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退職後の手続きは何をすべき?
必要書類、年金の加入や税金の納付についても解説

柴垣 和也氏/顔写真

監修者:柴垣 和也(しばがき・かずや)氏(社会保険労務士法人クラシコ 代表)

会社を退職するときには、年金・保険の加入手続きや税金の支払いが発生します。特に離職期間中は、自分でしないといけない手続きが多く、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、会社を辞める前に押さえておきたい年金や税金の手続きを「退職日の翌日に入社する場合」と「退職後に離職期間がある場合」に分けて、それぞれ解説します。ぜひ参考にしてください。

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【一覧】退職後に必要な手続きとは?

退職日の翌日に入社する場合と退職後、離職期間がある場合とでは、必要な手続きが異なります。特に離職期間がある場合は、自分でしないといけない手続きが多いため、あらかじめ押さえておきましょう。

【一覧】退職日の翌日に入社する場合に必要な手続き

手続き 誰が行うか
雇用保険の加入手続き転職先の人事・総務担当者
健康保険の加入手続き転職先の人事・総務担当者
厚生年金の加入手続き転職先の人事・総務担当者
住民税の納付退職時期によって異なる
  • ・6月~12月に退職した場合:自分、もしくは転職先の企業
    • -退職時に残額を一括で支払うか分割するかを選べる
    • -分割の場合は納付書に従って自分で納めるが、転職先に依頼し給与から天引きしてもらえる場合もある
  • ・1月~5月に退職した場合:退職する企業
    • -前々年分の残額すべてを、退職する企業の最終給与か退職金から天引きされる
所得税の納付年末調整時期に在籍していた企業で年末調整を行う

退職日の翌日に入社する場合、健康保険や各種年金の切り替え手続きは転職先の会社が行ってくれます。一方で、住民税や所得税の支払いは、転職時期によっては誰が行うかが変わるため、注意しましょう。

【一覧】退職後に離職期間がある場合に必要な手続き

手続き 誰が行うか いつまでに どこに
失業手当(失業保険)の
受給手続き ※任意
自分で
ただし、受給条件をすべて満たす必要がある
できるだけ早く ハローワーク
健康保険の切り替え手続き 以下から選択し、自分で行う
  • ・国民健康保険に加入する
  • ・任意継続被保険者制度に加入する
  • ・家族の健康保険(被扶養者)に入れてもらう
退職後14日以内
※任意継続被保険者制度に
加入する場合は、退職後20日以内
お住まいの市区町村
※任意継続被保険者制度に
加入する場合は退職する会社に
国民年金の加入手続き 自分で 退職後14日以内 お住まいの市区町村
住民税の納付 退職した時期によって異なる
  • ・6~12月に退職した場合:
    • -残額を納付書に従って自分で納める
  • ・1~5月に退職した場合:
    • -前々年分の残額すべてを退職した企業の最終給与で支払う
    • -6月以降は納付書に従って自分で納めるが、
      再就職が決まった場合は転職先の会社に依頼し、
      給与から天引きしてもらえる場合もある。
退職の翌月 お住まいの市区町村
所得税の納付 再就職の時期によって異なる
  • ・年内に再就職した場合:転職先の企業で年末調整を行う
  • ・年内に再就職しなかった場合:確定申告を自分で行う
原則、退職の翌年3月15日まで 税務署

健康保険や年金は、社会保障を受けられるかに大きく影響するので、期日までに手続きを済ませるようにしましょう。一方で、雇用保険は失業手当(正式には「雇用保険の失業等給付の基本手当」。以後断りのない限り、「失業手当(失業保険)」と表記)を受給したい方のみ対応すれば大丈夫です。

住民税と所得税は、退職時期や再就職の時期によって、自分で対応するか会社に依頼するかが変わるため、注意しましょう。

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退職後の「雇用保険」の手続き

退職日の翌日に入社する場合 雇用保険の加入手続きは転職先の会社が行う
退職後に離職期間がある場合 失業手当(失業保険)を受給したい場合は、自分で手続きをする

雇用保険とは、労働者の生活や雇用の安定を目的とした保険の総称です。失業手当(失業保険)は雇用保険制度の一つで、離職して失業状態にある人が安定した生活を送りながら一日でも早く再就職できるように支援することを目的の一つとする給付制度です。

