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掲載日:2014.7.28
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他者から観測可能な自分の価値を高める

株式会社ドワンゴ プラットフォーム事業本部 技術コミュニケーション室 室長 清水俊博 氏

中堅SIerを経て2009年にドワンゴに中途入社。複数のシステムの開発に携わった後、エンジニアの生産性を高めることをミッションとする部署の立ちあげに参加する。趣味はプログラミングとネトゲ。


ドワンゴでエンジニアが働く環境の整備や採用、教育、技術広報に関わる清水俊博氏。その清水氏による「doda転職フェア」での講演から、エンジニアのキャリアとOSSコミュニティ活動の関わりについてまとめた。清水氏自身、コミュニティ活動で情報を発信し続けたことがキャリアに結びついている。

SI業界の問題点を意識し、Web業界へ

OSSコミュニティと転職について。実例として、僕自身の話をします。
僕の経歴ですが、大学を7年かけて卒業しました。「院卒ですか」と聞かれますが、学部卒です。7年かかったのは、ずっと引きこもってネトゲをしていたからです(笑)。こんなに留年しているとまともな会社には就職できないだろうと思って、「学部7年生でも就職できる会社はありますか」と大学に聞きに行って、紹介されたところに就職しました。
就職先は、中堅のSIerです。2005年のことです。中1の頃からプログラミングをしていたので、プログラムが書ける業種ならいいだろうと思い、あまり業界研究もせずに入社しました。
入社すると、まず新人研修を受けて、その後はすぐ客先常駐でした。業界のことを何も知らない状態で入社したのですが、そこでSI業界の構造を理解し問題があると感じました。問題の原因は主に多重下請け構造にあるのですが、個人的に許せなかった問題が3つほどあります。
1番目は、一番下で実際にプログラムを書いている人にお金が回らないことです。上流の人が下にどんどん丸投げして利益を中間搾取しているせいで、納期に追われながら激務になりがちなプログラマに十分な給料が支払われていると言えません。
2番目は、まともにプログラムを書いたことがない上流の会社のSEが書いた設計書が降りてくること。先輩から引き継いだ「秘伝のタレ」のような設計が来ます。COBOLの知識を元にJavaの設計書を書くみたいな、ふざけたことが起こっていました。
3番目は、技術力ではなく労働力を売っていること。短時間で成果を上げる人よりも、長時間働く人のほうが評価されます。また、単金を上げてもらうため、PG(プログラマ)→SE(システムエンジニア)→PL(プロジェクトリーダー)→PM(プロジェクトマネジャー)という謎のクラスチェンジが行われる。出世魚かと。
自社の問題であれば、上に掛け合うなどしてなんとかしようと考えますが、これは業界の構造の問題だと思いました。SI業界からWeb業界への転職を決意したのは、こうした問題意識にありました。

