掲載日:2013.12.16
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三年予測ートップリーダーと考えるエンジニアの未来ー


“「低レイヤー」にこだわり続ける

長期に渡り価値を保った「レイヤー2」の技術

現代のIT産業で使われる技術群は、まるで菓子のミルフィーユのように多くの「レイヤー(層)」を重ねた構造を取る。先人たちが作り上げた下位レイヤーの技術を駆使することで、より付加価値が高いソフトウェアやサービスを、より容易に作り上げることができる。多数派のエンジニアが興奮するのは、上位のレイヤーの最新動向だ。
ところが、登がSoftEtherで注目したイーサネットの「レイヤー2」は、ふだん話題になることはない「低レイヤー」の技術だ。そこに注目する理由を、登はこう説明する。
「上位レイヤーは動きが激しく、付いていくための勉強を続けないといけない。一方、最初はものすごい量の勉強をしないといけないが一生変わらないものはなにか。それが低レイヤーだ」。
登がSoftEtherで再現したイーサネットの「レイヤー2」は、IT関連の規格が数ある中でも珍しく長期間にわたって同じ形を保ってきた。イーサネットのハードウェア、つまりレイヤー1(物理層)は100BASE-TX、ギガビットイーサネットなどネットワークの高速化に伴い急激な変化を続けてきた。一方、イーサネットのレイヤー2は長年に渡り共通の規格が使われている。登は、ネットワーク技術の急激な進化の中でも変わらない、長期にわたり価値を保ち続ける技術を掘り当てたのだ。

「異常な努力」から生まれた製品、サービス

ソフトイーサが世に送り出した製品やサービスは、登がいう「異常な努力」が必要なものばかりだ。そして、前述した「低レイヤー」の技術に注目したものが多い。
例えば、2008年11月に発表した格安のギガビットイーサネット専用線「ハードイーサ」は、未使用の光ファイバ芯線「ダークファイバ」を使い、関東地方の一部地域限定ながら、非常に近い2 拠点間であれば18万円程度と低価格な高速専用回線を提供する。こう説明するとシンプルなアイデアに思えるが、その実現は並大抵の努力ではできなかった。
「最初にものすごい量の勉強が必要で、手続きも煩雑だった。普通の会社なら、あまりに手間がかかるので途中で『やめよう』という結論になっただろう」
2011年7月からベータ版を提供しているソフトウェア「広域イーサ ネクスト」も、ソフトイーサらしい取り組みだ。NTT東日本、NTT西日本が提供する光ファイバ網「フレッツ光」のネットワークを上手に使い、高速、低遅延のVPNを実現するソフトウェアだ。
開発の動機は、インターネット経由のVPNが「遅い」と感じたことだ。ソフトイーサ株式会社はつくば市に複数の拠点を持つが、ISP(インターネットサービスプロバイダ)を経由してVPNで接続すると性能が今ひとつだった。その理由の一つは、ISPのネットワーク経路がつくば市から東京の設備を経由して折り返すため、遅延が大きくなることだと推定できた。
ところがNTT東日本の「フレッツ光」のネットワークは地元のつくば市の電話局で折り返すため、遅延が非常に短かった。このフレッツ光のネットワークを直接使うことで、より高速、低遅延のVPNを作れると考えたのだ。ただし、フレッツ光のネットワークを直接使うにはIPv6を使う必要があり、日常的に使っている多くのプロトコルが動かない。この障害を取り除くため、仮想的なイーサネットをフレッツ光のネットワークの上に構築するソフトウェア「広域イーサ ネクスト」を開発した。いわば、NTTが管理する光ネットワークに最適化されたバージョンのSoftEtherを作ったのだ。

「やると決めたら、どれだけ困難でもやる」

登の、そしてソフトイーサ株式会社の行動原理は独特だ。
「ふだんから、普通の人がやらないようなところまで調べる。普通の人が帰宅してテレビドラマを観るような感覚で、『今夜はこのNTTの技術資料を見ようかな』とやっている。そして、やると決めたら、どれだけ困難でもやる」
自分たちのエンジニアとしての才能を信じられなければ成立しないやり方だ。
ソフトイーサ株式会社の技術として異色なのが「QUMA」だ。小型の人形を使い、3Dモデルのモーションキャプチャを行うものだ。
QUMAは未踏ソフトウェア創造事業の仲間で立ち上げたプロジェクトで、これを実装した製品の開発は「試作は1晩でできたが、量産まで3年かかった」と登は明かす。複雑な動作が可能な人形を作るための金型に数千万円の経費を投入したり、中国の工場に金型を送る際、税関で数カ月の足止めされたりと、製品化までにはさんざんな苦労があった。
「机の上に置けるサイズの人形でモーションキャプチャができるデバイスは他にはない。それは実装が大変だからだ」
QUMAは、SoftEtherのようなネットワーク技術とは全く異なる領域の技術だが、登たちの行動原理がそのまま反映しているのは興味深い。
知恵を絞り、既成の価値観を引っ繰り返す
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