放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。
今回のゲストは前回に引き続き、キングオブコント2023王者のお笑いコンビ、サルゴリラのおふたりです。幼なじみで仲良しコンビのおふたりは、優勝直後もちょっぴりマイペース。そんなおふたりに、高須さんが思わずアドバイスを送ります。笑いとツッコミ満載の3人の掛け合いをお楽しみください。
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赤羽 健壱(あかば・けんいち)、児玉 智洋(こだま・ともひろ) 幼なじみのお笑いコンビ。『サルゴリラ』として2016年に結成。キングオブコント2023で歴代最高得点を獲得し、優勝した。
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高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。
芸歴20年目で勝ち取った王座。興奮と混乱の優勝直後
高須:優勝からもう1週間ぐらいたつけど。
児玉:まだ5日目です。
高須:ほやほややん。
児玉:ほやほやですよ。
赤羽:いろんなとこ行くと優勝後に初めて会う同期の芸人さんとかに会えるんで、めちゃくちゃ今うれしいです。
高須:うれしいなぁ。同窓会とかでもなんか言われんのとちゃうの?
赤羽:ぼくら地元が高円寺なんですけど、2年前に空気階段がキングになったとき、高円寺純情商店街のアーチに「高円寺芸人鈴木もぐらさんおめでとう」って幕が付いたんですよ。ぼくら2人とも高円寺出身なのでどうなるかなと思ったら、昨日「高円寺出身芸人サルゴリラさんおめでとう」って。
高須:おお、よかったね! 地元のお父さんお母さんもちょっと鼻高々やね。親孝行したね。
赤羽:やっと親孝行できました。
高須:なぁ。だからな、(優勝コメントで)もっと泣いたらいいのにと思いながら。「泣くなよ、おまえ」で魚(での例え)をなんかもう1個足してくれたら、もう売れる、売れる。
赤羽・児玉:(笑)
児玉:そこまで考えなきゃいけないんですね(笑)。
高須:泣いたらみんな感動するやんか。優勝の後もショーやからね。
児玉:いや、ショースイッチ入れらんないなぁ。興奮してましたもん。でも泣くと思ってました、ぼく。
赤羽:はい。絶対泣くと思ってました。
児玉:でも全然…何だろうね?
高須:もう、うれしさが勝ってもうたんやな。
児玉:興奮ですね。うれしいというか、もう訳が分からない。
赤羽:「うそでしょ?」っていう。
高須:そっか。振り返らないとなかなか泣かれへんよな。あの時点では優勝でもう頭がいっぱいいっぱいだから。芸歴何年?
赤羽:ぼくらは20年目です。
高須:うわぁー。20年目か。
児玉:はい。だから終わって、SNSとかでパンサーの向井(慧)とかジャングルポケットの太田(博久)とか、みんなが泣いている動画が上がってたんですよ。それ見たときに、やっと。
高須:いや、遅い遅い遅い。それをイメージしといてくれな。
赤羽:(笑)
児玉:そんな余裕ないって!
高須:優勝するとはまったく思ってなかった?
児玉:いや…思っては…。
高須:だってさぁ、1本目で「これひょっとしたら優勝あるかもな」と思ったら、その後のコメントとかプラスアルファで…。
児玉:いや、そんないやらしくいけない。
高須・赤羽:(笑)
児玉:「ここで泣いて…」とか。
高須:そんなやつおらんよな(笑)。でも得点がダーンッ! ダーンッ! ダーンッ!って入ったあの感じは、「うわっ! うわっ! うわっ!」って。
赤羽:もうまさに。
高須:なぁ。
赤羽:最初に同期の山内(※1)の97点で「うわーっ!」てなって。
(※1)お笑いコンビ『かまいたち』の山内 健司。キングオブコント2023の審査員の一人だった
高須:「うわーっ!」って思うよな。で、山内だけじゃなくて、何と!ってなるよな。
赤羽:だからたぶん、ぼくら1本目のほうがウルッときてて。
高須:ああ、なるほど。そうか。
赤羽:そうなんですよ。でもここで泣いたら変なやつすぎるって、めっちゃ我慢したんですけど。
高須:でもくるよなぁ。
赤羽:めっちゃきました、あれは。
優勝はゴールではなくスタート。スターになるためのショーがここから始まる
高須:ここからやからね。ショーやから、ここからは。取った事実は、もうお飾りやから。
児玉:お飾り⁉ 優勝がお飾り⁉
赤羽:(笑)
高須:もうお飾り。もうお飾り。
児玉:厳しいってこの世界!
