、すぐにはたらくことが難しい場合は、就労移行支援事業所へ見学・相談に行ってみるのもよいでしょう。
就労移行支援事業所とは、通所による作業や実習を通し、一般就労を目指す障害者の方の職務スキル習得や職場探しをサポートする機関です。自らを見つめ直し、特性や適性に合った働き方や、自分の課題を克服できるかもしれません。
就労移行支援の自己負担額は、厚生労働省により、世帯の所得額に応じた上限額が定められています。そのため一人ひとり利用料が異なりますが、多くの方が自己負担なく通所しています。通所を希望する際は、自治体の障害福祉窓口や就労支援の専門機関を通じて申請する必要があるため、まずは問い合わせてみてください。
障害者専門の転職・就職エージェント
転職を検討している際は、障害者専門の転職・就職エージェントに相談してみることをおすすめします。
障害者専門の転職・就職エージェントとは、障害がある方に対し、求人の紹介との仕事探しのサポートを提供するサービスです。障害者雇用に関する深い知識と理解のあるキャリアアドバイザーにより、現状分析に基づく適切な選択肢が提案されるため、転職するかどうかの判断材料となるでしょう。
また、すでに転職を決意している場合は、障害者専門の転職・就職エージェントを利用することで、より良いはたらき方が実現する可能性が高まります。非公開求人を含む障害者向けの豊富な求人から、特性に合わせてはたらける求人を紹介してもらえるほか、キャリアプランに関する相談もできるからです。利用条件は障害者手帳を持っていることのみなので、ぜひ登録を検討してみてください。
発達障害のある方が長く続けられる仕事を見つけたいなら「dodaチャレンジ」
発達障害の特性とのミスマッチから、仕事を辞めたいと思ったときは、継続・休職・転職の3つの選択肢があります。職場からの理解や協力が得られない場合は、そのストレスから心身に支障をきたす前に、自分らしくはたらける職場への転職を検討してみませんか。
「dodaチャレンジ」は、心身に障害のある方のより良い就業の実現をサポートする転職・就職エージェントです。プロのキャリアアドバイザーが、本人の「仕事がつらい」「辞めたい」という気持ちに深く寄り添い、最善の解決策を一緒に考えます。障害者手帳を取得している方なら誰でも無料で利用できるので、ぜひお気軽にご登録ください。
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公開日:2025/4/30
- 監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
- パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
- 上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】- ■国家資格キャリアコンサルタント
- ■障害者職業生活相談員