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井田幸昌を世界的アーティストへと導いた出会いのストーリー|ラジオアーカイブ

井田幸昌を世界的アーティストへと導いた出会いのストーリー|ラジオアーカイブ

後編:2023.12.10(日)放送回
井田幸昌さん
画家、美術家

ラジオ音源はこちらから

「空想メディア」ロゴ04

放送作家の高須光聖さんがゲストの方と空想し、勝手に企画を提案する『空想メディア』。
社会の第一線で活躍されている多種多様なゲストの「生き方や働き方」「今興味があること」を掘り下げながら「キャリアの転機」にも迫ります。

今回のゲストも前回に引き続き、現代アーティストの井田幸昌さんです。若くして世界中にファンを持つ人気アーティストとなった井田さん。その成功の裏には、井田さんの才能を見いだした人々との出会いがありました。「一期一会」をコンセプトに作品を作る井田さんの、人生を変えた出会いのストーリーをご覧ください。

  • 井田 幸昌さん

    井田 幸昌(いだ・ゆきまさ) 「一期一会」をコンセプトに作品を手がける画家・芸術家。作品は世界中で高く評価され、Forbes JAPANの『30 UNDER 30 JAPAN』にも選出された。

  • 高須 光聖さん

    高須 光聖(たかす・みつよし) 放送作家、脚本家、ラジオパーソナリティーなど多岐にわたって活動。
    中学時代からの友人だったダウンタウン松本人志に誘われ24歳で放送作家デビュー。

作品が宇宙へ。妻がつなげた前澤友作さんとの出会い

高須:前澤(※1)さんが宇宙に行くときに作品を持っていったって。どういうつながりで?

(※1)前澤友作。有限会社スタートトゥデイ(現株式会社ZOZO)の創業者で日本の民間人として国際宇宙ステーション(ISS)に初めて滞在した

井田:前澤さんがバスキア(※2)を買われた年にコンペがあってですね。当時の彼女で今のかみさんが「こんなコンペあるらしいよ」って資料を持ってきてくれて。「こんなのあるんだ。出そうかな」とか言っていたんですけど、もう面倒くさくなっちゃって。ぼくコンペ自体あまり好きじゃなくて。自分で書類書いて出すのが。それで、もういいわと思って放置していたんですよね。ある日その資料がなくなっていて。「どこ行ったかな? 捨てたのかな?」と思っていたら、かみさんが勝手に出してて。

(※2)アメリカの画家のジャン=ミシェル・バスキア

高須:おお。

井田:「審査通ったよ」って通知が来ましてですね(笑)。出せる作品があまりなかったからあるもので出すしかないけど、せっかくだから見てもらおうと思って出したんですよ。その作品を前澤さんがいたく気に入ってくださいまして。そこからのお付き合いなんですけど。

高須:ええー、じゃあもう昔からやね、結構な。

井田:そうですね。ニューヨークに住んでいたときの軍資金も、前澤さんが買ってくださったお金から出していたりと、本当に応援してくださっていて。宇宙に行ったときは本当びっくりで。前澤さんから急にLINEが入って。「井田くん。俺ちょっと宇宙行くんだけど」みたいな。

高須・井田:(笑)

井田:「いや、知ってます、知ってます」みたいな(笑)。

高須:「もう散々しゃべってましたやん」みたいな(笑)。

井田:「生きて帰ってきてくださいね」みたいな話をしていたら、「井田くんの作品あるじゃん? あれ持っていっていい?」ってすごいライトに言われて(笑)。一瞬「ん?」って。

高須:どういうこと? 持っていくって?

井田:「どういうことですか?」みたいな(笑)。

高須:おもしろいねぇ。

井田:そうしたら本当に「井田くんのアートを持っていきたい」って。ちっちゃいペインティングがあったんですけど、「これぐらいのサイズだったら持ち込めるみたいだから、いい?」って言われて。

高須:そんなのもう、ねぇ。

井田:そりゃ宇宙って、男の子の夢じゃないですか。

高須:そんなとこに自分の分身が行くなんて。

井田:本当。ありがたいことだなと思って。ロケットが発射される日はずっと「落ちるなよー! 落ちるなよー!」ってスタジオでスクリーンに映して見ていましたけど。

高須・井田:(笑)

高須:へぇー、すごいねぇ。

井田:感動しましたね。

ハリウッドスターから突然のオファー! 世界に知られる起点となった夢のような一日

高須:いろんな話を聞いているんですけども、(俳優の)レオナルド・ディカプリオのファンデーションオークション最年少? これなんなの?

