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女性のモヤモヤを解消する100問100答

#085

2022.8.25

Q.“学び直し”がこれからのキャリア形成には
重要ってホント?

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いったい何を学び直したら将来安泰なの?
通信講座の資料を取り寄せてはみたけれど…

人生100年時代に伴い、働く期間も長期化。このまま同じように働き続けても、時代の変化に対応できず、いずれ天井が見えてくるかもしれません。そんな働きながら生き抜かなければならない将来を見据え、“学び直し”を検討している人も多いのでは?

働くことに関する調査・研究を行っているパーソル総合研究所の小林祐児上席主任研究員に、これからのキャリア形成に欠かせない学び直しについて解説してもらいました。

学び直しで自分が変わり続けることがキャリア形成にとって大切

仕事人生が長期化することを考えたときに、ひとつの会社に依存するのは不安…。パラレルキャリアや副業など、働き方のスタイルを柔軟に持つことや収入口を増やすこと、資格を取ることに関心を持つ人が増えています。しかし、最も必要なのはマッチング思考からラーニング思考への転換だと小林さんは話します。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

パーソル総合研究所
小林祐児さん(以下、小林さん)

多くの人は「自分に合った仕事や会社」を探します。これがマッチング思考なのですが、これからの時代には非適合的だといえます。なぜなら「自分のことや自分に合ったものが分かっている」「仕事や会社が変わらない」という前提がないと成立しない考え方だからです。

先行き不透明な時代で、今後もいつ何が起こり、変わっていくか分からないのに、果たして自分も会社も変わらないでいられるでしょうか。

多くの人は自分のことを正しく理解していません。自分が思うより自分は変わっていきます。

特に女性はライフイベントを介して変わっていく傾向にあります。会社も同様で、仕事内容や社員に求めるもの、条件などが時代によって変わってくるかもしれません。

仮に今の自分に合った会社や仕事に出会えたとしても、いずれ合わなくなる可能性も。変わるのは自分や会社だけではありません。産業界のバランスを見てみると、重厚長大型の産業が縮小していく一方、IT産業は拡大を続け、大きく変化しています。産業構造の転換から人材の移動が必要と言われるようにもなってきました。

このような背景から、近年は学び直しやリスキリングに注目が集まっています。物事は常に変化していくことを前提に、キャリア形成を考えたほうが良さそうです。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

ですから、変化に柔軟に対応するためにも、「自分が変わること」「学び続けること」を前提とするラーニング思考に頭を切り替えるべきです。

何を学ぶかよりも、まずは思考の切り替えが大切なようです。

企業が従業員に必要なスキルを学ばせる「リスキリング」も大きな流れに

産業構造の変化やITの進展に伴い、近年ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進できるIT人材の不足が問題となっています。IT産業への転身や、学び直しを考えるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。一方、成長分野への人材の配置転換のために、DX関連スキルを就業時間中に学ばせる企業も出てきています。

このように、新しい業務に必要なスキル、または大幅にアップデートが必要なスキルを獲得するために企業内で学び直す・学び直させる「リスキリング」が注目されるようになってきました。リスキリングとは、「これからも職場で価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」という観点が重要で、今はまだない・できる人がいない新しい価値創造のために、未来に必要な変化するスキル・新しいスキルを学んでいくこととされています。

アメリカでは多くの企業がすでにリスキリングに取り組み、社内で非技術系の人材を技術職に転換させている例が見られます。2020年1月のダボス会議では、「リスキリング革命」と題し、2030年までに10億人に対し、リスキリングに向けたより良い教育、スキル、仕事を提供することが発表されました。現在企業がリスキリングに取り組むことは、世界的な潮流と考えてもよいでしょう。

学び直しやリスキリングは、「自分が変わること」「学び続けること」を実践していくチャンスになりそうです。

学び直しより“自己認識力”を高めよう

AIやITの台頭により、ルーティン作業や単純作業はいずれなくなるといわれています。

将来に備えて、私たちはいったい何を学んでおけばいいのでしょうか? 小林さんによると「何を学び直すかより、生涯学び続ける姿勢が重要」だといいます。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

学び直しといえば資格や語学を身につけようとする人が多いですが、これは得策とは言えません。まさにマッチング思考です。

もちろん意味がないことはないのですが、「机に向かってガリガリ勉強する」ことが目的になってしまっているケースが多い。せっかく資格を取っても活用しなければ意味がありません。

学び直しにありがちなのが、「資格を取って安心」「勉強しているから安心」といった学びの本質を見失い、形骸化してしまうこと。

それよりも、今の職場や仕事で経験したことを咀嚼し、糧にするその過程が学び直しそのもので、誰でも今から学び直せることだといいます。

そのうえで、改めて何かを新しく学び直したいのであれば、「なぜ学び直しが必要なのか、内発的な動機を見つけることが大事」と小林さんは指摘します。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

