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“グローバル人材”の輪郭

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日本人であるアイデンティティを無理に捨てても、ゆがみは生まれる。
「グローバルな自分」を使い分けよう

世界銀行 人事総局・上級採用担当官 関本範枝氏に聞く、“日本人”として活躍するための考え方

掲載日:2014.12.18

今回お話を聞いた人

世界銀行 人事総局・上級採用担当官 関本範枝氏

写真:関本範枝氏
PROFILE

1962年生まれ。同志社大学法学部卒業。カナダのマギル大学大学院修士課程修了(社会学)。外務省のJPO派遣制度により国際労働機関(ILO)で働いた後、国連食糧農業機関(FAO)や経済協力開発機構(OECD)に勤務。2002年、世界銀行入行。4年間勤務後、2年間のメキシコ滞在を経て、アジア開発銀行(ADB)や国際通貨基金(IMF)で、人事のエキスパートとして活躍。2013年より現職。著書に『世界で損ばかりしている日本人』(2011年刊。ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

世界銀行

1945年設立。貧困のない世界を目指して、世界の開発途上国に資金や技術支援を提供する国際開発金融機関。世界120カ国以上に現地事務所を展開し、それぞれの国の発展や生活水準の向上に貢献している。本部は米国ワシントンD.C.。日本は1952年8月に加盟し、現在はアメリカに次いで世界第2位の出資国となっている。

グローバル化が進むビジネスシーンにおいて求められる資質、望ましい人物像を、第一線で活躍する人たちへのインタビューで浮き彫りにする連載「“グローバル人材”の輪郭」。第8回は世界銀行・上級採用担当官の関本範枝氏。これまでに国際労働機関(ILO)や国連食糧農業機関(FAO)、経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)、国際通貨基金(IMF)といった国際機関において、一貫して採用業務に関わってきた人事のエキスパートである。2013年からは世界120カ国以上に現地事務所を展開し、世界188の加盟国から幅広い人材が集まる世界銀行で、リクルーティング全体を統括する人事部門の担当官として活躍している関本氏に、日本人が世界で活躍するための志向について伺った。

専門性を突きつめる重要性とは…ジェネラリストは「グローバル人材」として評価されない

――世界銀行 人事総局で、上級採用担当官としてグローバルに活躍されていますが、これまでには国際労働機関(ILO)やアジア開発銀行(ADB)など、さまざまな国際機関でキャリアを積んでいますね。

最初からプランを立てていたわけではありませんが、チャンスが回ってくると、それをつかむという感じでここまできました。最初に外国に出たのは、同志社大学時代。カナダに1年間留学をして、その後、大学卒業と同時にカナダのマギル大学の大学院に入りました。修士号を取得した後には、外務省が若手日本人の国際機関での業務経験支援のために設けている、「JPO派遣制度」を利用して1991年にILOに入りました。でも、派遣期間が終わった後も残れるのか分からない状況でしたから、次はどうしようか常に考えていましたね。もともと猜疑心が強いことと、残れなかったら後がないといった不安もあって(笑)、どんな仕事をしているときも、「この組織では、このスキルを身につけよう」「今のうちに、あの経験を積んでおこう」と、先のキャリアを見据えた働き方を意識していますね。ただ、この考え方は実はそれほど珍しいことではなく、海外で働いている人には同じようなタイプが多いように思います。

世界銀行に最初に入行したのは2002年です。ここで4年間働いた後に主人の転勤を機にメキシコに移り、2年間を過ごしました。その後はドイツでコンサルタントを1年間、マニラのADBに移って3年間勤務。そして、2年前に世界銀行に戻ってきました。現在の仕事は人事の中でも採用にまつわる業務が中心で、主にインフラ関係やエネルギー、水、輸送、農業、天然資源などの部門を担当しています。こうした分野は、暮らしに欠かせない重要な役割を担っているものの、残念ながら、人材を確保するのが難しい現状です。そこが力の見せどころでもあるのですが、いろいろな所に募集をかけて人をたくさん募るのはもちろん、一人一人に個別にコンタクトを取って、仕事やプロジェクトの魅力を切々と伝えることもあります。ほかにも仕事の比率自体は大きくはないものの、私は日本人職員を増やすための特別プロジェクトも担当しています。