井田:ディカプリオさんは、すごいアートコレクターとして有名なんですよね。アート系の財団を持っていらっしゃって、慈善事業もされているんですよ。その慈善事業の資金に充てるためのすごい大きいオークションがフランスでやっていたんですよね。当時ぼくはまだ26歳とかだったんですけど、ある日突然インスタにDMが来ましてですね。

高須:インスタで(笑)。

井田:英語でなんか「こういうのがあるから出してくれ」って。で、まあ「詐欺やろ」と思って(笑)。

高須:普通は詐欺やと思うよね。ややこしい詐欺してって。

井田:「こんなもん詐欺やろ」って2日ぐらい無視したんですよね。そうしたら彼のマネージャーみたいな女性の方から、「レオから連絡入ったと思うんだけど、出してもらえますか?」って言われて。

高須:また手の込んだ詐欺やなとか、俺なんか思ってまうけど。

高須・井田:(笑)

井田:その人のアカウント見たら結構ちゃんとした方だったんで。「ああ、あれ本当やったんや」「出します、出します」って(笑)。

高須:うれしいなぁー。

井田:出品アーティストとかもまったく知らない状態で返事をして、オークションに行ってみたら、世界中のトップアーティストがみんな出ていまして。そこに27歳のデビューしたてのぼくが交じっていて。もう訳分かんない。

高須:おお、訳分かれへんよね。

井田:(俳優の)トビー・マグワイアが寄ってきてくれて、「井田でしょ? いい作品描いてんじゃん」みたいな。あとディカプリオさんとも。

高須:え! あのディカプリオとしゃべったの?

井田:しゃべりました。ちょっとハグしてもらって。かっこよくて、本当に映画の世界みたいだったんですけど。テーブルに座ってグワーッて酒飲んでいたら、ディカプリオさんがこっち向いてくれて、ウィンクしてもらったんですよ。

高須:うわー! またかっこええなぁー。

井田:かっこいい。もう、「どこぞの映画ですか?」みたいな。

高須:いやほんまやで。タイタニックやで。すげー!

井田:夢みたいな世界だったんですけど、そこでいろいろ世界的なギャラリストさんや美術家の方が見てくださって。いわゆるシンデレラストーリーみたいな感じですけど、そこからちょっとだけ認知されるようになり。

高須:いや、ちょっとどころじゃないでしょ、そんなの。そこに呼ばれること自体がそう簡単ではないわけじゃん。もっと仲良くなったらよかったのに。レオがウィンクしてくるくらいやったら。

井田:(笑)。メアドだけは知っているんでね、連絡は取れるんですけど。

高須:おお、すげー! めっちゃええやん! たまらんなぁ。言ってみたいなぁ。「レオからメール来んねんで」って。

高須・井田:(笑)

井田:いや、本当にごくたまにですけどね。

高須:すごいねぇ!

井田:本当に夢みたいな日でしたね。あの日は。

高須:でも作品を見ただけで自分のことを知ってもらえて、なおかつ興味を持ってもらえるって、やっぱりいいね。

井田:よかったなと思うのは、ぼくが何か偉いことしたわけでもなくて、絵がぼくをどこかへ連れていってくれるっていうのがあって。

高須:でも「絵が」って言うけど、それやっぱり人ができていないと作品もなかなかそうならないでしょう。

井田:どうなんですかね(笑)。

高須:って、いいこと言うよ。

高須・井田:(笑)

仕事のマイルール|欲望に忠実に。自分のわがままに対する責任から逃げたくない

高須:生きて行く上での仕事のマイルールはありますか?

井田:いろいろありますけど、シンプルに言うと「欲望にどれだけ忠実にいられるか」みたいなところかなと思って。

高須:なるほどね。確かにね。

井田:清水寺の英玄和尚(※3)とちょっとお話しさせてもらったんですけど、修行僧の方々は欲を捨てていくようなイメージがあるじゃないですか。でも英玄さんがぼくに言ってくれたのが、「欲を捨てるんじゃなくて、大きな欲を持ちなさい。なるべく大きな欲を持っていれば人生が豊かになるし、それによって救われる人も生まれてくるから、そっちに集中したほうがいいんですよ」っていうことで。それを聞いたときに「なるほどな」と思って。

(※3)大西 英玄。京都の清水寺で法務を務めている

高須:欲ね。

井田:確かに欲望に対して忠実であるっていうのはエネルギーがいるし、体力もいるじゃないですか。だからなかなか大変なことなんですけど、それを人生で貫徹できたら、きっと「楽しかったなぁ」って言って死んでいけるんだろうなと思ったりはしました。

高須:それができるのはやっぱり芸術の世界だよね。欲に忠実にいられるっていうのは。

井田:本当に表現者はみんなそうだし、お笑い芸人さんとかを見ていても思うんですけど、やっぱりわがままじゃないですか。どこまで自分のわがままに対して責任取れるかっていうところが、測られているとは思うんですよね。そこは逃げたくないなと思ったりはしてますけど。

高須:欲望に忠実な。確かにそれ大事やな。…大事やねぇ。

井田:(笑)

井田幸昌さんのキャリアの転機|「才能を持て余している」グレた心を軌道修正してくれた恩師の言葉

高須:キャリアの転機を教えてください。いろいろ聞いてきたけど、一番の転機というのはどこ?

