データサイエンティストとは
データサイエンティストは、端的にいえばAI社会におけるデータを扱うプロフェッショナルです。大量のデータを集め、整理し、パターンやトレンドを分析し、ビジネス上の課題や問題に対する解決策を見つける役割を果たします。
近年、人々の生活のデジタル化が進んだことで、知らず知らずのうちに人々の行動がデータとして蓄積されています。例えば、インターネットで使用した「検索ワード」や、ECサイトにおける購入履歴、SNSにおける投稿など、人々が行動した過程や結果で生成されるさまざまな記録は、すべてその人の特徴を表すデータの一部になります。
また生成されるのは個人のデータだけでなく、事業者のデータも数多く存在します。例えば農業や水産業などの一次産業、その先の二次産業、三次産業においても、気象状況や収穫量、工場での生産量、実際の市場での流通量など、企業活動を通じてさまざまなデータが生成されます。それらデータは、活用次第によって、各事業者にとっては未来のビジネスに向けた貴重な資産になり得ます。現代においては、日夜生成される大量のデータをどのように活かすかが、ビジネスを成功へと導く鍵となっているからです。
このデータを活用するための人材こそがデータサイエンティストであり、IT企業はもちろんのこと、サプライチェーンに関わる小売業者や部品メーカー、流通業者、各種サービス事業者まで、さまざまな分野の企業においてその存在の重要性が高まっています。
データサイエンティストに求められるスキル
データサイエンティストになるにはどのようなスキルを身につければよいのでしょうか。
データサイエンティストの仕事はデータを分析することですが、ただ分析すればよいというわけではありません。分析結果を導き出してビジネスに活かすためには、企画の立案や仮説の考察、データの収集や前処理、分析や解析、仮説の検証、レポートなど、多くのプロセスを経る必要があります。そのため、データサイエンティストにはさまざまな分野の知識やスキルを複合的に使いこなす能力が求められます。
具体的には、データサイエンティストになるには主に次のようなスキルが必要になります。
- 数学・統計の知識
- データベース関連の知識
- AI・機械学習の知識
- 業務知識・分析対象の知見
数学・統計の知識
データ分析には数学や統計の知識は必須です。また、データ分析のためのソフトウェア・ツールの使い方や、プログラミング言語、数値計算のプログラムを書くためのアルゴリズムなどの知識も重要です。
関連記事 : 機械学習に数学の知識は必要?最低限の基礎知識を徹底解説
データベース関連の知識
総じて、データサイエンティストが扱うデータは大量であるため、それを保管するデータベースの知識も必要です。データベース・ソフトウェアの扱い方に加えて、データベース上でデータを扱うために使われる「SQL」(Structured Query Language)と呼ばれるクエリ言語についても学ぶ必要があるでしょう。
AI・機械学習の知識
近年のデータサイエンスの発展はAIに支えられている「といっても過言ではありません。特に大量で多様なデータを対象に分析を行う場合には、AIは必須のツールです。そのためデータサイエンティストには、AIを支える機械学習の基本的な理解に加えて、機械学習のための学習モデルを作成および利用する力も求められます。
関連記事 : 機械学習とは?種類やできること、プログラムとの違いを解説
業務知識・分析対象の知見
技術的なスキル以外に、分析の対象となる業務の知識や経験も重要な要素です。データサイエンティストの仕事の目的はあくまでも課題解決や新しい知見を得ることであり、データはそのための道具に過ぎません。企業のデータサイエンティストとして働く場合は、その事業分野の課題を把握し、事業戦略のヒントを見つけ出せるようになることが大切です。
エンジニアとしての市場価値を知るために
年収査定を受ける(無料)データサイエンティストを目指す人におすすめの資格
前述のように、データサイエンティストになるには広範な知識が必要なため、最初は何から勉強を始めればよいか分からなくなってしまうかもしれません。今回は、データサイエンティストを目指す上で役立つさまざまな資格を紹介します。さらに、データサイエンティストを対象としたさまざまなコンペティションについても取り上げます。
- データサイエンティスト検定 リテラシーレベル
- 基本情報処理技術者試験/応用情報技術者試験
- データベーススペシャリスト試験
- 統計検定
- G検定/E資格
- Python3 エンジニア認定データ分析試験
- オラクルマスター(ORACLE MASTER)
- Google Cloud Professional Data Engineer
データサイエンティスト検定 リテラシーレベル
まずは何といっても外せないのが「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル」です。
「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル(略称:DS検定)」とは、一般社団法人データサイエンティスト協会が定義する「スキルチェックリスト ver.4」の「アシスタント・データサイエンティスト:★1(見習いレベル)」と、数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムが策定し公開している「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)モデルカリキュラム ~ データ思考の涵養 ~」が総合された、実務能力と知識を有することを証明するための試験です。
