求職者の代弁者となり、就職後まで見すえて伴走!〜障害者専任キャリアアドバイザーの白熱クロストーク〜
就職の要望や障害状況のヒアリング、履歴書の書き方や面接のアドバイスなど、就職した先まで見すえてサポートする障害者専任のキャリアアドバイザーたち。求職者一人ひとりにどのように寄り添い、支援してきたのでしょう。経歴の異なる3人に、それぞれの思いを本音で語ってもらいました。
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木田 正輝MASAKI KIDAキャリア支援事業部
ゼネラルマネジャー新卒で2008年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。2013年にパーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)に。キャリアアドバイザーとして精神障害の方の支援に携わり2020年から現職。プライベートでは子育て奮闘中の二児の父。土日は2人の息子たちのサッカーの練習に付き添うことが一番の楽しみ。
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菊地 政也MASAYA KIKUCHIキャリア支援事業部 首都圏CA
マネジャー百貨店のバイヤーを経験後、2008年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。2013年にパーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)に異動。精神障害の方と身体障害の方の支援を兼任。活動停止をしていたバンド活動を最近オンラインから再開。休日は娘のお稽古事の送迎や夜の復習をともにする事でパワーをチャージ。
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元井 洋子YOKO MOTOIキャリア支援事業部 首都圏CA
グループリーダー飲食業界での店舗開発を経験後、インテリジェンス(現パーソルキャリア)の派遣事業部に転職。結婚・出産を経て、2017年パーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)で身体障害の方のご支援を担当。娘と楽しめる展覧会に行ったり、未開拓の公園巡りをすることが最近のお気に入りの休日の過ごし方。
新しくチャレンジできる環境を届ける。人生を変えるような「介在価値」がある仕事
―障害者の採用支援に携わるきっかけは?
菊地:2012年に、母が障害者1級に認定され、はたらいていた会社を解雇されました。そのことに私自身が納得できなくて、これまで人材派遣で培ったスキルや知見を障害者雇用の領域で活かしたいと思ったのがきっかけです。
木田:私は新卒で2006年にインテリジェンス株式会社(現:パーソルキャリア株式会社)に入社し、憧れていたキャリアアドバイザーになれたのですが、うつ病を患って3ヶ月休職しました。復職後は後方支援の部署で1年半もの間は治療をしながら仕事を続けていましたが、自分が好きなこの会社で、どうにか自分のこの体験を活かせないかと考えていたんです。ちょうどその頃、障害者採用支援のパーソルチャレンジ(現パーソルダイバース)が新設されたのを知り、ここなら自分の体験を活かしてはたらき続けられると思い、完治した後に異動の希望を出しました。
元井:私は、お二人とは少し違う視点かもしれません。子どもが小さかったので前職では「時短」ではたらいていたのですが、いろいろ「制限」があることで、仕事に打ち込めない歯がゆさを感じていました。そんな時に、現職のキャリアアドバイザーの募集を知って。障害がある方もある種の「制限」がある中ではたらいているという部分に共感し、入社を決めました。
―キャリアアドバイザーの仕事のやりがいとは?
菊地:特に精神障害のある方は、罹患前のように「100%の力を出せない」ことを受け入れて転職活動をしなければなりません。一方で、一般採用枠ではキャリアがないと難しい異業種の転職も、障害者採用の場合はポータブルスキルを活かしてチャレンジできる。罹患前の自分から離れて、新しい環境で活躍できる後押しができることが、まさにこの仕事の魅力だと思います。
元井:確かに、新しいチャレンジへと繋ぐのが、キャリアアドバイザーの役目の一つ。同じ障害や等級でも、配慮事項は一人ひとり違います。例えば、書面で事実を伝えるだけだと障害の状況やその方の良いところが見えず、採用に至らないケースも。そうならないために求職者様と向き合い、ヒアリングした情報を本人の代弁者となり、思いも含めて法人営業担当に伝えるように心がけています。すごく「介在価値」のある仕事だと実感しているところです。
木田:私は、ご支援させていただいた方々から、その後「素敵な未来が待っていた!」という話を聞くときが、一番やりがいを感じる瞬間です。最近では、数年前に支援をした発達障害の方から「正社員に昇格しました」と連絡がありました。「dodaチャレンジに出会って人生が変わった」と言っていただいて、嬉しかったですね。
求職者様の障害の特性を把握して、一人ひとりに合った仕事を創り出す
―今までの採用支援で心に残っているエピソードは?
