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「準決勝は最下位だった」キングオブコント審査員・高須が明かす、サルゴリラの知られざる逆転劇|ラジオアーカイブ

「準決勝は最下位だった」キングオブコント審査員・高須が明かす、サルゴリラの知られざる逆転劇|ラジオアーカイブ

前編:2023.11.19(日)放送回
サルゴリラ|赤羽 健壱さん、児玉 智洋さん
お笑いコンビ

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「空想メディア」ロゴ04

放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。

今回のゲストは、キングオブコント2023王者のお笑いコンビ、サルゴリラのおふたりです。優勝直後に登場してくれたおふたりに、準決勝で審査員を務めた高須さんが衝撃の裏話を告白! 審査員目線で語られるサルゴリラのネタ考察も必見です。まるでキングオブコント反省会のようなお話をお楽しみください。

  • 赤羽 健壱、児玉 智洋

    赤羽 健壱(あかば・けんいち)、児玉 智洋(こだま・ともひろ) 幼なじみのお笑いコンビ。『サルゴリラ』として2016年に結成。キングオブコント2023で歴代最高得点を獲得し、優勝した。

  • 高須光聖さん

    高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
    中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。

あの優勝は大逆転劇だった? 準決勝の裏にあった運命の分かれ道

高須:ぼくは何回か(キングオブコント)準決勝のときから見てるから(※1)。

(※1)『キングオブコント』はTBSテレビが運営するコントのコンテスト大会。高須さんはキングオブコント2023準決勝の審査員の一人

赤羽・児玉:ありがとうございます。

高須:決勝に出られなかった年も見てるのよね。今年(2023)のマジシャンのネタ。(審査員の)みんな、面白いなぁってなったのよ。でもぼくは好きやったんやけど、魚のネタがちょっと(評価が)落ちたのよ。

児玉:ええ! すごい話ですよ? のっけから。

高須:ここだけの話、最下位やったのよ。

赤羽・児玉:どぅあー!

高須:ギリギリで入ったのよ。

児玉:本当ですか?

高須:本当に。1点差ぐらい。

赤羽・児玉:あぶねぇー!

高須:「(勝ち上がるかどうか)どっちや?」ってなるときにぼくがよくするんやけど、(審査員室に)入るときに「おもろかったよな。魚のとか、俺好きやわ」って、なんかふぁーっと。

赤羽・児玉:(笑)

高須:万が一、万が一。なんかね、魚が若干ノリきれてない感じがあって。俺は楽しかったんよ? 俺はずっと笑ってたけど、(周りを見て)「あれっ?」と思って。「いかんいかん」と思ったら、本当に最下位やったのよ。

児玉:うわー! すご!

赤羽:えぇー!

高須:でも人生って不思議じゃない? そこで落ちていたら今はないねんけど、ギリギリで決勝に入って。で、(決勝戦で)歴代トップよ?

赤羽・児玉:うわぁー。すげぇ。

高須:いや人生ってね、分からんことが起こるなぁと思って。

赤羽:そうですね、確かに。

高須:同点の場合は議論になるわけよ。おのおの思うことをしゃべってから、もう1回投票するのよ。それを踏まえた上で決まんねんけど、今回は本当に1点差か2点差で入る、入れへんのボーダーやったんよ。

赤羽・児玉:あぶねー!

高須:あっぶないねん。

赤羽・児玉:(笑)

高須:全然違う人生やったのよ。

児玉:本当ですよね。

10年続いたトリオを解散。コンビになって感じるお笑いへの充足感

高須:『333 トリオさん』(※2)とかも、「選ばれたんや」と思って。あのときはもう「あ、きたぞ」って一番に思ったでしょ?

(※2)2010年10月から2015年9月までテレビ朝日系列で放送されていたバラエティー番組

児玉:そうですね。あのときは『トリオさん』のほかに『板尾ロマン』(※3)っていう番組が始まって。急にレギュラー2本に。

(※3)テレビ東京系列にて、2010年10月から2011年9月まで放送されていたバラエティー番組

高須:あらぁー。

児玉:「きた」と思いましたね。

高須:そのころもバイトとかしながらやってたの?

赤羽:レギュラー番組やっているころにはもう(やっていない)。

児玉:あのころは劇場自体がすごい人気で。

高須:ああ、そっかそっか。

児玉:特にパンサー、ジャングルポケット、ジューシーズ(※4)がとんでもない人気で。

(※4)サルゴリラのお二人と「家事えもん」で知られる松橋周太呂さんで組んでいたトリオ。2015年に松橋さんの脱退に伴い解散し、サルゴリラとなった

赤羽:あんま自分で言わない(笑)。

児玉:私も当時は男前ランキング8位に入らせていただいて。

赤羽:8位はあんま言わなくていい(笑)。

高須:でも解散した瞬間に、普通はなんかギスギスとするものやん。なんか文句言いあったり、「もっとこうしたほうがよくない?」って話したりはしなかったの?

赤羽:そこでギスギスというよりは、ジューシーズを解散できたことですごい開放感があって。

高須:松橋も自分でちょっとやりたかったのかな?

