片麻痺・脳性麻痺の方が就職先を見つけるには?転職・再就職もふまえた仕事の探し方

車椅子で仕事する女性

片麻痺や脳性麻痺があるからといって、就職や仕事への復帰を諦める必要はありません。ただ、障害や特性の程度によってはできる業務が制限され、退職を余儀なくされるケースもあるのは事実です。とはいえ、転職・再就職で新たな道が見つかれば、無理なく活き活きとはたらけるようになるでしょう。
この記事では、片麻痺・脳性麻痺のある方が自分にぴったりの職種・仕事環境を見つけるためのポイントをお伝えします。身体に麻痺があっても転職・再就職を諦めたくない方は、ぜひご一読ください。

片麻痺・脳性麻痺の特徴

はじめに、片麻痺および脳性麻痺の特徴や双方の違いを解説します。

片麻痺とは

片麻痺とは、左右いずれかの半身の感覚や運動機能が失われている状態です。脳卒中(脳梗塞、脳出血など)の後遺症として発症するケースが多く、右脳のダメージは左麻痺、左脳だと右麻痺になるといわれています。なお、左麻痺・右麻痺の症状は、それぞれ以下のとおりです。

左麻痺 右麻痺
・失認(右側をただしく認識できない)
・性格変容(以前と性格が別人のように変わる)
・失行(細かい動きや特定の動作ができない)
・失語症(読み書きや会話がうまくできない)

片麻痺のある方が仕事をする際は上記の症状が差し支えになることが多く、自宅・通院での定期的なリハビリテーションが必要です。

脳性麻痺とは

脳性麻痺とは、脳の損傷による慢性の運動機能障害を指します。出生前もしくは生後4週間までに起きた低酸素状態や感染症、脳血管障害などにより発症するといわれていますが、はっきりとした原因が分からないケースも珍しくありません。脳性麻痺の類型は、主に以下の5種類に分けられます。

病型 身体症状
アテトーゼ型 不随意運動(意思とは無関係の異常運動)、変動的な筋緊張、発音障害
けい直型 筋肉のこわばり、筋力低下、手足の麻痺、視覚・呼吸・咀しゃく・えん下障害
固縮型 筋緊張による関節の硬直、四肢麻痺
運動失調型 協調運動障害(バランスよく身体を動かせない)、手足の震え、手足の麻痺
混合型 二つ以上の病型を併せ持った状態(大半がアテトーゼ・けい直混合型)

身体に現れる麻痺症状は、上記特性による筋緊張やこわばり、筋力低下が直接的な原因だと考えられます。手術や投薬による治療が行われているものの、現代において完治は極めて困難です。そのため、理学療法や作業療法、言語療法などでできることを増やしながら、少しずつ自立を目指していくこととなります。

片麻痺・脳性麻痺に障害者手帳は交付される?

市区町村の窓口へ申請して認定を受けた片麻痺・脳性麻痺の方は、障害者手帳の取得が可能です。ただし、片麻痺・脳性麻痺そのものに対して認定されるのではなく、付随するさまざまな身体・精神障害を総合的にみて判断されます。

片麻痺・脳性麻痺の方が就職するうえでのハンディキャップ

片麻痺に悩む男性

片麻痺・脳性麻痺のある方が就業する際は、その特性から業務に支障が生じることがあります。次は、仕事をするうえでのハンディキャップとなりうる4つの特性をみていきましょう。

順序立てた複雑な動作が難しい

片麻痺があると、特性である「観念失行」や「観念運動」により、意図的にパターン化された動きや人の指示に従っての行動、他人の真似などができません。そのため、複雑な動きや空間・立体の正しい認知が困難なだけではなく、障害の程度によっては着衣や歩行などの日常的な動作も困難になります。

頭と体が連動しない

片麻痺・脳性麻痺の不随意運動が原因で、自分の意思とは関係なく身体の一部が動いたり震えたりしやすくなります。頭ではやろうと思っていても身体がついていかないため、正確な動作ができず、転倒することも少なくありません。

