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2000年パーソルキャリアに入社。首都圏、関西、東海の主要エリアでエージェント型の人材サービスビジネスに携わってきた。転職希望者、求人企業、双方のサポートを通じて転職マーケットに精通している。2014年1月より現職。
2000年パーソルキャリアに入社。首都圏、関西、東海の主要エリアでエージェント型の人材サービスビジネスに携わってきた。転職希望者、求人企業、双方のサポートを通じて転職マーケットに精通している。2014年1月より現職。
いわゆるエグゼクティブと呼ばれる、ゼネラル・マネ−ジャー(部長クラス)以上の転職マーケットにある変化が訪れている。ポジションの流動化が活発になってきているというのだ。市況がめまぐるしく変化する昨今、企業における重要な経営判断が日常的に求められるようになっている。ゼネラル・マネジャー以上の役割はますます重要性を増し、社外から人材を招く企業が増えているというのだ。これがポジションの流動化だ。好景気も後押しし、この流れは加速する一方だという。「以前は、生え抜きの人材しか経営者になれないといった保守的な会社が多かった。しかしながら、その常識も今や過去のものになろうとしている。社外でも、別業界からでもいい。優秀な次世代経営者候補と会いたい、という経営者が増えているのです」。そう語るのは、パーソルキャリア エグゼクティブエージェント事業責任者の木村浩明氏だ。
ポジションの流動化が加速しています。この流れは、エグゼクティブキャリアにおいてどのような意味をもたらすのか。まず大きなところでは「大企業の部長の肩書きがあれば一生安泰」といった考え方が完全に過去のものになったということが挙げられます。悪いことではありません。ポジションの流動化が進む。転職マーケットがどんどんオープンになる。実力のある人にとって、それは大きなチャンスであるからです。実力のある人物が、会社の枠を超えて、オープンに評価される。よその経営者から「ぜひうちに来てほしい」と声がかかる。特に最近よく聞くのが「次世代経営者候補が欲しい」という企業側の意欲的なニーズです。景気がいい時期によく出る話ですが、現在は業種・企業規模を問わずさまざまな企業様から相談を受けています。たとえば「M&Aで会社を買いたいのだが、任せられる人材がいない。3年育てるから意志のある人材を採用したい」といった内容です。最近のエグゼティブ転職において「ゼネラル・マネジャークラス=次世代経営者」という図式が主流になりつつあるように思います。では経営者はどのような人を、次世代経営者にしたいと考えているのでしょうか。
まず、真っ先に挙がるのは「未来を描く力」でしょう。20代前半の若い時期は、一般的に先輩の指示という枠の中で成果を出すことを求められます。しかし、課長(マネジャー)以上になるとその景色はガラリと変わり、指示そのものを考える立場になる。そして、部長(ゼネラル・マネジャー)以上になると、その指示が事業成長に影響を及ぼす水準なのかが問われる立場になる。事業や部署をどう導くのかという「未来を描く力」が求められるのです。転職のサポートをしていてよく聞くのは「前職では部長として100人をまとめていました」という自己PRですが、重要なのは、部長という役職でも、部下の人数でもありません。事業創造や、事業にイノベーションを起こすことで、いかに未来を作り出してきたか、という力です。たとえば、転職先企業の3年後について質問してみると「未来を描く力」を持っている人とそうでない人の違いがわかります。「この企業がとるべき戦略はこうである」「この部分を強化すれば、このくらいシェアを取れる」といった具体的な戦略ベースの回答を返せるのがエグゼクティブです。しかしながら、実際この質問に明確に自信を持って答えられる人材は、エグゼクティブ転職市場でもまだわずかです。
能力とポジションは一致したが、転職そのものは失敗。そんなケースもあります。エグゼクティブクラスの転職でもっとも失敗が多いのが「OSとアプリケーションの問題」です。人は誰しもキャリアをスタートさせた場所で、仕事の基本を教えられています。具体的な知識や技術(スキル)というものは、その基礎教育の上にのっかっているわけです。それはパソコンにおけるOSとアプリケーションの関係に似ています。たとえばウィンドウズの環境で育った人が、マックの会社に入って、自分のアプリケーションをPRしても、なかなか評価されない。いくら優れたアプリケーションでも異なるOSの上では動かないのです。自分がどんな文化で育ったのか、どのような仕事観を持っているのか。スキルの前に、スキルの土台にあたる自分の考え方・スタンスについても、冷静に客観視して理解しておくことが重要だと言えるでしょう。その違いさえ理解できていれば、新しい環境にもアダプトしやすいはずです。特に、エグゼクティブ転職では、会社にイノベーションを起こすことを期待されて入るケースが多い。イノベーションを起こすためには、その会社の価値観や文化の理解が、組織を動かす上でも必ず必要となるでしょう。
もう一つ、「育った環境が後のキャリアに影響を及ぼす」ということを教えてくれるエピソードがあります。会社の中の人材を、本流と亜流という2つに分けたとします。本流は主力事業を任されるいわば会社のエリートで、亜流はそれ以外の周辺ビジネスを担当している人。最近、この亜流出身の人が別業界に転職して花開くという成功例がちらほら見られるのです。マイノリティならではの苦労を含めた経験が、その人をたくましく育て上げているのです。一方で、本流の第一線を走っていた人が風向きが変わった瞬間に急に失速するケースも見られます。社内においては、本流が上で亜流が下だと位置づけられがちですが、場所と状況によって、上下なんていつでもひっくり返る。大事なことは、本流か亜流かという問題ではありません。現状に甘んじずに、自分の実力を高める努力をし続けてきたのかどうかということ。場所を変えても、成功している人に共通するのは、たとえ社内でメジャーなポジションじゃなくても、メジャークオリティを追い求めて努力してきたということです。30歳の時点は大差で負けていたのに、40歳の時点で大逆転が起こっている。このような現象は今後さらに増えていくでしょう。
年間を通じて、さまざまな業界のエグゼクティブにお会いします。規模の大小を問わず、みなさん役職に就いている方がほとんどですが、時々驚いてしまうことがあります。それは、特に大企業に勤務されている方の中にいまだに社格にとらわれている人がいるということです。この先まだまだチャレンジできる年齢であるにも関わらず、目先の安定を優先して、ポジションを守ることにこだわっている。とてももったいないと思います。今は年代を問わず優秀な人材は、この先どんな経験を積んで、何を達成すれば、自分自身の価値をさらに高められるか、ということを真面目に考えています。大企業、ベンチャー、海外も含めて、広い社会で自分の価値を照らし、価値を高める努力をし続けるという、セルフブランディングの重要性を知っています。情報化とグローバル化の波で変わり続ける日本のキャリアシーンに、もはや安住の地はありません。役職を安泰と考えるような過去の常識に縛られているのなら、すぐさま捨てるべきだと思います。組織図や同期意識といった小さな概念に捉われず、自分を磨き続ける強さ、チャレンジ精神を持ち続けなければならない。日本のエグゼクティブは日本の財産です。彼ら・彼女らがさらなる自己研鑽に励むためには、どんなサポートが必要なのか。私たち自身も常に上を向き、進化し続けたいと思います。