雇用保険の加入手続き

雇用保険の加入手続きは転職先の会社が行うので、退職日の翌日に入社する場合は自分で手続きする必要はありません。手続きにあたり、転職先から「雇用保険被保険者証」の提出を求められますので、手元に用意しておきましょう。

雇用保険被保険者証とは?

失業手当(失業保険)の受給

失業手当(失業保険)の給付を希望する際は、ハローワークで求職の申し込み(離職票と受付票の提出)が必要です。

なお、手続きには以下の条件を満たすことが前提条件となります。
自分が当てはまるかどうか確認しましょう。

  • ・就職への意思があるにもかかわらず、失業状態である
  • ・ハローワークに求職の申し込みをしている
  • ・被保険者期間がそれぞれ以下を満たす場合
    • 自己都合退職の場合:退職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12カ月以上ある
    • 会社都合の離職の場合、退職日以前の1年間に6カ月以上の被保険者期間がある

給付の手続きはオンラインや郵送では行えず、離職票や雇用保険被保険者証、本人確認書類などの必要書類を現住所がある地域を管轄するハローワークへ提出する必要があります。別途詳しく解説した記事がありますので、下のリンクからご確認ください。

雇用保険の失業手当(失業保険)を受け取る条件と手続き<社労士監修>

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退職後の「健康保険」の手続き

退職日の翌日に入社する場合 新しい健康保険への加入手続きを転職先の企業が行う
退職後に離職期間がある場合 下記のいずれかを選択し自分で手続きする
  • ・国民健康保険に加入する
  • ・任意継続被保険者制度に加入する
  • ・家族の健康保険(被扶養者)に入れてもらう

退職日の翌日に入社する場合は、自分で手続きをする必要はありません。転職先の企業が、自社で加入する健康保険への加入手続きをしてくれます。
一方で、退職後に離職期間がある場合、「国民健康保険への加入」「任意継続被保険者制度への加入」「家族の健康保険に被扶養者として加入」のいずれかを選び、自分で手続きをする必要があります。

手続きの詳細は以下の記事をご覧ください。

転職・退職時の健康保険の切り替え<社労士監修>

健康保険の切り替え手続きの注意点

転職先が決まっていたとしても、退職日と転職先への入社日が数日でも空くようであれば、健康保険の切り替え手続きが必要になります。
また、新たな健康保険制度に加入するまでに期間が空くと、その間にけがや病気をしたとしても健康保険の適用を受けられないため、医療費を全額自己負担で支払わなくてはいけません。

任意継続被保険者制度とは

任意継続被保険者制度は、退職後も、元の会社の健康保険に最長2年間加入し続けられる制度です。ただし、加入条件として、退職日以前に被保険者期間が2カ月以上ある必要があります。また任意継続被保険者制度に加入する場合は、退職日の翌日から20日以内に手続きを行わなければなりません。
保険料は退職時の給与をもとに計算されます。ただし在職時は在籍企業と半額ずつ負担していたものが、全額自己負担となるため支払う額は増えると考えておきましょう。それでも国民健康保険よりも保険料を抑えられる可能性があること、在職時と同じく被保険者分の保険料だけで扶養家族分の健康保険も適用されることが主なメリットです。

国民健康保険料の金額は、市区町村役場の窓口で試算してもらえます。任意継続被保険者になる場合と国民健康保険に加入する場合とを比較して決めることもできるので、迷う場合は相談してみるとよいでしょう。

退職後の「年金」の手続き

転職先が法人(株式会社など)であれば、転職先の人事・総務担当が厚生年金への加入手続きをしてくれます。ただし、退職後に離職期間がある場合は厚生年金ではなく、国民年金の加入手続きが必要になります。

