放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。
今回のゲストも前回に引き続き、シンガー・ソングライターの岡崎体育さんです。「これまでの人生は100点」と語る岡崎さんですが、そんな音楽人生を歩むきっかけになったのは、なんと“満員電車”だったそう。持ち前のポジティブさでどんな困難な状況にも全力で挑んできた岡崎さんが語る「100点の人生」のお話をご覧ください。
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岡崎体育(おかざきたいいく) 「盆地テクノ」と称した独自の音楽スタイルが人気のシンガー・ソングライター。
俳優としても評価が高く、数々のドラマやバラエティー番組などにも出演。 -
高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
初ドラマのセリフは英語だらけ! 困難な状況が逆に良かった
高須:最初にお芝居の仕事が来たときに、「あれ? これやっていいんかな?」とかって思いませんでした?
岡崎:思いましたね。しかもミスキャストだったんで。最初が。
高須:えっ?
岡崎:『まんぷく』(※1)っていう朝の連続テレビドラマありましたよね? そのドラマでぼく、日系アメリカ人の役をしたんですよ。
(※1)2018年10月~2019年3月にNHKで放送された第99作目の連続テレビ小説
高須:お、おう(笑)。
岡崎:ぼくの曲で、英語風に聞こえる日本語の曲みたいなのがあるんです。それをキャスティングの方が聞いて、英語しゃべれると思われたらしくて。実際全然しゃべれないんですけど。で、セリフも英語がめっちゃあるみたいな。それで、「ぼく英語しゃべれないんですけど」「えっ? そうなんですか?」っていうところから始まりました。
高須:きついなぁ。
岡崎:外国人の先生がセリフをしゃべっているテープを何べんも聞いて。もう何言ってるか分かんなかったですけど、完全に音で覚えました。
高須:うわぁ…。すごいね。
岡崎:そこから始まってるんで。最初はそれがいちばん難しかった。
高須:演技せなあかんわ、英語やわ。もうなんか無茶苦茶やね。
岡崎:もう無茶苦茶やったんですよ。でも無茶苦茶なんが逆に良かったというか。
高須:すご。
岡崎:なんか「あ、これ乗り越えたし、ええか」みたいな。
高須:ドMですね。
岡崎:ドMなんですかね(笑)?
高須:そんなん怖くて、ぼく、ようせんもん。
岡崎:やっぱり興味があったのかもしれないですね。(お芝居を)やってみたい、試してみたいっていうのはあったかもしれないです。
高須:ご自身で撮ってみたいとか、脚本書きたいとかはないですか?
岡崎:やっぱりバカリズムさんとか見てると思いますよね。すごい面白いなと思うし、やってみたいなとも思うんですけどね。
高須:なんか撮りそうな感じがする。
岡崎:周りの音楽をやってる友達も、映画撮ったりしてるので、興味はありますね。
高須:なんかそういうのが好きそうな感じもするし、自分も(役者として)出られますもんね。しかも音楽作れてね。なんでもできるやん。
岡崎:いやいやいや(笑)。
一流の人の“素(す)”が気になる。一流である理由を分析して、納得したい
高須:趣味とかは何をされてるんですか? 休みの日とか。
岡崎:散歩、好きですね。ぼく、でかい家見るの好きなんで。普通に建築物とか見るのも好きですけど、家の建築が結構好きです。
高須:『お宅探訪』(※2)見るでしょ?
(※2)『渡辺篤史の建もの探訪』テレビ朝日系列で放送されている住宅情報番組
岡崎:『お宅探訪』は…。
高須:渡辺篤史さんのやつですよ? あれ見てない? 朝早かったですよ。
岡崎:あ、じゃあ見てなかったかもしれないです。少年野球やってたんで。
高須:え? 少年野球もやられてたんですか? 野球も興味あるんですか?
岡崎:野球興味あります。
高須:大谷翔平も見るんですか?
