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あなたも活躍できる!
いま広がる、宇宙ビジネスの世界

内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐
畑田 康二郎氏

[概要]

今、世界的に大きな広がりを見せている宇宙ビジネス。その将来性ややりがい、求められる人物像などを考えるセミナーが、2017年1月21日に開催されました。前半の基調講演では、「はやぶさ」のプロジェクトマネージャを務めた川口淳一郎氏と、内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐の畑田康二郎氏が登壇。宇宙ビジネスの今と未来について語りました。ここではその中から、畑田氏の講演の模様をダイジェストでレポートします。

[profile]

畑田 康二郎(はただ・こうじろう)氏/内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐

1979年兵庫県生まれ。京都大学大学院エネルギー科学研究科修士課程を修了後、2004年に経済産業省に入省。エネルギー政策、ベンチャー振興、事業再生支援、自動車産業政策などを担当した後、2012年から2015年の間、ベルギー・ブリュッセルにある欧州連合日本政府代表部(日本政府の対EU外交窓口)に出向し、日欧間の自由貿易協定交渉、産業協力、CSR協力などを担当した。2015年より内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐を務める。

民間宇宙ビジネスへの支援が本格化

日本の宇宙開発は今、歴史的な転換点にあると言えます。2016年11月には、民間企業が宇宙開発に取り組むための環境整備として宇宙関連の2つの法律(宇宙2法)が国会で可決、成立しました。その翌月に行われた宇宙開発戦略本部会合では、安倍総理から、以下の3点に重点的に取り組むように関係閣僚へ指示が出されました。

1.民間宇宙ビジネスの創出・拡大
2.宇宙システムの脆弱性の評価・点検
3.宇宙システムの海外展開

このように、1番目に民間宇宙ビジネスが挙げられています。まさに宇宙開発の潮目が大きく変わっていることを物語っています。

宇宙開発の歴史をたどると、その始まりは「何かに役立てる」という意識とは無縁でした。1957年にソ連が世界で初めて人工衛星の打ち上げに成功。それに対抗してアメリカはアポロ計画を実施し、巨額の国家予算を投じての宇宙開発競争が始まりました。その後、1991年のソ連崩壊を経て、アメリカとロシアが技術協力を行うなど国際化が進展。そして2000年代に入り、「開発」から「利用」へと変化が起こります。人工衛星にセンサーを積むことで、地上からでは分からない画像や位置情報のデータを収集し、新たな価値を生み出せるようになりました。2000年代になって初めて人類は、「宇宙は経済の発展に役に立つかもしれない」と気づき始めたのです。その後、特に米国は宇宙開発の「商業化」を推し進めてきており、New Spaceと呼ばれる宇宙ベンチャーが急成長しています。遅ればせながら日本でも2008年に宇宙基本法が施行され、「先端技術研究のための宇宙開発から、利用するための宇宙開発」へと方向性をシフト。そして、先に紹介した宇宙2法の成立により、「民間主導による宇宙開発」の道が開けました。ようやく日本においても、宇宙ビジネス時代の本格的な幕開けを迎えています。

とはいえ、宇宙2法は、民間の宇宙開発について規制を設ける内容です。規制緩和を軸とする成長戦略に逆行するように思えることでしょう。しかしこれは、日本の宇宙ビジネスを発展させていくために必要な制度的インフラと言えます。なぜなら、宇宙開発に本格的に取り組む上では、国際的な理解が不可欠であり、その際に「政府が許可を出している」という事実は重要になるからです。つまり法整備により、満たすべき基準が明らかになることで、新規参入の道が開かれたのです。政府としては、法律が国際的な規制水準に対して過度なものとならないよう、柔軟な運用に努めることで、日本発の宇宙ビジネスの拡大を促していく考えです。

当日は多くの来場者が畑田氏の講演を聴講。

人工衛星の小型化が民間の参入を可能に

昨今、民間宇宙ビジネスが活性化してきている背景として、人工衛星の小型化が挙げられます。今から4年前、打ち上げられた人工衛星の平均重量は約2トンでした。それが現在では、同等の性能で200キログラムほど。何百億円という国家予算を投じずとも、民間で人工衛星が作れる時代がすでに来ているのです。その傾向は世界中で拡大していて、現在打ち上げられる人工衛星の3分の2は民間が占めています。それに伴って、宇宙関連のベンチャービジネスに対する投資も世界で急増しています。

