データサイエンティストとは?
データサイエンティストとは、主にビッグデータ※を解析することで、経営に役立つ情報を抽出する人、ヒントや気づきになる新しい事象を発見する業務をこなす人、またはそのスキルを持つ人のことを指します。データ分析にたけた人、データを多面的に処理することができる人と表現してもよいでしょう。
例えば、日々ネットに投稿されるSNSやブログ記事を収集し、内容を分析することで世の中のトレンドを分析したり、自社製品の評判・評価を分析したりします。ここでいう分析は、単にキーワードを検索して統計情報を作る場合もありますが、AI(教師なしの機械学習が利用されることが多い)を活用して、投稿のコンテキスト(文脈、ネガティブ意見かポジティブ意見か、など)まで判断することもあります。
極端な例でいえば、ある商品を「褒め殺し」する文章は、キーワードだけの解析では正しく評価することができません。褒め殺しはAIでも分析は簡単ではありませんが、アンケートを実施してユーザーや市場の声を分析するより、ビッグデータ解析のほうがより正確な市場分析につながることがあります。
※本記事におけるビッグデータの定義
ここでの「ビッグデータ」は、画像データ、通信パケット、システムログ、SNSやサービスプラットフォームのライフログ、センサーネットワークのデータなど、大量かつ整理されていない情報を指します。未整理かつ膨大なデータから何らかの情報や結果を得るときにデータサイエンティストの知見が役立ちます。なお、DBMS(データベースマネジメントシステム)のレコードのように整理された情報も膨大であればビッグデータの範疇に含める場合もあります。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)データサイエンティストの仕事内容
データサイエンティストの仕事内容は、データを分析することですが、ただ分析だけすればいいというわけではありません。一般的には以下のような作業プロセスが基本となります。
- データ収集
- 企画・仮説考察
- データ前処理(分類、抽出、加工、集計)
- データ分析・解析
- 結果の解釈・仮説の検証
- レポーティング
ここでは、それぞれの作業プロセスについて詳しく紹介していきます。
データ収集~仮説立案
データサイエンティストの仕事では、まず「データ収集」や「仮説立案」を行います。
そもそも、データの分析が必要とされる理由は、企業運営や経営戦略に必要な客観的な情報や指標を得るためです。データ収集や仮説立案を行うきっかけとして、主に以下の2つが考えられます。
- IT化された自社の業務システムやサービスから、すでにビッグデータを持っている場合
- 課題や調査テーマを解決するためのデータ分析が必要な場合
前者のケースでは、すでにあるデータから埋もれている情報、これまで分析できていなかった情報や事象を把握するために、AIや最新の統計手法・分析手法を用いて戦略的な意思決定を行います。IT化、デジタル化で企業をとりまくデータは増えるばかりですが、同様にデジタル技術やAI技術を活用すれば、これまで人手では処理できなかったような分析が可能になり、新しい気づきや知見が得られることがあります。
後者の場合も新しい知見が得られるという点は同じですが、データがあるからそれをもっと活用しようというより、課題やテーマがあり、それをどう解決するかのソリューションを検討する過程でデータ分析を活用しようという動機から求められる場合です。あるいは、日々の業務から得たヒントやアイデア、事象から「○○と××はこういう関係にあり、△△すれば売り上げが上がるのではないか」といった仮説を検証するためにデータ分析を行うこともあります。
また、後者の場合は必要なデータを持っていないことがあります。その場合、データの収集作業が企画や仮説を立てたあとに必要になります。データ収集はWebをクローリングしたり、調査会社などに収集を委託したり、他社から購入またはライセンスを受けたり、アンケートや市場調査を行ったりとさまざまな方法があります。
データサイエンティストは、このような企業経営の調査・分析ニーズに応えるため、何を調べると課題解決につながるかという分析計画を立てたり、ある商品の売り上げは、じつはこのデータ(要因)が関係しているのではという仮説を考えて検証したりすることが求められます。
データ前処理
データが集まっても、すぐに解析に入れるとは限りません。通常は、テーマに沿った分析ができるようにデータの前処理が必要です。また、集めたデータを正しく分析するには、関係のないデータを排除したり、フォーマットや項目、単位を合わせたりしなければなりません。ソートやマージのような処理や簡単な集計処理、統計処理が必要な場合もあります。
データによっては、プライバシー保護や個人情報保護のため「仮名化(別の情報と組み合わせると特定個人を識別できる)」「匿名化(特定個人を識別できない)」によって個人を特定、名寄せできる項目を削除する必要もあるかもしれません。