岡崎:WBC見てましたよ、ずっと。
高須:あれすごいっすね。
岡崎:いやぁ、感動しました。トップ取る人の人柄ってあんまり生で体験したことないんで。
高須:いやそんな、阿部寛さんを生で体験してるわけですから。ダウンタウンも(会ったことが)あるし、中居(正広)くんもありますし。
岡崎:でもお話しさせてもらったのが全部カメラが回ってる状況ですし。「カメラが回っていない場所での一流の人たちって、どんな人なんだろう」っていう興味はすごくあります。
高須:今どんな人に興味あります? 誰でも会えますよ、食事行けますよってなると誰と食事に行きたいですか?
岡崎:今食事に行ってみたい人…。ゆりやんレトリィバァさん。
高須:似てる!
高須・岡崎:(笑)
岡崎:友近さんとおふたりでYouTubeとかやられてて。
高須:ずーっとコントやってるよね。
岡崎:はい。やっぱり友近さんに対する返しであったりとか、自分の出し方のバランスとか。なんかすごい愛されるっていうのがよく分かるんで、それをちょっと学んでみたいです。
高須:もうすべて学びにつなげていくね。すごいね。そのポジティブな貪欲さ。
岡崎:そういう流れになると恥ずかしいんですけど(笑)。そんな学ぶ気とかそういうわけじゃないんですけど、気になるんですよね、やっぱり。
高須:人に興味があんねんね、結構。
岡崎:そうですね。
高須:会ったときに、「この人どういう人かな?」って想像するのが大好きですか?
岡崎:あ、大好きです。「だからこの人一流の俳優なんや」とか「だからこの人一流のお笑い芸人なんや」っていうのを自分なりにこう…。
高須:納得したい。
岡崎:分析して納得したい。それが正解じゃなくても、自分で納得すれば。
高須:むっちゃ嫌なヤツでもそれはいいし、むっちゃスケベでもそれはしょうがないなと。持ち帰って。
岡崎:むっちゃ嫌なやつだったら、むっちゃ嫌なやつやからこそ、これなんやなって。
高須:ポジティブやなぁ…(笑)。
岡崎体育さんのキャリアの転機|「一般的な社会に属せないかもしれない」 満員電車が嫌すぎて音楽の道へ
高須:あなたにとってのキャリアの転機を教えてくださいっていうのがあって。転機っていったらなんですかね?
岡崎:まあ脱サラのとこですかね。母親との約束といいますか。あの約束がいちばん自分にとって転機です。
高須:それって就職先は、「ここがいいかな」と思って一応選んだんでしょ? 自分なりに。
岡崎:そうですね。IT系の会社だったんですけど。すごくいい会社だったし、やめるときもすごく心苦しかったですけど、一回きりの人生なんで、やっぱり自分のやりたいことやりたいなと思って。
高須:それはリスクもあるじゃないですか。全然売れない可能性もある中、どう思って「やっぱりミュージシャンやりたい」って思うの? 本当のきっかけというか。
岡崎:本当のきっかけ。これ話したことないですけど“満員電車”です。
高須:え?
岡崎:嫌すぎて。
高須:(笑)。朝?
岡崎:はい。“ギュウ〜ッ”ってなって。「これをあと40年か」って。「毎日満員電車か」と思って。
高須:「俺無理やな」と思ったんですか?
岡崎:はい。「これは俺、いわゆる“社会不適合”に近いな」と思ったんですよ。みんなやっぱ定年するまで満員電車にすごく耐えて乗っていらっしゃって。
高須:当たり前ですからね。行かなあかんから、その時間に絶対に。
岡崎:そうなんですよ。でもとてつもなく苦痛だったんですよ、満員電車が。人と接しているのもそうだし、密室空間がすごく嫌で。「これは会社行けへんな」と思って。それが音楽やっていこうと思ったきっかけの一つではありましたね。
高須:でもちょっと分かりますね。ぼくも普通のサラリーマンになっちゃったら、「あと何分で終わるわー」っていう感じになるのが嫌やなと思ったんですよ。それで「やっぱり就職活動やめよう」と思って。結果、松本人志が誘ってくれたからこの業界に入れて、ものすごく助かってるんですけど。そんなちょっとしたことが「これ何十年って無理やな」ってなるのは分かりますね。
岡崎:些細なきっかけでしたけど、それが自己分析になってもいました。
全力を出せたなら人生は100点。相対評価じゃなく頑張りを評価
高須:どうですか? 今までの人生。ここまで何点ぐらいできました?