――現在、世界銀行で働いている日本人はどのような人ですか。

世界銀行グループの専門職員のうち、日本人は3%程度と、とても少ないですね。ぜひ日本の人たちにはもっと積極的に、世界で働くということにチャレンジしていただきたいです。世界銀行で働くために必要なスキルは、まずは英語力。そして専門性が求められます。

ある分野に特化した経験を積んでいたり、博士号を持っている人などは、特に高く評価されています。一般的に日本の社会の中では、専門家よりもジェネラリストが求められることが多いと思います。日本の人たちは器用で何でもこなせるからこそ、そのような傾向が強くなるのかもしれませんが、世界が求める人材は反対なことが大半。何でもそれなりにできる人よりも、担当分野を突きつめてきた人たちが多く活躍しています。事実、最近では日本にいると専門性を追求できないから海外で力を試してみたい、という人も増えてきているように思います。日本の企業で働き、日本人ならではの良さも兼ね備えながら、もっと力を発揮できる環境を目指してグローバルな市場に挑戦する…。そんな人たちの輪が広がっていることは、とても良いことですよね。

バングラデシュの防災プロジェクトに携わる日本人職員。日本と世界銀行は、途上国の開発における防災の主流化のため、パートナーシッププログラムを実施している

――関本さんの仕事上のミッション、最終的なゴールは何ですか。

大きなゴールとしては、「勤勉に仕事をする」とか、「最後まできちんとやり通す責任感を持つ」といった日本人として培ってきたマインドや働き方といった財産を、行内にも根付かせたいということです。実は日本のことをよく知っている同僚からは、「あの部署に日本人を3人も採用すれば、状況は目覚ましく良くなるのにね」と言われることがあります。私自身もそのように感じることは多く、日本人だからこそ実現できる変革はたくさんあるんだと思います。だからこそ、もう一つのゴールは日本人をもっと採用したいということ。そのためにも、自分自身がいい加減な仕事をしない、責任感を持って働くということは、当たり前ですが常に心がけていることです。世界各国からいろいろな価値観の人が集まっている世界銀行でなら、それぞれの国の人たちの強みを活かした、より良いカルチャーも作り上げられるだろうと考えています。

――世界銀行だからこそ実現できること、世界銀行で働く醍醐味とは何でしょうか。

私の仕事は日々コツコツと進めていくタイプのものなので、ドラマチックなところはあまりありませんが、やはり私が関わった人たちが世界銀行に採用されて、実際にスタッフとして活躍していることが嬉しいですね。採用後に、「あなたの話を聞いて、世界銀行に入ろうと思ったんですよ」なんて言ってもらえた時には、何物にも代えがたい喜びを感じます。

世界銀行の魅力は、“やればやるほど、さらなる仕事を任せてもらえる”ところです。やる気があればあるほど面白い環境だと思います。ときには国を代表する政府の要職にある人々に会ったり、直接、国の政策に関わりのある仕事に携わることもあります。自分の提案が、その国の法律に活かされることもあるわけですから、他のセクターでは味わえないような醍醐味が溢れています。

