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“グローバル人材”の輪郭

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情報の発信源は「人」。人を深く理解するために、多方面から物事を見よう

ジャパンタイムズ執行役員 大門小百合氏に聞く“情報力”の身につけ方

掲載日:2014.05.12

今回お話を聞いた人

ジャパンタイムズ 執行役員 編集・デジタル事業担当 大門小百合

写真:大門小百合氏
PROFILE

高校時代にアメリカ(ペンシルバニア州、パーキオメン高校)、上智大学在学中にニュージーランド(オークランド大)に留学。1991年大学卒業後、ジャパンタイムズ入社。政治、経済、産業担当の記者を経て編集デスク。2000年8月からハーバード大学にニーマンフェロー(ジャーナリストのためのフェローシップ)として1年間留学。04年に長女を出産、05年にはサウジアラビアの王立キングファイサル研究所へ研究員として招かれ、家族で首都リヤドに滞在。06年報道部長、08年編集局次長。13年7月執行役員、10月に女性で初めての執行役員 編集・デジタル事業担当に就任。著書に『ハーバードで語られる世界戦略』(共著、光文社新書)、『The Japan Times報道デスク発 グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)など。

グローバル化が進むビジネスシーンにおいて求められる資質、望ましい人物像を、一線で活躍する人たちへのインタビューで浮き彫りにする連載「“グローバル人材”の輪郭」。第7回は、英字新聞として日本で最大の発行部数を誇る日刊紙「The Japan Times」で女性初の編集責任者になった大門小百合氏。米ハーバード大への留学やサウジアラビア王立研究所に研究員として赴任した経験を持つ大門氏は東日本大震災後に海外メディアに出て、日本の状況を英語で伝えたことでも知られる。日本企業でありながらバイリンガルな社員の多いグローバルな職場で働く大門氏に、情報をどうインプット、アウトプットするとよいか伺いました。

3.11後に感じた英語による発信の必要性

――昨秋はジャパンタイムズのニューヨーク・タイムズ社との業務提携、初の女性編集責任者就任と大きなニュースが相次ぎました。同じ時期に刊行された書籍はグローバルな働き方を志向している人たち、特に子どもを産み、育てながら働く女性から高く評価されています。出版のきっかけは何だったのでしょうか。

ジャパンタイムズは1897年に日本で生まれた日刊の英字新聞で、日本人、外国人の記者、編集者が働いている“ミニグローバル”なところです。私はずっと、非常に面白い、ユニークな職場だと思っていて、ここで学んだこと、やってきたこと、日々考えていることを書籍にする企画は以前からありました。ただ、改めて情報発信の必要性を痛感した直接のきっかけは3.11です。東日本大震災直後、世界中からジャパンタイムズのウェブサイトへアクセスがあり、海外メディアからは「日本の状況を教えてほしい」「生放送をするので出演してほしい」という依頼や問い合わせがありました。日本に関心が集まったことといえば、阪神淡路大震災やオウム真理教事件がありますが、それ以上だったと思います。あのときほど、英語での発信が求められていると感じたことはありません。発生直後は英語の情報が不足していて、原発に関連する不確かなニュースが海外メディアで伝えられていた。そうした中で、日本の現状を少しでも知ってもらいたいと思い、日々の紙面づくりをしながらTwitterを使って英語で情報発信をしたり、英BBCラジオに出演してコメントしたりしました。そうした中で、もっと日本から情報を発信していかなければと強く思いました。

また常々、日本で報道されていることが必ずしも世界の常識ではないという思いもありました。日本がずっと経済大国でGDP2位のままならともかく、中国が大きくなり、日本も3位になるなど影響力が劣りつつある中で、日本以外の国はどう考えているのか、どう見ているのかにも気を配らなければいけなくなりつつある。日本が世界の中で生き残っていくための戦略として、日本以外の視点も持っておくべきで、そうした点も書籍に盛り込みました。

書籍の原稿を書いている段階では意識していなかったのですが、読んでくださった方からの指摘で、内容が奇しくも世界の風潮にあっている、グローバルなテーマだったんだと気づかされました。日本は世界と比べて、女性の視点を社会に取り入れることや女性の登用・キャリアアップ、出産や育児、子育てのしやすい職場づくりといった面で遅れている。だから私の経験をまとめた本書が評価していただけたのではないでしょうか。ニューヨークタイムズとの業務提携で、現在「The Japan Times / International New York Times」を発行していますが、私が編集責任者になったことも含めて、タイミングが重なったのは偶然です。本当はもっと早く出す予定だったんですが…(笑)。

