エンジニアの残業の実情
一般的にプログラマーやシステムエンジニア(SE)などのエンジニアは残業が多いというイメージがありますが、実際のところどうなのでしょうか。dodaがビジネスパーソン15,000人を対象に調査した、2022/1/31公開の「残業時間ランキング」をもとに実態を確認していきます。
会社員 - 全90職種の平均残業時間
dodaが調査した「残業時間ランキング」によると、2021年4〜6月における会社員の平均残業時間は月20.8時間でした。では、全90職種のうちエンジニアの平均残業時間はどうなっているのでしょうか。残業時間が少ない業種TOP20、多い業種TOP20を確認していきましょう。
残業時間の【少ない】TOP20職種(平均残業時間:13.5時間)
上位には「事務/アシスタント系」が多く、「IT/通信系エンジニア」は20位までにはランクインしていません。
残業時間の少ないTOP20職種のうち10位までを掲載
順位 | 職種 [職種分類名] | 残業時間/月 |
---|---|---|
1 | 秘書/受付 [事務/アシスタント] | 10.5時間 |
1 | 医療事務アシスタント [事務/アシスタント] | 10.5時間 |
3 | 営業事務アシスタント [事務/アシスタント] | 11.1時間 |
4 | 金融業界の代理店営業 [営業職] | 11.4時間 |
5 | 一般事務アシスタント [事務/アシスタント] | 11.8時間 |
6 | 金融事務アシスタント [事務/アシスタント] | 12.3時間 |
7 | 経理/財務事務アシスタント [事務/アシスタント] | 12.5時間 |
8 | 薬事 [医療系専門職] | 12.6時間 |
9 | 金融業界の個人営業 [営業職] | 13.4時間 |
10 | MR [営業職] | 13.7時間 |
10 | 10 企画/マーケティング関連事務アシスタント [事務/アシスタント] | 13.7時間 |
残業時間が【多い】TOP20職種(平均残業時間:28.2時間)
「IT/通信系エンジニア」「モノづくり系エンジニア」「ゲームクリエイター」を合わせると6職種が残業時間の多い職種としてランクインしています。
残業時間の多いTOP20職種
順位 | 職種 [職種分類名] | 残業時間/月 |
---|---|---|
1 | 設計監理/施工監理/コンストラクションマネジメント [建築/土木系エンジニア] | 38.3時間 |
2 | プロデューサー/ディレクター/プランナー(出版/広告/Web/映像関連)[クリエイティブ] | 32.5時間 |
3 | 施工管理 [建築/土木系エンジニア] | 31.8時間 |
4 | 建築設計/デザイン/積算/測量 [建築/土木系エンジニア] | 29.8時間 |
5 | 人材サービスの営業 [営業職] | 29.2時間 |
6 | 電機メーカーの営業 [営業職] | 28.6時間 |
7 | 機械設計/金型設計/光学設計 [モノづくり系エンジニア] | 28.5時間 |
8 | 組み込みエンジニア [モノづくり系エンジニア] | 28.3時間 |
8 | 経営企画/事業企画 [企画/管理] | 28.3時間 |
10 | インフラコンサルタント [IT/通信系エンジニア] | 28.1時間 |
11 | 編集/記者/ライター(出版/広告/Web)[クリエイティブ] | 27.6時間 |
12 | コンサルタント [コンサルタント/不動産専門職] | 27.0時間 |
13 | 食品/消費財メーカーの営業 [営業職] | 26.8時間 |
14 | 回路設計 [モノづくり系エンジニア] | 26.4時間 |
15 | 広報/PR/IR [企画/管理] | 26.3時間 |
16 | ITコンサルタント(アプリ)[IT/通信系エンジニア] | 26.1時間 |
17 | ゲームクリエイター(Web・モバイル・ソーシャル)[クリエイティブ] | 25.8時間 |
17 | 技術開発/部材開発/解析/調査 [建築/土木系エンジニア] | 25.8時間 |
19 | 基礎研究 [モノづくり系エンジニア] | 25.1時間 |
20 | 法務/知的財産/特許 [企画/管理] | 24.2時間 |
上記のとおり「IT/通信系エンジニア職種」では、インフラコンサルタントとITコンサルタント(アプリ)の2職種が残業の多い職種TOP20にランクインしています。
逆に残業の少ない職種TOP20には「IT/通信系エンジニア職種」が1職種もランクインしていないことから、エンジニアは比較的残業が多めの職種であるといえるでしょう。しかし、「モノづくり系エンジニア」や「IT/通信系エンジニア職種」より残業が多い職種がたくさんあることも事実です。
