会社都合退職と自己都合退職の違いは?
退職理由には、大きく分けて会社都合退職と自己都合退職の2種類があります。
どちらの退職理由に該当するかによって、失業保険(失業手当)や退職金などは異なります。特に離職期間が発生する場合、退職後に安心して過ごすためにも、失業保険(失業手当)の金額は重要なポイントでしょう。
まずは会社都合退職と自己都合退職について、それぞれの違いを詳しく確認していきましょう。
会社都合退職とは?
会社都合退職とは、会社の事情により退職を余儀なくされるケースです。
会社都合退職には、経営難によるリストラや倒産以外にも、雇用契約書の内容と実状の大幅なズレが原因で自分から退職する場合、いじめや嫌がらせなどの理由で退職をせざるを得ない場合なども該当します。
- 「会社都合」の主な退職理由
-
- 会社の倒産(破産・会社更生・民事再生・銀行取引停止処分など)
- 経営難によるリストラ
- 解雇(事業所の廃止・撤退による解雇、普通解雇)
- 派遣や有期雇用の雇い止めにあったとき
- 希望退職制度を利用したとき
- 雇用契約書と仕事内容が大きく異なるため自分から辞めるとき
- いじめや嫌がらせなどの理由で退職をせざるを得ないとき
- 会社から給与カットや未払いがあるとき
- 慢性的に残業時間が長いとき など
自己都合退職とは?
自己都合退職とは、従業員自身の意思によって退職するケースです。
結婚や子育て、転居などのライフイベントや、親の介護などの家庭の事情、健康問題などにより退職する場合、キャリアアップや職場への不満解消目的で転職する場合などが、自己都合退職に当てはまります。
- 「自己都合」の主な退職理由
-
- 結婚や子育て、転居などのライフイベント
- 自身の病気、家族の介護などの家庭の事情
- キャリアアップ、職場への不満解消
- 懲戒解雇(違反行為など自分に責任があるもの) など
会社都合退職と自己都合退職の違い3つ
会社都合退職と自己都合退職の条件が分かったところで、続いてはそれぞれの退職理由による退職後の違いについて、詳細を確認していきましょう。
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
失業保険(失業手当) |
|
|
退職金 | 全額受け取れる | 減額されることがある |
経歴 | 履歴書には「会社都合により退職」と記載 | 履歴書には「一身上の都合により退職」と記載 |
【違い①】失業保険(失業手当)
会社都合退職 | 自己都合退職 | |
---|---|---|
給付開始日(最短) | 7日後 | 7日+2カ月後 |
給付日数 | 90~330日 | 90~150日 |
退職理由にかかわらず失業保険の給付を受けられますが、自己都合退職には2カ月間の給付制限があります。会社都合退職の場合、ハローワークに必要書類を提出してから7日間の待期期間を過ぎると給付が開始されますが、自己都合退職の場合、さらに2カ月待つ必要があります。
さらに会社都合退職の場合は、退職までに転職に向けた準備期間を十分に取れなかったことを考慮して、給付日数が長くなることも多いでしょう。
失業保険(失業手当)について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
失業手当(失業保険)のもらい方や条件は?手続きはどうする?もらえる期間・計算方法・金額も解説
【違い②】退職金
退職金は、そもそも会社によって制度の有無に違いがありますが、退職金制度がある場合、その金額は勤続年数や退職理由に応じて決まるのが一般的です。例えば、一時金の形で給付されるタイプの場合、自己都合退職では、会社都合退職よりも減額されるケースが多いでしょう。
一方、確定拠出年金など年金の形で退職金が支払われるタイプの場合は、退職理由による金額の違いは原則生じません。
いずれにせよ、その会社の退職金制度の詳細については、就業規則や退職金規則に記載されているので、事前に確認しておきましょう。
退職金の仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
退職金の相場や計算方法は?勤続年数や退職理由でいくら変わるか解説
【違い③】履歴書の「経歴」
転職活動中に関係があるのは、「履歴書」への記載方法と面接時の対応の違いでしょう。
転職活動で提出する履歴書には、職務経歴と一緒に退職理由を記載する必要があります。退職理由が、会社都合退職の場合は「会社都合により退職」、自己都合退職の場合には「一身上の都合により退職」と記載するのが一般的です。会社都合の場合は、備考欄などに「会社の業績不振のため」「倒産のため」などの理由も添えておくとよいでしょう。
面接では履歴書の記載内容をもとに質問されます。
「会社都合により退職」と記載している場合、退職理由について多少聞かれることはあるかもしれませんが、深掘りされることはありません。ただし、採用担当者は「やむを得ず職を失ったことで転職活動に対して消極的なのではないか」「自社で活躍したいという意欲はあるのか」といった点を気にしています。退職するきっかけこそ会社都合だったものの、転職先では意欲的に活躍していきたいと考えている、業務に魅力を感じたために応募している、など積極的な姿勢を見せることが大切です。
「一身上の都合により退職」と記載している場合は、志望動機とセットで退職(転職)理由について質問されることが多いでしょう。その会社の志望動機につながる前向きな理由を伝えることでアピールにつながるはずです。
履歴書や職務経歴書の書き方を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
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会社都合と自己都合は誰がいつ決める?
