放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。
今回も映像ディレクター・YouTubeチャンネル『ReHacQ(リハック)』のプロデューサー高橋弘樹さんをゲストに、キャリアの転機や仕事のマイルールを伺いました。2023年2月末に18年間勤めたテレビ東京を退社して株式会社AbemaTVに転職すると同時に自ら会社を立ち上げた高橋さん。新たなキャリアにかける思いと今後の展望をたっぷり語っていただきました。
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高橋 弘樹(たかはし・ひろき) 元テレビ東京プロデューサー。現在は株式会社AbemaTVに勤務しながら、株式会社tonariの代表としてYouTubeチャンネル『ReHacQ』を手掛ける。
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高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
幼なじみだったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
会社を辞めた瞬間に楽しい。“自分のおもちゃ”を作るために起業
高須:なんで『ReHacQ(リハック)』って名前にしたんですか?
高橋:「hack」って“攻略する”とか“壊す”って意味なんですよ。そこに“何回でも”とか“再び”って意味のある「Re」を付けて、「当たり前だと思っている社会の構造や物の見方を何回でも壊して再構築していこう」って意味を込めています。「hack」の最後を「Q」に変えたのは、「壊すだけでなく、壊した後に何を作るのか疑問に思いながらやっていこう」っていう。
高須:なるほど。問題点も浮き彫りにしていくってことやね。よくあの二人を起用して番組を作ったなと思うねんけど。
高橋:ひろゆきさんと成田(悠輔)さんですか? 知識量と社会への関心があって、忖度せず本音で話せる人という意味であの二人を起用しました。
高須:あの二人ってプロデューサー目線で見るともめないか心配になりそうやけど、そこは考えなかったの?
高橋:まあ、もめてもいいかなぐらいの感じでやっていましたね。高須さん的にはテレビを作っているのが一番面白いですか? NetflixとかYouTubeとかいろいろあるじゃないですか。
高須:NetflixもAmazonプライムも楽しいし、お金を使っていろんなことをやらせてくれるならやりたい気持ちは全然あります。YouTubeはたぶん中途半端にやると痛い目にあうから、やるなら本当に時間を惜しまずにやりたい。でも面白いこととか、あまり見たことがない事件を起こせるんだったら、まだぼくはテレビで大丈夫かなと思ってて。
高橋:たしかに、テレビ楽しいからなぁ。テレビの世界がいいかもしれないです、やっぱ。
高須:本当? 今になって?
高橋:もう一回テレビ東京雇ってくんねーかなぁ。
高須:俺は他局もアリなんじゃないかと思うけどね。なんでAbemaTVに行ったの?
高橋:同じ山に登るのが本当に苦手で、飽きちゃうんですよ。だからテレビは結構やりきっちゃって。YouTubeはまだやり足りないからやりつつ、NetflixやABEMAでもやってみたいって思いがあってAbemaTVに入ったんですよ。
高須:好きなことをやれる土壌をいつから作っておくかやろね。
高橋:40歳ぐらいまでに作っておかなきゃだめかなと。
高須:自由になるおもちゃが欲しいじゃん。ずっと遊んでいられるおもちゃが。
高橋:そうなんですよ。自分の聖域が欲しいんですよね。ぼくも起業するときに金融機関やコンサルの方に狙いを聞かれて「自分のおもちゃがほしいだけです」って言ったんですよね。
高須:何か作ったほうがいいよ、絶対に。今ならテレビ東京にいたときよりも作りやすいんじゃない?
高橋:自由ですよね。別に誰にも許可を取る必要がないですからね。
高須:そうそう。キャリアも実力もあるから、楽しいことをやれるんじゃないかな。
高橋:会社辞めた瞬間からめっちゃ楽しいんですよね。
高須:楽しいでしょ? 放送作家も自営業だから大変って言うけど、意外とのんきにやってんねん。楽しいし、そこまで責任を背負ってないから。
高橋:そういう意味では放送作家さんってやっぱり楽しい職業のひとつですよね。でも最近目指す人少ないですよね。
高須:多分優秀な人たちがいろんなところに分散したんやろうな。この間銀シャリも「昔のNSC(吉本総合芸能学院)にはゴールデン番組をたくさんやってCMに出て…みたいな野望を持った芸人が多かったけど、今はそんな人いないですよ」って言ってて。
高橋:そういう人はどこに行っちゃったんですか? YouTuberですか?
