放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。
今回のゲストも前回に引き続き、お笑い芸人のカンニング竹山さんです。バラエティーやドラマなど幅広く活躍し、多趣味でも知られる竹山さん。そんなアクティブさには、懇意にしている先輩芸人たちからのある学びが影響しているようです。竹山さん流“人生の楽しみ方”が分かるお話をご覧ください。
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カンニング竹山(かんにんぐ・たけやま) お笑いコンビ「カンニング」として“キレ芸”でブレイク後、相方の病死を機にピン芸人に。バラエティー、ドラマ、音楽と多岐にわたって活動。
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高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
芸人の仕事はライブにある。何をやっても怖くない、“芸人・カンニング竹山”を出せる場所
高須:ライブも見せてもらって、おもしろかったわぁ。いや、こんなしゃべんねんなと思って。
竹山:2時間ですね。15年前から(放送作家の)鈴木おさむさんとやっているんですけど、出たら2時間しゃべってくださいっていう演出で。
高須:いや、いいと思う。すごいいいライブやなぁと思ったなぁ。
竹山:もう大変ですよね。今度また始まりますけども。
高須:1年間かけてネタを集めて、考えなあかんから大変やね。
竹山:そうですね。この1年何があったかっていうことと、それを人に教えるためにいろいろ取材しますから。
高須:な。大変やね! でもあれがあることで、なんか1年やり切ったって感じ、やっぱするよね?
竹山:そうですね。あれがあるからいろんなことやれるっていう。別に批判されても関係ないっていう。
高須:ゴールのテープがあそこにあるからね。
竹山:そうなんですよね。「芸人の仕事はそこなんですよ」っていうのがある。
高須:あれは、ええもん見つけたなと思うよ。なんか、何やってもブレてない感じがする。コメンテーターやろうが、ドラマやろうが、バラエティー出ようが。何やってても、全部それもネタのフリになってライブで出せるっていうのはね。あれはいい。
竹山:まさにそのことを、15年前に鈴木おさむさんに言われたんですよ。
高須:おさむ、ようそんなん気づいたな。
竹山:相方を亡くして一人になったぐらいのときに、「手伝うからやりましょう」っておさむさんに口説かれたんですよ。「それやっておけば、10年後、何をやっても怖くないですよ」って言われて。
高須:本当にそのとおりやね。
竹山:本当にそのとおりになりましたね。
「思っている以上に人生は早い」先輩たちから学んだ、好きなことをやる大切さ
高須:休みの日とか何してんの?
竹山:休みができたらでかけちゃいますよね。家で寝ちゃうと、ずっと寝ちゃうから。
高須:なんか趣味が多くて、趣味の本を出したって?
竹山:あの本もね、趣味を紹介する本じゃないんですよ。トータルで言うと、「趣味なんてものはどうでもいいんだよ」と。
高須:なるほど(笑)。
竹山:「三日坊主でいいんだ」「やりたいことをやってみて、楽しくなければやめればいいんだ」と。「継続は力なり」みたいなところもあるんだけど、「ずっと続けなきゃいけない」みたいに思うからみんな遊べないんだろうっていう。
高須:確かにね。
竹山:遊びだから。やるだけやって、ハマったらやればいいし、ハマらなかったらやらなきゃいいんだっていう本なんですよ。もっと楽に考えろよっていう。
高須:なるほどね。結構休みの日には「これやってみようかな」ってすっと足運べるタイプ?
竹山:意外と行っちゃうかもしれないですね。
高須:うわ、すごいねぇ! そうかぁ。
竹山:それは『ナイトスクープ』(※1)の影響かもしれないですね。
(※1)『探偵! ナイトスクープ』朝日放送テレビ制作。1988年3月から放送されているバラエティー番組
高須:ああー。
竹山:あのロケをずっとやっているから。あれマネージャーも来ないし、一人で現場も行くじゃないですか。それで意外と慣れているかもしれないですね、そういうことに。
高須:すごいなぁ。なんか、頭に1回でも浮かんだらやっとかなあかんな。
竹山:だと思うんですよね。それをリアルに感じたのは、ここ10年くらい。いっしょに飲むのが(木梨)憲武さんとか、ヒロミさんとか、だいたい10個上くらいの先輩なんですよね。飲んでるとその先輩たちが、「やべぇぞ」って言うんですよ。酔っぱらうと(笑)。「あと20年ぐらいしかねぇかもしんねぇぞ」「だから好きなことやんなきゃ、やべぇぞ」って話をよく先輩たちがしていて。「あ、そうか。生きているってこういうことなのか」って。
高須:そうよ。俺らもそれを感じてるんやけど。昔たまたま聴いたラジオで久米宏さんが「若い人に何か一言」って言われて、「思っている以上に人生って早いからね。だから好きなことやらないと」って仰っていて。まさにそれがビシビシと分かる年齢になったのよね(笑)。
竹山:まさか60歳になるとは思わなかったってこと?