井田:画塾の先生がすごくいい先生で、この前手紙を頂きまして。その手紙に書いてあったのが、ぼくが初めてその先生の画塾の門を叩いた日、「デッサンを描け」って言われて白い紙に生物を描かされたんですけど、そのときぼくが描いた一本の線がすごいきれいだったと。で、それを見たときに「あ、この子は大物になるぞ」と思ったって言われて。

高須:ほんまかいな。

井田:まあ、高校生のときにも言ってくださっていたんですよ。

高須:ああ。言ってくれていたんですか。

井田:「あなたは才能を持て余している」と。「ものすごい切れ味を持っているけど、収めるさやを持っていない。だから頑張りなさい」みたいなことは言ってくださっていたんですよね。さっきも言いましたけど、ぼくはグレていてどうしようもない人間だったんですけど、その先生がうまいこと導いてくれたっていうのがあったなぁって。

高須:エネルギーの向きを変えてくれたっていうか、自分のことをもう一回見直すいいきっかけがあったんやろね。

井田:それこそ大きな仕事をするたびに自分のマインドも変わっていくんで、いちいちそれも転機だと思ってはいるんですけど。ただいちばん大きな転機って言われると、あの日かなって。

高須:そんなんって忘れへんよね?

井田:忘れないですね。

画像02

年間作品数300以上。アーティストには感情や社会情勢を記録する機能性がある

高須:1年間でだいたい何作品ぐらい作り上げるの?

井田:どれぐらいかな? 300…。ブロンズとか版画入れ出すと、たぶんもっととんでもない数になっちゃうんですけど。

高須:すごいね! 300も作ってるの?

井田:全部売るわけじゃないですよ?

高須:いやでもすごいね! 売りたくないものはないの?

井田:あります、あります。年間3枚ぐらいは自分のために取っておくって決めていて。

高須:それはやっぱり自分の中で力作というか。

井田:あと、すごい思い入れの深い方を描いたときとか。例えば誰かが亡くなっちゃって描いとかなきゃなっていう。本当に売り物にできないなこれはっていうものであったりとか。あと、画家や作家がみんな持つ夢だと思うんですけど、やっぱりいつか自分の名前を冠した美術館みたいなものはどこかに構えたくてですね。そのときにコレクションとしてそういう作品があると使えるじゃないですか。なので取っておくようにしているんですけど。

高須:そっか。なんか体験しておくべきことって何でもそうなんやろうけど、(ウルフルズの)トータス(松本)が、30代のときにいっしょに飲んでいたら「バラードを今作りまくらなあかん」って言ってて。「もう年取ったらバラード歌われへんから、俺ら」って言って、30代のときに恋、愛、いろんなものをバラードとして作るのを心がけてたのよね。なんか作家の人は、この時期にだからこそできるものとかっていうのがあったりとかするのかね。30代にやっとかなあかんみたいな。

井田:もちろん30代のうちにこれぐらいのことしたいなっていうことはあるんですけど、例えばコロナでパンデミックが起きたときとかは、なかなか体験できるようなことじゃないじゃないですか。もちろん世界は混乱しているし、不幸なこともいっぱいあったし、喜ばしいことじゃないんですけど。でもなんか作家って本当に因果なもので、そういうものも養分になっちゃう部分があって。そういうときは、自分の寂しい感情や社会の情勢を作品として記録する、機能性みたいものもあるじゃないですか。「この時代にこういうことがあって、そのときにぼくが生きていて、こういう表現をしていた。なんでだろう?」っていうことだったりとか。そういうことは意識しますかね。

高須:なるほどね。300も作っていると、なんかもう分からなくなってまうなぁ。アトリエとかも、どこに何を置いたか分からなくなってくるんちゃうん?

井田:だからアシスタントを絶対入れないんですよね。ぼくの中で合理的にできているので。

高須:そうやんな。「確かあの辺にあったな」みたいな。

井田:「あそこ、あそこ」みたいな感じでやってるんで。

高須:しかも作り切ってないやつもあるでしょ?

井田:だからそれもね、動かすと。

高須:分からへんようになってまうよね。

井田:「どこやった?」とか(笑)。

高須:おもしろいなぁ。

――井田さんのすてきな出会いのお話、いかがでしたか? 次回のゲストはアーティストの相場慎吾さんです。お楽しみに!

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