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未来を変える“尖り”技術

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

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宇宙開発の最前線で、大規模プロジェクトを完遂するJAXAのマネジメント力

掲載日:2012.08.06

杢野 正明 氏
独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
宇宙利用ミッション本部 GCOMプロジェクトチーム サブマネージャ
もくの・まさあき。1990年に大阪大学大学院工学研究科修士課程を修了後、宇宙開発事業団(現・JAXA)に入社。筑波宇宙センターの試験部で人工衛星の環境試験のアシストを2年間行った後、技術試験グループに異動し、技術試験衛星Ⅶ型「きく7号」(ETS-Ⅶ)のプロジェクトに約8年携わる。1年間のアメリカ・UCLAへの留学を経た後、2004年から2年間、光衛星間通信実験衛星プロジェクトに参画。2007年からは、地球環境変動観測ミッション(GCOM)プロジェクトへ移り、サブマネージャとして長期にわたる人工衛星プロジェクトをリードする。2011年に慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科で博士号を取得。

日本を代表する宇宙航空分野の研究開発機関、宇宙航空研究開発機構(JAXA)。最近では2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」の帰還、2012年には星出彰彦宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在関連のニュースなどを通じて「宇宙」が話題に上ることが多いが、今年の5月に人工衛星「しずく」が打ち上げられたのはご存じだろうか。地球環境変動観測ミッション(GCOM)の一環として開発された第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1)にプロジェクト発足当初から携わり、サブマネージャとしてプロジェクトを率いる、衛星システムエンジニアリングのスペシャリスト・杢野正明氏に宇宙開発の魅力を語ってもらった。

杢野氏が現在サブマネージャを務めるプロジェクト「GCOM」は、宇宙から地球の環境変動を観測することが目的だ。このプロジェクトでは2種類の衛星が作られる。一つは、電波の周波数領域で観測する水循環変動観測衛星(GCOM-W)。もう一つは赤外から可視・近紫外の光の波長領域で観測する気候変動観測衛星(GCOM-C)である。打ち上げ後の寿命が5年と言われる低軌道衛星を、それぞれ3代続けて打ち上げることで、10~15年といった長期間にわたる観測をしようという目論見だ。

「プロジェクト発足当時、私は42歳でしたが、メンバーは30歳前後の人が多かった印象です。プロジェクトマネージャ、サブマネージャ、ミッションマネージャがいて、その下に個々のサブシステムもしくは領域に応じたメンバーが配置されました。現在は、17~18人でGCOM-WとGCOM-Cの二つの衛星を担当しています。人工衛星の開発プロジェクトは通常、開始から打ち上げまで5年程度かかり、このプロジェクトも2007年に発足して5年後の今年、GCOM-Wの打ち上げに成功しました」

人工衛星が打ち上げられて軌道に乗った後はすぐに観測を開始するわけではなく、約3カ月は機能確認に費やされる。さらにその後も、実際に衛星が取得した観測データと地上で取得したデータとを比較して、正しく観測できているかをチェックしながら、必要に応じて補正をかけていく。

「地上で動かすものと衛星の最も違う点は、何と言っても『打ち上げたらもう修理できない』こと。そこが圧倒的に違います。地上の製品であれば部品交換などはできますが、人工衛星はそういうわけにはいきません。ですから、部品も高信頼性のものを使いますし、機器も打ち上げ前に十分過ぎるほどに試験をします。また、地上との環境の違いという点では、例えば、宇宙の厳しい放射線に耐えるようにしなければなりませんし、真空のため対流が起こりませんから、熱についても注意して設計する必要があります」

日本の得意とする高性能マイクロ波放射計を活かした「しずく」

杢野氏が携わる「しずく」は、水循環変動観測衛星と呼ばれるものだ。JAXAが長年の研究と実証を重ね、世界でも最高峰の性能を誇るマイクロ波放射計(AMSR2)を搭載し、降水量、水蒸気量、海洋上の風速や水温など、さまざまな「水」に関する観測を行う。

「北極圏の氷や土壌中の水分など、地球上にはいろんなところに水分がありますが、それがどのように循環しているのかを、水に関わるいろいろなパラメータを測定することで明らかにすることに貢献するのが大きなミッションの一つです。それが分かれば、今の気候の変動の意味が、将来解明できるかもしれません。またそれだけでなく、例えば海面温度から魚が集まる位置を予測し、データを漁船に渡すといったことも行われています。それが分かることで、漁船の燃料費を節約できるんですね。そうした現業に直接役立てることも目的として持っています」

「しずく」クラスの人工衛星は、開発着手から打ち上げまでだいたい5年が目安と言われている。長いようでいて、そのスケジュールは思いのほかタイトだ。

「プロジェクトは、最初に基本的な仕様を設定し、その仕様に基づいて人工衛星を構成している個々の電源系や通信系などのサブシステムに分解します。配分した性能なり機能がきちんと実現できるかどうかを、解析を通じて確かめながら設計します。そこまでが基本設計ですね。いきなり本物を作るのが難しい場合は、開発モデルとして部分的に作ってみて試験を行います。それが問題ないと判断されれば、詳細な解析や製造のための図面を作るなどの詳細設計を行っていきます」