一般社団法人データサイエンティスト協会が定義する「スキルチェックリスト ver.4」の内容については次のプレスリリースで紹介されています。
2021年度版「データサイエンティスト スキルチェックリストver.4」およびデータサイエンス領域タスクリスト ver.3」を発表
このチェックリストでは、下記のスキルレベルに応じて習得するべきスキルが定義されています。データサイエンティスト検定 リテラシーレベルは、そのうちの「★1(見習いレベル)」に指定されたスキルが対象範囲となります。
スキルレベル | 目安 | 対応できる課題 | |
---|---|---|---|
Senior Data Scientist シニア データサイエンティスト |
★★★★ | 業界を代表するレベル |
|
Full Data Scientist フル データサイエンティスト |
★★★ | 棟梁レベル |
|
Associate Data Scientist アソシエート データサイエンティスト |
★★ | 独り立ちレベル |
|
Assistant Data Scientist アシスタント データサイエンティスト |
★ | 見習いレベル |
|
データサイエンティスト検定のスキルレベルと目安、課題。(一般社団法人 データサイエンティスト協会発表資料より)
(一般社団法人 データサイエンティスト協会発表資料より)
データサイエンティスト検定 リテラシーレベルは2021年9月より年2回実施されています。過去の受験者数および合格者数は次のようになっています(公開されているもののみ記載)。
実施回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第1回(2021年9月) | 約1,400名 | 927名 | 約66% |
第2回(2022年6月) | 約2,900名 | 1,453名 | 約50% |
第3回(2022年11月) | 約2,600名 | 1,088名 | 約42% |
第4回(2023年6月) | 約3,050名 | 1,347名 | 約44% |
データサイエンティスト検定の対象、合格者の位置づけ
データサイエンティスト検定の対象や合格者が証明されること、また、実際の試験内容について簡単に紹介します。
データサイエンティスト検定の受験対象者は、以下のようになっています。
- データサイエンティスト初学者
- これからデータサイエンティストを目指すビジネスパーソン
- データサイエンティストに興味を持つ大学生や専門学校生など
また、データサイエンティスト協会は、合格者は「データサイエンティストに必要なデータサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力についてそれぞれ見習いレベルの実務能力や知識、また、数理・データサイエンス・AI教育のリテラシーレベルの実力を有していることを証明する」としています。
つまり、まだデータサイエンティストとしての素養(スキルセット・マインドセット)を持っていない方が、より実践的なデータサイエンティストになるために、まず取得すると役立つのがこのデータサイエンティスト検定です。いわば、データサイエンティストになるための登竜門といえるでしょう。
データサイエンティスト検定の試験範囲
最後に試験範囲です。対象は初学者とはいっても、データサイエンティストという専門職種として認定するわけですから、そのために必要な分野の知識が試されます。
試験で試されるのは、主にデータサイエンティスト協会のスキルチェックリストに準ずる 「データサイエンス力」「データエンジニア力」「ビジネス力」の3つの力です。難易度は前述の「★1(見習いレベル)」の範囲に収まるものなので、いずれも見習いレベルということになります。
これに加えて、数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムによる「数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)におけるモデルカリキュラム」を統合した内容が出題範囲として設定されています。
※一般社団法人データサイエンティスト協会 スキルチェックリストを改変
データサイエンティスト力
データサイエンス力としては、次のような分野に関する内容が対象になります。
- 統計数理基礎、線形代数基礎、微分・積分基礎などの数学的知識
- データクレンジング、データ加工といったデータ操作の基本
- 機械学習、深層学習、自然言語処理、画像認識などのデータの応用技術、など
データエンジニア力
データエンジニア力としては、データサイエンス力よりは少し業務に近い次のような分野の内容が対象になります。
- システム企画、システム設計、アーキテクチャ設計などの知識
- データ処理にかかわるマッピング処理やサンプリング処理の手法
- 暗号化技術、認証など
ビジネス力
ビジネス力は、上記二つをビジネスに応用した次のような内容が対象になります。
- ビジネスマインド
- データ・AI倫理
- 説明能力
- リソースマネジメント
- リスクマネジメント、など
これらはいずれも、実際のプロジェクトに加わる上で必須の項目です。
数理・データサイエンス・AI(リテラシーレベル)におけるモデルカリキュラム