高須:もうけたいとか有名になりたいっていう人はYouTuberになるんじゃない? ぼくが今高校を卒業したばかりだとしたら、とりあえずYouTuberになってみようかなって思うもんね。
高橋:思いますよね。なんかちょっと寂しい気がしますね。テレビとか芸人さんと仕事してきた身としては。
高須:でも面白い番組がなくなったわけじゃないし、テレビの可能性もまだあるかもしれないしね。
高橋:いやー、なんかテレビ作りたいな。
高橋弘樹さんのキャリアの転機|18年勤めたテレ東を退社。戦場を変え、今までできなかったことに挑む
高須:高橋くんのキャリアの転機はいつ?
高橋:キャリアの転機はまさに今ですよね。
高須:まさにそうやね。41歳。テレ東を卒業して何をするか。退社するときはどんな気持ちだった? やっぱり不安はあったでしょ?
高橋:もちろんめちゃくちゃ不安でしたよ。ぼくは家庭がありましたから。本当に大丈夫なのかっていう気持ちはかなりありましたね。
高須:奥さんからは何か言われた?
高橋:ケラケラ笑ってましたね。妻はあまり仕事に干渉してこなくて。
高須:じゃあいいね。でも辞めるって決めたときには相談したわけでしょ?
高橋:一応固まりきってから言いましたね。怒られるかなと思ったんですけど大丈夫でした。
高須:テレ東の上司や同僚は何か言ってた?
高橋:ぼくの場合、比較的分かりやすい“非”円満退社だったんですよ。
高橋・高須:(笑)
高橋:途中から「こいつ辞めるよな」みたいな不穏な空気をちゃんと出しながら辞めたんで大丈夫でした。
高須:なるほどね。いまだに連絡取ったりもしてるの?
高橋:ありがたいことに、いろいろな人にめちゃくちゃちゃんと送別会してもらったんですよ。うれしかったですね。
高須:それはうれしいな。芸人さんともつながってる?
高橋:ビビる大木さんは辞めてすぐにLINEくれました。「(番組に)出るから」って。男気のある方ですよね。
高須:なんかうれしいよね。こういうときって「ご飯でも食べよう」とか「またやろうな」って言ってくれることがすごくうれしかったりするもんね。
高橋:辞めた直後の不安なときに言われると相当恩義に感じますよね。
高須:そう。純粋にいつかこの人ともう一回やりたいなと思うしね。
高橋:思いますよ。大事ですよね。
高須:AbemaTVでは今どんな待遇なの? 会社には必ず行くの?
高橋:毎日は行かないです。自分の会社半分、AbemaTV半分でやってますね。でも一応正社員なんで。
高須:すごいね。正社員だけど自分の会社のこともできる余白を残してくれてるっていうのは。
高橋:懐が深いですよね。
高須:ABEMAでもやっぱり成田さんやひろゆきさんを使いながら作っていきたい感じ?
高橋:「テレ東でできなかったことをやる」っていうのはテーマとして一個あるから、バラエティをやりたいですね。
高須:なるほどね。ぼくの場合はテレビでやり残したことをやるのは、もう自分の中では終活なのよね。頭に浮かんでいたものを早く形にしないとって思って、やれるところを探してるんだよね。だから今テレビ以外の活動をしているのも多分終活の一つで、やりたいことの中で面白い順番を組み替えているだけの話。
高橋:今やり残している中で優先順位が高いことって何ですか?
高須:自分でアート作品を作りたいと思ってて。ちゃんとやるなら時間をかけた分だけ評価も得たいし成功させたいと思う。あと渋谷でもいろいろとやらせてもらってて。
高橋:プロデューサーとかアドバイザー的な?
高須:そう。任せてもらったスペースをどう使うかをずっと考えてる。
高橋:規模がでかいですね。まちづくりみたいなことですもんね。めっちゃ面白そうだな。
高須:楽しいよ。そこはおもちゃになりそう。
高橋:楽しそうな60歳ですね、本当に。めちゃくちゃうらやましいですね。
高須:今の話は大きく見えるけど、ちっちゃなこともやってるんやで?
