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Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜

Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜 Age28 〜28歳から、今の私につながるキャリア〜
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掲載日:2016年10月10日
更新日:2020年8月24日

「同じ女性」「同じ28歳」でも一人ひとりはみんな違う
他人と比べて苦しむのではなく、違いを楽しみ面白がる発想を

「草食男子」という言葉を生み出したコラムニストの深澤真紀さん。編集者としてキャリアを積み、31歳で独立して以降は、執筆や講演、テレビ・ラジオのコメンテーターなど多方面で活躍しています。華々しい経歴の一方で、実は人づきあいが苦手で、20代での2回の転職も人間関係が要因だったとか。「こうなりたい」ではなく、「これはしたくない」「できない」という、一見後ろ向きの選択を重ねた末に見えてきた、深澤さん流“人生の面白がり方”を語っていただきました。<

コラムニスト/淑徳大学人文学部客員教授/企画会社タクト・プランニング代表取締役社長深澤 真紀さん

1967年東京生まれ。早稲田大学在学中に女子学生のためのミニコミ誌『私たちの就職手帖』副編集長を務める。卒業後、複数の出版社で編集者として経験を積み、98年に企画会社タクト・プランニングを設立、代表取締役社長に就任。2009年「草食男子」で流行語大賞トップテンを受賞。14年より淑徳大学人文学部客員教授に就任。情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)に水曜コメンテーターとして出演中。主な著書に『草食男子世代―平成男子図鑑』(光文社知恵の森文庫)、『女はオキテでできている―平成女図鑑』(春秋社)、『働くオンナの処世術―輝かない、がんばらない、話を聞かない』(日経BP社)、『女オンチ。 女なのに女の掟がわからない』 (祥伝社黄金文庫)などがある。

~28歳の時~ 化粧はしない、制服は着ない、しっかり休みたい
後ろ向きの条件で選んだ単行本編集者の仕事

「細く、長く働きたい」。体も丈夫ではなく、家族との仲もあまり良くなかったこともあり、10代のころからそれが私の望みでした。高校生の時、早稲田大学の女子学生によるミニコミ誌『私たちの就職手帖』を読む機会があり、そこに出てくる「働く女性」に興味を持ちました。当時はまだ男女雇用機会均等法ができる前で、私が思いつく女性の職業の選択肢といえば教師くらい。私もこのミニコミ誌を作る側になれば、教師以外にも、細く長く働く方法が分かるかもしれない。そう思って早稲田大学に進学しました。

希望通り『私たちの就職手帖』の編集に携わり、たくさんの働く女性を取材しました。その中で感じたのは、仕事に真剣に向き合い過ぎるのも考えものだな、ということ。取材した時にはすごく張り切って仕事をしていた女性が、翌年には辞めていた…ということも何度かありました。頑張る人ほど環境に過剰適応しようとし、自分を追い込んでしまう。私は細く長く働きたいのだから、きつい仕事は嫌だし、休みはちゃんと取りたい。それに、化粧は絶対にしたくないし、制服も着たくない。そんな後ろ向きの条件が増えていきました。就職先に選んだ中堅の出版社は、取材を通して面識ができた社会学者の上野千鶴子さんに紹介していただきました。

私が入ったその出版社は社会科学系の単行本を専門にしていて、バブル真っただ中の時代に、その恩恵とは無縁のお堅い会社でした。私の目標はあくまでも細く長く働くことなので、社内で評価を高めようだとか、成長しようという意識はまったくなく、最低限の仕事をするぐうたら社員。その一方で、仕事に関連する技術を勉強することは面白くて、会社が終わった後に自費で学校に通い、校正やレイアウト、写真撮影の基本などを学びました。すべては、編集者として細く長く食いつなでいくため。バブルでしたから、異業種交流会といった人脈づくりがはやり出していましたが、そういうことは苦手で疲れてしまいそうだったので、この先も無駄にならない技術を身に付けたほうが良いだろうと思ったのです。

2度の転職を経て「長く働けそう」と実感

入社4年目の途中に、誘いを受けて別の出版社に転職しました。ところが、1社目の堅い雰囲気から一転して、2社目の緩い社風がまったく肌に合わず、1年でクビに。次は、IT系企業の出版部門に転職しました。それが28歳のころです。その部門は、会社にとっては文化事業のような位置付けで、売上目標もなく、職場はいたって牧歌的。学生時代から好きだったパソコンの知識も活かせて、3社目にして初めて、ここなら長く働けそうだという実感がありました。その年は阪神大震災や地下鉄サリン事件のあった1995年で、世の中も自分自身も、この先どうなるのかまったく分かりませんでしたが、悩みや不安はあまりなかったですね。確かに明るい希望が持てる時代ではなかったですが、私だけが大変ではなくて、みんなが大変でしたから、何とかしのいでいけばいいや、と思っていました。

先のことは分からないから備えよう、ではなく、なるようにしかならない、という考え方。「だから28歳当時は収入が少なかったこともあって貯金はできず、やりくりして旅行をしたり、パソコンを買ったりしていました。将来を見据えて…という建設的な考え方には、世の中がどうなるか分からないと思っているので、あまり意味を見いだせない性分で、それは今も同じです」