「会社都合」と「自己都合」では、基本的に会社都合退職のほうが、より早いタイミングで、より多くの金額をもらえますが、自分の退職理由がどちらなのかは、誰がいつ決めるのでしょうか。失業保険(失業手当)と退職金、それぞれのケースに分けて見ていきましょう。
失業保険(失業手当)の場合
会社都合退職か自己都合退職かは、失業保険(失業手当)の給付条件なので、ハローワークがどちらに当たるかを最終判断します。
具体的な手順としては、まず所属していた会社が、従業員による退職届の提出有無や退職の事情をもとに会社都合退職か自己都合退職か判断し、離職証明書に記載してハローワークに提出します。その後、離職証明書の内容をもとに、ハローワークが離職票を発行。退職者は所属していた会社経由で離職票を受け取り、会社の判断に異議があればハローワークに申し立て、異議がなければそのまま離職票を提出することで受理されます。
退職金の場合
退職金の場合は、退職する会社による判断がそのまま最終決定になると考えましょう。退職金の給付条件については、退職理由だけでなく、勤続年数なども影響するので、就業規則を事前によく確認しておくことが大切です。
自分が「会社都合」になるか「自己都合」になるか事前に知りたいときは、会社の人事部に直接聞いてみてもよいでしょう。また、会社都合退職による解雇の場合、会社側は30日以上前にその旨を伝える、もしくは30日に満たない分の「解雇予告手当」を支払う必要があることが法律で定められています。
会社都合と自己都合は変更できる?
会社都合退職か自己都合退職かによって、失業保険(失業手当)や退職金の給付条件が変わることを考えると、退職理由を変更したいと考える人も多いのではないでしょうか。中には会社から退職理由の変更を打診されるケースもあるかもしれません。ここではそれぞれへの対処法について、詳しく解説します。
自己都合退職から会社都合退職に変更したい場合
退職時の扱いは自己都合退職だったとしても、後から会社都合退職に変更できるケースはあります。例えば、雇用契約書と実際の仕事内容が大きく異なることが原因で、自分から退職する場合、パワハラなどの理由で退職をせざるを得ない場合、不当な給与カットや未払いがある場合、慢性的に残業時間が長い場合、などが挙げられます。
- 【会社都合退職になる正当な理由】
-
- 雇用契約書と仕事内容が大きく異なるため自分から辞めるとき
- いじめや嫌がらせなどの理由で退職をせざるを得ないとき
- 会社から給与カットや未払いがあるとき
- 慢性的に残業時間が長いとき など
ハローワークは客観的証拠として、労働契約書や就業規則、タイムカード、賃金台帳などの書類を見て実情を判断するので、退職理由の変更を相談するつもりの人は、退職前にどのような書類が必要になるか確認しておきましょう。
また、有期雇用で本人の更新希望がかなえられなかった場合や致し方ない理由(病気・けが・妊娠・看病、人員整理などで希望退職者の募集があったなど)で退職する「特定理由離職者」に該当すると、給付制限が免除される場合があります。
会社から「自己都合退職にしてほしい」と言われた場合
本当は会社都合退職にもかかわらず、「厚生労働省からの助成金をもらえなくなる」などと言って、会社から退職届の提出を求められることがあります。しかし、退職届を提出することは、「自らの希望で退職した」という証明になりかねません。
失業保険(失業手当)は整理解雇やハラスメントなどで意に沿わない退職を余儀なくされた人に対して手厚く支給されるものなので、自己都合退職を望まないのであれば断りましょう。
会社都合と自己都合とでは退職手続きが異なる?