岡崎:そうですね。もちろん100点あげたいなっていう。デビューできたので。
高須:でも欲が出るじゃないですか。デビューできたら「次はここまで売れたい」とか、「この人よりもちょっと頑張って、この辺まで行きたいな」とか、目標がどんどんレベルとともに変わってくるじゃないですか。そういう欲って、出てきません?
岡崎:そうですね。でも例えば「今自分よりセールスある人が何千人いるから50点ぐらいかな」ってなると、過去の自分を否定していることになるというか。頑張った自分は頑張った自分で分かってるんで。頑張ったところはもちろん自分自身も評価してあげたいので、100点あげたい。自分の持てる範囲で全力を出してきたと思うので。
高須:確かにね。
岡崎:無理やりセールス何百万枚も売っている人に追いつこうと思っても、やっぱり力量ってあるのかなと。どうしても追いつけない壁は、ぼくはあると思ってます。
高須:あるよね。こういう人がおんねんなって。
岡崎:はい。
高須:持ってるものが違うんかね。
岡崎:それもそうですし、やっぱトップの人ってそれなりの努力ももちろんしてらっしゃる。今からぼくが野球始めて大谷選手に追いつくのって、それ100%不可能なので。
高須:絶対に不可能。
岡崎:絶対に不可能なんですよ(笑)。
高須:(笑)。いや、確かにね。
岡崎:一番の人と比べて自分が50点、40点じゃなくて、自分の力量の中で「まあ、これだけできてるから100点かな」って。
あこがれの生き方は奥田民生さん。自分が楽しいと思うことをやって生きたい
岡崎:さいたまスーパーアリーナで2019年にライブやって、その後、奥田民生さんと出会うことになるんですけど。
高須:民生くんもいいでしょう?
岡崎:いっしょにイベントやったりとかツーマンライブさせてもらったりとかしたんですけど、民生さんの人生観というか音楽観を見て、すごくその生き方にあこがれるようになりました。
高須:分かるよー…。
岡崎:トータス松本さんとYO-KINGさんと民生さんとぼくの4組でイベントにも出させていただきました。
高須:めっちゃいいやんか。
岡崎:すごい楽しい会でした。ライブ始まる前に民生さんが「ココイチのスパイスチキンカレーがうまいから食ってくれ」ってみんなに言って、スパイスチキンカレー1個だけ頼んで。
高須:みんなで(笑)?
岡崎:それを4人で、スプーンでひとくちずつ「辛いけどうまいな」って言いながらみんなで食べました。その民生さん、YO-KINGさん、トータスさんを見てて、「こんなおっさんになりたいなぁ」と思って。
高須:確かにね。
岡崎:こんだけ売れてても1個しか頼まへん。
高須:ほんまやな。
岡崎:なんかそれ見て、やっぱいつまでも若々しいじゃないですけど、なんか楽しそうでいいなってすごい思ったんですよね。
高須:確かに。民生くんはいいなぁ。ほんまにええもんね。
岡崎:そうですね。お酒好きで。メシこれがうまいと思ったらそればっか食べるし。釣りも楽しそうやし、いっつも。
高須:いいなぁ。
岡崎:そうですね。だからそこがいちばん自分の今後の活動(の目標)というか。
高須:でもやっぱり愛されてるんやね。そのメンバーが岡崎くんとなんかやりたいって思うってことは、なんかやっぱりチャーミングなんやろね。かわいいと思ってくれてんねやろうね。
岡崎:一番うれしいですね、それが。
――岡崎さんらしい学びとポジティブさにあふれた人生のお話、いかがでしたか? 次回のゲストはファーストサマーウイカさんです。お楽しみに!
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