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未来を変える“尖り”技術

三井ホーム株式会社

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銀座に木造ビル?
密集地域でも力を発揮する“耐火”木造建築の最前線

掲載日:2014.02.17

原 康之 氏
三井ホーム株式会社
技術企画部 技術開発グループ
マネジャー
はら・やすし。一級建築士・一級建築施工管理技士。1994年京都大学大学院農学研究科を修了し同年4月に三井ホーム株式会社に入社。入社当時は木造(枠組壁工法)建築の耐震性や耐久性の分野を担当し、免震住宅や通気モルタル外壁の開発に携わった。2000年からは名古屋支店で現場の施工管理を担当し、2002年独立行政法人建築研究所へ交流研究員として派遣され、このときから現在に至るまで木造の中層建築や耐火構造の開発を行っている。

東京・銀座に建てられた小さなビル。一見、新築という以外に特に目立つ点はないが、今、このビルが業界の注目を集めている。三井ホームの『ツーバイフォー木造耐火建築5階建て店舗併用共同住宅』は、“都内初”となるツーバイフォー工法(木造枠組壁工法)による耐火木造建築ビルなのだ。

ビルといえば鉄筋コンクリートだろう。一般の住宅さえ、鉄筋コンクリート造だ。特に東日本大震災以降は、誰もが災害を心配する。そんなご時世に木造の商業ビルである。銀座に木造5階建て(1階部分のみ鉄筋コンクリート造)の店舗付き共同住宅を建てた三井ホーム株式会社 技術企画部 技術開発グループ 原 康之氏に話を聞いた。

「2000年6月に建築基準法が改正され、耐火建築の基準を部材の材質で決めずに、性能で決めることになりました。つまり“火の中で1時間は燃えずに建っている建物(1時間耐火)”の性能を満たしている建物を耐火建築と認めましょう、燃えなければ鉄筋コンクリートじゃなくてもよい、ということです。基準を満たせば、木でもいいんですね」

木は燃えるから危ないというのは先入観だ。もちろん木をそのまま火で炙れば、燃えるに決まっている。木は燃えるが、場合によっては鉄より強い。鉄は350℃あたりで強度が低下し始めるが、木は燃えても炭化した状態で火の進行が遅くなり、建物を支えることができるからだ。そこで家の骨組に耐火被覆を施した木材を使い、石膏ボードなどの耐火材で壁を貼ったもので建てるのが耐火木造建築である。耐火材の性能が上がったことで、木材まで熱が届かず、木造建築でも耐火構造が可能になった。耐火建築といえども、これまでのように鉄筋コンクリートにこだわる必要がなくなったのだ。

「外壁に被覆材として石膏ボードを貼り付けて耐火仕様にします。石膏ボードをどんどん重ねていけば、燃えにくくなるのは当然ですが、現場で施工業者が困るわけですよね。何回も同じ作業を繰り返して石膏ボードを貼らないといけないんですから。熱を防ぐには何層の被覆にすればいいのか?二重貼り程度で耐火仕様になることが分かるまで、数えきれないほどの試行錯誤を繰り返しました」

左の写真は耐火外壁の試験直後の状態、右の写真は耐火外壁の外壁被覆を解体して合板表面にしたもの。全く焦げていない 

2003年に一般社団法人ツーバイフォー建築協会で日本初の木造耐火構造の認可を取得、2004年に5部位6認定を受けたことで、三井ホームの耐火建築もスタートしている。ちなみに、木造枠組壁工法のあと、日本の一般的な木造建築である軸組み工法でも認可を受けている。

耐火木造建築には、意外なメリットがあることが分かった。住宅が隣接した木造密集市街地は防火地域に指定されていることが多く、新築や建て替えをする場合、耐火建築が義務づけられている。しかし鉄筋コンクリート建築では鉄骨を吊り上げないといけない。ところが、そうした地域は道幅が狭く、トラックやクレーン車が入り作業するスペースのないことが多いのだ。クレーン車が入れないために建築自体をあきらめるしかないことも多くあった。

「耐火木造建築の場合、密集地区でも建てることができます。木であれば、人が持ち運んだり、台車で運ぶことも可能ですから。ただ、問題は壁です。隣家と密接している場合は足場のスペースを確保できませんから外側から建材を貼ることができません。そこで床面を作業場としてそこで壁を組み立てて、ジャッキでその壁を内側から起こして建てる“建て起こし工法”を使います。クレーンも足場も必要ありません」

問題は壁の重量だった。耐火木造建築は被覆が厚いため、壁が重い。一般の合板張り外壁は1平方メートルあたり12kgだが、耐火外壁は1平方メートル当たり150kgもあるのだ。そのために専用ジャッキを開発、独自の工法で作業負担や作業時間を抑えながら狭小地での耐火建築を実現した。

