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「社長への転職」という生き方 ~キャリアの価値を最大化する転職とは~

激しく変化し続けるビジネス環境の中で、ビジネスパーソン一人ひとりのキャリアの考え方も、ここ数年で大きく変わってきている。「新卒で入社した会社で着実に出世していく」というキャリア観は、もはや絶対的なものではなくなり、転職を通したキャリアアップは、スタンダードになりつつある。しかし、その一方で「自らのキャリアの価値を最大化するための転職」について、明確な指針が示されていないことも事実ではないだろうか。

そこで今回、転職を経てキャリアにおける一つの頂点である「社長」になったビジネスパーソン3人の転職実例やキャリアへの考え方を紹介することで、「成功するエグゼクティブ転職のキャリア観、仕事観」について迫っていきたい。三者三様のキャリアパスから浮き彫りになる、これからの時代の転職とは――。具体的なエピソードを交えつつ、検証しながら考えていきたい。

「転職社長」3人のキャリア

  • 株式会社アイレップ 代表取締役社長 紺野俊介氏

    プロフィール

    2002年、EDS ジャパン(現日本ヒューレット・パッカード)を経て、2003年に株式会社アイレップに入社。 黎明期よりSEM(検索エンジン・マーケティング)に従事し、リスティング広告運用の体系化、SEMにおけるSEO(検索エンジン最適化)手法を確立。2009年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。主な著書に「検索連動型広告を成功に導くSEM戦略」(インプレスジャパン刊)、「SMO(ソーシャルメディア最適化)実践テクニック」(ソフトバンククリエイティブ刊)、「スマートフォン チャンス!」(インプレスジャパン刊)等。

    CAREER PATH

    EDSジャパン(現ヒューレット・パッカード)に新卒入社

    株式会社アイレップへ転職

    入社5年半後に社長就任

  • ナショナル・コンピュータ・システムズ・ジャパン株式会社 代表取締役 松林知史氏

    プロフィール

    1986年、シティバンク、N.A.東京支店入行後、アジア・パシフィック統括部、1990年よりニューヨーク本店においてヴァイスプレジデント、マーケティングディレクター、子会社役員を経て、2000年帰国、Crossmar/電子取引部門アジア・パシフィック統括責任者を歴任。その後、2004年、プロメトリック株式会社において代表取締役最高経営責任者に就任。2009年には、ピアソンPLCの現地法人ナショナル・コンピュータ・システムズ・ジャパン株式会社の代表取締役最高経営責任者に就任し、現在に至る。

    CAREER PATH

    シティバンクに新卒入社

    プロメトリック株式会社へ代表取締役として転職

    ナショナル・コンピュータ・システムズ・ジャパン株式会社へ代表取締役として転職

  • 株式会社セルム 代表取締役社長 加島禎二氏

    プロフィール

    1990年、株式会社リクルート映像入社。営業、コンサルティング、研修企画、研修講師を経験した後、1998年に株式会社セルム入社。2002年、取締役企画本部長に就任し、現在の900名のコンサルタントとのネットワークの礎をつくる。2007年、常務取締役関西支社長に就任。その後、2010年代表取締役社長に就任し、リーマンショック後に停滞した業績のV字回復を達成した。

    CAREER PATH

    株式会社リクルート映像に新卒入社

    株式会社セルムへ転職

    入社12年後に社長就任

転職社長から学ぶキャリア論(1) 「ブレない志があれば、成功は後からついてくる」

言わずもがなかもしれないが、転職成功において待遇やポジション以上に重要な軸がある。それが「何をすべきか」「何を成し遂げたいか」という「志」だ。激流のように変化する時代。長く続いていくキャリアにおいて、さまざまな逆境が訪れるだろう。そんな中でも折れずに逆境に立ち向かい、前進し続けるためには、志という軸は必要不可欠と言える。そんな大きな志を持ってキャリアを歩んできた好例が、アイレップ代表の紺野氏だ。