会社都合退職と自己都合退職で退職時に行うべき手続きは異なります。それぞれの特徴は主に以下のとおりです。
会社都合 退職 |
|
---|---|
自己都合 退職 |
|
会社都合退職では、基本的に退職届の提出は不要です。法律上、会社は退職日の30日以上前に従業員へ解雇の旨を伝える必要があるため、トラブルを避けるためにも「解雇予告通知書」や「解雇理由証明書」を発行してもらうよう会社にお願いしておきましょう。
一方、自己都合退職では、退職届の提出が必要です。法律上は遅くとも2週間前までに会社へ退職の旨を申し出ればよいですが、後任への引き継ぎや取引先へのあいさつなどを行い、円満に退職するためには、2カ月前までに申し出るとよいでしょう。
また、手続きは、退職理由だけでなく、離職期間の有無によっても大きく変化します。それぞれの場合の詳細について以下で見ていきましょう。
退職後の手続きについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
退職後の手続きは何をすべき?必要書類、年金の加入や税金の納付についても解説
転職先への入社まで離職期間が発生しない場合
退職から入社までに離職期間がない場合、基本的には転職元・転職先の会社経由で手続きを行います。ただ、手続きを適切に行うための書類準備や引き継ぎ対応などは、計画的に行う必要があるでしょう。
フェーズごとの主な準備や手続きは以下のとおりです。
退職に向けた準備 |
|
---|---|
退職に関する諸手続き |
|
転職後の入社に向けた準備 |
|
転職先への入社までに離職期間が発生する場合
基本的に行うべき準備や手続きは「転職先への入社まで離職期間が発生しない場合」と同様です。
しかし、離職期間が発生する場合は、失業保険(失業手当)を受給することができます。受け取る場合には、「転職後の入社に向けた準備」の代わりに、受給手続きを進めましょう。
手続きとしては、まず会社から離職票を受け取り、住民票に記載のある地域を管轄するハローワークで求職の申し込みを行います。申し込みから7日間の待期期間を経て、失業給付金の支給日が決定します。なお、会社都合退職の場合は、7日間の待期期間が明けたタイミングから、自己都合退職の場合は、7日間の待期期間の翌日からさらに最低でも2ヵ月後から給付を開始します。
会社都合退職と自己都合退職に関するよくある質問
退職にあたり、会社都合退職と自己都合退職に関するよくある質問について、まとめました。気になる質問がある方は、ぜひ最後までご確認ください。
Q.会社都合退職・自己都合退職は履歴書にどのように書く?
職歴の退職した年月の行に「〇〇により退職」という形で記載するのが一般的です。
退職理由が会社都合の場合は、「会社都合により退職」、自己都合退職の場合には「一身上の都合により退職」と記載しましょう。
Q.会社都合退職だと書類選考で不利になる?
退職理由が会社都合退職であることを理由に、書類選考が不利になることはまずありません。履歴書の備考欄などに「業績不振による倒産のため」などと書いておくとよいでしょう。
Q.会社都合退職・自己都合退職について面接で聞かれることはある?
会社都合か自己都合かにかかわらず、面接では退職理由・転職理由を必ずと言っていいほど質問されます。会社都合の場合は「業績不振による整理解雇」「雇い止め」などの事情をフラットに伝えれば、特にそれ以上深掘りされることはないでしょう。
一方、自己都合の場合は、転職理由と志望動機の一貫性や、転職理由と応募ポジションが矛盾していないか詳しく確認されます。事前に答えを準備しておきましょう。
Q.解雇された場合、自己都合退職とうそをつくのはNG?
経歴についてうそをつくのは避けましょう。入社後に退職理由に関する嘘が発覚した場合、「経歴詐称」となり、最悪の場合、転職先から解雇される可能性があります。
一口に「解雇」といっても、会社の業績不振によるものと、自身の就業態度によるものがあります。前者の場合、うそをつく必要はまったくありません。後者の場合、問題点を反省し、今後どのように改善していくのかを考え、面接の場でも説明できるように準備しましょう。
Q.自己都合退職でも、失業保険(失業手当)の制限が免除されて早くもらえる場合はある?
個別の理由により、「特定理由離職者」として失業保険(失業手当)の給付制限が免除されて受給開始が早まることがあります。免除される理由には、事業所の移転で通勤が難しくなった場合、30日以上の家族の看病や介護が必要な場合、医師に退職を勧められた場合などが該当します。
なお、特定理由離職者に該当するかは、ハローワークが判断します。離職区分を「特定理由離職者」に変更したい場合は、離職票を受け取った後に、ハローワークに対して異議申し立てをする形で申請しましょう。
Q.会社都合で退職する場合の、失業保険(失業手当)の手続きは?手当はいつからもらえる?
会社から離職票を受け取ったら、住民票に記載されている住所を管轄するハローワークで必要書類の提出および求職の申し込みを行います。手当の給付は、求職の申し込みから7日間の待期期間を経過した後に始まります。
なお、手当の給付日数は、年齢や雇用保険の加入期間によって異なります。詳細は以下の記事もご確認ください。
退職理由の違いを理解し、スムーズな転職活動に役立てましょう
会社都合退職と自己都合退職、この2つの退職理由の違いを理解することは、転職活動において非常に重要です。退職理由によって、失業保険(失業手当)の受給条件や退職金、そして転職活動における評価が変わってきます。自分にとって最適な選択をするためには、それぞれの特徴をしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
この記事を通して、会社都合退職と自己都合退職の基本的な違い、そしてそれが転職活動にどのように影響するかを理解し、スムーズな転職を実現しましょう。
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この記事の監修
柴垣 和也(しばがき・かずや)
社会保険労務士法人クラシコ 代表
1984年大阪生まれ。
人材派遣会社で営業、所長(岡山・大阪)を歴任、新店舗の立ち上げも手がけるなど活躍。
企業の抱える人事・労務面を土台から支援したいと社会保険労務士として開業登録。講演実績多数。
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