世の中の正解に当てはまろうとすることや、これからニーズがありそうな学び直しをするという考え方はマッチング思考です。

これまで自分が築き上げてきたキャリアを活かしながら、今後どのように変わっていけるか、そのためにどうしていくべきなのかを考えましょう。そのときに重要なのが、自分を正しく理解していることです。

つまり、自己認識力が高い状態でないと、学び直す内発的な動機を見つけることはできません。

自己認識力が高い状態とは、自分の気持ちを理解していることと、自分が他人からどう見られているかを理解していることの両側面のバランスが取れている状態を指します。

自己認識力を高めれば、自分がどうしたいのか、どうするべきなのか見えてくるそう。高め方など詳しくは下記のリンク先を確認してみてください。

キャリア迷子は“自己認識力”が低いせい!? 仕事も人生も好転する方法を教えて!

一生学び続けるためのモチベーション維持のコツは?

何を学び直すかより、自己認識力を高め、一生学び続けるスタンスが重要だということは分かりました。

とはいえ、学び続けるためのモチベーションを保つのはなかなか難しいところ。小林さんによると、モチベーション維持のために捨てるべきマインドセットが3つあるといいます。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

①地頭重視、②仕事は運次第、③ほどほどキャリア。これら3つが学び続けるためのモチベーションを下げる要因になっています。

まず、①の“地頭重視”は、「知能や才能は生まれつき決まっていて、今から能力なんて伸びない」というマインド。

②の“仕事は運次第”は、「配属も異動も会社が決めるからキャリアは運に左右される」「いくら計画しても計画どおりにはならない」というマインド。

そして、女性に多いのが③の“ほどほどキャリア”。「今の仕事の範囲や規模が自分には合っている」「ある程度の地位にとどまっておくほうが無難」と思うマインドです。

キャリアに対して「ほどほど」で構わないと、現状維持の姿勢になることで、学ぶ意欲が減退します。また、共働き世帯でもパートナーの経済力に依存し、「ほどほどに頑張ること」を目指しているケースも同様。

長い間、学びから遠ざかってしまうと、離婚・死別といったパートナーとの離別のほか、ジョブローテションや異動で新しい仕事に就くなど想定しないできごとが起こった際に、学ぶモチベーション維持どころか、経済的にほどほどに過ごせなくなる可能性もゼロではありません。

もし、ほどほどキャリアを選んでも、学ぶ意欲は減退させないほうがいいでしょう。

どれも、学びの意欲を減退させるマインドセットです。この3つを捨てることで、モチベーションを維持しやすくなります。

また、学ぶ意欲がわく学び方も押さえておきたいところ。小林さんによると、具体的な学び方は以下のとおり多様にあるといいます。

  • 一人で学ぶもの | 読書・セミナー参加・資格勉強・オンライン学習
  • 他者と学ぶもの | 上司・同僚・ライバル・メンターなどとの会話、情報交換、目標共有
  • 多者と学ぶもの | 勉強会・読書会、大学院など各種教育機関、職場全体の情報交換

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

一生学んでいくとはいえ、独学で学び続けることはとても困難です。

そこでおすすめなのが、学びのネットワークに身を投じること。つまり多者と学ぶ機会をたくさん持つことです。

一人では心が折れそうになっても、同じ目的を持つもの同士とならば、刺激し合い、励まし合い、高め合いながら学ぶことができそうです。

また、何を学んでいくべきなのか内発的な動機が見えない人は、まずは職場外の人との交流を広く持つと良いといいます。

パーソル総合研究所 上席主任研究員 小林 祐児

小林さん

他者とのコミュニケーションを介して、自分が何に興味を持つのかが見えてくるでしょう。学びは「他者」と「未来」に開かれています。

「机に向かって参考書を開き、ガリガリ学ぶ、THE・お勉強」だけが学びではないことが分かりました。環境を変えなくても、資格取得に奔走しなくても、今この場所からでも学ぼうとする意識だけで、いつでも学びは始められるのかもしれませんね。

まとめ

人生100年時代を生き抜くために学び直しを検討している人は…

マッチング思考からラーニング思考に切り替える

何を学ぶかより、一生学び続けるスタンスが重要

自己認識力を高める(高め方はこちら

学びの意欲を減退させる3つの思考を捨てる

他者や多者との学びを介することで学びのモチベーションを維持する

とアドバイスがありました。

ラーニング思考でいれば、どんな事柄でも学びとして吸収することができそうです。リスキリングや学び直しのチャンスを活かし、自分ごととして捉えることによって、自分自身の価値創出の機会とできるように、ぜひ意識変容から始めてみてください。

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Profile

識者プロフィール

小林 祐児/顔写真

パーソル総合研究所 上席主任研究員
小林 祐児
NHK放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、2015年入社。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて調査・研究を行っている。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。『働くみんなの必修講義 転職学 人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは 』(中原淳氏との共著、KADOKAWA)、『マーケティング・リサーチの基本』(岸川茂氏編著・分担執筆・日本実業出版社)など著書多数。
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