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自信がなければつければいい。モモコグミカンパニーの挑戦の原動力|ラジオアーカイブ

自信がなければつければいい。モモコグミカンパニーの挑戦の原動力|ラジオアーカイブ

後編:2023.8.20(日)放送回
モモコグミカンパニーさん
小説家、文化人、BiSH元メンバー

ラジオ音源はこちらから

「空想メディア」ロゴ04

放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。

今回のゲストも前回に引き続き元BiSHのモモコグミカンパニーさんです。小説を書き始めたのは、自分にとっていちばん怖いことをしようと思ったからと話すモモコグミカンパニーさん。恐怖の中にあえて飛び込む強さの裏には、あるマイルールがあるようです。BiSH時代からさまざまなことに挑んできたモモコグミカンパニーさんの“挑戦の原動力”とは? 互いの作品作りの方法を語り合った高須さんとの創作談論も必見です! どうぞご覧ください。

  • モモコグミカンパニーさん

    モモコグミカンパニー 2023年6月に解散したガールズグループ『BiSH』の元メンバー。BiSHの多数の楽曲で作詞を担当していたことで知られる。解散後は小説家や文化人として活動。

  • 高須 光聖さん

    高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
    中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。

何げない他人の会話がヒントに。思い浮かんだ言葉や場面を作品に昇華させる

モモコ:私、人の会話を録音するのが結構好きなんですよ。

高須:あー、楽しいよね。分かる分かる。

モモコ:うれしいです。こういう話ってあまり共感してもらえることがないんで。

高須:えー、そう? でもユーミン(松任谷由実さん)とかも、ファミレスとかでカップルがしゃべってる言葉を聞いてたっていう話はあるよね。アーティストの人が曲を書くときに、ちょっとだけイメージもらいにいくみたいな。

モモコ:あるかもしれないですね。

高須:本当にできるのかな? 小説を書くときとかどうですか?

モモコ:長編のときは自分の中で世界観をワッと作ってから構想します。

高須:ゴールを自分の中で決めて書くほうですか?

モモコ:そうですね。1作目は最初だったのでやみくもに書いていたんですけど、7月に出した2作目はプロット(※1)を最初から最後までガチッと固めたサスペンスで。

(※1)物語のあらすじや構成などの情報をまとめたもの

高須:どれぐらいかかりました?

モモコ:半年ぐらいですかね。構想期間を含めたら1年半ぐらいです。でもその間に短編小説を書く依頼とかが来て、何度か受けていたんですけど。

高須:来るよね。

モモコ:喫茶店に行ったら、「すみません、現在このショートケーキ売り切れなんですよ」っていう店員さんの言葉が聞こえて。とりあえずそれを1行目として打ってみて、そこから(短編を)書いたとか、やったことあります。

高須:なんか分かる。面白い入り方やね。何かが自分の中で引っかかったんやね。

モモコ:スッってそれだけなんか聞こえて。

高須:面白い。すごいリアル。

モモコ:そこからは妄想なんですけど。

高須:確かに。シーンから浮かぶの? それとも言葉から浮かんでくる感じですか?

モモコ:うーん、言葉ですかね。

高須:なんか響きみたいな?

モモコ:人がナチュラルにしゃべっていることがすごく面白いなぁって。

高須:確かにね。

モモコ:「何でこのショートケーキが人気メニューなのにないんだろう」っていうところから考えて。

高須:面白いね。「あー、ちょっと売り切れちゃったんですよ」っていうのはよく聞く言葉やけど、そこから始まるっていうのは、日常を本当にフラットに切り取った感じはするよね。

モモコ:そうですね。そのときは女の子がその言葉をきっかけに機嫌を悪くしてっていうところから書き始めました。

高須:ぼくはどっちかといったらシーンなんですよ。例えば雨が降ったあとにちょっと晴れて。で、水たまりができているところに車が止まって。車がサーッと向こうに行くと、エンジンオイルがポーンと垂れて。それが虹色になったりとかしているのを見たときに「これええな」「あ、これも虹やな」とか思いながら。

モモコ:曲できそうですね、なんか。

高須:「キレイ」とか「あ、これいいな」と思ったシーンを表現するから言葉になっている。だからシーンのほうが好きなんですよ。

自分たちの曲がめっちゃ好き。聴く音楽の8割はBiSH

モモコ:作詞について本とか読んで調べていたら、一曲の中で場面を書いちゃいけないっていうのが鉄則らしくて。

高須:へー、そうなんだ。

モモコ:BiSHのときはそういうことは考えずにやみくもに書いちゃってたんで。「そうなんだ」って思って学び直したりとかしたんですけど。

高須:へー。誰の曲をたくさん聴きました?

