ADHDで障害者手帳は取得できる?交付条件と選択基準を解説

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ADHDがあり、障害者手帳を取得するかどうか迷っていませんか。そもそも「ADHDが障害者手帳の対象になるのか」や「どの手帳が取得できるのかが分からない」という方もいるかもしれません。

この記事では、ADHDによる障害者手帳の取得の可否と、交付条件を解説します。メリットや当事者の体験談なども経済しているので、取得するかどうか考えるヒントとしてぜひお役立てください。

ADHDは障害者手帳の交付対象

ADHD(注意欠如多動症)のある方は、障害者手帳が取得できる可能性があります。全3種類ある障害者手帳のうち、ADHDのような発達障害が対象となるのは「精神障害保健福祉手帳」です。知的障害を伴う場合は「療育手帳」を同時に取得できます。

ただし、ADHDがあるからといって、必ずしも障害者手帳を取得しなければならないというわけではありません。また、障害者手帳の取得は義務ではなく、あくまでも交付対象となる方が持つ権利であり、ADHDのある方の困りごとを減らす選択肢の一つです。

個々の現状を踏まえ、取得の必要性を考えてみてください。

ADHDのある方が障害者手帳を取得するための条件

次に、障害者手帳の交付要件と、取得できないケースについて見ていきましょう。

障害者手帳の交付要件

ADHDのある方は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象ですが、障害があれば無条件に取得できるわけではありません。精神障害者保健福祉手帳には1〜3級があり、いずれかの等級に該当する方が自分で申請し、交付決定を受けた場合に取得できる仕組みです。

なお、手帳の等級は「精神疾患(機能障害)」と「能力障害(活動制限)」の2つの状態を総合的に見て決まります。ADHDがある方のケースに当てはめると、主に次の3つの要件に該当する方が取得できる可能性があります。

  • 医師からADHDの確定診断を受けている
  • 初診日から6ヶ月以上経過している
  • 日常生活や仕事で特性に起因する困りごとやトラブルが続いている

精神障害者保健福祉手帳の等級の判定基準は、療育手帳のようにIQといった明確な数値ではなく、特性による「困りごとの程度」です。なお、困りごとの具体例として「自分で金銭・時間・予定の管理ができない」「特性による物忘れや忘れ物、思い違いなどで円滑な社会生活に支障をきたしている」「仕事が長続きせず退職・転職を繰り返している」「心身に不調や二次障害が生じている」などが挙げられます。こうした困りごとが長期的に続き、自分の努力だけでは解決できないことが判定のポイントです。

一般的に、困りごとにより生じる支障・制限の度合いが大きく、支援がなければ生活できないほどの症状であれば1級、適切な日常生活には支援が不可欠な場合は2級、ある程度自分でできるものの、より良い生活には支援を要する場合には3級に分類されます。

障害者手帳がもらえないケース

ADHDの傾向があっても医師の確定診断を受けていない、いわゆる「グレーゾーン」に該当する方や、初診から間もない方は、原則として障害者手帳は取得できません。また、特性による困りごとが特にない、もしくはその程度が3級に相当しないと判断されたときも、障害者手帳の交付対象外です。

ただし、ADHDに起因する二次障害を発症している場合は、その診断名に基づき、障害者手帳の交付対象になることがあります。

ADHDのある方が障害者手帳を取得する3つのメリット

障害者手帳のイメージ

障害者手帳を取得すれば、生活面や経済面、就労面でさまざまなサポートが得られるようになります。ここでは、ADHDがある方の視点から、障害者手帳を取得するメリットを紹介します。

誤解されがちな障害特性を理解してもらいやすくなる

ADHDのある方は、外見だけでは障害があると分かりづらい傾向にあり、日常生活や社会生活で周囲から誤解を受けることも少なくありません。例えば、不注意による忘れ物や物忘れ、誤字・脱字といったケアレスミス、マルチタスク・時間管理が苦手などの特性は、周囲から「努力不足」「怠慢」だと誤解されることがあります。また、特性に起因する早口や、話の途中での割り込み、興味・関心や集中力の偏りは、周囲の理解がないと「変わった人」だという誤解を受けがちです。

障害者手帳があれば、ADHDの特性を説明する前提となる、障害開示の流れがスムーズになります。特性は「ADHDに起因するもの」であり、本人の努力だけではカバーすることが難しいということの公的証明になるでしょう。

また、合理的配慮を求めることが、単なるお願いや特別待遇の要求ではなく、円滑な業務遂行に不可欠で、正当な権利であると示す根拠となり、周囲の理解を促す効果も期待できます。

