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未来を変える“尖り”技術

DIC株式会社

DIC株式会社

金属材料代替で多様な可能性を秘める
長繊維PPSが高い生産性とエコロジーを両立

掲載日:2013.11.25

川島清隆 氏
DIC株式会社
ソリッドコンパウンド製品本部長兼フィルム製品マネージャー
岐阜県出身。1983年、堺工場のエンプラ開発の技術グループに入社以来、約20年間、PPSの技術開発を担当し、DICのPPS事業が市場に参入した頃より参画。PPSのポリマー内製化、海外進出、生産プラント建設などに従事する。2003年、千葉工場にて技術本部長。2009年より本社の企画管理部門へ異動の後、2012年より現職。

DICは創業100年を機に、2008年に大日本インキ化学工業から社名を変更し、グローバル化を強力に推進している。DICの事業は印刷インキ、有機顔料、合成樹脂、機能製品、電子情報材料など多岐にわたり、グローバルな事業展開も世界62の国と地域に及んでいる。DICが保有する幅広い技術とブランドのなかでも、現在関心を集めているもののひとつが、耐熱性の高さが注目され自動車部品などに利用されるポニフェレンサルファイド(PPS)樹脂だ。PPSはナイロンやペットなどの石油化学製品に比べると比較的歴史の浅い樹脂で、1970年代初頭、米国の石油化学会社シェブロン・フィリップス・ケミカルズ(当時フィリップス石油の一部門。以下、CPC)で製品化された。ベンゼン環と硫黄原子が交互に結合した単純な直鎖状構造を持つPPSは、当初、金属の腐食を防ぐ塗料として使用されていた。ところが、熱をかけることで材料構造が変化し、高い耐熱性や耐薬品性などの特性が出てくることがわかり、電子部品や自動車部品として利用範囲が拡大した。PPS技術で世界をリードし、大きなシェアを獲得しているDIC株式会社 ソリッドコンパウンド製品本部長兼フィルム製品マネージャーの川島清隆氏に、同社のPPSへの取り組みと、同社独自の技術により生み出された長繊維強化PPSついて話を伺った。

常に最新PPS技術を海外から導入し、新世代特殊PPSのトップへ

PPSはベンゼンと硫黄から成る簡単な化学構造を持つ結晶性の耐熱性ポリマーです。この樹脂は、約280℃の高い融点を持ち優れた耐薬品性と共に難燃剤を添加せずに自己消火性を示す燃え難い性質を持っています。

DICがPPS事業に参入したのは、大日本インキ化学工業時代の1976年。当時、樹脂事業を立ち上げるために、既に米国企業からコンパウンドに関する技術を導入していた。そこでナイロンなど多数の樹脂技術とともにCPCのPPS樹脂が製品として上市された。

「CPCはPPSの商標であるライトンを、当時日本国内の5~6社に販売ライセンス提供していました。国内の各会社はさらにポリマーをCPC社から買って自社ブランドのPPSコンパウンドを販売し、ロイヤルティーを払う契約でした。私たちもそのなかの1社だったのです。ところが1980年に、DICはCPCのコンパウンド技術を製造から検査までの一貫契約ライセンスを結ぶことになり、従来横並びだった販売ライセンス保有各社にライトンを製造し提供する、日本における拡販計画のグループの一員というポジションになったのです」

ここでDICは国内PPSをリードする存在になったわけだが、1984年にCPCのポリマー製法特許が切れると国内でも多くの企業がPPSポリマー製造に参入し、酸素が分子の枝分かれに介在する架橋型と呼ばれる見かけ上の分子量を上げる製法で自社ポリマーを作るようになった。また、呉羽化学工業(現クレハ)は最初から分子量の長いリニア型という独自の製法で参入、業界は活況を呈した。1990年にはCPCとのライセンスは失効したが、DICは90年代前半バイエル社からリニア型PPSポリマーとコンパウンドの技術を導入し、2001年はリニア型の技術を持つトープレン(東燃化学のPPS子会社)を買収するなど、常にリニア型、架橋型とも最新の技術を保持し規模的にもアドバンテージを守ってきた。

PPSはベンゼンと硫黄から成る簡単な化学構造の樹脂

「耐熱性、耐薬品性、剛性といった特徴は架橋型でもリニア型でも一緒です。リニア型の方が少し伸び、靭性があるのですが、架橋型は高温で変形しにくいという特長を持っています。その後の技術的進展で、架橋の重合も進化し現在では大きな差はありません。DICは多くの技術を複合化させることで顧客ニーズに細やかに応えてきました」

DICは2000年過ぎにはポリマーアロイの製造に乗り出した。通常PPSはリニア型でももろいのだが、特殊オレフィンポリマーを微細分散させることでタフなPPSの製造が可能になった。

「商業ベースのPPSとしては、ポリマーアロイがDICの最初のブレークスルーになりました。現在も販売数量の4割がこうした技術をベースにした新しい世代のPPSで、この分野では圧倒的な世界一です」

自動車業界から要求される多機能に応え長繊維強化PPSを開発

2000年頃までは、PPSは電機・電子部品の需要が多くコネクタ、スイッチなど精度が求められる製品や、ソケット、あるいは耐はんだ性を求められる部品に重宝された。これが2000年代になると自動車部品への利用が大きな割合を占めるようになってくる。

