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“グローバル人材”の輪郭

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ボーングローバルな企業が目指す “ディズニーを超える”世界観ビジネス

JHラボ株式会社・小笠原、中川両氏に聞く、「いきなりグローバル」な考え方

掲載日:2014.03.10

今回お話を聞いた人

JHラボ株式会社 共同創業者 小笠原篤史氏(右)・中川幸司氏(左)

写真:小笠原篤史氏・中川幸司氏
共同創業者兼CEO 小笠原篤史氏 PROFILE

1979年千葉県生まれ。東京大学大学院物理工学科修了。専門は量子極限物理学。日本学術振興会特別研究員の兼任を経て、アーティストとして活動。村上隆プロデュースのギャラリーpixiv-zingaro(kaikaikiki)での個展(2011)など数多くの実績を持ち、国内外で高い評価を得る。ストーリーや設定とプロダクトの概念を結合したハードウェア作品(真空管ヘッドフォン)や、動画、小説、デザイン、ソフトウェア、メカトロニクスなど幅広く作品を創作。作品と社会・産業をつなげることでアートを完結させるべく活動を行っている。Twitter:@JohnHathway

共同創業者兼COO 経営学博士 中川幸司氏 PROFILE

1980年埼玉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て北京大学大学院 国際戦略管理学専攻博士課程修了。日本人初の経営学博士号を北京大学より授与される。慶大在学中(19歳)に起業。世界を舞台にした産業ドメイン・複数企業で事業戦略に従事。JH ラボでは経営戦略担当で、ビジネス科学をアートに昇華し、製品・サービスをグローバル市場で展開する成長戦略を統括する。提唱している「ユニバーサルクール戦略」をまとめた著作を6月に上梓予定。Twitter:@kozijp

グローバル化が進む中、ビジネスの現場で求められる人物像を浮き彫りにする連載「“グローバル人材”の輪郭」。第6回はJHラボ株式会社の小笠原篤史・中川幸司の両氏。国内外で高い評価を受けているアーティストの小笠原氏が世界観をつくり、英中で研究者をしてきた中川氏がビジネス担当として世界観を伝播する同い年のコンビ。政府主導の「クールジャパン」を否定し、ユニバーサルクールを掲げ、生まれながらにしてグローバル企業であるJHラボ株式会社。聖地・秋葉原に拠点を構える同社が目指すものとは。世界で評価されるための戦略、考え方について伺いました。

「カワイイ+未来技術」がベース 2人の役割は世界観の“創造”と“伝播”

――JHラボ株式会社は2013年から活動しているとのことですが、設立の経緯や目標を教えてください。

中川 小笠原はコンセプトアートのジャンルでは日本でも指折りの作家として知られ、もう10年以上活動しています。私は大学卒業後、イギリス、中国で組織戦略などの研究を続け、この5年はコンテンツビジネスを研究していました。コンテンツをテーマにした理由は、中国という政府規制が強い場所で、日本人のマインドセットを持った私が、欧米的な学識プラットフォーム、分析ツールを用いた研究をすることでユニークなものになると考えたからです。

JHラボのビジネスの核となるのは、所属する“JohnHathway”氏をはじめとするアーティストらが生み出す独自の世界観やコンセプト

北京大学で経営学博士号をとったのを区切りに、昨年日本に戻って、ビジネスを始めることにしました。というのも、アメリカや中国だと研究を発表して評価されると社会政策に関わることができますが、日本はビジネスとして実践していたほうが評価される。それが正しいとは思いませんが、ビジネスの実践が一番社会に関わることになる。そこで研究の中から一番いいビジネスモデルを探し、そして一緒にビジネスができるコアとなるクリエイターを探しました。日本各地を回りまして、半年くらい経った頃、アートイベントで小笠原の絵を初めて見て、「これだ」と直感的に感じ、声をかけました。

――具体的にどういう事業に取り組んでいるのでしょうか?

中川 取り組んでいるのは「世界観ビジネス」です。小笠原がコンセプトアートや技術から世界観をつくりだし、私がそれをビジネスのアーキテクチャ担当として伝播するという役割分担です。ソニーが技術と営業の2人で立ち上がったのと似ているかもしれません。昨年(2013)年5月に出会い、7月にJHラボ株式会社を立ち上げました。特徴は“ボーングローバル”、生まれながらのグローバル企業であることです。よく日本の企業は「まず日本市場でテスト的にやってから世界へ」と考えがちですが、われわれは最初から世界でチャレンジしようと。生産も販売もマーケティングも世界からなんです。会社設立後すぐにアメリカ(デラウェア州)にも子会社を設立しました。また、今年4月には香港とケニア共和国(ナイロビ)に子会社を設立します。