――働く女性を取り巻く日本の環境、企業の取り組みをどうご覧になっていますか。

これでも変わったのでしょうが、まだまだ女性が働きやすい社会ではないですよね。新聞社についていえば、女性が働きにくい結果として、紙面に女性の視点が取り入れられていません。妊娠、出産すると政治部や社会部でバリバリ働き続けるのは難しくなると聞きます。そうすると女性の、出産・育児をしている人たちの視点が入らない記事が増える。個人差はありますが、女性と男性は好きなことも得意なことも視点も違うので、男性が「こんなの載せる必要ない」と思っても、女性が「え、これって大事じゃん!」と思うことだってある。世の中の人はメディアが発信する情報をもとに考えを形成し、そして社会ができていくと思っているので、情報発信の偏りは変えていかなければいけないと思います。

The Japan Times 
報道デスク発グローバル社会を生きる女性のための情報力
大門小百合

一般企業でも同じです。先日、NPO法人ファザーリングジャパンのファウンダー安藤さん(哲也氏)と話したんですが、育ボス、育児経験のある管理職を増やさないといけないと思います。男性の上司で一度も育児を手伝ったことがないと、子育て中の部下の女性に腫れ物を触るような扱いをしてしまう。育児経験があれば相手の都合を考えながら彼女たちの能力が活用できるんです。「今日は早く帰らなきゃいけない日だろうけど、この日は早く出れる?」「代わりにこの仕事できる?」と具体的な代替案を提示できる。育児を分かっていると人材の活用範囲が広がって、会社、社会も変わっていくはずです。

2012年7月に開催された第17回国際女性ビジネス会議にて

――女性で初めての編集責任者ということですが、就任して大きく変わったことは何ですか。

ほかの新聞社では編集局長という肩書きに当たるのですが、編集局全体を束ねる立場になっての一番の変化は、直属の部下のほとんどが外国人になったことですね。その前は報道部長だったのですが、報道部ってジャパンタイムズの中でもドメスティックな部署なんです。生活文化部、スポーツ部などはかなり外国人に任せているのですが、報道部は日本のことが分からないといけないので日本人記者が多くて、私も指示は日本語でしていました。でも今は外国人の部下から直接フィードバックが来ますし、会議も英語。よく「ジャパンタイムズは外国人とコラボしてつくっている新聞だ」と言うのですが、それを実感してますね。

――日本人と外国人の部下とで気の使い方などで変えることはありますか。

日本人同士だと“あうんの呼吸”、「言わなくても分かるでしょ?」という感覚がありますが、それは通じませんね。私は部下を「よくやったね!」と大げさに褒めるほうではなかったのですが、外国人はちゃんと言葉にして褒めたほうがやる気につながるみたいなので、そこは意識しています。

注意しないといけないのは、「外国人」といってもアジア、欧米などいろいろだし、さらに「欧米人」といってもそれぞれ異なるということ。高校時代にアメリカ、大学のときにニュージーランドに留学したのですが、アメリカ人はストレートで何でもはっきり言うので、それに慣れていたのか、私もニュージーランドで英語で話すとき、アメリカ人のような話し方をしていたみたいなんです。それでちょっと“キツい性格”だと思われてしまったことがあって(笑)。ニュージーランド人って内向的で日本人と似ているところがあって、オブラートに包んだ言い方をするんです。例えばパーティーに誘われて行けない場合、アメリカ人なら「行けないわ」で済むような場合でも、ニュージーランド人には「ちょっと行きたいんだけれども、こういう事情があって行けないの、ごめんなさい。ホントは行きたいんだけど」って言わなきゃいけない(笑)。個人差もあるのでひとくくりにしてはいけませんが、国による違いも頭の隅に置いていていいと思います。

人と会うことがビジネスの基本 雑談から生まれるヒントが人生を豊かにする

――外国人と一緒に働く中で、自分のことを知ってもらうため、自分を表現するうえで心がけてきたことは何ですか?