前述した内容に加え、 モデルカリキュラム(スキルセット)としては次の項目が範囲として設定され、試験に含まれます。
- 社会におけるデータ・AI利活用 : 社会で起きている変化、社会で活用されているデータ、データ・AIの活用領域、データ・AI利活用のための技術、データ・AI利活用の現場
- データリテラシー : データを読む、データを説明する、データを扱う
- データ・AI利活用における留意事項 : データ・AIを扱う上での留意事項
基本情報技術者試験/応用情報技術者試験
データサイエンティストの名前が付いた資格試験以外にも、データサイエンティストという職種を目指す上で、取得するとメリットがある資格試験があります。
最初に紹介するのは、経済産業省が情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験「情報処理技術者試験」です。この試験のうち、「基本情報技術者試験」と「応用情報技術者試験」は、さまざまなスキル分野・業務分野を横断的に扱う内容であり、データサイエンティストをはじめとする幅広い分野で役立ちます。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験の対象は、「高度IT人材となるために必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」とされています。試験範囲には情報技術の基礎知識や用語、プログラミングの基本、ネットワークの基本などが含まれます。難易度は初級レベルで、一般的には情報技術に関する基本的な知識があれば合格しやすいとされています。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験の対象は、「高度IT人材となるために必要な応用的知識・技能をもち、高度IT人材としての方向性を確立した者」とされています。こちらはより実践的な情報技術の応用能力やシステムの設計、開発、運用などに関する知識が求められる試験です。難易度は基本情報技術者試験よりも一段階上とされており、実務経験や関連する技術に関する深い理解が要求されます。
この二つの試験は、データサイエンティストという職種よりも対象の幅は広いですが、ITエンジニアとしてのバックグラウンドがない方がデータサイエンティストを目指そうとするのであれば、基礎力を身につける意味で学習して損はないでしょう。
データベーススペシャリスト試験
前述の基本情報技術者試験/応用情報技術者試験と同様に、経済産業省が認定する国家試験に「データベーススペシャリスト試験」があります。
この試験も、上記と同じく「情報処理技術者試験」の枠の中にありますが、対象は「高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・開発・運用・保守において中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守への技術支援を行う者」となっています。
データおよびデータベースという観点から、データサイエンティストが扱うスキル領域と非常に近い内容が対象です。2023年時点では、公式サイトにおいても、「ビッグデータ時代に求められる、データ志向の担い手」という説明がされているように、この資格を取得することもまた、データサイエンティストとしての素養を身につけている証明といえます。
データベーススペシャリスト試験では、データベースの基本的な概念や、設計原則、SQL(Structured Query Language)、パフォーマンスチューニング、セキュリティなどに関する知識が求められます。試験の難易度は比較的高く、データベースに関する中級レベルから上級レベルの知識と実践的な能力が必要だとされています。
統計検定
次は、これまで紹介した試験よりも、さらに対象内容を絞った「統計検定」を紹介します。
「統計検定」は、統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験で、一般財団法人統計質保証推進協会が実施、一般社団法人日本統計学会が認定する資格試験です。
この試験も、データに基づいて客観的に判断し、科学的に問題を解決する能力が、業務・研究を行う上での21世紀型スキルとして国際社会で広く認められていることが背景となり誕生しました。国際通用性のある統計活用能力の体系的な評価システムとして統計検定を開発し、さまざまな水準と内容で統計活用能力を認定した内容となっています。
統計検定には、そのレベルや専門性に応じて次の種別が用意されています(2023年現在)。
検定種別 | 試験内容 |
---|---|
統計検定4級 | データや表・グラフ、確率に関する基本的な知識と具体的な文脈の中での活用力 |
統計検定3級 | データの分析において重要な概念を身につけ、身近な問題に活かす力 |
統計検定2級 | 大学基礎統計学の知識と統計的問題解決力 |
統計検定準1級 | 統計学の活用力 ─ 実社会の課題に対して適切な統計学の手法を応用する活用力 |
統計検定1級 | 実社会のさまざまな分野でのデータ解析を遂行する統計専門力 |
統計検定 統計調査士 | 統計に関する基本的知識と利活用 |
統計検定 専門統計調査士 | 調査全般に関わる高度な専門的知識と利活用手法 |