もし次の働き方が、個人事業主、もしくは雇用主(法人の代表を除く)や法人の非常勤役員の場合は、国民年金の加入手続きが必要になります。一方で、法人化している事業の代表や常勤役員は、厚生年金に加入することになります。

以下のフローチャートも参考にしながら、自分の場合はどの手続きが必要になるか押さえておきましょう。

失業給付金を受給するまでの流れ

国民年金に加入するための手続き

どんな場合
  • ・退職後に離職期間がある場合
  • ・退職後、個人事業主や雇用主(法人の代表などを除く)になる場合
手続き時期 退職日の翌日から14日以内
手続きをする人 被保険者本人
必要なもの 年金手帳、印鑑、離職票や退職証明書など退職日の確認できる書類
※配偶者(第3号被保険者)の種別変更手続きをする場合は、あわせて配偶者の基礎年金番号通知書(または年金手帳)と手続きをするための委任状も必要。
保険料 保険料 月額16,520円(2023年4月~2024年3月分)
※保険料は毎年度見直しを行う。最新の金額は日本年金機構のHPを参照

国民年金への加入は市区町村役所・役場の国民年金窓口に必要書類を提出することで完了します。退職日翌日から14日以内に手続きするのが原則ですが、もし過ぎてしまっても、未納分の保険料をさかのぼって納付することが可能です。加入後、保険料は納付書(国民年金保険料納付案内書)に従って納めます。また、保険料を前納すると保険料が割引されます。
国民年金の保険料を支払わないと「未納」扱いになり、そのままずっと支払わなければ、将来受け取れる老齢基礎年金が減額され、場合によっては受給できなくなることもあるため注意しましょう。

転職するとき、年金の手続きはどうすればよいですか?

厚生年金に加入するための手続き

どんな場合
  • ・転職先が法人(株式会社など)の場合
  • ・退職後、法人化している事業の代表や常勤役員になる場合
手続きをする人 転職先の人事・総務担当者
必要なもの 基礎年金番号通知書(旧年金手帳)もしくはマイナンバーカード
※第3号被保険者となる配偶者がいる場合は配偶者の分の書類も必要です。
保険料 給与額によって変化
※詳しくは日本年金機構「厚生年金保険料額表(令和2年9月分)

転職時に年金の切り替え手続きを忘れてしまった…どうすればいい?

退職後の年金の手続きQ&A

離職期間があっても、退職日と同じ月に入社した場合はどうなる?

退職日と入社日が同じ月であれば、自分で保険料を支払う必要はありません。ただ場合によっては、日本年金機構からの確認書類への記入や、役所での手続きが必要になることもあります。市区町村によって対応が異なるため、詳しくはお住まいの自治体のホームページを確認してください。

退職日が月末でない場合はどうなる?

退職日が月末ではなく、かつ同じ月に新しい会社に入社しなかった場合は、退職した月から第1号被保険者として保険料を納付しなくてはいけません。会社と退職日を調整する際、同じ月に転職する予定がない場合は、できるだけ退職日を月末にすることをおすすめします。

離職期間中に保険料を納付するのが難しい場合、どうすればいい?

やむを得ない事情で、離職期間中に保険料を納付することが難しい場合は、退職(失業)による国民年金保険料の特例免除制度(※)を受けられます。住んでいる市区町村の役所・役場または年金事務所の窓口に以下の必要書類を提出(郵送も可)するか、電子申請を利用して申請します。

  • ・「国民年金保険料免除・納付猶予申請書
  • ・「基礎年金番号通知書」のコピーまたは「年金手帳(氏名の記載ページ)」のコピーなど
  • ・失業していることを確認できる公的機関の書類の写し(「雇用保険受給資格者証」など)

※免除制度に関する詳細は日本年金機構ホームページ

退職後の「住民税」の手続き

住民税は前年1月から12月までの1年間の所得に対して課された税額を、その年の6月から翌年の5月までに「後払い」で納める仕組みとなっています。
住民税の納付方法には、「給与特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。