高須:当たり前やんか。優勝した事実はもうニュースとして出てるから。もう世の中に一周回ったから。
赤羽・児玉:そっか。
高須:だからそれを踏まえた上で、いろんな番組に出るときに何言おうかなっていうのを考えないと。もっと言うと、ここで話したことも「使えるもんないかな」っていう拾い作業をせんと。
赤羽:うわぁ、そっか。
高須:(番組に)呼んでもらって、そこで終わりじゃないやん。ただ優勝して一周回ってるだけやないからね。この一周で売り込まなあかんから。
赤羽:そうですよね、売り込みですよね。ここからは。
高須:そうよ。
児玉:厳しい…。
赤羽:ぼくら本当に20年、ネタに集中してきたんで。
高須:そうね。ここからはちょっとしゃべることとかエピソードも足していかないと、なかなか。
児玉:もう味わっちゃダメなんですか?
赤羽:(笑)
高須:味わっちゃダメです。味わうのは家だけです。
児玉:ずーっとエゴサーチしてますよ、いまだに。
赤羽:エゴサーチ止まんないです(笑)。
高須:だいぶなくなってきたでしょ?
児玉:いや、まだ搾り取ってます。
赤羽:意外とまだいけます(笑)。
高須:取るなぁ(笑)。
児玉:取りますよ、まだまだ。わざと電車で通勤して、指さされるかどうか確認してみたり。
高須:どう? 指さされる?
児玉:指さされない。優勝したときが白髪だったんですよ。その写真が出回ってて。
赤羽:本当におじいちゃんだと思われてるんです(笑)。
児玉:本当におじいちゃん芸人だと思われてたり。
高須:そうか。ちょっと男前やしね。微妙やねん。
児玉:8位ですからね、男前ランキング。
赤羽:言わなくていい(笑)。
食べて、遊んで、優勝して。忘れられない最高の一日
高須:趣味はなんかないの?
児玉:ぼくはサウナが。
赤羽:2人とも好きですね、サウナ。いっしょに行きます。
高須:家の近所とか? どういうとこ行ったりするの?
児玉:(近所も)行きますし。それこそKOC(キングオブコント)の決勝当日に最初ルミネ(theよしもと)で出番があったんですけど、それが終わって決勝まですごい時間が空いちゃって。
赤羽:4、5時間あったんです。
児玉:で、2人でまずしゃぶしゃぶ食べ放題行って。
高須・赤羽・児玉:(笑)
児玉:その後2人で買い物して。
高須:仲良いなぁ!
児玉:洋服買って、サウナ行って、決勝行って、優勝しました。
高須:おお、ええなぁ!
赤羽:(笑)
児玉:最高の一日。
高須:最高の一日やなぁ(笑)。
赤羽:最高の一日です。本当に。
児玉:忘れられない。あの一日は。
サルゴリラのキャリアの転機|「ウケ狙いではなく好きな笑いを」18年目で確立した自分たちのスタイル
高須:あなたのキャリアの転機を教えてくださいって聞いているんだけど、転機はここ(キングオブコント優勝)が一番になるよね?
赤羽・児玉:そうですね。もちろん。
高須:そのほかにも転機っていうのはある?
児玉:2年前のキングオブコントの2回戦。ここが結構転機。
赤羽:転機ですね。
高須:ええー。
児玉:それまでは「逆撫でるな」じゃないですけど、ウケなきゃと思ってウケやすいネタを。
赤羽:そっちをチョイスしてたんですよ。
児玉:でも2年前の2回戦は、もう自分らが好きなネタをやろうって。自分らが面白いと思うネタをやろうって言ってやって、それがウケたんですよ。あ、俺らのここを育てればもしかしたらいけるかもって。
高須:遅いなぁー。18年目やんか、それ。
赤羽・児玉:(笑)
赤羽:遅かったですね(笑)。
高須:それ、少なくとも10年以内にやらなあかんことやんか。
赤羽:みんな早えー(笑)。
児玉:そうですよね。
高須:もう、文化祭やってるような気持ちでおったんちゃう?
