dodaキャリアアドバイザーの井上智恵です。
製薬業界では新薬の臨床開発をする上で、最も時間やコストのかかる臨床試験(治験)の効率化が求められています。そこで今注目されているのがリスクベースドモリタリング(以下RBM)というアプローチ方法です。
■リスクベースドモニタリング(RBM)とは 元々は欧米の製薬会社で推進されている考え方で、最近では日本国内の製薬業界でも導入を進めている企業が増え始めています。治験のモニタリングは、治験を実施する際に遵守すべき規準であるGCP省令に則って進められるので、GCP省令を逸脱するとそのデータは信頼性が欠けると判断され、治験全体の品質にも関わる問題になってしまいます。そのためモニタリングに求められるのは、治験から得られるデータの信頼性を確保することです。一方、新薬の開発には膨大なコストがかかり、そのコストを抑えるため、モニタリングの効率化は必須事項となっています。そこで、治験データの信頼性の確保とモニタリングの効率化という2つの課題を満たすべく、RBMの導入を検討する企業が増えているのです。
モニタリングでは、モニターが定期的に担当する医療施設を訪問し、治験がGCP省令に沿って適切に実施されているかをチェックしたり、治験を担当する医師とコミュニケーションを図ったりしています。RBMでは、治験でリスクが発生する可能性の高い施設に対して、モニターの訪問回数を重点的に増やすなどの働きかけをおこないます。一方で、これまでの実績からリスクが低いと見なされる施設への訪問回数は減らしていくのです。
また技術営業やアプリケーションエンジニアの職種も挙げられます。博士号取得者やポストドクターが研究で使っていた医療機器や理化学機器の知識を活かして転職に成功する事例も増えてきました。機器に精通しており、そうした知識や経験が非常に役立つと企業から高い評価を受けています。
不要な訪問回数を減らし、その分をより注視が必要な施設への訪問に充てることで、必要なデータを確実に回収し、なおかつ業務を効率化し、かかるコストも抑えることができるという考え方です。
■RBMの導入がモニターに及ぼす影響今後、国内の製薬会社でRBMを導入する企業は増加すると予想されます。その結果、モニターの業務が効率化されるため、必要なモニター数も減少するという可能性が考えられます。今後、モニターもスキルアップをしていかなければ、淘汰されるという時代が来るかもしれません。
スキルアップを考える際に、まずは将来的に新薬の開発が増えていくと考えられる抗がん剤などの分野で経験を積まれておくとよいでしょう。あるいは、グローバルスタディといった世界各国で共同しておこなう治験に参加しておくことも、今後需要が高まるのではかと思われます。
また、治験をおこなっている施設との交渉力や、多様な人を巻き込みながら治験を円滑に推進し、信頼構築をしていくためのコミュニケーションスキルもさらに必要とされるでしょう。発想の転換も、今後は求められる要素になるかもしれません。決められたデータを適切に回収するというのが従来の考え方でしたが、RBMのアプローチでは、治験実施計画書の設計から変えていこうという発想が求められることが想定されます。 RBMの国内での導入はまだ手探り状態ではあるものの、こうした動きが進んでいることを見据えながら、ご自身のスキルアップを図られることも大切ではないでしょうか。
井上 智恵