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“グローバル人材”の輪郭

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世界が抱える課題は、日本にとっても決して無関係ではない。
グローバルに物事を見る「広く深い目」を持とう

国際協力機構(JICA) 人事部 人事企画課 課長 高橋亮氏に聞く、グローバル社会で通用する問題解決力

掲載日:2015.4.27

今回お話を聞いた人

国際協力機構(JICA) 人事部 人事企画課 課長 高橋亮氏

写真:大門小百合氏
PROFILE

1971年生まれ。千葉大学大学院 園芸学研究科 修了。1995年、国際協力機構(以下JICA)の前身となる特殊法人 国際協力事業団に入団。当初はアフリカとアジアの農林水産開発プランニングを担当。農林水産省への出向を経てJICA本部に戻る。2003年、パキスタン事務所へ異動。2005年、パキスタンのイスラマバードで大地震に遭遇し、現地で救援・復興対策に奔走。2006年、JICA本部に戻りパキスタン担当課に配属。2010年、農村開発部水田地帯グループの課長となり、インド、バングラデシュ、スリランカ、モルディブ、ブータン、ネパール、アフガニスタンの7カ国担当に。2012年、事業総括次長としてアフガニスタン事務所に単身赴任。2015年JICA本部に戻り、現職。

独立行政法人 国際協力機構(JICA)

2003年設立、外務省所管の独立行政法人。発展途上国の経済や福祉の向上を目指し、日本政府が各国に対して行う政府開発援助(ODA)を実施するための機関。開発途上国に対する有償資金協力や無償資金協力、技術協力、ボランティア派遣、国際緊急援助などを行っている。

グローバル化が進むビジネスシーンにおいて求められる資質、望ましい人物像を、第一線で活躍する人たちへのインタビューで浮き彫りにする連載「“グローバル人材”の輪郭」。第9回はJICA人事部 人事企画課 課長の高橋亮氏。農業・農村開発のエキスパートとしてパキスタン、アフガニスタンなどの開発途上国で、貧困に苦しむ人々のための開発プロジェクトを多数実現した高橋氏は、現在はJICA本部で職員採用と人材育成を担当している。そんな海外の「現場」をよく知る高橋氏に、グローバルな舞台で困難な課題解決に挑む際には、どのようなマインドが必要かを伺った。

個々が当事者としての自覚を持つことが、組織全体の活性化につながる

――JICAとは何を目的とする組織なのでしょうか。その中でも人事企画課はどういった役割を担っているのかを教えてください。

JICAの仕事を端的に伝えると、「国づくり」を担う仕事です。世界150カ国以上の政府や現地の人々と協力して、その国の未来の姿をともに思い描きながら、国の基盤づくりのお手伝いをしています。

そんなJICAの中でも私が所属する人事企画課は、職員の採用と研修などの人材育成を担う部署です。採用については、社会人採用として2014年10月から2015年4月にかけて15名、2015年春の新卒採用で42名を採用しました。部署名が「人事企画課」ということからもお分かりいただける通り、単に人材の採用や研修を担当するだけでなく、JICAをさらに活力のある組織にするためにはどういったシステムが必要か、どんな業務改善や制度構築が必要なのかを考え、組織全体の活性化を図っていくことが私たちの役割です。

――組織の活力とは、どのようなところから生まれるとお考えでしょうか。

職員一人ひとりが当事者として、リーダーシップを発揮することですね。JICAでは現在1,800人ほどの職員が働いていますが、どんな部署に所属している人であっても、誰もが常に現場にとっての最善とは何かを考えながら行動しています。中でも特に、現場を一番よく知る人が先頭に立って、しっかりと声を上げていくことが大切だと思っています。

JICAにはジョブローテーションがあるので、海外の現場で働いている期間は10年のうち3年くらい。海外出張が多い部署もありますが、基本的に残りの期間は国内勤務となります。担当する業務や国が頻繁に変わることも珍しくありませんが、経験を積み、成功実績を重ねていくと自分の中で核となる「型」のようなものができてきます。そうすると、どこの国へ行っても、どんな業務を担当しても、その「型」を活用して対処できるようになります。未経験の方の場合は、その「型」を見つけられるようになるまでに5~7年ほどが必要となりますが、その期間も上司のサポートの下で、「自分で考えて、自分が正しいと思うものを創出していく」という経験を徹底的に積んでいきます。失敗を恐れずにチャレンジすること。その過程でいかに自身の存在意義を見出していくのかということが、ひいては組織全体の活力にも直結していきます。