高須:俺が60歳になるなんて! まだ30代か20代の若僧の気持ちやからね。
竹山:はいはい(笑)。
高須:なんにも変わってないから! もう牛丼ガンガン2杯くらい食える俺やと思ってるのに、全然そうじゃない俺がこっちにおるわけやから。
竹山:年齢だけいっちゃってるっていうね(笑)。
高須:そう。だからそう考えると、やっぱりやるだけやっとかなあかんなって思うね。だから憲武さんのそのスタンスっていうのは、すごい分かるわ。
竹山:それでだいぶ勉強になりましたね。ベースは楽しく生きる。芸能界の仕事は楽しくなりがちだけど、普通の会社員だとしても、究極は仕事も楽しいと思えるような感じだったらいい。
高須:絶対そう。
竹山:人生楽しまないと。苦しんだってしょうがないよっていうのがあるんですよね。
高須:ほんまほんま。やっぱりこの商売やっていてよかったのは、いろんなことやってると夢中になっている瞬間が何日も続くわけやんか。この夢中になれる瞬間は、たぶんほかの仕事をやっていても、そう経験できることではないんじゃないかなと思って。この業界に入れて、よかったのはそういうことかな。
竹山:そうですね。
型通りに生きなくていい。周りと比べず、気楽に生きる
竹山:NHKのEテレでね、『今君電話』(※2)っていう番組をやらせてもらっていて。(収録で)相当な人数と喋るんですけど、結構世の中には不安がっている人がめちゃくちゃいて。でも「答えは出せないけど、もっと楽でいいんじゃない?」とか言うと、「ああ、なんかそうだね」っていう人、結構いるんですよ。
(※2)NHK EテレのハートネットTV内の企画として年6回放送されている
高須:へぇー。
竹山:だからみんな、真面目な型通りに生きなきゃいけないっていう錯覚をしてるんじゃなかろうかって。もちろん法を破るとかはダメですよ? でもサボってもいいのよって。寝ててもいい。学校も行かなくていいのよっていう。極端に言や、「食えりゃ仕事しなくていい」っていうぐらいの気持ちで生きないと、現代社会では苦しむんだろうなっていうことをすごく感じるんですよ。
高須:SNSでリア充って昔よく言われたけど、「ここに行きました」「こんなもん食べました」って発信するのって、ちょっとしたひけらかしにも見えるじゃない。なんとなくそういう発信を見て「みんなこうなんかな?」って、勘違いする人もやっぱいるよね。
竹山:自分だけ何もやってないって。
高須:そんなわけない。
竹山:そうです、そうです。
高須:ほとんどの人はサザン(オールスターズ)のライブ行ってないし。
竹山:(笑)
高須:ほとんどの人がバーベキューやってるわけないと。
竹山:やってない(笑)。
高須:でもあれ見ると、やっぱり取り残された感じになんのよね。もっと自分はこういう生活がしたいのに、そこに至れていないっていう不安はなんか煽られるよね。
竹山:そう思います。特にSNSはそう思うし。でも世の中の人って、リアルはみんな、意外と孤独ですよ。
高須:いや、そうなの。実際バーベキューやってみ? 焼きそばもそんなうまないし、肉も余ってるから。
竹山:そうそう(笑)。1年に1回の、たまのバーベキューがSNSに上がってるだけですから。それをね、ちゃんと分かったほうがいいと。自分自身もそう思うようにしてますけど。「かみさんも飲みに行って、みんな誘ったけど、誰もいねぇな。犬と二人だな」っていうときもよくあるけど。
高須:(笑)
竹山:意外とみんなそうよ、っていう。
高須:いや、みんなそうよ。
カンニング竹山さんのキャリアの転機|「キレ芸」誕生で人生が変わった。相方の死で生まれた新たな“竹山像”
高須:あなたのキャリアの転機を教えてくださいっていうのがあって。
竹山:やっぱり、ライブでキレたところ。
高須:ああ、あれ一番やね、やっぱし。
竹山:あと『虎の門』(※3)に出してもらった瞬間と、『めちゃイケ』(※4)の『笑わず嫌い』(※5)に出してもらった瞬間。あのオンエアの次の日から人生変わりましたから。
(※3)2001年4月~2008年9月にテレビ朝日で生放送されていた深夜のバラエティー番組。
(※4)『めちゃ2イケてる!』フジテレビ系列で1996年10月~2018年3月に放送されていたお笑いバラエティー番組
(※5)『偽・笑わず嫌い王決定戦』は『めちゃ²イケてるッ!』の中の人気演芸コーナー
高須:本当にそんな変わった?