高橋:深夜2時まで編集もするわけですからね(笑)。いや、そういう60歳になりたいな。
仕事のマイルール|徹底して好きなことしかやらない。20年後も仕事を楽しんでいたい
高須:仕事のマイルールってあったりする?
高橋:「好きなことしかやらない」っていうのはもう徹底しています。
高須:それは本当に大事だね。早めにプロデューサーになれたから、それができる立場だったっていうのもよかったよね。演出も自分でやるから自分で思うように作品も作れるし、企画も自分の思いどおりに通せるし。そっか。じゃあ楽しいやんか。
高橋:本当にここまで楽しくて、20年後もそうなりたいっていう思いがある。
高須:いや大丈夫、きっとなってるよ。この業界じゃないことをやろうと思わなかったの?
高橋:だから会社を辞めたんですよ。教育とかにもたずさわりたいなと思ったんです。辞めてから大学とかのコンサル的な仕事もやれるようになりました。
高須:それ楽しい?
高橋:めっちゃ楽しいですね。映像以外の知らない世界に携われるのは楽しいです。
高須:いいね。自分の会社ではどんなことをやっているの?
高橋:YouTubeの収録には基本的に全部参加していますし、あとは映像以外の仕事をやっていたらほぼ一日終わりますね。
高須:じゃあ、あっという間に終わっちゃうんだね。まあ、時間はないのよね。
高橋:足りないですね。いくらあってもね。
高須:もう全然足らへんよ時間なんて。
高橋:作家さんみたいな締め切り仕事って、永遠に締め切り地獄じゃないですか。ストレス大丈夫ですか?
高須:まあ考え方にもよるよね。ものを考えるのっていいアイデアさえ浮かべば1分でできるから、実は費用対効果がいいのよね。物理的な時間と費用がかからないから。これをずっとやらなきゃいけないってなると大変やけど。
高橋:そういう仕事にシフトしていくっていう手もありますよね。でも編集楽しいんですよね。
高須:分かるよ。作品の最終的な仕上げをやるってやっぱり楽しいよね。
高橋:演出家の特権ですよね。仕上げができるってかなり快感値が高いんですよね。
高須:その幸せも持っていたほうが絶対いい。作家のフラストレーションといえば、仕上げができないことやと思うから。
高橋:最終的に自分の思いどおりになっていない可能性があるところですよね。
高須:完成させるエクスタシーの前になんとなく俺らの役割は終わってるから。それやっぱりつらいじゃない。
高橋:最後の仕上げができる仕事も大事ですね。頑張ろう。でもなんとなく方向性見えてきたわ。エクスタシーのところを握っとくってことですね。
高須:それは絶対に握っておいたほうがいい。誰にもできないことやし、「やっぱうまいな、あの人」みたいに思わせたほうがいいから。絶対楽しいもの作れると思うな。
高橋:頑張って作ります。今度『ReHacQ』にゲストで来てくださいよ。
高須:行きます、行きます。どんなことをやったらいいの?
高橋:それこそ成田氏と対談も面白そうですし、面白い未来を作ろうとしてる人を特集する『超ファンタスティック未来』っていうラインアップで渋谷の話を聞くのも面白そうだし。あともう一個来てほしいのが『輝け!エキセントリック中年』っていう番組で。
高須:“輝け”って(笑)。一回ちょっと会社見学させてよ、まずは。どんなことをやってるのか知らんからさ。
高橋:ちょっと一線おきましたね、今。
高橋・高須:(笑)
高須:そう、一回ね(笑)。防衛線をしっかり張るほうやから。
高橋:さりげなくね(笑)。
高須:よう分かったな(笑)。さすがだなー。まあ、でもなんか面白いことがあったらまたご一緒に。
高橋:はい、ぜひ! 最後にもう一回めちゃくちゃ防衛線張りましたね(笑)。
高橋・高須:(笑)
高須:いや楽しかった。ありがとうございます。
――次回のゲストは片桐はいりさんです。お楽しみに!
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