給与特別徴収
  • ・毎月の給与から差し引いて、本人に代わって給与支払者が納める方法
    その年の6月から翌年5月まで12等分して納める
  • ・会社員はこの方式で納付するのが一般的
普通徴収
  • ・4回に分けて、自分で納付する方法(6月・8月・10月・翌年1月)
  • ・主に給与所得者でない人や離職期間中の場合はこの方式で納付する

6月~12月に退職した場合の住民税の支払い手続き

翌年5月までに納めないといけない残りの住民税を、退職時に一括で支払うか分割するか選択し、退職する会社に伝えます。

残りの住民税を一括で支払う場合

一括で支払う場合は、最終月の給与や退職金から天引きされる形になります。給与明細や退職金の支給明細書を確認し、住民税の支払いが完了しているか確認しましょう。

残りの住民税を分割で支払う場合

分割の場合は、後日役所から送られてくる「普通徴収の納税通知書」に従って、自分で支払う必要がありますが、転職した場合は、転職先の会社が役所に「特別徴収への切替申請書(市区町村により名称が異なる場合があります)」を提出することにより、転職先の給与から特別徴収してもらえるようになります。

ただし、「普通徴収の納税通知書」の納付期限と「特別徴収への切替申請書」の提出のタイミングによって、特別徴収してもらえる住民税の範囲が異なります。「特別徴収への切替申請書」を提出した時点よりも、納税通知書の納付期限が“後”の分は、すべて特別徴収してもらうことができます。一方で、すでに納付期限を“過ぎている”分は特別徴収ができないため、普通徴収で納めなければいけません。

1月~5月に退職した場合の住民税の支払い手続き

5月までに納めないといけない残りの住民税額を、退職時に一括で支払います。退職する会社での最終の給与や退職金から天引きされる形が一般的です。
その後、6月1日時点で再就職している場合、前年分の住民税は転職先の企業の給与から毎月天引きされます。離職中の場合は普通徴収となります。役所から送られてくる納税通知書に従って自分で納めましょう。
6月1日よりも後に再就職した場合は、転職先の企業から役所に「特別徴収への切替申請書」を提出してもらうことにより、住民税を給与から特別徴収してもらえるようになります。

転職後の住民税はどうなる?天引きはいつから?切り替え時期を退職月別に解説

退職後の「所得税」の手続き

所得税はあらかじめ一年の総収入を想定したうえで金額が仮決定され、その月割り額を徴収しています。想定よりも総収入が少なかった場合は「確定申告」もしくは「年末調整」することで、余分に支払った所得税を返してもらえます。再就職したタイミングで手続き方法が異なります。それぞれ見ていきましょう。

年内に再就職した場合

再就職先の会社で「年末調整」を行うことで還付を受けられます。生命保険等の各種控除証明書と転職前の会社から受け取った源泉徴収票を提出して手続きしてもらいましょう。ただし医療費控除を希望する場合は、翌年2月~3月中旬ごろに自分で確定申告する必要があります。

また入社時期が12月の場合、会社によっては年末調整の手続きが終わっている可能性があります。その場合も自分で確定申告しましょう。

年内に再就職しなかった場合

翌年の2月~3月中旬に自分で確定申告を行う必要があります。その際は確定申告書とともに前の会社の源泉徴収票と各種控除証明書、印鑑を用意しておきましょう。

源泉徴収票とは?転職時になぜ必要?

転職や退職をした年の年末調整の手続きは?確定申告が必要ですか?

退職後の手続きは事前の準備が大切です

退職後の手続きは、離職期間の有無や退職時期、転職の時期によって変化します。特に離職期間がある場合は、自分で書類を用意したりハローワークや役所に足を運んで手続きしたりする必要があります。自分にはどんな手続きが必要になるか事前に把握して、退職後の手続きをスムーズに進めましょう。

dodaではそのほか退職時に必要な公的手続きや書類についても解説した記事をご用意しています。この機会にまとめてチェックしておきましょう。

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