障害福祉サービスがよりスムーズに受けられるようになる

障害者手帳を取得することで、障害福祉の輪に入りやすくなります。

現在、障害のある方が受けられる障害福祉サービスはたくさんありますが、それを活用するには、まず当事者が支援情報につながれるかどうかが重要だと言えます。当事者がその情報を知らないことには、支援につなげるのは困難です。また、制度自体は知っていても、自分が対象になるかどうか分からなかったり、相談しづらかったりして、支援が受けられないこともあります。

障害者手帳があれば、各支援窓口からの情報提供がスムーズになり、支援の輪につながるタイミングが早まります。また、各種税金の控除・減免、公共料金・公共交通機関の割引など、障害者手帳を取得している方のみが受けられるサービスもあり、経済的な負担の軽減に役立つでしょう。

困ったときの相談窓口になるのはもちろん、そもそも困りごとが生じにくい状態・環境が整いやすくなります。

自分らしくはたらく選択肢が生まれる

ADHDのある方が、現在の仕事や職場で困りごとを抱え、今より自分らしくはたらきたいと考えているときは、障害者手帳の取得が有力な選択肢となります。転職・就職活動をする際、障害者手帳を取得していれば、一般枠に加え「障害者雇用枠」に応募できるようになるからです。

障害者雇用枠とは、障害者手帳を取得している方を対象とする求人枠を指します。障害があることを前提として採用され、業務内容や業務量、配置などが調整されるため、就労上の身体的・精神的なストレスが減り、より良くはたらきやすくなるでしょう。一般枠での就労によくある、周囲からの誤解に対する不安や合理的配慮の伝えづらさ、ミスや困ったときの相談のしにくさが軽減し、はたらきやすさと自信喪失の防止に直結します。

業務での困りごとを解消し、特性や体調に合わせてはたらける仕事なら、心身の健康維持と、長期的な安定就労が実現しやすくなるはずです。

障害者手帳の取得がADHDのある方のより良い仕事・働き方への転機となった事例

以下では、ADHDがあり、障害者手帳を取得してより良い仕事や働き方を見つけた方の体験談を紹介します。

大人のADHDで障害者手帳を取得。正社員登用とキャリアアップを実現

これまでの退職・転職の繰り返しは、大人のADHDに原因があったと分かったWさん。障害者手帳を取得し、就労移行支援事業所への通所を経て、障害者雇用の仕事への転職活動を始めたそうです。

その後、契約社員からスタートして正社員になったあと、さらなるキャリアアップを目指して転職を決意しました。現在は、希望の人事採用職のフルタイムの仕事に就き、手厚い配慮のある職場で、充実した毎日を送っています。

特性に合った仕事探しを決意。サポートを得て適材適所の仕事を発見

Hさんは、18歳のときにADHDと診断されました。高専中退、短期での退職・転職を経験した後、一般枠から障害者雇用への転換を決意。

dodaチャレンジのキャリアアドバイザーのサポートを得ながら転職活動を進めた結果、建設会社の安全管理職として就職しました。現在は、やりがいと周囲の理解のある環境で、のびのびとはたらけるようになったそうです。

障害者手帳はADHDのある方の暮らしや仕事を良くするサポートツール

キャリアアドバイザーのイメージ

ADHDのある方は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象です。ただし、取得は義務ではなく、あくまでも任意です。障害者手帳を取得することで、生活面や経済面の支援につながりやすくなるほか、障害者雇用枠の仕事に応募できるようになるといったメリットが得られます。現在の困りごとの有無や程度を踏まえ、障害者手帳が生きづらさを解消する手段になりそうだと感じるときは、取得を検討するとよいでしょう。

障害者手帳の取得後、障害者雇用枠の仕事に就きたいと考えているなら、障害がある方のための転職・就職支援サービス「dodaチャレンジ」にぜひご相談ください。ADHDの特性に理解の深いキャリアアドバイザーが専任となり、希望に合う求人の紹介や応募書類の作成支援、面接対策など、転職・就職活動を二人三脚でサポートします。

公開日:2026/4/2

監修者:戸田 幸裕(とだ ゆきひろ)
パーソルダイバース株式会社 人材ソリューション本部 事業戦略部 ゼネラルマネジャー
上智大学総合人間科学部社会学科卒業後、損害保険会社にて法人営業、官公庁向け営業に従事。2012年、インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ入社し、障害者専門のキャリアアドバイザーとして求職者の転職・就職支援に携わったのち、パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)へ。2017年より法人営業部門のマネジャーとして約500社の採用支援に従事。その後インサイドセールス、障害のある新卒学生向けの就職支援の責任者を経て、2024年より現職。
【保有資格】
  • ■国家資格キャリアコンサルタント
  • ■障害者職業生活相談員
  • dodaチャレンジで、専任のキャリア
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