本来このようなデータは個人情報保護法によって収集、販売、ライセンス、外部提供が規制されています。自社ユーザーのデータであっても、利用目的がユーザーによって明示的に許諾されている必要があります。第三者から提供されるデータにも同様な配慮が求められます。面倒に思える作業ですが、データ収集のプロセスのひとつとして欠かせない事項です。
データの分析~レポーティング
データの準備ができたら、あとは分析、解析作業に入ります。解析結果について考察を行い、テーマや目的に見合った形で結果をレポートにまとめます。
テーマや目的は、冒頭でSNSの分析の例を挙げましたが、ほかにも、例えば以下のようなことが考えられます。
- 季節や天候による売り上げの変化
- 精度の高いレコメンドや与信
- 自社株の変動予測
- 故障や予防メンテナンスの予測
- 選挙による候補者・政党の得票
- 顧客属性による成約率・解約率
これらはすべて一例です。実際には企業ごとの課題、戦略しだいで変わってきます。「データサイエンティストの仕事は特定の○○の解析である」という解釈より、「○○という課題解決に、このデータやこの分析が応用できないかを考える仕事」と理解すべきです。
そして、企業経営者がデータ分析に求めているのは、課題解決や新しい知見につながる情報が欲しいのであって、データそのものではありません。データサイエンティストは、分析したデータを評価、考察してどこが課題解決につながるのか、欲しいデータになっているのかをレポートとしてまとめる必要があります。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)データサイエンティストと「AIエンジニア」「データアナリスト」「データエンジニア」の違い
求人のジャンルや役割範囲が近いことから、データサイエンティストはAIエンジニアやデータアナリスト、データエンジニアといった職種と一緒くたになることがしばしばあります。この4つの職種はいずれもデータを扱う専門家ではありますが、データに対する役割やスキルにおいて明確な違いがあります。ここでは、データサイエンティストと、AIエンジニア、データアナリスト、データエンジニアの違いをそれぞれ解説します。
AIエンジニアとの違い
データサイエンティストとAIエンジニアでは、AIに対する立ち位置が大きく異なります。データサイエンティストは、業務のツールの一つとしてAIを使用します。それに対して、AIを実現する技術や手法を考案、研究したり、特定タスクをこなせるAIモデルを構築(学習作業やパラメータ調整など)したりするのを主な仕事としているのがAIエンジニアです。
データサイエンティストは、データを分析、解釈するためにAIを使いますが、AIの新しいモデルを考えたり発明したりすることは通常ではありません。AIを利用するために、自分でPythonを使ったプログラムを書き、AIライブラリやクラウドのAPIを利用することはありますが、AIそのものを開発することはありません。
AIエンジニアには、特定タスクを高精度で処理させるAIモデルを作るための学習作業およびチューニング作業を専門とする人もいます。AIを(目的達成のための)ツールとして使うという点では、データサイエンティストに通じる部分があります。業務や作業に共通点が多いのも事実です。
そのため、実際の業務では両者の区別があいまいになることもしばしばです。しかし、データサイエンティストの業務は分析がメインであり、そのためには統計学や数学のほか、データベースの知識、数値解析ツールの知識、なにより担当する業務や業界での経験や知識も問われます。
データアナリストとの違い
データサイエンティストとデータアナリストはいずれもデータを扱う専門家ですが、それぞれで求められる役割とスキルが少し異なっています。
データアナリストは、既存のデータを調査し、統計学などを駆使して分析や可視化を行います。その主な役割は、ビジネスに必要なデータを収集・整理し、経営者をはじめとする意思決定者に対してそれらのデータを活用する方法を提示することです。
そのために、データアナリストにはデータ分析に必要な統計学の知識や、データの整理や可視化を行うためのBI(Business Intelligence)ツールを使いこなすスキルが求められます。その一方で、機械学習やAIに関する知識に焦点を当てられることはあまりありません。
それに対してデータサイエンティストの役割は、データの可視化や分析に加えて、分析した結果から将来のための予測モデルを構築して新しい知見を発見し、ビジネスの課題解決や次の戦略の立案に役立てることです。予測モデルの構築には多様で大規模なデータを扱う必要があるため、データサイエンティストにはプログラミングやデータベース管理、そしてAI・機械学習などといった高度なIT技術が要求されます。
データアナリストがビジネス上の洞察を提供することに特化しているのに対して、データサイエンティストは高度なエンジニアリングのスキルを駆使して複雑で多面的な問題に取り組む傾向があります。そうはいっても、データアナリストにもデータ分析結果から将来の施策の検討を求められることがあるため、職種として両者が明確に違うというわけではありません。いずれの役割も、データに基づく意思決定に不可欠であり、幅広い分野で注目を集めています。
データエンジニアとの違い