統計検定 データサイエンス基礎(DS基礎) | 具体的なデータセットをコンピュータ上に提示して、目的に応じて、解析手法を選択し、表計算ソフトExcelによるデータの前処理から解析の実践、出力から必要な情報を適切に読み取る一連の能力 |
統計検定 データサイエンス発展(DS発展) | 数理、情報、統計など数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムのリテラシーレベルのモデルカリキュラムに準拠した内容 |
統計検定 データサイエンスエキスパート(DSエキスパート) | 計算、統計、モデリングなど数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムの応用基礎レベルのモデルカリキュラムを含む内容 |
統計検定4級から1級は統計に関する総合的な知識が要求される試験で、難易度は1級が最も高く、各級は下位の級のすべての内容を含んでいます。
統計調査士と専門統計調査士は、それぞれ統計検定3級および統計検定2級合格程度の知識に加えて、社会・経済で利用される公的統計や各種調査データの活用および作成などの能力が求められます。
データサイエンティストにとっての専門領域をカバーするのがデータサイエンス基礎(DS基礎)、データサイエンス発展(DS発展)、およびデータサイエンスエキスパート(DSエキスパート)の3つです。DS基礎ではデータサイエンスに関する基礎知識が求められます。DS発展およびDSエキスパートは、数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムが定めるモデルカリキュラムの内容をカバーしており、データサイエンスに関するより高度で専門的な知識が求められるため、それだけ難易度は高くなっています。
G検定、E資格
続いて、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施・認定する「G検定」「E資格」を紹介します。
日本ディープラーニング協会は、ディープラーニングを事業の核とする企業および有識者が中心となり、ディープラーニング技術を日本の産業競争力につなげていこうという意図のもとに設立された団体で、中でも人材育成に軸足を置いた活動を行っているのが特徴です。G検定、E資格とも、こうした意図を持った団体が認定した資格試験であり、ディープラーニング領域の人材育成につながる資格として評価されています。
試験の対象者は、G検定は「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する」もの、E資格は「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する」ものとされています。
G検定がAIを活用する人々に向けた試験になっているのに対して、E資格は機械学習モデルの実装や、内部で行われる数学的な計算の理解などを含む、エンジニア寄りの内容になっているという違いがあります。
G検定
G検定の過去の合格率は約55%~70%前後の間で推移しており、難易度は初級から中級レベルとされています。未経験でも合格することはできますが、試験範囲が広く問題数が多いため、合格にはしっかりとした対策が必要です。
E資格
E資格については、受験するためにJDLA認定プログラム(JDLAが定めたシラバスに基づく講座)を修了している必要があるという条件が付いています。合格率は約65%~75%前後とG検定より高いですが、受験者全員が講座を受講済みであることを考慮すると、その難易度はG検定と同等かより高いものと考えられています。
Python3 エンジニア認定データ分析試験
プログラミング言語の「Python」は、データサイエンティストの仕事にも深く関わりがあります。Pythonはデータサイエンスの分野で広く使われており、データの処理や分析、可視化、機械学習などの作業において極めて重要なツールとなっているからです。
「Python3 エンジニア認定データ分析試験」は、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営している資格試験で、「Pythonエンジニア認定試験」の試験区分の一つとして行われています。Pythonの基礎に加えて、データ分析に必要な数学の基礎知識や、ライブラリによる分析の実践方法など、Pythonを使ってデータ分析を行うためのスキルが問われます。
データ分析の知識に関する難易度はそこまで高くはありませんが、実践的なプログラミング能力も求められる点がほかの資格とは少し異なります。ただし、Python自体もプログラミング言語の中では習得しやすい言語なので、初学者でもしっかりと対策をすれば十分に合格を目指せるでしょう。
オラクルマスター(ORACLE MASTER)
「オラクルマスター」(ORACLE MASTER)は、日本オラクル株式会社が実施しているデータベース技術の認定資格です。オラクル社のデータベース製品であるOracle Databaseは、データベース製品の中でも世界的に高いシェアを誇っており、これを使いこなす技術はデータサイエンティストにとっても役立つシーンが多いでしょう。
オラクルマスターの試験範囲は、Oracle Databaseの管理に関連する内容や、Oracle Databaseを操作するためのSQL文に関する内容になります。難易度は4段階あり、Bronze、Silver、Gold、Platinumの順に難しくなり、SilverにはSQLに特化した別の試験区分も設けられています。このうち、データベースの基礎知識を必要とされるBronzeや、データベースの日常的な運用管理の知識を必要とされるSilverは、データサイエンティストの仕事にも関連する内容といえるでしょう。
