
特定受給資格者とは?
特定理由離職者との違いや給付日数を解説【社労士監修】

監修者:社会保険労務士 北 光太郎(きた・こうたろう)氏 (きた社労士事務所 代表)
倒産や解雇など、会社の都合によって再就職の準備をする余裕がなく退職した人は、失業手当(失業保険)を受給するときに「特定受給資格者」として手厚い給付が受けられます。
本記事では特定受給資格者と特定理由離職者の違いや、特定受給資格者となる条件について分かりやすく解説します。
この記事のまとめ
- 会社都合の退職でも契約内容や勤続年数によって特定受給資格者か特定理由離職者に分かれる
- やむを得ない理由での自己都合退職は特定理由離職者となる
- 自身がどの受給資格者に該当するかは、離職票―2や雇用保険受給資格者証にある「離職理由コード」で判断ができる
特定受給資格者とは
特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇など会社都合により再就職の準備期間がないまま離職を余儀なくされた失業手当(失業保険)の受給資格者のことです。一般受給資格者よりも受給条件が緩和され、手厚い給付が受けられます。
特定受給資格者に該当するかどうかは、離職票やそのほかの提出書類をもとにハローワークが判断します。会社の担当者だけではなく、必要に応じて離職者がハローワークに提出する場合もあるため、退職理由を証明する書類は保管しておきましょう。
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特定受給資格者に該当する離職理由
特定受給資格者は主に会社都合によって退職した人が該当します。
特定受給資格者に該当する主な退職理由は以下のとおりです。
なお、正式な定義と判断基準は厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」をご覧ください。
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特定受給資格者と特定理由離職者の違い
「特定理由離職者」とは、以下の理由で退職した人が該当します。
一般受給資格者よりも受給条件が緩和され、一定期間(原則1カ月)失業手当(失業保険)を受給できない給付制限期間が設けられずに失業手当(失業保険)が受給できます。
なお、「特定理由離職者」の中でも労働契約が更新されなかった場合は、給付日数が特定受給資格者と同じく手厚い給付が受けられます。一方、やむを得ない理由で自己都合によって退職した場合は、一般の受給資格者と同様の給付日数になります。
労働契約の更新を希望したが更新されなかった
特定受給資格者は「3年以上勤めていた会社から雇い止めに遭った」「更新の確約があって更新がされなかった」場合に該当します。一方で特定理由離職者は、勤めて3年未満の会社で契約の更新について明示はあり、更新を希望したにもかかわらず更新されなかった場合に該当します。
具体的には、雇用契約書や労働条件通知書など契約内容が記載してある書類に「契約を更新する(しない)場合がある」「〇〇の場合は契約を更新する」など、更新の確約はないものの一定条件で更新する旨の記載があったことが条件になります。
ただし当初から「契約の更新なし」など、契約の更新がないことが明示されている場合は、この基準に該当しません。
この条件で特定理由離職者に該当した場合は「会社都合の退職」となり、特定受給資格者と同様、給付日数が一般の受給資格者よりも手厚くなっています。
やむを得ない理由で自己都合により退職した
「やむを得ない理由での自己都合による退職」とは、主に以下の理由によって自ら退職を申し出た場合に該当します。
これらの理由により退職した場合は1カ月の給付制限期間がなく、7日間の待期期間を経た後、すぐに失業手当(失業保険)が受給できるようになります。
正式な定義と判断基準は厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」をご覧ください。
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特定受給資格者と一般受給資格者の違い
一般受給資格者は、自己都合で退職した場合や定年退職した場合に該当します。
自己都合で退職した場合は、一定期間(原則1カ月)失業手当(失業保険)が受給できない給付制限期間が設けられます。一方、定年退職した場合は給付制限期間が設けられません。
なお、同じ自己都合退職でも、「やむを得ない理由」に該当する場合は特定理由離職者に当たります。例えば、転職のために退職する場合や職場の人間関係への不満から退職する場合などは一般受給資格者に該当するので、違いを押さえておきましょう。