うまく会話できない

片麻痺・脳性麻痺で失語症や発声障害が生じると、人とうまく話せなくなる傾向にあります。重度の麻痺では読み書きがままならないため筆談も難しく、コミュニケーションに支障が出るためです。それゆえ、仕事上の指示やマニュアルがよく理解できず、ミスの原因になってしまうかもしれません。

目が見えづらい

片麻痺や脳性麻痺による視力障害や失認では、視界がぼやけたり一部が欠けたりした見え方をします。見落としや危険の察知が遅れた場合、重大な事故につながる危険性がないとはいいきれません。

片麻痺・脳性麻痺の方の就職・転職先

片麻痺の受傷後に転職・再就職を目指す場合や、脳性麻痺がある方が就職を目指す際には、大きく分けて3通りのルートがあります。以下でそれぞれの詳細を解説しますので、自分の目指す方向性を考えてみてください。

一般雇用枠

一般雇用枠とは、障害の有無にかかわらず公開されている求人です。求人件数が多く、障害があっても応募できますが、就職する場合には特別なサポートや配慮を別途に依頼しなければなりません。また、健常者の方と同じ条件下である以上、ハンディキャップをカバーするような高度なスキルや資格が求められるケースもあります。履歴書や面接で、障害の特性やできること・できないことをきちんと伝えておくことがミスマッチを防ぐコツです。

障害者雇用枠

障害者雇用枠とは、障害者手帳を持っている方を対象とする求人です。障害者雇用促進法によって定められている制度であり、障害の程度に応じた配慮・サポートを前提としています。片麻痺・脳性麻痺の特性をオープンにし、障害者雇用に応募すれば、就職・転職先の選択肢が増えるでしょう。その一方で、求人件数が一般雇用枠より少なく、業務内容や待遇面で満足のいく就職先が見つかるとは限らない点も考慮しておかなければなりません。

福祉的就労

片麻痺や脳性麻痺の症状が重い方や、通院・服薬により長時間の労働が厳しい方は、福祉的就労での就職を目指してみてもよいかもしれません。福祉的就労とは、就労継続支援事業所ではたらくことであり、賃金をもらいながら就労やスキルアップの機会の提供・サポートが受けられます。A型・B型の2種類があり、障害者手帳がなくても利用可能ですが、それぞれ条件や提供するサービス内容、雇用・賃金形態はさまざまです。

片麻痺・脳性麻痺のある方が就職する際のチェックポイント

チェックリスト

もともと就労されていた方が片麻痺の受傷による休職・退職ののちに社会復帰する場合、以前にはなかった就業上の支障が生じるものです。また、脳性麻痺のある方がはじめて就職されるときも、どんな仕事を選ぶべきか迷ってしまいますよね。ここでは、障害で休職もしくは退職されたのち、復職・転職・再就職による社会復帰を目指すときの5つの要チェックポイントをご説明します。

業界・職種

社会復帰に当たってまず確認すべきことは、その業界や職種が麻痺のある方でもできる業務を取り扱っているかどうかです。麻痺による特性があってもできる仕事なら、無理なくはたらけます。なお、片麻痺・脳性麻痺があってもはたらきやすい就職・転職先は以下のとおりです。

職種 詳細
事務職全般 総務、経理、庶務、OA事務、データ入力など
Web系制作職 Webデザイナー、Webマーケター、Webプランナーなど
IT技術職 SE、プログラマー、ネットワークエンジニアなど

片麻痺・脳性麻痺がある方には、基本的に激しい運動や指先の繊細な動作が比較的少なく、座ったまま片手でできるデスクワークをおすすめします。ただし、同じ事務でも営業事務や電話・来客対応を要する業務は向いていません。

また、障害者向けサテライトオフィスや、特例子会社も障害のある方がはたらきやすい環境が整えられているケースが多いといえます。主治医のアドバイスなども参考にしつつ、自分に合う仕事を探すことが重要です。

勤務形態

定刻での出社が義務付けられている仕事より、フレックスタイムや時短勤務などを選べるほうが体調や通勤など状況に応じてはたらけます。また、テレワークやリモートワークなどの在宅勤務ができれば通勤の負担が減り、片麻痺・脳性麻痺がある方でもはたらきやすいでしょう。