基本設計、詳細設計のそれぞれに対して審査がある。それも一度で済むものではなく、全体のシステム、サブシステム、コンポーネントという各レベルにおいての審査がなされるため、作業量は膨大だ。そしてそれをパスしたものだけが製造に移され、出来上がったものに対して環境試験を行い、衛星として“問題なし”となった後、ようやく射場へ。そこでも打ち上げの準備に通常3カ月程度が費やされる。

「期限が極めて明確な5年という時間の中で、無駄なことはできません。最初の設計でまずいことがあると、後々非常に影響が大きいので、特に最初の基本設計の部分が非常に重要です。打ち上げた後は変更できませんから、そういった手の届かない環境で何が必要かになるかを細かく想定し、何を測定してどのデータを処理して通信で地球に伝えるかといったシステムを、設計の初期に漏れなく盛り込んでおくことが非常に重要です」

「しずく」が5月に打ち上げ成功した今、その機能確認を進めながら、既に並行して光学センサを搭載するGCOM-C1の開発が進められている。この衛星が観測する、大気中のエアロゾル(ちり)や雲、二酸化炭素を吸収する陸上植物や海洋プランクトンなどの分布データと、「しずく」で観測したデータによってどんなことが分かるのか、長い目で期待したい。

宇宙空間を秒速7kmで飛ぶ人工衛星同士をドッキングさせる技術

JAXAが他国に比べて秀でている技術としてはさまざまなものが挙げられるが、その一つにランデブードッキングの技術がある。ランデブードッキングの実験のために1997年打ち上げられた技術試験衛星Ⅶ型「きく7号」(ETS-Ⅶ)のプロジェクトには杢野氏も参加していた。ランデブードッキングとは、宇宙空間において2機の宇宙機が速度を合わせ、同一の軌道を飛行して結合することを言う。

「技術試験衛星Ⅶ型は『おりひめ』『ひこぼし』と呼ばれる2機の衛星で構成されていまして、打ち上げてから一度分離し、また接近させてランデブードッキングする、それを自動で行う実験のための衛星でした。当時、アメリカは宇宙飛行士が操縦してのドッキングを、ロシアはレーダを使った自動ドッキングは行っていたのですが、われわれはレーザーやカメラなどの光学センサのシステムを使っていました。光学的なセンサは他の方法よりも計測精度が高く高精度に衛星の位置と姿勢を制御できるので、低速でドッキングして結合時の衝撃を抑えることにつながります。宇宙で、衝撃を緩和できるということは実は決定的なことなのです。強い衝撃に耐えるものを作ろうとしたら、より“ごつい”機体にしなければなりませんが、衝撃が小さくて済めば、それだけ機体を軽くすることができるからです。当時としては、世界に先駆ける非常に先端的な試みだったと言えます」

この技術は現在、国際宇宙ステーションに物資を補給する宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)に継承されており、将来の探査機への応用も期待される。

「実は昨年、慶應義塾大学大学院で博士の学位をいただきました。平日はプロジェクトを進めながら週末だけ大学へ通い、システムエンジニアリングの勉強を行いながら、光学航法センサシステムの研究を続けたんですね。JAXAには大学への派遣制度があってそれを利用した形ですが、こうした機会をいただけたことにとても感謝しています」

“幅広い”宇宙の仕事。成功に向けてマネジメント力を発揮し、組織の総合力を引き出す

「人によって意見は違うと思いますが、私は、JAXAは大規模なプロジェクトを成功させるためのエンジニアリング能力、マネジメント能力が優れている組織だと思います。さらに言うと、1部門の力ではなくてJAXAの総合力が高いのだと思います。会社の中にはいろんな部署がありますが、すべての部門がプロジェクトを成功させることに対して非常にモチベーション高く当たっていることが、JAXAの強みではないかと。もちろん、技術力や経験も必要ですが、マネジメント力が優れていなければ、計画通りに衛星を打ち上げることなど不可能です」

JAXAには製造部門はない。人工衛星の製造は基本的にすべてメーカーに発注することになる。その意味でも、その工程と実際の出来を確かなものにするための“マネジメント力”が、JAXAの技術者にとって極めて重要なスキルだと言える。

「すごく変化が大きい仕事です。数百億円規模の大きなプロジェクトで、範囲も設計、製造、試験、打ち上げ、運用まで多岐にわたりますし、その中でさまざまな経験を積むことができます。宇宙って非常に幅広いんですよね。機械、電気、熱、制御など、いろいろなことをプロジェクトを進めながら幅広く学ぶことができるのは、非常に魅力的です。皆で一つの目的に向かって頑張るのは非常に面白いことですし、結果が良くも悪くもはっきりと出る仕事なのでリスキーですが、楽しんでいます」

COMPANY INFO

独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

設立
2003年10月1日
本社所在地
〒182-8522 東京都調布市深大寺東町7-44-1
事業内容
日本の宇宙科学研究、宇宙開発、航空分野研究実施機関が統合して設立した、日本で唯一の宇宙・航空分野を担う独立行政法人
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