パキスタン地震被災 女子中等校再建

日本を背負っているからこそ味わえる、世界と日本の「真ん中」に立つ醍醐味

――現場ではチームでの仕事が基本になるのでしょうか。

はい。JICAの職員が人と人をつなぐ「真ん中」の役割を担って、さまざまな分野のコンサルタントや商社の方、大学の先生や自治体の職員、省庁の専門家などと一緒に現場の課題に対応します。そのほかにも日本には、世界に通用する高い技術力や豊富な知識を持った人がたくさんいますので、そのような人たちの力を引き出しながら課題の解決へと臨んでいきます。

ありがたいことに、JICAは国内外を問わず世界各地から非常に厚い信頼を寄せていただいておりますので、例えば話を聞きたいとお願いしたり、協力を依頼した際にも前向きに耳を傾けてもらえることが多いです。そのため、民間企業などではなかなか行えないような大規模なプロジェクトを実現できたり、質の高いサポートを提供できたりといった機会にも恵まれています。また、JICAは日本政府が開発援助の一環として運営する組織ですから、日本というバックボーンを持って、日本としての強みを最大限に活かしながらグローバルに活躍できるといった魅力もあります。

実際に海外で働く中では、「日本ではどのように対処しているのか?」と尋ねられることがよくあります。もちろん、そのまま倣うことができるわけではありませんが、日本での成功実績や過去の経験が参考になるケースは多く、日本の事例を元に、JICAが誇るネットワークを生かした他国経験も参照しつつ、課題ごとの解決策を丁寧に、「では、この国ではどうすればいいか」と考えていきます。

――ご自身が担当されたプロジェクトの中で、特に印象深かった仕事を教えてください。

特に印象に残っている仕事が三つあります。まずは、パキスタンの「畜産プロジェクト」。パキスタンでは、土地を持つ人と持たない人の格差がとても大きいんですが、土地を持たない農民でも、庭先で家畜を飼って暮らしています。わずかに保有する雌牛が生み出す生乳は、加工することで付加価値を高めたり、市場とつなぐことで、貴重な収入源となり、大きな変化をもたらします。農村社会における伝統的な貧困や格差については、長い年月を経て築かれた社会構造と表裏一体であり、一朝一夕で解決できる問題ではありません。しかし、私たちが紹介する改良技術や現地に適用できる知識を現場の関係者とともに見極めることで、日々の乳生産量を増やし、それらを売って得られる収入を1円、2円と高めることで、家計に及ぼす影響を大きくすることができます。また家畜の世話は、農村女性の重要な役割でもあり、これらの畜産振興を通じて社会的機会や地位向上にもつながってゆく可能性も秘めています。

二つ目は、アフガニスタンの「農業プロジェクト」。アフガニスタンはもともと農業国なのですが、地球温暖化等による水不足のため、農業で食べていけない人々や飢餓の問題が続いており、家族を養うため、一家の長が武器を取ってしまうことが少なくありません。私たちはこの「命の水」の課題に長年取り組んでいる現地NGO(Peace Medical Service)との連携を通じて、水位変動の激しい河川からの安定した取水とかんがい農業の復活、貧困やテロの悪循環を断ち切るプロジェクトを実施しています。この取り組みは、現地の人々にも高く評価されており、現在は、周辺地域への普及について検討中です。

最後は、「パキスタン大地震の復興支援」です。2005年10月、首都イスラマバードに赴任中に、7万人以上が亡くなる大地震がパキスタン北部で発生しました。心身ともに傷ついた被災地の方々に少しでも希望を持ってもらうために、JICAは組織を挙げて緊急援助や復興支援に取り組み、国際緊急援助隊の救助チームや医療チームの派遣、がれきの撤去、学校再建、防災教育、被災者の方々への心のケア、災害に強い街づくりのためのマスタープラン策定など、迅速でシームレスな支援を実施しました。

――お話を伺っていると、特に社会的に立場の弱い人たちの救済や地位向上に関係する案件が多いようですね。

私自身が「農業」のバックグラウンドを持って入構し、農業・農村のプロジェクトを中心に担当してきたので、結果としてそういった案件が多かったのかもしれません。他にもJICAには都市開発や空港、地下鉄を整備するといったインフラに関するプロジェクトもありますし、財政管理や中小企業の振興施策といった国の政策に即したプロジェクトもあります。しかし、どんな規模のプロジェクトにおいても、私たちが目指している方向性の根幹は常に同じです。それは、ともすると恵まれた人をさらに豊かにするためだけの施策となってしまいがちな「開発支援」において、私たちはそこで一番に取り残されてしまう人たちにもしっかりと目を向けていきたい、全ての人々に恩恵が行きわたる支援を行っていきたい、ということです。そんなJICAの理念に深く共感して入構を決められる方も、最近はとても増えていますね。