銀座に都内初となるツーバイフォー木造耐火建築5階建てビル

冒頭の銀座の木造ビルは、もともとあった鉄筋コンクリート造7階建てのビルを取り壊し、木造に建て替えるプロジェクトだった。銀座にはビルの1階を店舗としなければいけないルールがある。そのため1階が店舗、2、3階は賃貸住宅、4、5階はスタッフルームとなった。幅約10.2m、奥行約5.8m、約18坪の土地を購入した建築主は、当初8階建のビルを検討していたというが、ここでも耐火木造・建て起こし工法が採用された。

「8階建となるとエレベーターが必要になりますし、非常階段の設置も義務付けられます。そうするとどんどん有効面積が減っていってしまうんですね。そこで、エレベーターの設置が必要ない範囲で最も高い5階建を提案しました。木造の枠組壁工法であれば室内側の角に柱型も出ないので階段を設けられますし、水回りも問題ありません。また両脇に隣接するビルの間で足場を設けずに敷地面積ギリギリまで建てられる建て起こし工法なら、建築主さんの要望と予算に合うビルがつくれるということで、最終的に今の形に収まりました」

建築基準法において、建物の一番上から4層までは1時間耐火の性能でよいが、それを超えると2時間耐火が求められるため、1階部分は鉄筋コンクリート構造としている。

建て起こし専用ジャッキをさらに改良

「実は、建て起こし専用ジャッキの改良も、この銀座のビル建設において、ポイントになっています」

もともとはガソリンスタンドに置いてあるようなガレージジャッキの原理を応用したという。ガレージジャッキは数十センチ車を浮かせれば用が足りるが、同じような原理を使って水平に寝かせた壁を垂直に建て起こす機能を実現しなければいけない。

「最初は市販の10トンの油圧ジャッキを入手しました。これのストロークが30cm。これでいかに垂直に建て起こすかというのが、開発の課題でした。これは2004年頃から開発して、はじめて実用したのが2007年のことです」

専用ジャッキのポイントは3つ。まず1つめは重機なしで実現できるということ。2つめは、施工現場の安全確保ができるということ。重たい壁を起こす作業だが、壁を水平から垂直に起こすその可動半径内に人がいなければ危険を回避できる。そのために油圧ジャッキはホースでつないで離れた位置でも操作できる機能が加えられた。

「3つめのポイントが、銀座のビル建設時にも活かされました。4階、5階の建物になると強い壁が必要になってきます。壁を強くすると重量も増し、壁を立てた後に足元が浮き上がって不安定になるんですね。この力に対抗するために、壁の立つ位置にアンカーボルトを立てて浮き上がりを防止するのですが、そこで問題が生じました。アンカーボルトがたくさん突き出ていると、その上で壁を寝かせてつくることが困難になります。そこで建て起こし用のジャッキをさらに改良を加えました。床の上に土台を設けてアンカーボルトの上になる高さで壁を作ります。そこで壁を起こして、アンカーボルトが立て起こされた壁の底部にある穴に挿さるように降下させる機能を設けたのです。このおかげで、銀座のビルのような中層のビルでも耐火木造の建て起こし工法が可能になったと言えます」

都市部でこそ力を発揮する耐火木造建て起こし技術

東京には木造家屋が密集する地域も多く、もし首都直下型地震(マグニチュード7.3想定)が起きたら、20万1249棟が焼失するというシミュレーションもある。

「防火・防災の観点から耐火建築が普及すべきだと考えますが、広範な地域を一気に再開発するのは難しい場合が多いでしょう。また再開発を進めている間に、そこに住む人が離れてしまい街が空洞化してしまうリスクもあります。現実的には、1軒ずつ都合のついた建物から耐火木造建築に建て替えていく、そういう選択肢もあるのでは、と考えています」

木造枠組壁工法を採用することで、柱が不要(鉄筋コンクリート造は柱で建物を支えるが、木造枠組壁工法は壁で建物を支える)になる。室内を広く利用でき、ビルのような多層階構造ではエレベーターの設置も楽になる。価格も坪単価で鉄筋コンクリート造より若干割安になる。

「なにより木造の家はやはり住みやすいです。床の上を歩くと、コンクリートとは違って柔らかさが伝わってくる。今は木造の学校も増えてきているんですよ」

住みやすさに加え、防災の観点からの木造建築。一見、意外な選択だが、建物が密集し、狭小住宅の多い日本ならではの最適解と言えるのかもしれない。

COMPANY INFO

三井ホーム株式会社

設立
1974年10月
本社所在地
〒163-0453東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル53階
事業内容
ツーバイフォー工法を中心とする専用住宅および事業用建物等の受注・設計・施工、引渡し物件のリフォーム事業ほか
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