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特定受給資格者・特定理由離職者の失業手当(失業保険)の受給要件
一般受給資格者が、会社を退職して失業手当(失業保険)の受給資格を得るには、「退職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12カ月以上」であることが必要です。
一方、特定受給資格者と特定理由離職者は「退職日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が6カ月以上」で受給資格が得られます。そのため、一般の離職者と比べると雇用保険の被保険者期間が短い期間で失業手当(失業保険)の受給が可能になります。
特定受給資格者・特定理由離職者の失業手当(失業保険)の給付日数
特定受給資格者と特定理由離職者(やむを得ない理由で自己都合により退職した場合を除く)は、以下のとおり離職時の年齢と雇用保険の被保険者期間に応じて給付日数が異なります。
特定受給資格者・特定理由離職者(やむを得ない理由で自己都合により退職した場合を除く)
雇用保険の被保険者期間 | 離職時の年齢 | ||||
---|---|---|---|---|---|
~29歳 | 30~34歳 | 35~44歳 | 45~59歳 | 60~64歳 | |
1年未満 | 90日 | ||||
1年以上5年未満 | 90日 | 120日 | 150日 | 180日 | 150日 |
5年以上10年未満 | 120日 | 180日 | 180日 | 240日 | 180日 |
10年以上20年未満 | 180日 | 210日 | 240日 | 270日 | 210日 |
20年以上 | ― | 240日 | 270日 | 330日 | 240日 |
※特定理由離職者(労働契約の更新を希望したが更新されなかった場合)が特定受給資格者と同様の給付日数となるのは、2027年3月31日までの時限措置です。
一方、特定理由離職者(やむを得ない理由で自己都合により退職した場合)や一般受給資格者は雇用保険の被保険者期間のみで給付日数が決まります。
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特定理由離職者(やむを得ない理由で自己都合により退職した場合)・一般受給資格者
雇用保険の被保険者期間 | 所定給付日数 |
---|---|
1年未満 | 90日 |
1年以上5年未満 | |
5年以上10年未満 | |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
受給資格者ごとに要件や給付日数をまとめると以下のようになります。
失業手当(失業保険)の 受給区分 |
給付制限期間 | 受給に必要な 雇用保険の 被保険者期間 |
所定 給付日数 |
|
---|---|---|---|---|
a.特定受給資格者 | なし | 離職前の 1年以内に 6カ月以上 |
90~330日 | |
b.特定理由離職者 | 労働契約の更新を希望したが更新されなかった場合(会社都合) | 90~330日(※) | ||
やむを得ない理由で退職した場合(自己都合) | 90~150日 | |||
c.一般受給資格者 | 定年退職や契約期間満了で退職した場合 | なし | 離職前の2年以内に12カ月以上 | 90~150日 |
aとbに該当する理由がなく自己都合で退職した場合 | 1カ月※5年以内に3回以上受給する場合は、3カ月 | |||
自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇された場合 | 3カ月 |
※特定理由離職者(労働契約の更新を希望したが更新されなかった場合)が特定受給資格者と同様の給付日数となるのは、2027年3月31日までの時限措置です。
※参考:厚生労働省「基本手当等について」
またdodaでは、失業手当(失業保険)の自動計算ツールをご用意しています。ご自身の年齢や受給区分に応じていくらもらえるかが分かります。自分の受給額を詳しく知りたい方はぜひご利用ください。
自分が特定受給資格者・特定理由離職者に該当するかどう決まる?
失業手当(失業保険)の受給資格は離職理由により「一般受給資格者」「特定受給資格者」「特定理由離職者」の3つに分けられています。自身がどの分類に該当するかは、離職票―2や雇用保険受給資格者証にある「離職理由コード」で判断ができます。
受給資格 | 離職票―2の離職理由コード (受給資格者証のコード) |
離職理由 |
---|---|---|
特定受給資格者 | 1A(11) | 解雇(1Bを除く) |
1B(12) | 天災その他やむを得ない理由により事業の継続が不可能になったことによる解雇 | |
2A(21) | 雇い止め(3年以上雇用) | |
2B(22) | 雇い止め(3年未満雇用・更新明示あり) | |
3A(31) | 希望退職の募集または退職勧奨など | |
3B(32) | 事業所移転に伴う退職 | |
特定理由離職者 | 2C(23) | 契約期間満了による離職(雇用期間3年未満等更新明示なし) |
3C(33) | やむを得ない理由による自己都合退職 |
「雇用保険受給資格者証」での離職区分の確認方法