また、同調査の全90職種の残業時間では、「社内SE」の平均残業時間は18.3時間、「テクニカルサポート/ヘルプデスク」が19.7時間、「Webエンジニア」が20.3時間で全体の平均残業時間より少なく、職種によって残業時間に差が見られます。
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残業が多い印象のエンジニア職種ですが、「IT/通信系エンジニア」のすべての職種において残業が多いというわけではありません。実感として「残業が多くて大変だ」と感じている方もいるかもしれませんが、「IT/通信系エンジニア」の中でも業務内容によって残業時間に差が見られることが、前項のとおり「残業時間ランキング」の結果から分かりました。
ここでは、一般的にエンジニアの残業が多くなる理由として考えられる要因を解説します。
エンジニア人材が不足している
エンジニアの残業が多くなる理由の一つに、エンジニアの人材不足が考えられます。
IT人材不足は以前から課題とされていましたが、経済産業省が発表した「IT人材需給に関する調査」※では、2030年には最大で79万人のIT人材が不足する可能性が指摘され、IT人材不足の現状が明らかになりました。近年、企業のDX推進が加速していることもエンジニア人材不足の一因になっています。
多くの企業が「社内に必要なエンジニアが不足している」と感じており、慢性的に人材が不足しているこのような状況では、エンジニア1人当たりの業務量や仕事のボリュームが非常に多くなってしまいます。企業内で人材を育成しようと考えても、経験者が人材育成のための時間をとることができないため、人材が育たずさらに人手不足になるという悪循環が続いてしまうケースや、忙しすぎて心身のバランスを崩し出社できなくなり、さらに人員不足が発生してしまうというケースもあります。
今いるエンジニアが実務をこなしながら教育するとなると、通常業務を残業でカバーするケースも出てきてしまい、エンジニアの人材不足から残業が常態化してしまうことが懸念されます。
二次請け、三次請けの受発注形態
IT業界では受注した企業が下請け企業に発注するような二次請け、三次請けという受発注形態はよくあります。元請けは、スケジュールに余裕を確保するため下請け企業には予定より短いスケジュールを要求することが多く、下層の下請け企業になればなるほどスケジュールがタイトになるという状態が発生する傾向にあります。そのため、納期重視で、残業してスケジュールに合わせる対応になることが長時間勤務の要因の一つとして考えられます。
突発的なトラブル対応がある
エンジニアの仕事は、突発的なトラブル対応が多いことも残業が多くなる要因の一つです。
例えば、システムエンジニア(SE)の場合は仕様書に基づいて指定のシステムやプログラムを開発するのが主な仕事ですが、クライアントの要望により仕様が大幅に変更され、予定外の業務が発生することも往々にして発生します。また、サーバーのシステム障害やネットワーク障害、原因の分からないシステム障害などの「障害対応」も予定外の業務です。
これらは日中に発生するとは限らず、深夜や早朝、休日にも発生することがあるため、エンジニアに負担がかかります。システム障害は調査、対応に加え、対応が完了した後の報告作業や、再発防止策の策定、恒久対応など付随する作業が多いということも残業時間を増やす要因です。
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年収査定を受ける(無料)エンジニアの残業を減らすための仕事術6選
エンジニアの残業はクライアントの要望やシステムトラブルなど外的要因で発生するケースも多いですが、残業を減らすために効率的な仕事の進め方を身につけ、まずは個人の裁量の範囲内でできることを実施してみましょう。
仕事術1. 業務の効率化を行う
まず、自身の業務の効率化ができないかを考えます。
定常的に行う単純作業はないでしょうか? それらは自動化できる可能性やツールの導入などで時間短縮ができる可能性があります。その場合、自動化ツールの開発・導入を上司や会社に提案することも検討します。このような自動化ツールの開発やツールの導入は一時的には時間も手間もかかりますが、業務の効率化の考え方は「楽するための努力」を行うことです。エンジニアであれば、エンジニアのスキルを駆使して効率化を図りましょう。
仕事術2. 業務の分散化を行う
残業が多くなる理由として、属人的に仕事を抱え込んでしまい、特定の人に仕事が集中してしまうことが挙げられます。