相手や状況が求める姿を知れば、「日本人の自分」と「グローバルな自分」は共存できる

――出身国を問わず、「グローバル人材」として求められる特徴や志向には、どういったものがあると思われますか。

専門性や語学力といったスキルのほかにも、「自分の思っていることをしっかりと主張する」というマインドが求められます。日本の社会で許容される自己主張の基準とは異なっていたり、日本では主張するという考え方自体があまり訓練されてこないため、日本人にとってはなかなか簡単なことではありませんよね。でも最近の人たちには、そういったマインドがしっかりと身についてきているように思います。日本人と接するときと、日本以外の国の人と仕事をするときでは自分の性格や振る舞い方を変えて、それぞれ“ちょっと違う自分”を器用に使い分けている人が多いですね。最初は難しいのかもしれませんが、日頃から意識してチャレンジしていれば、きっとこの考え方は身につけられるものなんだと思いますよ。

――「グローバル人材」としての日本人の最大の強みは何ですか。勤勉さや責任感、誠実さでしょうか。

誠実さをなくしてほしいとは言いませんが、日本人はちょっと正直すぎるところがありますね。履歴書の書き方も控えめです。謙遜は日本人の長所ですが、世界で働くうえでは短所になってしまいます。これは履歴書だけでなく、面接の場においても言えることですが、自分の力を最大限に発揮できる環境で本当に働きたいと思うなら、「これもやれる!」「あれもできる!」と相手に印象付けなければなりません。信頼してもらえないことには、価値ある仕事は任せてもらえないものですから。本当にできるかできないかを判断するのは相手の仕事(笑)。あなたは雇われてから力を示せばいいのです。だからこそ、図々しいかなと怯む必要なんてまったくありません。

2012年には世銀・IMF総会が東京で行われ、主要な開発課題を議論する合同開発委員会が開催された

日本人、特に私のような関西出身者には、自虐的な話で笑いを誘って余裕を見せる、という文化がありますが、海外ではまったく通じません。特に知らない相手にそんなことをしてしまったら、言葉の額面そのままに受け取られてしまい、信頼を失いかねません。日本の基準だと、「ちょっと言いすぎかな」と思うくらいでも、言いすぎであることはほとんどありません。日本では謙遜することが美徳であるように、自分自身の魅力を最上級の形でアピールすることが、グローバルな社会ではいわば“決まり”なのですから。

――グローバルな働き方を志向している人たちや、グローバル人材を目指す人たちに向けて、改めてメッセージをお願いします。

海外で働きたいと思うなら、高い語学力は絶対に必要です。自分の思いを正しく伝えるためにも、語学力を向上させるための努力はぜひ続けてください。あとは、できるだけ早い段階で海外を見る機会を持つこと。例えば、休暇を利用してボランティア活動に出かけるといったことでもいいので、海外との接点をつくってください。外に出て、“日本の世界”が狭いということが分かると、“グローバルな世界”の面白さが見えてきて、どんどんやる気も出てくるでしょう。

また、海外と日本の基準は違うという点をしっかりと把握し、両方に対応できる人材になることも大切です。とはいえ、日本で生まれ育って身につけてきたものを無理に捨てようとしても、ゆがんだ形になるだけ。「グローバルな人材」は、その使い分けをとても上手に実行しています。実はこれはそれほど特殊なことではありません。きっとあなたもプライベートで家族や恋人と接しているときの自分と、職場で働いているときの自分は違うはず。二重人格になっていますよね(笑)。誰もが状況に合せて、人との接し方や考え方を自然に使い分けしているんです。ですから海外では、「海外で活躍できる自分」を上手に演出してみてください。自分の主張をしっかりと押し出し、できることを正確に伝えることが大切です。同時に、日本人ならではの良いところは忘れずに、培ってきたバックボーンをしっかりと誇れる、そんな「グローバル人材」を目指していただければと思います。

ワシントンDCにある世界銀行本部。総会中、貧困撲滅(End Poverty)のスローガンが掲げられた

今回の学び

  • 広く、浅く、何でもできるジェネラリストを目指すのではなく、一貫した専門性を身につける意識を持つ
  • 自己主張できる人材が求められる「グローバルビジネス」の場では、謙遜は厳禁
  • 接する相手や状況に応じて、自分自身を「グローバルな人材」として演出することが大切
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