モモコ:やっぱり辞めましたけど、BiSHは好きなアーティストですね。本当に。自分たちの曲がめっちゃ好きで。ほとんどBiSH聴いてますね。8割方。

高須:音楽聴くときの8割は自分たちの曲(笑)。

モモコ:私スガシカオさんは好きです。すごい好きなのに忘れるところだった。危ない(笑)。

高須:いやアカンで、それ(笑)。危ない。すごい好きな人忘れるのは。お会いしたことは?

モモコ:無いんですよ。ほかのメンバーはあるっぽいんですけど。

高須:ぼく何度もご飯食べたりしていますからね。

モモコ:スガシカオさんって交友関係すごい広い方ですよね。

高須:毎年『笑ってはいけない』(※2)が終わったら、「1年間で笑った中でトップの何点です」「コレとコレ、最高でした」ってLINEをくれていて。めっちゃ点数高いねんで?

(※2)高須さんが担当するバラエティ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』で毎年大みそかに放送されていた人気シリーズ企画

モモコ:放送されるたびに?

高須:たびに。「これ最高」って。

モモコ:それは参考になるんですか? そのバロメーターは。

高須:参考にはなれへんけど、まあ、ありがたい。うれしい。

高須・モモコ:(笑)

高須:(SMAPへの提供曲の)『夜空ノムコウ』にある「あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ」っていうフレーズなんかは、実はあの曲のために作ったわけじゃないらしくて。スタッフ同士でどんな言葉がワンフレーズで決まるかっていう遊びをしている中で(スガシカオさんが)パッと言ったものが、「これいいなぁ」ってなんとなく頭に残ってたんやって。それが『夜空ノムコウ』を作るときに「あ、なんかそんなんあったな」って浮かんで、バーッと乗っかってきたって。

モモコ:えー! 天才ですね。

高須:天才やな。

誰かがショックを受けている瞬間は笑いの宝庫。高須流、笑いの見つけ方

モモコ:高須さんのそういう(スガシカオさんの曲作りのような)話を聞きたいんですけど。ないんですか?「(作品を作る上で)これはこう決めている」とか。

高須:それ、ぼくがゲストに聞かないかん話ですけど。ぼくが何を作っているときの話がいいですか?

モモコ:コントとか。

高須:コントは…この間ね、『キングダム』の記者発表みたいなのがあったのよ。すごいメンバーが出てるじゃない。もう十何人舞台に立ってんのよ。そのときに舞台の端っこのほうに立っている人もいるわけじゃないですか。端っこの人は「俺の位置ここか」って思うわけじゃない。

モモコ:確かに(笑)。

高須:「この人があそこやったら(自分がこの位置でも)別にかまへんか」とか「向こう側の端はあいつが出てんのか」って思う気持ちがあるじゃない。で、その位置に大御所の佐藤浩市さんがいらっしゃったりするわけですよ。

モモコ:はいはい。

高須:「佐藤浩市さんがここやったら、逆側のこの位置はこの人でええんか?」とか、俺なんかは思ってまうのね。そこでスタッフが右往左往している様とか、インカムで聞こえてくるディレクションの言葉とか、司会者が右往左往してる様とか、演者の気持ちみたいなことがコントになるなぁ、と。それを見て思ったのね。

モモコ:確かに。しかも全然笑いの場ではないからこそ、本当は何考えてるんだろうって。ちょっと想像するだけでめっちゃ面白いです。

高須:そう。そういう様っていうのは、大きいものであるほど面白いなぁと思って。

モモコ:面白い。そういう視点ですね、やっぱり。

高須:そうなんですよね。

モモコ:なるほどね。みんなが注目してないところに注目してみよう。

高須:そう。誰かがショックを受けている瞬間っていうのは笑いの宝庫やから。

モモコグミカンパニーさんのキャリアの転機|「いちばん怖いことをしよう」――後がない恐怖の中で挑んだ小説家の道

高須:あなたのキャリアの転機を教えてくださいっていうコーナーがあって。

モモコ:転機、何回かありまして。

高須:ありました? 教えて、教えて。

モモコ:BiSHのオーディションを受けたのと、BiSH解散ですかね。解散で自分の将来を本格的に考えるようになって。

高須:しかもそれがいちばんいいタイミングやったってことやもんね。

モモコ:そうですね。そのときは「いちばん自分にとって怖いことをしよう」っていう考えが頭にあって。当時自分がいちばん怖かったのが、小説を書くとか、本を出す行為だったんですよ。ある程度エッセーを書いてきたからこそ、「小説でトチったら、もう次本出せないじゃん」とか、「書けなかったら自分は何で頑張っていけばいいんだろう」ってまた迷走しちゃうなぁっていうのもあって。