外国人かどうかを問わず、「自分が何が得意か、自分でなければできないことは何か」を伝えることではないでしょうか。政治が好き、経済が得意、この問題だったら私は負けない…。記者時代に上司に「これだけは負けないというものを一つ作れ」と言われました。記者はいろんな部署を回って担当がその都度変わりますが、その中で自分でなければ書けない分野、テーマを作れと。それが自分の強み。その強み、個性を相手に伝えることが大事です。

――若い人の中には「自分の個性が分からない」という人もいると思います。どうやって見つければよいのでしょうか。

得意かどうかは他人が判断することかもしれませんが、好きかどうかは分かりますよね。徹夜してでもやってしまうようなこと、しばらくやらないだけで、やっぱりやりたい、書きたい、あの人に会いたい、もっと知りたいと思うようなこと…。好きだとどんどん取り組むから、必然的に得意になるはずですから、自分の心に「好きかどうか」聞いてみるといいと思います。

――人と良好な関係を築く上で大切にしていることは何ですか。

世の中“Give and Take”と言いますが、“Take and Take”の関係にならないよう努めています。取材する立場だとどうしてもTakeだけ、もらう一方になってしまう。だから何かを頼まれたら、仕事でなくても期待に応えるようにしています。取材でお世話になった方から「ちょっと通訳してくれない?」「海外でこういう報道が出てたそうなんだけど、調べてくれない?」と頼まれたら、できる範囲で応える。あと、なるべく顔を見せること。対面で会うのは時間もかかるし、ネットや電話で済ませるほうが楽なんですが、人とのコミュニケーションで会って話すことをおろそかにしちゃいけないと思います。

――若い人たちを見ていて、仕事に対する意識の違いを感じることはありますか。

ジャパンタイムズも、定期的ではないですが採用をしているので、大学を出たてくらいの人たちもいます。若い人たちは、ネットを駆使して情報を取ることには長けていますが、人と直接会って話すことが少なくなってきている気がしますね。ネットも必要ですが、直接会うことをもっと大切にしたほうがいい。これは記者だけでなくビジネスをしている人なら同じだと思います。目的の取材や商談が終わった後の雑談からヒントが得られることもあります。すぐ契約に結びつかなくても、市場や業界のこと、その人のことが分かるかもしれない。

電話やメールでも調べたいことは分かるし、目的は果たせますが、雑談をしないので広がらない。雑談から人生のヒントをたくさん得た人のほうが、結果的にいい仕事ができるようになるし、人脈も豊かになる。人脈が広がるとまた結果につながって、そういう人の周りには人が集まってくる。そういうプラス、ポジティブなサイクルが生じると思います。結局、情報をくれるのは人なんですよ。ネットにある情報だって、誰かが発信してるわけですから。

――グローバルな働き方を志向している人たち、「グローバル人材」を目指す人たちに、日々どういう努力をすればいいのかヒントをいただけますか。

世界で活躍したい、関わりを持ちたいと思っているなら、相手のこと、相手のカルチャーを知る努力が大事です。そのためには、いろんな国の報道に触れることではないでしょうか。例えば新聞は、ナショナルインタレスト、国益を反映している部分もあります。新聞が必ずしも中立だとは思いませんし、政治スタンスもいろいろあると思いますが。クリミアの問題だって、ロシア側から見るのか、クリミア側から見るのか、西側の視点から見るのかで全然違います。真実にはたくさんの層があります。政治でなくても、興味があるジャンルのニュースで構いません。今は欧米系の新聞もネットで読めますし、韓国の新聞が日本語で記事を公開しています。ロシアの新聞プラウダは英語で読めるし、英字新聞でもイスラエルで出てるものとか、いろんなものがあります。

私もサウジアラビアに行く前、触れていたのが欧米の報道だったせいか、女性たちは悲惨な状況におかれている国というイメージが強かったのですが、行ってみたら必ずしもそういう部分だけではありませんでした。一つの物事を、なるべくいろんな立場から見られるようにすること。いろんな情報源から情報を得て、相手の立場、外国の立場から見る訓練をするといいと思います。

2005年、サウジアラビアで政治家の会合に呼ばれ取材する大門小百合氏(本人提供)

「グローバル人材」というのも定義によると思いますが、すごく特別な存在というわけではないと思います。日本で通用しないことは世界でも通用しません。日本でも海外でも、何かを成し遂げようとしたら大切なのは、「コーリション・ビルディング」(Coalition Building:連携、提携関係を築くこと)。政治だって他党と手を結ばなければ法案が成立しない時代で、ビジネスでも同じです。自分がしたいことを成し遂げるためには、自分の仲間をどれだけ増やせるかです。対立するのではなく、仲間にしてしまう。そんなコーリション・ビルディングが世界でもどこでもできる人を目指すべきです。

今回の学び

  • 日本以外の視点を意識する。そのために海外メディアなど複数の情報源を持つ。
  • 電話・メールだけで済ませず、「人と会う」ことを大切にする。雑談がヒントをもたらしてくれる。
  • “Give and Take”を忘れない。自分への期待に応えることが良い関係の構築につながる。
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