なお、オラクルマスターでもBronzeやSilverで出題される問題は、Oracle Databaseに限らない汎用的な内容が多くを占めています。そのため、データベースシステムに関する一般的な知識を体系的に学びたいという場合でも。オラクルマスターの取得を目指すのは有効な手段といえます。
Google Cloud Professional Data Engineer
大量のデータを取り扱う上では、クラウド技術も重要になります。クラウドプラットフォームのGoogle Cloudを展開するGoogleでは、データエンジニアリングやデータ分析に関わる知識を問う認定資格試験として「Professional Data Engineer」を実施しています。オラクルマスターと同様にエンジニア向けの試験内容にはなりますが、クラウド上のデータ基盤に関する知識を網羅的に身につけることができるため、データサイエンティストを目指す人にとっても有用な資格の一つです。
Professional Data Engineerの難易度は比較的高く、公式サイトにも受験する上での推奨される経験として「業界経験が3年以上(Google Cloudを使用したソリューションの設計と管理の経験1年以上を含む)」と書かれています。出題範囲も広く、実務経験が無い人にとってはハードルが高いため、データ基盤を実際に触るようになった後、発展的な学習を志すタイミングで目を向けるとよいでしょう。
エンジニアとしての市場価値を知るために
年収査定を受ける(無料)資格ではない、実践的データサイエンティスト力量チェック――コンペ
これまでは、データサイエンティストとして活動するための基準という観点から、国家試験をはじめ、その分野の権威である団体が実施・認定する資格試験を紹介してきました。
ただ、データサイエンティストに限らず、プロフェッショナルは実際の現場で考え、行動できるかが重要になります。
次は、データサイエンティストとしての力量を測る競技会(コンペティション)をいくつか紹介します。前述の資格試験が、一定の能力に関する客観的評価であるのに対し、コンペティションは、参加者同士の結果を競う相対的評価であるため、実際にデータサイエンティストとして働く人や目指す人の中での、自分自身のレベルが分かるものとして捉えることができます。
- Kaggle
- SIGNATE
- Nishika
- 統計データ分析コンペティション
Kaggle
データサイエンティストを対象としたコンペティションとして最も有名なのがKaggleです。もともとは企業や研究者がデータを投稿し、世界中のデータ分析家たちがそのデータの最適モデル構築を競い合うためのプラットフォームとしてスタートしました。2017年に運営会社のKaggleをGoogleが買収し、今はGoogle傘下の企業によって運営される予測モデリングプラットフォームとなっています。
このプラットフォームには、専門家たちだけではなく、世界屈指のコンサルティング企業をはじめ、データサイエンスを事業とする企業がホスト(データ提供者)として参加し、その中で競われるモデルに賞金を提供するなど、コンペティションとして認知されるようになり、より実践的かつ業務(賞金獲得)としてのデータサイエンスの分野を活性化させる一助になりました。
※画像は「Kaggle: Your Machine Learning and Data Science Community」より引用
Kaggleでは、ホスト(データ提供者)が、複数のコンペティション形式から提出させるデータ形式を選んでコンペティションを設定します。賞金付きのもの以外に、ランキングには反映されない練習用の「Getting Started」、入門よりも難易度が高い「Playground」、データサイエンスを学ぶ初学者向けのコンテンツ「Learn」も用意されています。
SIGNATE
次に、日本国内のものを紹介します。最初に紹介するのが「SIGNATE」です。データサイエンスプラットフォームとして、株式会社SIGNATEが運営・提供を行います。
「Competition」「Learning」「Career」の3つの分野から構成されており、コンペティションの参加(課題提供)に加えて、データサイエンティストとしての学習(育成)およびキャリア構築までを、一つのエコサイクルとして考えているのが特徴です。
Nishika
Nishikaも、SIGNATEと同じく日本国内で、Nishika株式会社が運営しているデータサイエンティストコンペティションです。こちらは「国内最大級のデータサイエンスコミュニティ」と銘打ち、データサイエンティスト同士のコネクションづくりに特に注力したプラットフォームとなっています。
統計データ分析コンペティション
最後に、少し変わったコンペティションを紹介します。
独立行政法人統計センターが事務局となって2018年度から毎年実施している「統計データ分析コンペティション」です。
高校生、大学生などを対象に、地域別の統計をまとめたSSDSE(教育用標準データセット)を用いた統計データ分析の論文を募集し、そのアイデアと解析力を競うコンペティションとなっています。
エンジニアとしての市場価値を知るために
年収査定を受ける(無料)未経験からデータサイエンティストへ転職するのに資格は役立つ?