竹山:本当に変わります。オンエアの次の日から。今で言うと『M-1』(※6)みたいなもんじゃないですか。
(※6)『M-1グランプリ』吉本興業と朝日放送テレビ(ABCテレビ)が主催する日本一の若手漫才師を決める大会
高須:そうね。でもやっぱり中島と会ったあの定食屋も。
竹山:あの定食屋もそうで。
高須:あんなのもう、ありえへんで?
竹山:そうです。その出会いもあるし、あと俺の場合は、やっぱ中島さんが死んじゃったところっていう。
高須:そうね。あれもあるなぁ。
竹山:そこもちょっと転機というか。まあ転機って言い方変ですけど、「ああー…、死んじゃったぁ…」と思いましたね。
高須:今の竹山像っていうのが生まれてなかったやろね。こうなってないかもね。
竹山:いや、ないと思います。どうしようかと思ってましたから。
高須:確かにね。今後はテレビでどういうことをしようと思ってる? 戦略というか、自分の中で思っていることある?
竹山:地上波でやりたいなと思っているのは、深夜の生放送。昔の夜のワイドショーというか、アメリカ的な番組とかあるじゃないですか。週1とかで、大人が見るための生放送をやりたいんですよ。深夜に。
高須:ちゃんと大人の番組ね。
竹山:大人は深夜にテレビ見てるぜっていうのもあるし、ネットに行かない大人もいるじゃないですか。だから、それをちょっとやりたくて。
高須:案外ロマンチストで、しかもそういうアメリカテイストみたいなの好きやね。
竹山:好きですね。
仕事のマイルール|悩んだら放棄する。自分を客観視して楽しめば楽に生きられる
高須:生きていく上でのマイルールをみなさんに聞いているんですけど、ありますか?
竹山:悩んだり思い詰めるときってあるでしょう? そのときに、すべて放棄する。
高須:キレ芸みたいなもんやな、もう(笑)。
竹山:「もう考えない!」っていう。そのほうがたぶん、いいです。もう白紙で行ったほうが、行けばどうにかなるかもしれないと。
高須:すげぇなぁ。
竹山:逆にそれを客観視して楽しむ。怒られても、怒られる俺を、もう一人の自分で楽しむっていう。そうすると、意外と楽に生きられますね。
高須:それはあるな。なるほどね。
竹山:自分を捨てるというんですか。
高須:なるほどね。芸人ってそれできるよね。なんかすごいね。
竹山:うん、なんですかね。
高須:俺そういう客観視っていうのができへんけど、すごいね。そういう発想で見たら、確かに。鶴瓶さんもそんな感じやもんね。
竹山:たぶんそうでしょうね。鶴瓶さん的に言うと、「俺何しとんねん」みたいな。自分のことを自分で笑えるんじゃないですか?
高須:あるあるある。
竹山:だからそのシチュエーションを作るっていう。
高須:知ってる? あの人の名言やなと思うけど、「今の今世。俺、夢みてると思ってんねん、ずっと」。
竹山:ほぉー。
高須:「これなんか夢やねん。俺、ずーっと夢を見てんねん」って。「たぶん、この世の中のこと全部夢やと思ってるからな」ってあの人言いはんねんな。「だから少々やばいことでも何でもかまへんねん。行ったほうがおもろいねん。夢やから」って、酔っ払ったときに言うねん。すごい考え方やなぁと思って。普通は「人生一度きり」ってガッチガチになってくるけど、あの人は夢やと思ってるからね。
竹山:豊臣秀吉が死ぬときの辞世の句がそうですよね。秀吉の辞世の句はいろいろあって、「浪速のことも夢のまた夢」っていう。
高須:なるほど。そういうことなのかもしれんなぁ。
竹山:だからたぶん秀吉も、夢と思って人生過ごしたのかなっていう。
高須:いや、すごい。だから鶴瓶さんも、少々脱いでもかまへんと思ってはんねやろなぁ。
竹山:まあ、そうでしょう。そうでしょうじゃないけど。
高須・竹山:(笑)
竹山:まあ、でもいい生き方ですよね、確かに。
――カンニング竹山さん流の生き方のお話、いかがでしたか? 次回のゲストはキングオブコント2023チャンピオンのサルゴリラのお二人です。お楽しみに!
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