~28歳から今~ 本来とは違う意味で広まった「草食男子」
誤解を解きたい一心で人前に出るように

30代半ばまで、とにかく人間関係での失敗が多く、しかも原因は自分にあるという自覚がありました。分かっているのに余計なことをして相手を怒らせてしまう。「そこを触ると壊れるよ」と聞くと、いけないと思いながらも触らずにはいられない性分なのです。1社目も2社目も、退職の理由は職場の人との折り合いが悪かったこと。要は「逃げた」わけですが、時には逃げることも必要だと私は思っています。克服しようとしても、どうしてもうまくいかないことはあるからです。

31歳で独立し、その後、「草食男子」を名付けて流行語になりましたが、実はこれも私の失敗の一つです。というのも、本来意図していたのとは違う意味で広まってしまったからです。「草食男子」はもともと褒め言葉で、女性と対等な人間関係を築ける今どきの若い男性を好ましく思って命名したもの。それがいつしかマイナスの意味が独り歩きし、「今の若者は草食だから」と非難の口実に使われることが増えてしまいました。言葉を生み出した当事者としては、「違うんです」と地道に誤解を解いていくしかない。そう考えて、テレビ出演や講演など、表に出る仕事をするようになったというのが実情です。

人前で話をする際に一つ心に決めていることは、なるべく私自身の主観は交えないこと。「これは許せない」などと何かを断罪するようなことは言いたくないし、「同じ女としてこう思う」と女性をひとくくりにすることも絶対に避けたい。それよりは「こんなデータもあります」「こういう見方もできます」と、違う視点を提供できるようなコメントを意識しています。よく、「オリジナルな言葉を持て」と言う人がいますが、完全にオリジナルな言葉なんて、まずありえないのです。そんなことをしなくても、時代や地域を越えて、過去のさまざまな事例や人の言葉にあたってみれば、今の状況に適した言葉が必ずどこかに存在しています。つまり言い換えれば、たいていの人生は、すでに誰かが経験しているということ。だから、探せば対処法も見つかります。それを適切に引用して伝えることが、私の役目だと考えています。

大学で客員教授をしているのは、若い世代に直接伝えるための場がほしかったから。「学生たちに『こうした方がいいよ』とは言いません。私が『こうした方がいい』と思ってやってきたことは、良い結果を生まなかったのです。むしろ、「自分の言うことを聞け」という上の世代の言うことになど、耳を貸すなと伝えています」

~28歳の働く女性へのメッセージ~ 「素敵な私」を無理に装わなくていい
本当に自分に合うスタイルなのかを判断して

女性誌を開けば「素敵な私」や「輝いている私」があふれています。早起きをして、ヨガをして、体にいいものを食べて、女子会を楽しんで…。そういう生活スタイルを心地いいと感じる人も、もちろんいるでしょう。でも多くの人は、はやっているから、あるいは、そのほうが素敵だからという理由だけで、「自分もそうならなければ」と思い込みがちです。でも、合っていないスタイルに自分を押し込もうとしても、苦しくなるだけ。無理に合わせる必要なんてないのです。

雑誌に出てくる「何もかも完璧で素敵な女性」というのは、見て楽しむ対象であって、目指すものではないと、私は思っています。何かに秀でた人が、自分の代わりにその分野で活躍してくれるのが社会です。その事実を否定するのではなく、面白がればいいのです。そして、不思議なもので、思いもよらないような部分で、どこかの誰かが自分を必要としてくれたりもする。オンリーワンである必要はなくて、世の中に足りていないコンテンツの1つを自分が分担する、くらいの気持ちでちょうどいいのだと思います。

他人と自分とを比較しない

私の場合は「したくないこと」「できないこと」が自分の中に明確にあって、それを避け続けてきたことが、結果として自分のスタイルになっていました。今でもテレビに出る時以外はいっさい化粧をしませんし、「こうありたい自分」というものもないので、楽に過ごせればいいと思っています。もし今、何かに苦しいと感じている人がいたとしたら、まずは他人と自分とを比較するのをやめてみることが必要かもしれません。28歳とひと口に言っても、一人ひとりは皆違っていて当たり前。「同じ28歳なのに自分は…」などと考えるのは意味のないことです。それよりも「同じ28歳でこんな人もいるんだ」と楽しんだほうが、人生はずっと自由で、面白い。自分自身のことも含めて、いろいろなものを客観的に面白がる視点は大切だと思います。

「何か嫌なことがあったら、とりあえずお風呂に入って、さっさと寝てしまう。この『ふて寝、ふて風呂』を私は提唱しています。やけ食い、やけ酒と違って、お金もかからないし健康的。女性にはいいこと尽くめです」

今、28歳の自分にアドバイスをするとしたら?

年をとるというのは面白いもので、28歳の時なら1年間くよくよしていたような失敗や後悔も、今なら1週間も引きずりません。だから今、28歳に戻れと言われたら、断固として断りますね。もしあのころの自分にアドバイスするなら「あなたが正しいと思い込んでいることは、実はつまらないことなんだよ」ということ。当時は、自分のつまらないポリシーのために周りに怒りの矛先を向けたり、やたらと人とぶつかったりしたりしていたけれど、「自分の道」も「自分の正しさ」もしょせんは独りよがりのもの。今ならそれが分かります。

編集後記

鋭く軽妙なコラムの筆致そのままに、歯に衣着せぬ深澤さんの語り口は痛快で、終始笑いが絶えない取材でした。人生に起こるどんな試練や困難も、「たいていは誰かがすでに経験していて、探せば対処法は必ず見つかる」という言葉に勇気付けられます。自分自身を飾らず、短所も含めて客観的に「面白がる」視点が印象的でした。

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