赤羽:(笑)。友達といるから、そんな感じかもしれないですね。
高須:でもそこ分かったってすごいね。自分たちのスタイルを見つけることもできずに終わっていく人もようさんおるからね。
赤羽・児玉:ああー、なるほど。
高須:まあそこに気づけたというのと、自分たちが面白いっていうスタイルを確立できたのも良かったよな。
赤羽:はい。そういった意味では本当に転機ですね。
高須:それ何のネタ?
児玉:面接のネタがありまして。ちょっと似てるんですけど。
赤羽:ぼくが面接官で、こいつが面接を受けに来ている子で。優秀なんですけど最後に特技をやっていって、その特技が全部気持ち悪いっていう。
高須:なんか俺覚えてるな。あれ準決でもやってる?
児玉:その2年前の準決でやって。
高須:な。やってるよね。それも覚えてるから、たぶん面白かったんやろな。
赤羽:ああ、うれしい。
仕事のマイルール|一生文化祭気分。芸能界という荒波も仲良く楽しく泳いでいこう
高須:自分たちの中で決めているマイルールみたいなことがあったら、なんか教えてもらいたいなぁと。
赤羽:やっぱりさっき言ったように、本当に仲良く、楽しく。
高須:そうやなぁ。人生やもんな。人生の一部やもんね。結局仕事なんてね。
児玉:一生文化祭。
赤羽:(笑)。スローガンですね。
高須:それのほうがいいなぁ。ほんまそう。人生の中の一部にいろんなものが付いているだけで、人生やからな。それは楽しいほうがいいよ。
赤羽:はい。
児玉:そうです。
高須:はぁー。ゆるいなぁー。
赤羽・児玉:(笑)
高須:ここからもう生き残っていかなあかんのに、ゆるいなぁ。でも、それもスタイルやからね。
児玉:そうですね。変えられないんで。
高須:そうやね。それがええとこかもしれんからね。でもね、どうせやったらカラーをつけて、いろいろともっとやっていったらいいやんか。
赤羽・児玉:カラー?
高須:ここから何かやっていこうという仕掛けはないの? 芸人として。テレビ出ていくに当たってよ?
児玉:確かにそういう作戦会議必要ですね。
高須:いや絶対必要やって。もう遅いぐらいやで? 「こう言われたらこう言おう」みたいなのを、もう何パターンも持って出なあかんよ。
赤羽:うわぁ…。
高須:ほんま。だからネタプラスアルファでその返しも今から考えとかんともったいないから。だって、こんなに振られることってないで?
赤羽:そうですよね。確かに。
高須:しかも今、全員が(サルゴリラを)知っている状態やから。キングオブコントのチャンピオン。歴代最高得点たたき出した。44、43歳で年齢がいってます。これ面白いやんか。そこをいじってくるから、どう返すかだけ。
赤羽:はぁー。
児玉:なるほど。
高須:もうこれ、全部いろんなところで出るから。
赤羽・児玉:そうですね。
児玉:確かに、もう緊急会議ですね。そこはちょっとまずいですね。
高須:そう。ダメなときのお互いの救い方とか。スベったなぁっていうときに、どうやって救うかみたいな。
赤羽:それは絶対あったほうがいいですよね。スベりっぱなしじゃない。
高須:ギャグでも何でもいい。魚でもいいから。
児玉:そうか魚だ。
赤羽:(児玉が)魚を全然言わないんですよ。
高須:何で言えへんの?
赤羽:ぼくはもっと言ってほしいんですけど、全然言ってくれない。
高須:まぁ、照れくさいのかもね。分かるけども、そこはみんなが待っているところもあるから。何でもいいよ? 魚以外にも何か持っていたほうがいいよ、絶対。
赤羽:そうですよね。
高須:いろいろまいて、そのまき餌が今度また戻ってくるとこがあるから。ちゃんとね。
児玉:うまいなぁ。俺より。
赤羽:(笑)
高須:でもほんまに、ほんまに。本当そんなんがあるから、絶対に。
――仲の良いサルゴリラのおふたりならではの笑いにあふれたお話、いかがでしたか? 次回のゲストはアーティストの井田幸昌さんです。お楽しみに!
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前編:2023.11.19(日)放送回
「準決勝は最下位だった」キングオブコント審査員・高須が明かす、サルゴリラの知られざる逆転劇|ラジオアーカイブ
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