最初のプロジェクトは雑誌『Akiba Anime Art Magazine』の出版です。アニメやゲーム、マンガなどのジャンルで活躍するアーティストの作品を掲載した冊子で、アメリカのクラウドファンディング(Kickstarter)で資金を集めました。「まず日本の手近な印刷所で100部刷って、日本で売ってみる」のではなく、いきなりマーケットは世界、印刷などモノを作るのは中国という形にしたのは、そこに載せる日本製のコンテンツが海外で認められるのか、売れるのかを検証するのに必要かつ分かりやすい構図だと思ったんです。そういう“きれいな画”を描きたかった。マーケティングコストをかけて海外でブース出展するわけでもなく、とりたてて何の宣伝もせず結果的に750万円くらい出資を集められたのは、それ(日本の純粋なコンテンツだけの力)を実証できたということ。この意義は大きいと思っています。

――その雑誌には初音ミクのデザインを手がけたKEIさんはじめ著名クリエイターが参加していますね。小笠原さんは、既に作家として実績があり高い評価を受けています。中川さんと出会って何か変わったことはありますか?

小笠原 ものづくりの方向性は何も変わっていません。以前は物性研(東京大学物性研究所)で研究者をやりながら創作活動をやっていましたし、創作に専念するようになってから、その後中川に会ってからも含め一貫しています。作るものは完全にオリジナルで、国に左右されないような作品づくりをしてきたつもりです。中川と会って話してみて、同じ方向を向いていることが分かったのですぐに意気投合しましたね。

――中川さんはどういう視点でクリエイターを探したんですか?

中川 世界で通用する日本のバリューを測るクライテリア(判断基準)、売れる要素はかなり調べました。昔でいえばスシ、忍者、芸者、抹茶といったようなものですが、私が注目したのは「カワイイ」と「未来技術」です。これらをベースにした世界観ビジネスをやろうと。そういう作品が作れるクリエイターを探しました。当初、小説やゲーム、ガジェットでも、どのジャンルでもいいと考えていたんですが、言語依存が生まれない「絵」が一番ユニバーサルだと気づきました。マンガや映画、ゲームなどもいいのですが、日本語を使う以上、言語依存が生まれて、目指す世界観ビジネスから離れてしまう。

これは私が政府主導の「クールジャパン」にダウトを唱える一因でもあるのですが、「ジャパン」と入っている以上、売れないと思います。押し売り的、国家主義的に思えてしまうから。対して私が提唱しているのが「ユニバーサルクール」という概念です。その中に日本の要素が入っていれば、日本の人たちが活躍していればそれでいいし、それが本物だと思います。

同い年の一人っ子で科学者……共通項の多い2人に「敵は見当たらない」

――「世界観ビジネス」についてもう少し具体的に教えてください。

中川 世界で一番成功しているのがディズニーですね。彼らは何もアメリカという世界を現しているわけではなくて、ディズニーなりの世界観を提供しているわけですね。その中に映画もテーマパークもキャラクターマーチャンダイジングも、とにかくいろんな要素がある。われわれとしてはまず模倣して、キャッチアップし、いずれ乗り越えるべき壁と考えています。

小笠原の作品をご覧になっていただければ分かると思いますが、日本っぽさは残しつつも、日本かどうかは関係なく、無国籍な感じもあります。科学とアートを融合させた緻密な作品で、今後どんな方向へも拡張していける可能性、コンセプトがある。この世界観で映画でもゲームでも、自動車でもテーマパークでも、何でも作れると考えています。

――日本では世界観ビジネスを成功させた例はないのでしょうか。

中川 そもそもクリエイティブ産業、クリエイティブビジネスは歴史が浅く、成功モデルも極めて少ないのですが、中でも日本のスコアは低いと思います。キャラクターマーチャンダイジングなど一つひとつはうまいけど、プラットフォームづくりが下手。ICT産業でいうマイクロソフトやグーグル、アップルのような、クリエイティブ産業のど真ん中の世界観ビジネスを目指す企業が日本から生まれるかと考えると、このビジネスドメインでわれわれ以外に敵は見えていないですね。参考にできる先輩もいないということでもあるのですが。目標としては、10年目以降くらいにはテーマパークを、たとえばドバイとかでやりたいですね。巨大な構想ですが目指すことが重要で、それまではライツビジネスや出版などいろいろやっていくと思います。

――小笠原さんも、そうした「世界観ビジネス」を目指している。

小笠原 創作の原点は「夢のような世界を実現したい」というモチベーションです。産業や社会を巻き込んだ形の表現をやりたいんです。科学を学んだのは、もともと“マッドサイエンス”というか、世界の不思議な現象を科学で解明することに興味があったから。不思議な事象、面白い技術、魔法みたいな技術そのものに興味があって、それをやるには物理学を勉強するしかないと選びました。絵が好き、キャラが好きということではなく、自分が思い描いている世界の表現のために絵を描いてきました。その一環で作ったのが「真空管ヘッドフォン」。絵の中のモノを実際に作った格好です。絵が最終的な出力ではなく、絵の世界をこの世の中につなげ、融合させることで世界を変えたいと考えているんです。

アーティストとして妥協しない表現をしたいと思う一方、作品づくりの上で“実現可能”であることを重視しています。絵も最初は感性で描き始めますが、基本的にロジックで組み立てていきます。つくりたいデザインがあっても、技術的に実現できないようなものは避けます。例えば自動車メーカーがコンセプトモデルを出しますよね。あれも未来的で魅力的ですが、社会には広がらない。10年も前のモデルですら実現されていない。私はそれではいけないと思っています。社会に実際に広がってはじめて実現したといえる。ヘッドフォンも一点ものではなく、少数でも量産体制をとり、売って、出回ったものを誰かが使って、街なかで見ることができるような状況、社会で機能している状況をつくってはじめて、作品として閉じていると思うんです。

――モノづくりをする人と売る人とでは対立しがちですし、2人は出会ってまだそんなに経っていないと思いますが、対立することは? 