マニュアルを作成し業務をテンプレート化したり、Wikiツールなどで業務内容をまとめ、検索すればほかの人でも分かるという状態にしたりなど、見える化することによってほかの人に仕事を依頼しやすくなり、業務の移譲、分散化が可能になります。作成や準備に一時的に時間を割く必要がありますが、テンプレートやマニュアルがあれば業務分担が可能になるため、全体の効率アップを図ることができ、残業抑制にもつながるでしょう。
また、業務をまとめ文書化すると、アウトソースもしやすくなるというメリットがあります。
仕事術3. 優先順位付きのTODOリストを作成する
出社して仕事を始める際、なんとなく優先度が高いと思っている仕事から作業し始めていないでしょうか。業務を進めるときは「重要度」と「緊急性」をあわせて考え、リストアップし、どの程度時間がかかりそうかを推測することが重要です。また、タスクリストのうちどこまでを今日中に終わらせるのか、目標をもって作業を進めることで効率的に作業を行え、スケジュールを見積もるスキルも身につきます。
明確に計画せず仕事を進める場合、行きあたりばったりな状態になることで、少しイレギュラーな事象が発生すると残業でリカバリーするという対応になってしまうことがあります。
仕事術4. マルチタスクによるスイッチングコストに注意する
1日のスケジュールや1週間のスケジュールを立てる際は「スイッチングコスト」にも注意する必要があります。「スイッチングコスト」とは、そのタスクがどういうものだったか、前回まで何をしていたか、思い出し、エンジンがかかるまでの時間で、例えばある作業中に割り込み作業が発生した時、元の作業の流れを取り戻すには20分かかる※といわれています。
優先度が高いから、という理由でプロジェクトAのタスク、プロジェクトBのタスク、またプロジェクトAのタスクを行うというように、複数のプロジェクトのタスクを頻繁に混在させると、まとめて行うよりも時間がかかります。
仕事術5. タイムマネジメントを取り入れる
先のスイッチングコストのように、時間をどのように使うのかを計画するスキルを磨きましょう。1日にタスクを詰め込みすぎると残業せざるを得ない状況に陥ることがあります。8:2の法則で、2割のゆとりを持たせ※、タスク完了に想定外に時間がかかってしまうケースや割り込み作業に対応できるようにしておくことがポイントです。
仕事術6. 緩急を付けた仕事の進め方:ポモドーロ・テクニック
1日の仕事時間を大きく分けると、出社から昼食まで、昼食後から15〜16時あたり、終業までの2〜3時間でなんとなく区切って考えている方は多いのではないでしょうか。これは比較的大きな単位で時間を意識することになりますが、ポモドーロ・テクニック※では、短い単位で集中して作業を進めます。
ポモドーロ・テクニックとは1980年代にイタリア人のフランチェスコ・シリロが考案した時間管理術で、25分作業+5分休憩を1ポモドーロとし、このサイクルを繰り返します。4ポモドーロ繰り返したら30分の休憩を取ります。基本的に、トイレなどは休憩と定めた時間に済ませ、25分間は席を離れず集中して作業を行います。
タスクをスケジューリングする際は、何ポモドーロで終了できるかというように考えることができます。このテクニックは、かなり集中を要し濃密な1日になりますが、その分生産性は上がります。
※『どんな仕事も「25分+5分」で結果が出る ポモドーロ・テクニック入門』(CCCメディアハウス)
ここまで、個人でできる範囲の残業を解消するための仕事術を解説してきました。しかし、そもそもの業務量が多い場合は根本的な解決にならない場合もあります。会社によっては時間外労働に対する意識が低く、人手不足の解消などに意欲的ではないケースもあります。今後も常態的に残業が続き、業務の効率化も見込めないようであれば、労働環境の改善を目的とした転職を考えてみることも一つの方法です。
同じ業界や職種でも、経営者の考え方や社風などによって残業に対する意識も大きく異なります。現在は多くの企業がエンジニアを募集していますから、ご自身の希望に合った働き方が実現できる企業を探してみてもよいのではないでしょうか。
エンジニアとしての市場価値を知るために
年収査定を受ける(無料)遠藤 勇太(えんどう・ゆうた)
前職でフリーランスエンジニアの転職支援をしていましたので、ネット系の企業を得意としています。これまでお会いしたお客さまが、「この技術が伸ばせる企業に行きたい」という希望を強くお持ちの方が多かったため、各社のシステム環境や技術的な強みを把握しています。 また、現在は20代前半の方から40代の方まで、幅広く担当させていただいています。これまでの経験を活かし、個人の方の多様な価値観に応えながら、企業側の目線を踏まえた転職成功へのアドバイスをさせていただきます。
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