紺野氏

「正しいことをやりたい。世の中の役に立つ、誇れる仕事をやりたい。そんな思いが昔からありました。だから当時、画期的だったリスティング広告の広告代理店のアイレップに、大きな将来性を感じました。マス広告に莫大な販促費を割いていた時代から、ターゲットにピンポイントでリーチできるインターネット広告の時代へ。こんなにも世の中の役に立つものはほかにはないと確信したのです。
良いこと、役に立つことを追求すれば、自然とビジネスは大きくなる。ただひたすらお客さまに、世の中に、役に立つことは何なのかを考え、実行してきた結果、私は今、社長になっています。やりたいことを最大限に実現していくためには今後、経団連の会長や内閣総理大臣になるしかないとしたら、きっと本気で目指すと思いますよ」

松林氏

ナショナル・コンピュータ・システムズ・ジャパン(ピアソンVUE)代表の松林氏も同様にこんなことを語っている。

「学生のころは人工衛星を打ち上げてみたいと思っていたんです(笑)。それで、グローバル企業で働くことが、その近道になるのではと考えたのです。一見、夢みたいな目標だとしても、本気で目指すことが私にとっての原動力。だから、他人に『失敗するぞ。やめとけ』と言われるほどにそのリスクを管理して革新を起こすことに燃えるのです。今はピアソンというファイナンシャルタイムスやペンギンブックスなどを持つ世界最大の教育サービス会社において、世界で活躍するプロフェッショナルが必要とする資格や免許、そして、真に実践的な『話せる英語、使える英語』の資格テストを作っていきたいと思っています。この分野で、業界に、世界に、イノベーションを起こそうと考えています」


紺野氏と松林氏のように、自身のキャリアの積み上げや自己実現にとどまらず、「どんな社会を実現したいか」「どんな世の中をつくっていきたいか」というレベルにまで達した大きな志。それこそが、エグゼクティブのキャリア形成の軸と言えるだろう。

転職社長から学ぶキャリア論(2) 「ゼロベース思考で、新しい世界に飛び込む」

エグゼクティブがその志を成し遂げるために、次に考えることが「舞台選び」だろう。どんな業界、どんな企業を活躍の場として選択するか。転職社長たちの答えは、「ゼロベース思考」だ。これまでの業界や経験を一度、思い切ってリセットして、ゼロからスタートすることがその後の飛躍を生み出すというのだ。セルム代表の加島氏は、まさにそんなキャリアを歩んだ一人だ。

加島氏

「リクルートのグループ企業から、ベンチャー企業に転職して痛感したのは、いかに今まで会社の看板で仕事をしてきたかということでした。でも、30歳というタイミングでゼロからのスタートをできたからこそ、経営とは?事業とは?仕事とは?という根源的な問いと、一から徹底的に向き合うことができました。それは現在、経営者としての自分の大きな財産になっています。『良いキャリアとは?』の答えは、キャリアアップという考え方ではなく、まったく異なる環境に飛び込むことで見つかるのかもしれません」

紺野氏

アイレップ代表、紺野氏はインターネットに無限の可能性を感じ、その業界に飛び込んだが根底にあったのは、やはり志を軸としたゼロベース思考だった。

「『ここから世界が変わりそうだ』と直感したら、思い切ってそこに身を投じるべきです。私自身、広告業界の経験がゼロだったにもかかわらず、一から勉強するつもりでテレアポ営業としてインターネット広告代理店に入りました。『インターネットは、これから産業を大きく変えていく。自分がやりたいと思っていた、世の中に大きく貢献できるサービスを生み出せる』と思ったからです。
軸となる志や信念さえ持っていれば、自信を持ってゼロベースからでもキャリアを形成できるはず。経験則で考えが固まってしまう30~35歳くらいまでには一度、キャリアにおいて大きな変化を生み出したほうがいいのではないでしょうか」


現在の会社や業界を飛び出した時、あなたには誇れるスキルや経験、信念がどれほどあるだろうか。そもそも今の会社で生み出したかった価値は何なのか?原点に立ち戻ることが、転職成功の一つの鍵なのかもしれない。

転職社長から学ぶキャリア論(3) 「事業を生み出し、動かす、経営者の視点を持つ」

志の高いエグゼクティブは、決してほかの誰かが作ったビジネスを維持存続させるだけの存在ではない。自らビジネスを生み出し、動かす事業主であり、常に経営者としての視点を持ち、行動していく。セルム代表の加島氏はこう語る。