児玉:そうですね。だから後半は3人とも解散したかったっていう感じではありました。

高須:でも3人ともやったらみんなピンでやるのかなと思いきや、そうじゃないじゃない?

赤羽:ここは幼なじみなので。松橋もそれは分かってるんで。

高須:彼も家事えもんとかで成功してるから。

赤羽:そうです、そうです。

高須:じゃあ文句を言うこともなく、「まあ、いつか売れるか」みたいな感じで解散したの?

赤羽:というより、もっとポジティブに。

高須:ええ?

赤羽:サルゴリラになってからお笑いが楽しくてしょうがないというか。

高須:もう、どんだけ人がいいねんな。

赤羽・児玉:(笑)

「楽しいことをやっていたい」東京出身だからマイペースでいられた

高須:下(の世代)が売れてきたりとかすると、ちょっと気にならへん?

児玉:なんか本当にそういうタイプじゃなくて。たぶん1回もそういう思いになっていないかもしれない。

高須:幸せやなぁー!

児玉:東京出身で、上京してないっていうのがすごく大きいかもしれないです。

高須:実家があるから。

児玉:(赤羽は)いまだに実家暮らしですよ。

赤羽:44歳で。

高須:そんなアホな。居づらいやんか。

児玉:それどころか、毎日おばあちゃんに1,000円もらってるんですよ。いまだに。

赤羽:(笑)

高須:マジで? ネタじゃなくて?

児玉:ネタじゃないですよ。本当に。

赤羽:ここからは返して。

高須:もちろんここからはそうやけど。ここまでは?

赤羽:もらってました。

高須:幸せな家族やなぁ。でも親の無言のプレッシャーとかさ、親戚が集まるときに居場所がない感じはなかったの?

赤羽:なんかその辺すごい鈍感というか、まったく気にならなくて。

高須:マジで? でも普通は、もう43、44歳になったらある程度社会的に見てもしっかりせなあかんなっていう頭はあるやんか。これだけのネタを考えてる人間やから、それを感じないわけないやん。でも人よりは、すごい鈍感でおれたんや。

赤羽:そうなんですよ。

高須:すげぇ。

児玉:ぼくは「楽しいことをやっていたい」っていうのが、やっぱり一番で。

高須:18歳じゃないんやから。

高須・赤羽・児玉:(笑)

児玉:今でも18歳です。ぼくは青春やってますよ。

高須:なるほど。いや、それなら分かるよ。でもなかなか44歳で18歳の気持ちにはなられへんからね。

児玉:そうですね。だから楽しいことでお金を稼げればいいなと思います。そのためには頑張ろうと思います。

高須:えらいなぁ。

勝因はネタ順。震えるほどの緊張の中で神がかった決勝戦

赤羽:準決勝と決勝で、(ネタの)順番逆なんですよね。

高須:そうやんな。だから全然違ったもんな。

赤羽:全然違いました。やっぱり1本目にマジックをやって、児玉のキャラがお客さんに伝わったから。

高須:よかったよなぁ。1本目も点数よかったし。どう? やってみて。「あれ? これ1、2、3位決まっちゃうんちゃうか?(※5)」と思うやん。どんな気持ちやったの?

(※5)決勝戦1stステージでサルゴリラは最後から2番目の9番手で登場。8番手まではトップバッターから3番手までの3組がトップ3をキープし続けていた

児玉:トップがカゲヤマっていうのは、ある程度予想はしていたんですよ。

高須:でもそれがずっといくとは思ってないやん。

赤羽・児玉:いや、あんなに続くとは。

児玉:みんな焦ってましたよ。もう普通のネタじゃウケないみたいな感じにちょっとなってきて。「俺らのネタもスロースタートだし…」と思って焦りましたけど、まぁねぇ…。

高須:やるしかないからなぁ。どこで「くるかも」っていうのを感じた?

児玉:最初のマジック。小箱にピーナッツを入れるっていう細かいところが不安だったんですけど、あそこが。

高須:グワーッときたもんな。

児玉:きたんで。

高須:もうノリ出したもんな。

児玉:ちょっともう…ノっちゃいましたね。かかっちゃった(※6)かも。

(※6)テンションが上っている状態を表す業界用語。この場合は「ゾーンに入った」のような意味

高須:すごいかかってた。だからよかったと思う。

児玉:2本目は赤羽が板付きで、ぼくがあとから出てくるんですよ。それでぼくが出てきたときに、会場の何人かがクスクス笑ったんですよ。そのときに、「俺、求められてる…」。

高須・赤羽:(笑)

児玉:「ハマっちゃってる…」っていう、なんかそこで「イケるかも」ってちょっと思っちゃいました。

高須:よかったなぁ。

赤羽:早い段階でそうなったから、たぶんよかったんですよね。

高須:なるほどね。

児玉:でも手は震えていたみたいです。

赤羽:マジックのネタで。

高須:そうね、確かに手が震えてたね。

児玉:全然気づかなくて。本当は手が震えたとき用にいろいろ考えていたんです。

赤羽:でも2人とも本当に夢中で。緊張でぼくも視野が狭くなっていて、2人とも分かってなくて。

高須:でも最悪震えたとしても、一応設定上なんとか。

児玉:そうですね。

「あれは絶対いらんかった」審査員目線で決勝ネタを振り返る

高須:「逆撫でるな」(※7)っていうのは、いらんなぁと思ったのよね。

(※7)決勝2本目のネタ中に「相手の気持ちを逆撫でるな」というくだりがあった

赤羽・児玉:あー!