元井:計算が苦手という理由で、適性検査がある企業を避けていた方のケースですね。私から適性検査のあるところも受けるようにアドバイスし、結果的に採用が決まったのですが、最後にいただいたメールに「あのとき、『適性検査があるところにチャレンジしないのですか』と何度も言われて少し堪えました」と(苦笑)。でも、「苦手だからと適性検査を避けていた自分の考えが恥ずかしくなりました」と続けられていて、ほっとしました。思いが先走り、強く言ってしまったのですが、結果的に真意が伝わって良かったです。
菊地:真剣に向き合っているからこそ、熱くなってしまうんですよね。私の場合は、数年前になりますが、ADHDの方の転職を支援した時のことが忘れられません。当時、精神障害への理解はまだ始まったばかりの頃でしたが、選考が進んでいた大手企業の人事の方は精神障害への理解があり、1次面接は通過しました。でも、最終面接では「デスクワークは難しいだろう」と不採用になったのです。その結果に納得がいかず、同じ部署の木田に相談したところ「すぐ交渉に行こう」と。それで法人営業担当と3人で、その企業様に選考結果を再考いただけないか、掛け合いに行ったのです。
木田:私もよく覚えていますよ!最終面接までこぎ着けたのにダメだったというのが悔しくて。
菊地:ええ。その求職者様の特性を見すえた上で、「ポジションを創出すべき」と役員の方や人事担当者を説得し、最終的にADHDの特性である多動性が活きる仕事を見つけてくださいました。その方は入社後に能力を高く評価されて、現在は正社員として活躍されています。こういうケースは一般採用枠のご支援では経験できなかったことですね。
木田:私たちは求職者様の障害を把握していて、「可能なお仕事」のイメージが明確にあるので、そのストーリーをお伝えしたいという一心でした。
「なりたい自分」を思い描いたときから、その物語は始まっている
―これから登録される求職者様に伝えたいことは?
元井:まず「ご自身のことを知る」ことが大切ですね。先ほど、菊池から「精神障害を発症する前と後では違う」という話がありましたが身体障害の方も同じです。「前はできたけど、今はできない」ことを理解して受け入れて、その上で「何ができるのか」を一緒に考える。そこから、ようやく転職活動がスタートします。
菊地:ご自身を知り、理解した上で、前に進んでいただきたいですね。障害者採用には「定型業務」に就くイメージがあるかもしれませんが、一人ひとりのキャリア形成の歩みを止めないでほしいと思っています。今まではcan(できること)を提供できれば良かったのですが、これからはwill(やりたいこと)を追求していく時代です。私たちが何をやりたいのかお伺いし、能力を見極めて最適な仕事のポジションを見つけていきます。さまざまな障害のある方が希望を掴む伴走者なりたいですね。
木田:私は「人は、なりたい自分に向かって、必ず成長できる」とお伝えしたいです。私の実体験ですが、「いつかこうなりたい」と思い描いたときから、「なりたい自分になる物語」はもう始まっています。私たちの支援は、求職者様が「自分でなんとかしたい、希望をかなえたい」という思いからスタートします。ご自身がやりたいことを言葉にしていただいて、その思いをカウンセリングの場で、私たちに聞かせてください。今日、ここで会えたことを大事にして、私たちと一緒に未来を考えていきましょう。
障害者雇用に取り組む企業やともにはたらく方へ
元井:採用にあたっては、当事者意識を持つことが大切だと感じます。ご自身の家族やパートナーに対しても、同じお見送り理由を言うことができるのか。視点を変えるだけで見えてくるものが違ってきます。ぜひ「当事者意識」を持って採用にあたってください。
木田:障害者雇用の理念は「ともに生きる」です。その人の能力を最大限に引き出して、活躍できる環境を整えることは意義のある取り組みです。障害のある方がやりがいを持ってはたらける会社を目指すことは、多様性を実現できる会社づくりに繋がっていきます。
菊地:昨今、耳にするwell- being(健康で安心なこと)は障害者雇用でも重要なキーワードです。制度をいきなり変えるのは難しいですが、コミュニケーションの方法なら変えられます。話しやすく、誰もが尊重される環境整備など、着手できるところから取り組んでほしいです。