>加島氏

「入社した直後、セルムの経営全体を見渡して、足りないと感じたのは、商品や仕組みを作る企画力でした。一方で私は前職では『企画の加島』と言われるほど、企画の得意な営業マンでした。だから、セルムにとって欠かせないピースになれると思ったのです」
その後、加島氏は営業として現場の最前線に立ちながら、企画開発部を立ち上げ、現在の事業の基礎となる商品企画と、外部パートナーとのネットワークを構築。関西支社長を経て、2010年、代表取締役社長に就任する。
「関西支社長時代から、社長になる準備をしていました。だから関西支社では『自分がセルムの社長だったら、この会社をどんな会社にするか?』を考え、実行していました。まずは小さい組織で予行練習をしていたのです。現在、支社長時代に培った『経営脳』が活きています」

松林氏

ピアソンVUEの松林氏もまた転職時には、経営者の視点をいつも持ちながら、行動していたと言う。

「転職するときには、その企業の5年後、10年後の将来像を見据え、戦略を描きながら決めていました。転職時に、次の会社の事業戦略を把握しようとする人は多いですが、自ら戦略を考えた上で転職する人は少ないのではないでしょうか。でも、それが転職後、活躍できるどうかに大きく関わってきます。
経営者でなくとも、その企業の鍵を握るビジネスを生み、動かし、自らその企業の未来を変えていくのです。人間の人生には、カーナビも教科書もありません。ならば、自分が主体性を持ち主導権を握り続ける人生を選ぶべきだと思います」

ビジネスパーソンとして、自らの人生、自らの企業の将来像を主体的に描き続け、行動し続けること。それが「経営者意識」にほかならないのではないか。たとえ経営者でなくても、実践すべきキャリア観だと言えるはずだ。

転職社長から学ぶキャリア論(4) 「最後は、ひらめきと相性で決める」

転職後、パフォーマンスを最大限に発揮するためには、自らのスキルアップやビジョンも大事だが、同等かそれ以上に大事なのが、転職先の企業との相性だ。そのモデルケースが、ピアソンVUE代表の松林氏だ。彼の転職先選定の基準は、拍子抜けしてしまうほどシンプルだ。

松林氏

「人生にとって本当に重要なことは、細かい理屈を並べて検討するようなことはしません。いつも決めるときは素のままの自分に戻って、ひらめきと直感で決めます。ほら、例えば女性とお付き合いをする時だって、理屈では考えないでしょう。最後は、フィーリング、何十年経ってもこの思いに変わりがないと思えるかですよ」
素のままの自分で決める。松林氏は無意識のうちに「自身とカルチャーが合致する企業への転職が、パフォーマンスを最大化する」という転職における一つのセオリーを体現していたのではないだろうか。

では、ひらめきや直感を養うために、どんなことに取り組んでいけばいいのだろうか。アイレップ代表、紺野氏はこう語る。

紺野氏

「今までの自分の狭い殻を破り、世の中を広く見つめることが大事です。そこから、今までの経験則にとらわれない発想や行動が生まれてくるのだと思います。読みたい本ではなく、売れている本を読む。2~3万円の靴を履くのをやめて、世界で広く認められている高級ブランドの靴を20~30万円かけて買ってみる。ささいな行動かもしれませんが、小さな価値観の変革を続けることが、キャリアにおいて大きな変化を生み出すのだと思います」

最後に「誰と働くかが大切」だと語るセルム代表の加島氏の言葉で検証を締めくくりたいと思う。
「セルムを転職先として選んだ大きな理由は当時、共同経営者だった松川と磯野の人柄です。経営幹部を目指して転職先を選ぶ場合、将来ともに会社を動かしていくかもしれない経営者の『人柄』は最も大切な判断軸だと今でも断言できます」

「志」、「ゼロベース思考」、「経営視点」、そして最後に「ひらめきと相性」。今回、三人の転職社長のキャリア観を通じて、浮き彫りとなった転職成功のキーワードが、少しでもあなたのキャリアに役立てばうれしく思う。そして、次はあなたならではの成功のキーワードをつくっていってほしい。自分の意志で自分の道を切り拓いていくのが、エグゼクティブ流のキャリアなのだから。

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