高須:あれは「あ、冷める」と思って。ウケるよ? ウケんねんけど、「魚で押してほしいのに」と思って。でもそこ一発だけで、魚でまたいったから。

赤羽:いやぁでも、悔やまれるね。

児玉:そこは本当に迷ったんですよ。

高須:絶対いらんと思うわ。あのメンバーやったらね、審査員が。

児玉:そうですよね。

赤羽:なんか小手先…。

高須:そう。小手先。(審査員は)「逆撫でるな」で笑うタイプじゃないやんか、もう。

赤羽:そうかぁ、確かに。

児玉:でもなんかうれしい。

赤羽:うれしい。めっちゃくちゃうれしいです。

児玉:ぼくらもまさにその気持ちだったんですよ。

赤羽:めっちゃ迷ってました。「これどうなんだろうね?」みたいな。

高須:ちょっとスタックするというか。だって全部魚でくるから面白いねんもん。

児玉:なんか分かんないけどテンション上がってきた。なんだこれ?

赤羽:もう全部分かってくれてる感じが(笑)。

高須:いや、そう思ったよ。もったいなかった。

児玉:(ネタができた)最初は入れていなくて、「1回入れてみる?」ってライブで入れたらウケて。それが結構毎回ウケるので…。

高須:分かる分かる。もうこれはしょうがない。でも。でも…。

赤羽:そうですよね。プロにはもう。

高須:ぼくはプロじゃないけど、あの5人になら、そりゃあ魚で押したほうがいいよ。

児玉:そうかぁ!

赤羽:うれしそう(笑)。

児玉:ありがとうございます。

赤羽:来年もう1回出る?

児玉:なんでだよ! 「逆撫でる」抜きで?

赤羽:(笑)

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優勝を目指しネタを作り続けた日々。磨き上げた珠玉の2作でつかんだ栄光

高須:ネタって今、何本ぐらいあるの?

児玉:キングオブコントで優勝するためにずっとやってきたんで。毎月新ネタライブで3本やって、ほかにもやって。月5本ぐらい作ってる年もありました。

高須:すごいねぇ。

赤羽:でもほとんど残らないパターン。

児玉:それなりにはありますけど、同じようなネタもありますし。

高須:去年も…。

赤羽:そうなんです。去年もマジックのネタを。

高須:そう、やってたよね?

赤羽:パッケージというか、似たような。

高須:いや、マジックのネタは去年見たなぁと思ったんです。でもやっぱり、かかってたのよ、決勝戦は。2人の中での妙な垢とかが取れて、すごい素直なネタになってた気がしたのね。

赤羽:うれしい。正直、去年やってから1年かけてたたいたというか。

児玉:めちゃくちゃいろいろ変えましたよ。カードの種類とか。

高須:え? どう変わってた?

児玉:「秋のメキシコ」っていうところが「雨の六本木」だったんですよ。いろいろ今回も試したよね。「年末のアルゼンチン」とか。

高須:ああ、ちょっと好きやな。

赤羽・児玉:(笑)

高須:1本目のマジックネタっていつごろ作られたやつなの?

児玉:3年前の単独ライブでやって。なんか芸人の評価がいいんで、ちょっと賞レース用に仕上げて。

高須:魚のネタは?

赤羽:魚は今年のネタです。

児玉:去年のキングオブコントがダメで。その次の月にやった新ネタライブでできたんですよ。

高須:おおー! ええのできたなぁ。

児玉:「もしかしたらこれ、育てたらいけるかも?」って、ちょっと早めに安心できたのはあります。

高須:ネタはどっちが書いてんの?

赤羽・児玉:2人で。

児玉:最初は魚だけじゃなかったんですよ。「青春の魚」の次が、「努力というアイスコーヒー」だっけ?

赤羽:「努力というコーヒーを飲むことができる」。

児玉:みたいな。魚だけじゃなく、毎回例えを変えているんですよ。でもなんかベタというか。もっと思い切ったほうが。

高須:もっと行ききったほうがいいなと思って。

児玉:でも魚っていうフレーズがなんか面白かったんで、もう魚で。

高須:1本でいこうっていうね。よかったなぁ。

児玉:本当に怖いネタではありましたね。勇気がいる。魚1本なんで。

赤羽:普通にいいことを言っている風に聞こえなくもないので、そこのウケが準決勝ではやっぱり弱くて。ほかの劇場でやっているときもそれがあったので、決勝ではまず(1本目で)ルールがお客さんに伝わってからやったのがよかったなぁって。

――キングオブコント優勝の裏にあった逆転劇のお話、いかがでしたか? 次回は高須さんがサルゴリラのおふたりにより深く切り込んでいきます。お楽しみに!

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