転職に必要なことはすべてjava-jaで学んだ

SI業界への疑問を持ったことから、外部の勉強会に顔を出すようになりました。最初に参加したのは、java-jaが2007年8月10日に開催した(JavaによるWebフレームワークのひとつ)Wicketの勉強会です。
その後も、java-jaをはじめ、コミュニティの勉強会によく顔を出すようになりました。懇親会にも積極的に参加しました。その時は、人脈作りなどはいっさい考えていなかったのですが、それが結果として転職につながりました。
2009年9月、java-jaを通じて知り合った方に誘われ、ドワンゴに転職しました。このとき、2つ有利な点がありました。1つ目は、事前に人柄、キャラクターを把握してもらっていたこと。2つ目は、勉強会での発表、 Blog、 GitHubなどで、技術力をある程度把握してもらっていたことです。よく言われることですが、アウトプットするということはものすごく大事です。
自分の経験を振り返ると、転職を成功させるポイントは、いい企業に出会う、自分の価値を高める、この2点です。このうち、自分の価値を高めることは、自分にしかできません。特に大事なのは、他者から観測可能な自分の価値を高めることです。
例えば勉強会で発表する、Blogを書く、GitHubにコードをpushする、OSS(オープンソースソフトウェア)にpull requestを投げる(貢献する)、こうしたものは見える業績となって残ります。もちろん、これらの行動を「自分の価値を高める」ことを第一の目的として行うのは本末顛倒です。しかし、これらの行動を行うことは結果として「自分の価値が高まる」ことにつながります。
自分自身について言えば、ドワンゴ入社の後もコミュニティ活動を継続していきました。2010年8月にはNode.js日本ユーザグループを発足してその代表に就任しました。2011年から2013年にかけて、「東京Node学園祭」の実行委員長をして、2012年にはNode.jsの本を執筆しました(『サーバサイドJavaScript Node.js入門』、アスキー・メディアワークス )。
一方仕事の面では、2013年4月に、技術コミュニケーション室を立ち上げ、室長に就任しました。33歳で、一部上場企業の部長級の役職についた形となります。自分としては、OSSコミュニティ活動が会社や周りのエンジニアに認められての抜擢なのだと思っています。

「コードを晒せる」人が有利

選考する立場から見たOSSコミュニティ活動についてお話しします。ドワンゴの採用にあたっては、書類選考、一次面接、二次面接、最終面接と進むことになりますが、合格率が一番低いのは書類選考です。多くの応募者が直接会う機会すら与えられません。なぜかというと書類に知りたいことが書かれていないからです。
私たちは「どんなコードを書いてきたのか」を知りたい。どんな言語を使えるのか、テストコードを書く習慣があるのか、可読性や保守性が考えられているか、プライベートでもコードを書いているか、OSSに貢献しているか。こうしたことを知りたいのです。一番早いのはGitHubです。アカウントを晒してくれれば、どんなコードを書いたのかが分かりますから。
面接でももちろんコードテストを行いますが、書類選考の段階からコードでアピールできるメリットは大きいものがあります。コードを晒すことに抵抗がない人、それが選考において有利になると考える人は、ドワンゴの企業文化を理解している親和性が高い人だと考えられるので、選考では有利になります。
その反対に、よくない例を挙げます。例えば「○○ができます」と書いてある場合、その「○○」が私たちの求めているものである場合は会ってみようか、となります。しかし「○○を勉強中です」とか「○○に興味があります」だと、「勉強が終わってから来てね」「興味あるのになんでまだ手を出してないの」ということになってしまいます。その場合でも、勉強しているログがBlogやGitHubのリポジトリ上にあれば、「口だけじゃなくて実際にやってるんだ」ということが分かるため、面接に呼ばれる可能性は高まります。
僕が採用に関わった例ですが、日本Scalaユーザーズグループ代表のMさん──というと特定できてしまいますが──は勉強会で知り合って、懇親会などで一緒に飲む仲でした。転職先を探していることを知り、見学に来てもらうことになり、面接1回のみで内定しました。技術力も人柄も事前に分かっていたからです。
別の事例で、Yさんの事例。Scalaで著名なOSSのコミッタですが、直接の知り合いではありませんでした。TwitterやBlogで転職先を探している発言をしていたので、声を掛けて会社見学に来てもらいました。Scalaのスキルは保証されていますが、人柄はまだ分かりません。月曜に一次面接をして、その週の金曜に最終面接、一週間で内定が出ました。
この人たちが特殊なだけでしょうか。そんなことはありません。GitHubでは誰でもpull requestが送れます。誰にでもチャンスがあります。コードに自信がなければ、コミュニティを盛り上げたり、勉強会を主催したりして貢献するやり方があります。結果として、それらが転職やキャリアの前進に結びつきます。
繰り返しになりますが、一番大事なのは、他者から見た自分の価値を高めることなのです。

「技術的負債」の返済ルールを作る──エンジニア大量退職を乗り越えて:インタビュー後編へ続く

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