バリアフリー設備の有無

片麻痺・脳性麻痺で身体に不自由な部分があっても、バリアフリー設備が整った環境なら負担が最小限になり、持てるパフォーマンスを発揮しやすくなります。歩行や立つ・座るなどの日常的な動作も楽になり、仕事がやりやすくなるはずです。

通勤のしやすさ

就職や転職・再就職を検討するときは、条件や待遇だけではなく、通勤のしやすさも考慮してください。片麻痺・脳性麻痺の方は臨機応変な動作が困難なため、長距離移動や満員電車など混雑しがちな通勤経路だと負担が大き過ぎます。

障害者雇用の実績

障害者雇用の実績が豊富な会社は、片麻痺・脳性麻痺の方がよりはたらきやすい環境だと考えられます。多くの障害者の方が勤めているということは、適切な合理的配慮の提供による柔軟な対応や、福利厚生が充実している可能性が高いためです。

なお、合理的配慮とは個々の障害特性や困りごとに応じて提供されるべき支援のことであり、2024年4月1日から事業者に義務付けられました。厚生労働省の指針を遵守し、サポート体制の整備や支援ツールの導入を進めている会社なら、社会的・物理的なバリアを感じることなくはたらけるでしょう。

片麻痺・脳性麻痺の方が受けられる就労支援

現在、片麻痺がありながらも再就職や転職による社会復帰を目指す方や、就職を希望する脳性麻痺のある方へ向け、さまざまな支援が提供されています。ここからは、各サービスの特徴を解説しますので、自分にどれが適しているか見極める際の参考にしてください。

ハローワーク(公共職業安定所)

各地域のハローワークには障害者専門窓口があり、一般雇用枠のほか、障害者雇用枠での求人紹介や、転職・就職のための各種サービスが提供されています。支援は無料で受けられますが、あくまで一般的な紹介・助言のみを行うスタンスのため、必ずしも就職・転職に結びつくとは限らない点に注意しなければなりません。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、障害のある方が利用できる職業訓練施設です。就業にかかわるスキルや知識を身につけられるほか、採用後も日常生活に関することを含むさまざまなサポートが受けられます。一般就労を目指す65歳以下の障害者の方なら、最長24ヶ月のあいだ通所可能です。また、利用料は前年の世帯収入によって決まります。

障害者専用の転職・就職エージェント

近年は、インターネット上で障害者の方へ向けた転職・就職エージェントによるサポートサービスが数多く提供されています。実践的なアドバイスだけではなく、非公開求人など独自の情報を提供しているケースもあり、就職・転職の幅がぐっと広がるでしょう。自己分析・応募から面接、アフターフォローまでトータルでサポートしてもらえるため、障害があっても仕事を始めたい方や、再就職を目指す方はぜひ利用してみてください。

片麻痺・脳性麻痺の方の就職・転職には「dodaチャレンジ」がおすすめ

片麻痺や脳性麻痺のある方が就職することは容易ではないかもしれません。しかし、はたらきやすい仕事を選び、適切な配慮が受けられれば、社会復帰や自己実現がきっと叶うはずです。

障害者のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」は、就業や社会復帰を志す片麻痺・脳性麻痺の方を全力でお手伝いいたします。安心してはたらける求人の紹介や、専任アドバイザーによる障害に応じた各種サポートを無料で提供しておりますので、就職・転職・再就職に挑戦したい方はぜひ一度「dodaチャレンジ」にご相談ください。

公開日:2024/5/27

監修者:木田 正輝(きだ まさき)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 キャリア支援事業部 担当総責任者
旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社後、特例子会社・旧インテリジェンス・ベネフィクス(現パーソルダイバース)に出向。採用・定着支援・労務・職域開拓などに従事しながら、心理カウンセラーとしても社員の就労を支援。その後、dodaチャレンジに異動し、キャリアアドバイザー・臨床心理カウンセラーとして個人のお客様の就職・転職支援に従事。キャリアアドバイザー個人としても、200名以上の精神障害者の就職転職支援の実績を有し、精神障害者の採用や雇用をテーマにした講演・研修・大学講義など多数。
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■日本臨床心理カウンセリング協会認定臨床心理カウンセラー/臨床心理療法士
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