「問題の核心」は、相手の目線に立って初めて見えてくる

――JICAのように、グローバルな環境で複雑かつ切実な問題に直面する仕事を行うには、本人の適性も重要に思われます。具体的にはどのような適性が必要だと思いますか。

一つは、「人が好き」ということです。特に貧困や自然災害などの大きな課題に取り組むとき、自分一人ではできないことがたくさんあります。でも人と出会うこと、人と関わることが好きな方なら、現地の人や有識者とも力を合わせて、徐々に大きな問題の解決へと近づいていけます。もう一つは、「行動力」。今の時代、情報だけならインターネットなどで簡単に調べられますが、やはり実際に現場に足を運び、人と向き合うことが大切です。問題の核心を見抜くためのヒントは、現場以外にはありませんから。

実はこの「問題の核心を見抜く」ことが、私たちの仕事の中でも一番難しい部分であり、同時に私たちの存在意義でもあります。学問や統計学の分野には、いわゆる発展のための“ベストソリューション”と言える法則や方法論があふれています。でも、これを現場に適用することは実は簡単なことではありません。例えばパキスタンやアフガニスタンへ行ってみると、伝統的な農業が何百年も何千年も続けられていたりします。一見すると、「何故このようなやり方が脈々と続いているのか」と感じるものも少なくないでしょう。でも、現地の人々に近づけば近づくほど、彼らの営みにきちんとした理由があることが分かります。リスクテイカーでない人々の生活を変えることは容易ではありません。開発の名のもとで、現場を実験台にしてはいけません。ほんの小さな変化でも死活問題となることがあり得るわけです。このように相手の思いに寄り添い、同じ目線に立って考えられるようになって初めて、私たちは「問題の核心」に触れることができるようになります。

私たちはいずれ現場を離れ、開発の主体を現地の人々に委ねていく立場です。そのため、状況を一時的に改善するだけではなく、現地の人々が自ら問題解決能力を高め、状況変化の中で修正を加えていける力を身につけることこそが、本当の意味での成功と言えます。 “相手が許容できる範囲で、状況を少しでも改善できる具体的な何かを提案する”。それが私たちに課せられた任務であり、これには相当にシビアな目と的確な判断力が求められます。だからこそ、私たちの仕事はいつも真剣勝負なのです。

――そんなJICAの皆さんの姿勢に対して、現地の人々の姿勢はいかがですか。

現地の方々の学びの意欲は、非常に高いですね。私がJICAで働いていて喜びに感じるのは、国を超えて、本当に素晴らしい人たちと出会えることです。新たな出会いの中で、本当に教えてもらうことばかりです。農村で暮らすご年配の方から、シンプルな中にも核心を突いた言葉を聞いてハッと気づかされることもありますし、現場を熟知している人たちが持つ目線の高さから学ぶことも多いです。また、開発途上国では自分と同年代、あるいはもっと若い人たちが大臣や副大臣として、国づくりのリーダーシップを発揮していることも珍しくありません。そんな若い人たちの思いの強さにはいつも感化されますし、一緒に手を取り合っていきたいと切実に感じますね。そうなるともう自分自身にもスイッチが入って、24時間どんなときも、彼らのために何ができるかを考えるようになります。きらめきと覚醒とでもいいますか(笑)、JICAではきっと、誰もがこの感覚を経験していると思いますよ。

カブール郊外調査にて(子供たち)

最後に、これから世界を舞台に活躍したいと考えている人たちに向けて、アドバイスをお願いします。

JICAで活躍する上では英語力は必須で、さらにスペイン語やフランス語、中国語なども学校で勉強してきたという人が多いようです。入構後に利用できる語学留学の制度なども整っています。ただ、語学力も大切ですがそれ以上に重要なのは、人柄や熱意といった“中身”だと私は思います。実際、英語がとても流ちょうなのに相手に全く話を聞いてもらえない人もいれば、多少言葉がたどたどしくても、相手の懐にしっかりと入り込んで自分の考えを伝えている人もいます。そして最後に拍手で送り出してもらえるのは、やはり後者のタイプです。これはJICAだけでなく、どんな企業や国で働く場合にも共通する点だと思います。

また私は、物事を深く広く見る目を持つことが大切だとも感じています。私たちの身近な暮らしが世界とつながっていること、そして開発途上国の抱える課題が日本の未来にも真っすぐにつながっているということにぜひ、目を向けてください。この点を意識して世界を眺めることで、毎日の生活がずいぶん違って見えてくるはずです。

今回の学び

  • 問題の核心をつかむためには人とつながること。相手の視点を持ち、思いに寄り添うことが大切
  • 本当の意味で人の心を動かすためには語学力ではなく、相手の懐に入り込む力が求められる
  • グローバルな発想の第一歩は、身近な物事を深く広く見ることから始まる
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