中川 完全な分業を目指して役割分担をしているので、対立はないですね。アートや技術の部分では、意見を求められれば言えますが口を出しません。逆にビジネス的な取り組み、社会性、提言、ロジック的な意味でのコンセプトは私のほうで自由にやらせてもらっています。

それに共通点がすごく多いんですよ。同学年で、同性の一人っ子で、首都圏近郊で生まれて男子校育ち、見てきたものが同じオタク(笑)。普通に友達になれる関係ですよね、根底にある10代のところまでの体験は完全に一緒。

小笠原 中川は文系ですが考え方は理系的で、論理性、客観性がある。私は理系ですが、アーティストとして、それなりに論理性や客観性をもってつくっているつもりでいます。それを含めて作風でもありますから。作品で「これをやりたい」とは言いますが、それは論理的に「これはこうだからやめたほうがいい」と言われれば、引き下がります。中川が優れていると思う部分については、完全に納得できているので何も言いません。

中川 2人ともベースは科学者なんですよ。私は社会科学、小笠原は自然科学の。論理性、ロジカルな考え方。私の学問は文系と言われますが、数字を使って計算しますから、客観性が必要です。2人で現代版の「ダ・ヴィンチと孔明」を目指しています(笑)。

「グローバル人材」はカレーみたいなもの 評価される人の考え方とは

――中川さんは英中で研究して業績を上げ、小笠原さんは作品が世界で評価されています。評価される人材、グローバル人材の要素は何だと思いますか?

中川 まず日本人であることを誇りに思うことはいいのですが、「日本のモノだからいい」とは思わないことです。繊維工業や自動車産業などがグローバル志向なのは、「日本のモノは(品質が)よくない。どうすれば売れるのか」というところから始めたから。それが高度成長を経て、なぜか「日本のモノはいい」となってしまった。いいものはありますが、さらに時代は変わった。「いいとは限らない」と考えるべきです。誇りを持つことは重要で、その軸足がないとアイデンティティーがない、何でもない人になってしまう。最終的には日本の国益、家族や友達のため、日本人だから、日本の有益になるようにというポシリーは重要ですが、客観性が欠けてしまうと、「メードインジャパン万歳病」と僕は呼んでいるのですが、盲目的な日本礼賛になってしまって、それは決してよくない。

小笠原 就職・転職に限った話ではないのですが、「問題解決能力」が最も応用が利く能力だと思います。何か問題が起きた時にどう対処するか。勉強に限らず、作品づくり、モノづくりでも同じです。いま、分からないところがあったらすぐ聞いたりネットで答えを探したりする、そうやって頼りすぎる人が多いんじゃないでしょうか。ちょっと持って帰って自分で考えてみる。自分で解決策を導くために勉強してみる。それでどうしてもだめだったら、誰かに頼るとかネットで調べてもいいですが、私から見ると「もうひと踏ん張りあってもいいんじゃないの?」という人が結構いるように思います。

中川 「グローバル人材」ってカレーみたいなもの。カレーって日本で食べ物だと言われているだけで、インドでは単なる味付けのことを指します。だから見方によっては何でもカレーなわけです。「グローバル人材」も、そういう日本の勝手なカテゴライズに過ぎません。コンペティターとして外国人がいると認識すること。被雇用者として、外国籍の人と比べたときの自分の優位性が何かを把握すること。さらにいえば国籍がどうこうではなく、自分という人間のどこが強みなのかを見極めている人が評価される人です。

国籍の話は企業についても同じことが言えます。「日本発祥の企業だから日本をターゲットにする」と決めつけるのはおかしい。“ボーングローバル”は日本企業という考えがあるから対立概念として言っていますが、本来すべての企業がボーングローバルなわけです。例えば香港の企業がまず「イタリアで売って箔を付けて、成功したらニューヨーク行って…」と考える、それが普通です。会社の能力や利便性を考えた上で日本市場を選ぶのはいいですが、何も考えずにまず日本、これは違うと思いますね。

今回の学び

  • 「グローバル人材」というカテゴライズに惑わされない。「まず日本で」と決める必要はない
  • グローバルな時代だからこそ、日本人としての誇りは大切に。一方で「日本製だからいい」という決めつけはしない
  • 困ったら「すぐ聞く」「ネットで答え探し」ではなく、まず自分で考えてみる
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