「離職票ー2」での離職区分の確認方法

雇用保険受給資格者証とは?いつもらえる?見方や再発行方法も解説
最終的にどの受給区分に該当するかを判断するのはハローワークなので、自分で判断はできません。
会社側で記載された退職理由に異議がある場合は、ハローワークに異議申し立てすれば退職理由が変わる可能性があります。異議がなければそのまま離職票を提出することで受理されます。
※参照:厚生労働省「離職票の交付」
厚生労働省「雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり」
特定受給資格者・特定理由離職者の失業手当(失業保険)受給の流れ
特定受給資格者や特定理由離職者は一般受給資格者よりも失業手当(失業保険)を早く受給できます。
基本的な流れは以下のとおりです。
具体的なフローは以下の流れになります。

特定受給資格者・特定理由離職者は、7日間の待期期間を経れば最初の失業認定日に失業手当(失業保険)が振り込まれます。
なお、失業手当(失業保険)受給の詳細な流れは、以下の記事を参考にしてください。
特定受給資格者・特定理由離職者は国民健康保険料の軽減措置を受けられる
会社を退職してすぐに転職する予定のない方は、健康保険の任意継続を申請しない限り、国民健康保険に加入します。
国民健康保険の加入手続きは、市区町村で離職票や健康保険資格喪失証明書などを提出することで手続きが行えます。その際、特定受給資格者または特定理由離職者は、国民健康保険料の軽減措置を受けることができます。
国民健康保険料の軽減措置とは、前年の給与所得を100分の30に軽減して保険料を計算するものです。ハローワークから交付する雇用保険受給資格者証の12欄「離職理由」が、「11、12、21、22、23、31、32、33」と記載がある方が対象となります。
詳しくは各市町村の国民健康保険担当にお問い合わせください。
※参照:厚生労働省「国民健康保険料・保険税の軽減について」
転職時の健康保険の切り替えについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
よくある質問
特定受給資格者、特定理由離職者に関するよくある質問をまとめました。
自己都合退職から特定受給資格者・特定理由離職者に変更できますか?
基本的にハローワークでは会社が作成した離職票に記載されている離職理由から、自己都合か会社都合かなどを判断します。
ただし、離職票に「自己都合退職」と記載されていても、特定受給資格者・特定理由離職者に該当する可能性がある場合は、離職理由を後から変更できる可能性があります。離職理由に異議がある場合はハローワークに相談し、事実関係の調査を依頼しましょう。
ハローワークは客観的証拠として、雇用契約書や解雇予告通知書、転勤の辞令などの書類を見て実情を判断するため、必要な書類は保管しておくことが大切です。
ハローワークに相談する際は、会社から受け取った「離職票」と「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」に記載されている資料をハローワークに持参しましょう。
※参照:厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
離職票とは?発行手続きやもらえる時期、退職証明書との違いを解説
特定受給資格者・特定理由離職者でも失業手当(失業保険)に申請期限はありますか?
特定受給資格者や特定理由離職者であっても、失業手当(失業保険)の申請には期限があります。基本的には離職日の翌日から1年以内が受給期間とされており、1年以内に受給を終えなければなりません。ただし、給付日数が330日の人は1年と30日まで受給が可能です。
※参照:北海道ハローワーク「基本手当の支給を受けることができる期間は」
まとめ
特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇など、会社都合での退職を余儀なくされた人を指し、一般の受給資格者よりも手厚い失業手当(失業保険)を受けられます。また、失業手当(失業保険)の受給要件が緩和され、通常よりも雇用保険の被保険者期間の要件が短くなります。特定受給資格者に該当するかどうかは、ハローワークの判断によって決まるため、離職理由を証明する書類を保管しておくことが大切です。
なお、特定受給資格者に該当する場合でも求職活動の実績がなければ失業手当(失業保険)はもらえません。dodaの求人応募やセミナー参加、dodaエージェントサービスへの相談も求職活動の実績として認められます。転職をスムーズに進めるためにぜひdodaのサービスを活用してください。
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この記事を監修した社会保険労務士

北 光太郎(きた・こうたろう)氏
きた社労士事務所 代表 大学卒業後、エンジニアとして携帯アプリケーション開発に従事。その後、社会保険労務士資格を取得し、不動産業界や大手飲料メーカーなどで労務を担当。労務部門のリーダーとしてチームマネジメントやシステム導入、業務改善などさまざまな取り組みを行う。2021年に社会保険労務士として独立。労務コンサルのほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。読者に分かりやすく信頼できる情報を伝えるとともに、Webメディアの専門性と信頼性向上を支援している。
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