「自動車は部品の素材に多くの機能を要求します。石が当たったくらいで部品が簡単に割れてはいけませんし、耐熱にも優れていなくてはならないのです。自動車部品への利用を考えた場合、PPSの最大の特徴は、長期間耐熱性があり劣化しないことと、金属に比べ軽量である点です。自動車のように10万~15万時間、200℃以上の耐熱を求められる世界ではPPSは部品材料として突出した存在です」

自動車エンジンまわりのスロットルボディに使用されるPPS

自動車のPPS需要は急速に伸び、ヨーロッパなどでも広く採用されている。10年前にはPPS市場の30%だった自動車業界が、現在では50~60%にまでシェアを拡大している。ポリマーアロイでもろさを克服したDICのPPSは自動車業界で広く受け入れられた。DICの自動車関連の取引相手としては大手の完成車メーカーや電装部品メーカーを挙げることができるが、なかでも日本市場は世界最大であり、DICは日本のPPS市場において最大のシェアを有する。

さらにDICは次世代自動車用途をにらんだ長繊維強化PPSを開発した。長繊維強化PPSは従来品の疲労特性や耐衝撃性を向上させている。これはハイブリッドシステムやEVシステムなどのニーズに対応できる製品だ。

「従来の短繊維ガラス強化PPSは普通100℃を超えると柔らかくなりましたが、長繊維PPSは柔らかくなりにくい。繊維と樹脂の接触面積の差があり、破壊の際のエネルギーを繊維で吸収しています」

ハイブリッド車で使用されるPPS製インテリジェントパワーモジュール

これにより、従来は自動車部品の中でも小型部品への利用が主だったPPSだが、シャフトやシャーシの一部など、大型で信頼性の求められる部品への利用が検討され始めている。

「これまではカーボン繊維などが使用されていた部分への長繊維PPSの利用が検討され始めています。長繊維PPSは重量の5~6割が樹脂なので軽量ですし、生産性も高くリサイクルへの利用も問題ありません」

ただ、信頼性の実績という点がまだ追いついていないため、量産体制には入っておらず、試作品のユーザー評価が始まった段階だ。

「長繊維では加工技術が重要になります。射出成形では繊維が切れやすいので、成形時に長い繊維長を成形品内部に保持して長繊維PPSの強みを残す技術をDICは持っています。このため、トラックなど大型車の冷却系周りなど、構造材に近い部分での利用に必要な疲労強度や耐熱性が実現できるのです。今後は長繊維PPSをプレスして複合材も作れる可能性があります。ソーラーパネルなどの需要も考えています」

10年以上前にはペレットの形で出荷されていたが、現在のPPSはペレットでの納品では終わらないケースもある。ポリマーアロイの場合は、異種ポリマーの化学反応を伴う材料であり、加工条件が性能を左右するため、成形機からゲートを通って充填するという製造工程を含めた設計が必要になるケースがある。この加工技術を一貫して納入先へ提供できるのがDICの強みだという。

全く新しい製法が可能になればさらに低コストに
PPS製造技術の伸びしろはまだまだある

DIC社内のここ数年の利益の牽引車は「液晶」「カラーフィルター用グリーン顔料」「PPS」の3つとされているが、PPSは用途を限定せずどこにでも使える素材という点で、他の2つとは異なっている。現在の利益の大きさでは液晶やカラーフィルターにかなわないが、成長性の評価ではトップだ。

「今後は、全く新しい製法で作る低コストのPPSも開発していきたい。コストダウンによる汎用化が進めば、新しいブレークスルーがやってくるでしょう。やがてナイロン並みに汎用化されて、どこが作ったPPSも同じという時代がやってくるかも知れません。現在は厳密にはメーカーごとに異なるPPSになっています。重合釜の中では同じでも、そのあとで重合物中に残る食塩などを洗い落とす溶剤が違うだけで、性能が違ってくるのです。このため、他社製のPPSでは同じ製品が作れないということが起きるのです。ほかにも技術の伸びしろはまだまだあります」

そのために新しい技術の検索にも熱心で、大学などの技術論文や発表をチェックしたり、顧客企業との共同研究開発をしたりしているほか、異業種との連携も視野に入れて、日々の開発にあたっている。

「ナイロンのように枯れた技術ではないので、新しい技術にはサポートが重要になります。CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーションを基に、樹脂メーカーが金型作りまで行う必要があるのです」

そんな現場に求められる人材について、大学で重合知識を勉強してきただけでは役に立たないと川島氏は言う。求めるPPSを得るためには、押出機のなかで起こっている化学反応をチェックしなくてはならないが、内部の多種のエレメントの組み合わせによって反応が変わってくるため、いろいろなことが要求されるようだ。

「知識だけではなく、どういう“感覚”を身につけてきたかが現場では重要になります。例えば私は重合の過程で何かおかしいことが起きている場合にはそれを感じられるし、こうすればいいのではという解決策を思いつくことができます。また、射出成形やブロー成形では重合の知識以外に、流体力学や材料力学などの知識や、力学、物理化学のセンスも必要です。技術者は一つのことに目が向きがちですが、いろいろな状況に対応できるセンスというのもこれからは重要になって来るのではないでしょうか」

COMPANY INFO

DIC株式会社

設立
1937年(1904年創業)
本社所在地
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町2-101 ワテラスタワー
事業内容
印刷インキ、有機顔料、合成樹脂、機能製品、電子情報材料の製造・販売
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