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- Companyサラヤ株式会社
- 1952年創業。当時流行していた伝染病を予防するため、手を洗うと同時に殺菌消毒ができる、学校や公共のトイレでおなじみの緑色の薬用せっけん液と専用容器を開発した。病院、学校、食品工場などに向けた業務用の消毒剤をはじめとする衛生商品でシェアを拡大。一般ユーザー向けでは、エコロジー洗剤の先がけとして1971年に誕生したロングセラー商品「ヤシノミ洗剤」が広く知られる。近年はBOPビジネスや環境保全活動でも注目を浴びている。本社は大阪府大阪市東住吉区。
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- 海外事業部 BOPビジネス推進室 室長北條健生さん
- 1968年生まれ。京都大学農学部卒業後、メーカーの研究職を経てサラヤ株式会社に転職し、創業者(現会長)の秘書に当たるポジションに就く。1995年のアメリカ子会社立ち上げを皮切りに海外事業を次々と拡大し、17拠点もの展開に関わってきた。2010年にCSRとして始まったアフリカ・ウガンダへの支援をBOPビジネスとして事業化。「病院で手の消毒100%プロジェクト」の統括責任者に就任。
どの企業も二の足を踏んだ、
ウガンダでのビジネスに乗り出す
サラヤといえば、手肌と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」をはじめ、病院などでよく見かけるアルコール消毒剤で知られるメーカーだ。近年は、開発途上国に向けた活動にも力を入れ、メディアでもたびたびクローズアップされている。ユニセフとの協同による「100万人の手洗いプロジェクト」は、2010年にスタート。対象商品の売上の1%をアフリカ・ウガンダにおける手洗い普及活動に寄付するというものだ。これをきっかけにサラヤは、BOP(Base of the Economic Pyramid)ビジネス※という新しい扉を開いた。
※「BOP(Base of Economic Pyramid)」とは、一人当たりの年間所得が3,000USドル以下の人々を指し、全世界人口の約7割にあたる約40億人が属していると言われる。BOP層を対象とした持続可能なビジネスや、現地におけるさまざまな課題解決を図るビジネスをBOPビジネスと言う。
2009年当時、ウガンダは衛生環境が極めて悪く、それが原因で5歳未満児の死亡率は、1,000人当たり128人と際立っていた。「もともとはビジネスではなく、純粋な寄付のみの支援でした。ところが社長が現地を視察してみると、手の消毒はもちろん手洗いの習慣すらない。赤痢などの伝染病が多発した、戦後間もなくの日本に酷似していたと言うんですね」。サラヤの原点は、感染を食い止めるべく、薬用せっけん液とその容器を日本で初めて開発し、事業化に成功したこと。この視察時、当時と同様の使命感が、社長の胸にわき起こったのだという。
こうした開発途上国の衛生環境はWHO(世界保健機関)にとっても課題で、世界の消毒剤メーカーを集めての対策会議も以前から開かれてきた。しかし、開発途上国にビジネス拠点をおこうという企業は出てこない。サラヤは「一過性の支援ではなく、現地に拠点が必要だ」と判断。各社が二の足を踏む中、世界に先駆けてウガンダに現地法人を設立した。
「衛生商品は、どの国にも必要不可欠。とは言え、東アフリカという未踏の地で、ビジネスとして成立させるには何年かかるかわからない。にもかかわらず踏み込めたのは、"必要なことなら、他社がやらなくても、私たちがやろう"、というサラヤの気風からだと思いますね」。
先進国では「当たり前」の衛生環境を、途上国に
衛生環境を変えるには、商品や設備だけでなく、地道な教育や啓発が欠かせない。ウガンダでの活動はまず、せっけんを使った正しい手洗いを、母親や子どもたちに広めるところから始まった。さらに病院を訪ね、院内感染を防止するアルコール消毒剤の使用を推奨する。「病院でさえ、水道が普及していません。さらに医療スタッフはアルコール消毒剤を使った経験がないという。寄付で届いていても、使えていないというのが現実でした。現地に入って、設置して、啓発して…というプロセスが、実はとても大切なのだと思い知らされました」。
だが、目標は消毒剤の現地生産でも、当面の売上は見込めないという厳しい状態からのスタート。サラヤの強みはJICA(独立行政法人国際協力機構)との連携だった。需要がどれほど見込めるか、現地生産の原料があるか、工場設立は可能かといった検証を、JICAのBOP民間連携事業として行った。おかげでJICAとつながりの強いウガンダ保健省から「消毒剤を全国の医療施設に導入します」との宣言を得ることができた。
「病院での啓発から数カ月経ったころ、感染症発生件数の推移をデータ化したところ、成果は一目瞭然。例えばゴンベ病院では消毒剤導入以前、帝王切開後の敗血症と小児の急性下痢疾患が、高い妊産婦・乳幼児死亡率の主な原因となっていましたが、導入から半年後にはゼロになったのです。これを発表した病院長はWHOから表彰されました。産後の母親たちは最初、消毒剤を見て『これは何?』という反応。でも、赤ちゃんを守る商品だと伝えると、すごく喜ばれるんです。最初の訪問では適切に消毒できている割合は30%程度だったのが、再訪問時は何と70%。世界平均は40%なんですよ。いかに熱心かが分かるでしょう。 先進国での「当たり前」の水準を途上国でも「当たり前」にして、数多くの命を守ることできる、感謝される…我々の存在価値を感じられる瞬間です。今後、ウガンダで出産後の母親に退院時、サラヤのアルコール消毒剤が手渡されるようにしていきたい」。衛生の習慣は、少しずつ確実に浸透していくはずだ。
「手の衛生、世界一」を目指して
売上の一部を手洗い普及活動に寄付するという仕組みには「日本のユーザーと、アフリカでの活動をつなげたい」という意図もあった。実際プロジェクトが広く知られるようになると、活動への共感からサラヤに好感を持つユーザーが増え、サラヤ商品を購入するモチベーションにつながったのは確かだ。
「同様に、共感がきっかけで入社を望む人が増えてきたのを感じます。私たちの社会貢献は、主軸である衛生ビジネスと一致する活動。サラヤで働けば、売上を上げながら開発途上国にも継続的に貢献できます。ただし海外事業部隊は初挑戦ばかり。文化、インフラ、何もかもが日本とは異なり、物流さえ不安定です。現地の状況、事情を把握できなければ、その国にふさわしい行動ができません。自ら切り開いていける人でないと務まらないでしょうね」。
その後ウガンダではアルコール消毒剤の現地製造がスタート。これを足掛かりに、東アフリカ全体へのビジネス拡大も視野に入れる。一方でJICAとは、医療器具の洗浄・消毒がテーマの新プロジェクトを発足。さらにボルネオの森を守るための活動やそれに連動した製品群「ヤシノミ洗剤・ハッピーエレファント」も販売している。
これらのBOPビジネスに限らず、サラヤにおける成功の秘訣は「成功するまで、やり続けること」だという。「サラヤの綱領に、『開拓の場は永遠にある。我々が授かった力の限りを持ってこれを開発し、世の為に働こう』とあります。これに従い、衛生といえばサラヤ、そんな存在感を確立させたい。衛生はニッチな市場だから大手企業には魅力的に映らないかもしれません。でも医療現場、食品工場、小学校、公共施設などとシーンは多彩で、手洗い一つ取っても、できることはいくらでもあります。しかも、間違いなく世界に市場がある」。「手の衛生世界一」を目指して、サラヤの開拓と貢献に終わりはない。
サラヤの様子
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