放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。
前回に引き続き、実演販売士のレジェンド松下さんをゲストにお迎えし、実演販売の裏側をたっぷり語っていただきました。2022年に起業し、新たな道を歩み始めた松下さんには、仕事を絶やさないためのマイルールがあるそう。しかしこのマイルール、長年厳しい実演販売の世界を生き抜いてきた松下さんらしい、なんともプロ意識あふれるものでした。“売れる実演販売士”として世界中で高い評価を受けるレジェンド松下さんの“プロフェッショナルな働き方”のお話、ご覧ください。
※本文中、『販売士』という呼称が出てきますが、商工会議所の資格である『販売士』を指しているものではありません
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レジェンド松下(レジェンドまつした) 実演販売士として店頭やテレビショッピングで数々のヒット商品を紹介。
株式会社あんきいずの代表取締役社長として実演販売だけでなく動画制作や商品プロデュースまで手掛ける。 -
高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
世界中から売れる商品が集まってくる。確かな実績がさらなるチャンスを呼び込む
高須:新しく自分で作る商品ってどういうものがありますか?
松下:全部が全部ゼロから作るっていうことはもうほとんどなくて。
高須:なるほど。売れているものをちょっとアレンジとかマイナーチェンジしたものを作るってことですか。
松下:そうですね。長年やっていたら日本も含めていろんな国のメーカーさんから「こんなのはどうだ?」ってどんどん依頼がくるようになるんです。
高須:メーカーから売ってくれって連絡がくるんですか?
松下:そうですね。そうなってからはだいぶ売りやすくなりました。
高須:「ここを変えてくれない?」って言ったら、メーカーが変えてくれるんですか?
松下:そういうことですね。
高須:うわ、来たぁ…。そうなったらレジェンドですね、もう。
松下:そこまで行くのに時間がかかりましたけど。
高須:はぁ〜。売れますねぇ。じゃあもうかりますね。
松下:世界中の面白い、売れそうな商品がぼくのところに集まってくるんで。
高須:メーカー側も良い物はよく売る人に売ってほしいですもんね。
松下:売れる人の口コミって広がっていくんです。世界中に。
高須:じゃあ「日本で売るならあいつだ」っていう情報が回っていて、松下さんに「これ見てくれ」って定期的に商品が送られてくるんですか?
松下:そう。もういろんな国から見てくれ見てくれって。
高須:どうするんですか? 全部が全部使えるわけじゃないじゃないですか。
松下:そう。もう異常なほど段ボールがあります。
高須:その異常なほど余ったものはどうするんですか?
松下:人にあげたりとかします。とてつもない量があったときとか。
高須:一回家にロケしに行っていいですか?
松下:(笑)
高須:じゃあ送られてきたものが良かったときは、どうするんですか? 売るまでのいきさつは。
松下:いろんなメーカーさんや橋渡しになる人とかといっしょに進めていくんですけど、まずは商品名を作るところからですね。
高須:あ、全部商品名も考えられるんですね。それ名付けのアイデアとかコツはないですか?
松下:ぼくは、本当はだめなんでしょうけど、駄じゃれみたいな感じに言っちゃうんですよ。
高須:いや、駄じゃれなめちゃいかんですよ。駄じゃれ最強ですよ、やっぱり。
松下:かかと削るやつ(※前編参照)も『5セカンズシャイン』って名前なんですけど、その名前だけだと面白くないんです。でも「5秒でかかとが削れるんですよ」ってキャッチーな実演を見せてから、「だから5セカンズシャイン。5秒で輝くんです」っていう実演と合わせた商品名にできるっていうのは、ぼくらの面白さでもあります。
高須:なるほど。駄じゃれでいくか機能性を入れるか、迷いますね。
ミニマムで効率が重要。新たな試みで実演販売の世界を広げる
高須:今、1週間のタイムスケジュールってどういう感じで活動されているんですか?
松下:テレビショッピングへの出演と、動画制作ですね。自分の会社で動画制作を受け持っているんです。YouTubeとか、ドン・キホーテやハンズなどの店頭で流れている動画ありますよね。あれを自分で撮っています。
高須:一人で?
松下:スタジオがあって、機材も全部あって。カメラだけないんでテレビの制作スタッフさんが借りるような東京オフラインセンターって所に自分で借りに行くんです。
高須:すごいな(笑)。全部自分でやるんですか? スタッフは?
松下:フリーのディレクターさんとぼくの2人でやっています。
高須:すごいミニマムで効率いいですね。
松下:そうなんですよ。台本も基本的にはなくてもいいですし。出演終わったらまた自転車でカメラを返しに行く。
高須:演者として出るだけのときと、商品プロデューサーと演者を混ぜて売るときがあるってことですね?
松下:そうですね。両方のパターンがあります。
高須:なるほど。しかも世界からいろんな商品が紹介されてくるから、もうあとは回していくだけですね。最近なんか違うことやってみようかなとか思うことないですか? 今の商売とちょっと離れて違う商売をやってみようかなって。
松下:実は独立して会社を作ってからは、まだ1年ちょっとなんです。もともと前の会社にいたときは、販売士のマネジャーもやってたんですよ、ぼく。
高須:そのころの松下さんを知っていたんで、今はそういうお仕事をされてるのかなと思ったんですよ。
松下:ゆくゆくは新しい販売士を育成するみたいな、販売士のプロダクションみたいなことをしたいですね。アイドルみたいな販売士ってまだいないんですよね。実は。
高須:なるほど。かわいい子で。
松下:かわいい子とか。歌ってドラマも出ちゃうみたいな。そういう実演販売士が育てられたら面白いかなって。ゆくゆくは。
高須:なるほど。それは面白いかも。でも、やっぱり自分の仕事の流れ上で新しいことをやっていきたいってことが多いんですね。
松下:そうですね。自分が歌ったりとかできないからこそ、実演販売士を広げるためには、そういうアイドルみたいな人を育ててみたい。
高須:そう。じゃあ実演販売士っていうところを媒体に、いろいろとやっていこうっていうことなんですね?