ここまででデータサイエンティストに関連する資格やコンペティションについて解説してきました。
データサイエンティストには、名称独占資格のように「データサイエンティスト」と名乗るために必須の資格があるわけではありません。またデータサイエンティストへ転職するというケースにおいても、特定の資格があることで選考通過が保証されるわけでもありません。
しかし、だからといって関連する資格が役に立たないというわけでは決してありません。データサイエンティストに求められるスキルレベルは高く、必要となる知識も広範囲に及びます。資格試験の合格を目指す体系立てた学習は、土台となる知識やスキルを身につける上で非常に役に立ちます。
資格の取得は、知識が身についていることを客観的に示す指標になります。コンペティションであればより実践的な知識が得られますし、よい成績を上げられれば、選考の際に資格より評価されることもあります。
データサイエンティストになるための勉強をするのであれば、資格やコンペティションも一つの手段として検討するとよいでしょう。
データサイエンティストの平均年収
データサイエンティストは求人市場でも人気が高い職種であり、転職を考える方の中には年収が気になる方もいることでしょう。2023年12月に発表されたdodaの「平均年収ランキング」では、データサイエンティストの平均年収は532万円となっています。
調査年度 | データサイエンティスト | ITエンジニア | 全職種平均 |
---|---|---|---|
2023年 | 532万円 | 452万円 | 414万円 |
2022年 | 513万円 | 442万円 | 403万円 |
2021年 | 512万円 | 438万円 | 403万円 |
2020年 | 516万円 | 452万円 | 409万円 |
2019年 | 522万円 | 457万円 | 408万円 |
全職種の平均年収は414万円、ITエンジニアの平均年収は454万円であり、データサイエンティストはほかの職種と比べて年収が高い職種といえます。
データサイエンティストの年収分布
年収帯 | ITエンジニア | データサイエンティスト |
---|---|---|
300万円未満 | 13.9% | 5.3% |
300~400万円未満 | 30.6% | 18.9% |
400~500万円未満 | 24.0% | 24.8% |
500~600万円未満 | 13.3% | 20.8% |
600~700万円未満 | 7.6% | 11.6% |
700~800万円未満 | 4.2% | 8.1% |
800~900万円未満 | 2.6% | 3.2% |
900~1000万円未満 | 1.3% | 1.9% |
1000万円以上 | 2.5% | 5.2% |
年収の分布を見ても、ITエンジニアのボリュームゾーンが300~400万円の年収帯なのに対して、データサイエンティストのボリュームゾーンは400~500万円の年収帯です。400万円以上の各年収帯の割合も、ITエンジニアよりもデータサイエンティストのほうが高い水準にあります。こうした傾向からもデータサイエンティストの専門性の高さやニーズの高さがうかがえます。
ただし、高い年収での求人は実務経験者を対象としていることが多く、未経験でデータサイエンティストに転職する場合には、経験者に比べると年収が下がる傾向にあるという点は理解しておきましょう。とはいえ、ビジネスにおけるデータの重要性を考慮すれば、データサイエンティストの需要の高さは今後も続くと考えられるため、経験を積むことで高い年収を得るチャンスは十分にあります。
エンジニアとしての市場価値を知るために
年収査定を受ける(無料)データサイエンティストへの転職を考えるのであればエージェントサービスの活用も
実際にデータサイエンティストへの転職を目指す場合には、未経験からの転職はハードルも高く、独学だけではうまくいかないことも多々あります。どの程度勉強したら転職を考えるべきか、そもそものキャリアプランをどう考えるべきか、など考慮すべき点も多いため、転職エージェントの活用も視野に入れるとよいでしょう。
dodaエージェントサービスでも、キャリア相談はもちろん、選考対策や求人探しのサポートなどを行っていますので、お気軽にご相談ください。
エンジニアとしての市場価値を知るために
年収査定を受ける(無料)技術評論社 デジタルコンテンツ編集チーム
理工書やコンピュータ関連書籍を中心に刊行している技術評論社のデジタルコンテンツ編集チームでは、同社のWebメディア「gihyo.jp」をはじめ、クライアント企業のコンテンツ制作などを幅広く手掛ける。
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