高須:ちょっと勇気がいったんやね。

モモコ:そう。書かないままでいたほうが、「書けるかもしれない」ってずっと思っていられるじゃないですか。だから(小説を書くという)自分にとって怖いことをしたっていうのと、あと今も転機といえば転機ですね。解散後の今。

高須:しかも2作目書いたしね。

モモコ:そうですね。2作目はまあ、解散後の自分へのプレゼントとして書いたものなんですけど。

高須:脱稿(※3)したときの気持ちよさってないよね。つらくてつらくて、何度も書くのをやめようかと思うでしょ?

(※3)原稿を書き終えること

モモコ:夜の11時ぐらいにどこかの喫茶店で書いていたときに、1回iPadを落としちゃったんですよ。そうしたら拾うときに手でどこか押しちゃったみたいで、全部消えていたことがあって。

高須:うわ! 最悪やん!

モモコ:しかも2回やったんですよ、それ。

高須:最悪やん!

モモコ:5,000文字ぐらい一気に消えて。それでもう寝ようと思ったけど、「今書かないと絶対に忘れる」って思ったので、夜中の3時まで頑張って復元したりとか。

高須:うわー…キツイな!

モモコ:いちばんキツかったですよ、そのときが。泣いている場合でもないし、泣いているなら書くべきだし。

高須:しかもやり直してやり直して、出来上がった文章やもんね。

モモコ:構築していく段階だったからキツかったですね、2回やって。

高須:キツイなー! もう泣いてるよね。

モモコ:もう終わったあとなんか口が開かなくて。喫茶店にいたのにそれぐらい(口が)カラッカラになっていたんです。

高須:すげえ。

モモコ:それはもう執念というか。

高須:そうだね。

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仕事のマイルール|自信がなければつければいい。強さの秘訣は卑下せず飛び込むこと

高須:生きていく上でのマイルールみたいなことはありますか?

モモコ:私、自分はまだペーペーだと思うんですけど、あまりペーペーのふりをしないっていうのがマイルールです。

高須:あえて強がって、苦しいところに飛び込んでいくみたいな感じ?

モモコ:今も高須さんっていう業界で長く活躍している方としゃべっていても、私、別に普通でいられるんですよ。なぜかは分かんないんですけど(笑)。

高須:オーディションのときも、その感覚が良かったんじゃない?

モモコ:そう。私、大学も高校もICU(国際基督教大学)だったんです。ICUは帰国子女が3分の2ぐらいいる学校だから先輩後輩の概念がなくて、敬語を使うなっていう感じだったんです。だからそれもあって、あまり上下関係みたいなのが(気にならない)。

高須:でも全然いいんじゃない?

モモコ:敬語使えないとかじゃないんですけど、自分をへりくだりすぎないようにしています。

高須:本当にフラットに言う感じね。

モモコ:そうですね。目上の人にこびすぎないというか。「自分は自分で生きてきたんだから、自分は自分で偉いだろう」っていう気持ちで飛び込むっていうのは、結構やってるかな。

高須:変に気を使って自分で距離感を決めないで、自分らしい距離感で最初からドッといくってことやよね。

モモコ:そうですね。「自分なんか」って思っていたら出版社に小説も送れないので。

高須:いや、それこそアイドルとかできへんよね。

モモコ:できないし、根拠のない自信なんかはあってもいいんだけど、(自信がなくても)入ってからつければいいじゃないかっていう。

高須:すごいね、勇気あるなぁ。

モモコ:なくてもいいから今は。

高須:なるほどね。じゃあ意外と飛び込んでいける人なんやね?

モモコ:飛び込んでいける人のほうになる。そういうルールで。

高須:飛び込んでいって、そのやり方でちゃんと成功もしているから、成功体験がちゃんとあるんやろね。

モモコ:BiSHでは東京ドーム(でライブをする)って言って本当に埋めたりもしてきたので、そういうマインドは結構自分の中に組み込まれているのかもしれないですね。

――次回のゲストはシンガーソングライターの岡崎体育さんです。お楽しみに!

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変えるなら、きっと今だ。