松下:広げられたら面白いかなと思います。
レジェンド松下さんのキャリアの転機|「不満があるなら社長になろう」甘えをなくすため独立を決意
高須:この番組では「あなたのキャリアの転機を教えてください」っていうコーナーがあるんですけども、どこが一番の転機ですかね?
松下:独立したところがやっぱり一番ですね。ある程度売れるようになってきてから、もう一度イチからやってみようと思ったんで。
高須:じゃあそうなると、つい1年前が一番の転機。
松下:そうですね。独立する前はどこか甘えている部分があったんですよ。前の会社では自由にやらせていただいてすごく良かったんですけど、ちょっと不満が出るときがあって。でも「(ぼく)社長じゃないじゃん。不満があるんだったら自分で社長やってみろよ」って思って独立しました。
高須:前の会社ではご自身も実演販売士として出演してるけど、ほかの実演販売士の方のマネジメントもしてたんですよね? ある種、特殊技能に近いじゃないですか。やっぱり自分で持っている感覚とその人に合った売り方は違うから難しいですよね。
松下:そうですね。セミナーをやってくれってよく言われるんですけど、ぼくはもう「あなたの売り方が正解です。あなたの売り方も正解です」っていう性格なんで。あまりセミナーは向いてないのでお断りしています。
高須:もう本当にそうだと思います。例えばブラックマヨネーズとミルクボーイでは漫才のスタイルは全然違うけど、どちらも面白いっていうのといっしょですよね。それぞれに合った漫才やネタがあるように、実演販売士さんの話し方や売り方も千差万別なんでしょうね。
松下:人によって違うのに、聞く側は「こうやって実演して、このフレーズを使えば正解です」って言ってほしいんですよね。強い言葉で。
高須:そんなもんないですよね。大きくは言えても、「これが絶対」っていうのはないですよね。
松下:そうなんですよね。最後の部分はやっぱり自分たちで探すしかない。
高須:自分らしく売るってことでしょうね。自分らしく売れるとこにいくまで20年かかっているんですもんね。…まあ20年でも、そんなに売れたらいいかぁ。
高須・松下:(笑)
仕事のマイルール|「許す」「忘れる」「求めない」いい人間関係が新たな仕事を生む
高須:生きていく上での仕事のマイルールみたいなものってありますか?
松下:座右の銘みたいにしているんですけど、人との関わり方で、「許す」「忘れる」「求めない」っていう3つを絶対に意識していて。仕事でいろいろな人と関わっていると、中には裏切るような人とかもいるんですよ。でもそういうのも許して、何かされたことも忘れて。あと手伝ってくれてる人に対して「ちゃんとやれよ」と思っちゃうときなんかも、あまり求めないようにするとイライラしなくなる。
高須:えらいなぁ。
松下:ぼくがイライラしてしまうと、やっぱり次の商品の紹介がこなくなるので。次の商品を紹介してもらうためには、「許す」「忘れる」「求めない」。人といい関係を保つために、この言葉を心がけるようにしています。
高須:今までだまされたりとか失敗した体験っていうのは、どんなことがあったんですか?
松下:商品アイデアを思いっ切きり盗まれたこともありましたね。
高須:こっちで考えている間にもうよそで出ちゃうとか?
松下:そう。でも、それを許したおかげでその人といっしょに同じような商品を作れたこともあるんで。引きずっちゃうと、次の商品につながっていかないかなと思っています。盗まれるのはもちろん面白くはないですけど、なるべく人を許すような関係性を保てるようには意識しています。
高須:会社を経営するようになって良かったか、会社員のほうが楽だったか、どっちですか?
松下:ぼくは自分で会社を作ってみて良かったです。やっぱりお金のことも含めて、会社にやってもらっていたことの大変さが分かって。その大変さを分かった上でいろんなことに取り組めるので。
高須:なるほどね。あと何年ぐらい現役でやられます?
松下:いや、どうなんでしょうかね。販売スタイルがテレビショッピングからライブコマース※とかになっていったりするかも。
※ライブ配信を活用した販売方法
高須:海外から来てくれって言われることもあるかもしれないですよね。
松下:そうですね。海外のテレビショッピングはぜひやってみたいな。まあ何回か出てるんですけど。海外のほうが日本よりマーケットが大きくて、なんかすごい売れるんで。ゆくゆくは海外のテレビショッピングでもいっぱい日本のものを紹介したいですけどね。
高須:中国とかじゃあまだまだ。
松下:需要あると思います。やっぱり中国ってライブコマースが主流なので、個人で1億円2億円売れたりしています。
高須:やってみたいですか?
松下:そうですね。そういうとこ行ってみたいですよね。
高須:本当ですか? やります?
高須・松下:(笑)
松下:ちょっとぜひなんか仕掛けに行きたいですよね。
高須:いいですね。
――次回のゲストはピアニストの清塚信也さんです。お楽しみに!
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