アメリカでは人工衛星を使ったさまざまなサービスも生まれ始めています。人工衛星の画像データを解析する技術が進歩し、これまで目に見えなかったものも分かるようになってきています。例えば、鉱山を撮影した衛星画像から、どこにどのような鉱物が埋まっているかを分析。それに基づいて現地調査を行うほうが、ボーリング調査を重ねるよりもずっと安いコストで資源開発を進めることができます。また、これまで通信衛星と言えば高度36,000キロメートルの軌道に巨大な衛星を配置する必要がありましたが、地上から500~600キロメートルの上空に小さな人工衛星をたくさん飛ばすことで、途上国の学校にブロードバンドのインターネット通信環境を整備する構想も進められています。内閣府でも現在、GPSよりも高い精度で位置情報を測位できる準天頂衛星システムの開発プロジェクトが進行中で、2018年度の運用スタートを予定しています。

内閣府が支援している宇宙開発事業をプレゼンする畑田氏。

あなたも宇宙ビジネスで活躍できる

やっと宇宙ビジネスが活性化してきたところですが、日本では人材が圧倒的に不足しています。背景としては、これまで長らく、政府の宇宙開発予算の範囲内でしか人材が雇用されてこなかったことが影響しています。しかし今や、宇宙分野は航空宇宙工学を専攻した人だけが進む世界ではありません。さらに言えば、理系のエンジニアだけが求められる世界でもありません。なぜなら、ロケットや人工衛星を作るだけが宇宙ビジネスではないからです。実際に宇宙ベンチャーの関係者に話を聞いてみると、技術者といっても通信インフラ分野やAI分野、さらには技術者のみならず広報やWebマーケティング、あるいは規制対応に関わる役所との交渉業務を担える人など、多様な人材のニーズがあります。

私自身、もともと宇宙を専門としていたわけではなく、大学院ではエネルギー応用工学を専攻していました。経済産業省に入省後は、さまざまな仕事に携わりながら「どのようにして政策を実現していくか」を学びました。その後、ブリュッセルにある欧州連合日本政府代表部に出向した際には、日本とヨーロッパで協力して政策を進めていくための業務に尽力しました。自分自身が宇宙に詳しくなくとも、宇宙分野に詳しい人に教えを請えばよく、その上でこれまでの知識や経験に基づいて考えれば、現在の仕事における自分の役割を果たすことができます。皆さんがこれまで学び経験してきた知識を、どうやったら宇宙ビジネスという新しい領域で活かすことができるか、それは皆さん自身が一番分かっているのではないでしょうか。

宇宙ベンチャーの「量」は欧米に圧倒されていますが、その「質」では、日本は世界にまったく引けをとらないと私は考えています。毎年のように宇宙ビジネスを志す起業家が現れ、さまざまな分野で、世界初のビジネスに挑戦しつつあります。そうした日本のベンチャー企業が、やがては宇宙時代を担う世界的な企業となっていくでしょう。成長領域である宇宙産業にどう関わっていくか、その方法はさまざまです。宇宙開発を行っている企業に就職するだけではなく、例えば、今の仕事と並行しながらプロボノ(専門性を活かした社会貢献)として参加することも可能でしょう。何らかの形で宇宙ベンチャーを応援するところから始め、やがてはご自身が宇宙ビジネスを発展させる担い手となっていただきたいと思っています。期成の概念や先入観にとらわれず、みなさんの専門性を活かした宇宙開発との関わり方を、ぜひ広い視野で探ってみてください。

「技術職以外の職種でも活躍できるチャンスは広がっている」と熱く訴える畑田氏。

<学びのポイント>

・国が宇宙ビジネスを支援する動きも活発化し、宇宙開発は歴史的な転換点を迎えている。

・人工衛星の小型化や高性能化により、民間のベンチャーも参入しやすい環境に。

・経験業種や職種を問わず、各自の専門性を活かした宇宙ビジネスとの関わり方が可能。

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