データサイエンティストと役割が近く、データ周りを扱うエンジニアとして、データエンジニアと呼ばれる職種も存在します。
仕事内容の項で解説したデータ収集やデータ前処理といった作業はデータサイエンティストが行うこともありますが、このような作業を業務の中心として取り組むのがデータエンジニアです。
データエンジニアは、データの収集、保存、処理、変換を主な業務とし、データサイエンティストが成果として求められる「ビジネスの改善提案」という業務に専念できるように、データの分析・解析に活用するためのデータ基盤を管理・構築します。
データ前処理のくだりで触れたとおり、データはデータサイエンティストがすぐに分析・解析に利用できるような状態で元から存在しているわけではなく、必ずといっていいほど、何らかの処理や変換をする必要があるのが実情です。データ収集やデータ前処理の作業自体が複雑・高度であり、専門性が求められる業務といえます。
そのため、「データサイエンス」と「データエンジニアリング」を明確に定義して分業化しようとする動きはあり、実際に求人情報でも「データエンジニア」という職種名で募集をかけている企業やプロジェクトはあります。しかし、実際の業務では両者の区別があいまいになることも珍しくなく、企業やプロジェクトによってはデータサイエンスとデータエンジニアリングを同じ人が兼務することもよくあるようです。
データ分析は昔から重要視されてきた業務
前述したデータサイエンティストをはじめとした、データ分析と密接に関わる各職種は昨今確立されたものですが、データ分析そのものは昔から存在し、ビジネスにおいては欠かせない業務分野の一つとして重要視されてきました。
例えば、営業成績のグラフ、製品の販売実績、工場の歩留まりやエラーの統計、顧客満足度調査や決算書類の分析など、さまざまなデータを分析する仕事は存在し、これらはどれもデータ分析、データ解析といえます。
以上のような分析・解析は、各部署の担当者が業務の中で行うことが一般的でした。利用するツールもPCや電卓、表計算ソフトです。高度な分析には、数値計算アプリケーション、統計解析向けのR、MATLABなどを使うこともありました。
しかし、市場やビジネスが複雑化、高度化してくると、扱うデータも大量かつ多様になります。前述したSNSの分析(テキストマイニングともいいます)のようなビッグデータの解析が必要となり、解析に求められる要求も複雑かつ高度になってきます。
ビッグデータやデータサイエンスが出現する前、このようなデータの整理や可視化を行う業務はBIと呼ばれていました。「ビール売り場の近くにはオムツを置くとよい」といった話を聞いたことがあるでしょうか。
あるスーパーマーケットが、ショッピングカートの中を調査すると、ビールとオムツの組み合わせが多いことに気づき、ビール売り場にオムツを置いたら売り上げが上がったそうです(既婚男性はビールのついでに頼まれたオムツを購入する、またはその逆が発生している)。真偽は不明ですがBIを説明するときに多用された逸話です。
業務分析に新しい視点やデータを加えることで、新たな知見を得るのがBIです。BIには、多様なデータが必要となるため、商品や顧客ごとの個別データベースだけでなく、それらを統合したデータウェアハウス、それらを横断的に解析できるツールやシステムが重要となります。データサイエンスは、これにAIという新しい分析基軸を導入したBIと捉えることもできます。
なぜデータサイエンティストは注目されるのか?
データサイエンティストがさまざまな業界で注目される理由は、ビッグデータやAIなどITによるイノベーションにより、埋もれていたデータの活用方法、不可能だった解析が可能になったからです。そして生成されるデータの量が莫大になることで、現代社会にはさまざまな影響が起きています。
現実世界とサイバー空間が相互干渉する社会~両者の橋渡しとなるデータサイエンスの重要性
これまではビジネスにおけるデータサイエンスの応用場面を中心に解説してきましたが、データサイエンスはビジネスだけに限らず、行政の分野においても応用が期待されています。
近年では、クラウドやIoTの発達によって、PC以外にもスマートフォンや家電製品、工場の機械など、あらゆるものがインターネットに接続され、サイバー空間が現実世界のモデルとして機能するようになりました。このサイバー空間における現実世界のモデルのことを、「デジタルツイン」(サイバー空間は現実世界の双子である)や「サイバーフィジカルシステム」と呼ぶことがあります。
現代では、このデジタルツインやサイバーフィジカルシステムが広がるにつれて、サイバー空間が単に現実世界の一部をモデル化した存在ではなくなって、お互いに干渉し合うような社会に変わってきています。
この現象をより具体的にいうと、IoTやセンサー情報がサイバー空間に反映されるだけにとどまらず、反対にサイバー空間の情報が現実世界を動かすようになっている、といえることです。
例えばカーナビのリアルタイム情報は、渋滞を避けるための指針となっており、もはやドライバーがカーナビのリアルタイム情報を利用して渋滞を避けている、というよりカーナビのリアルタイム情報が車の動きを誘導しているといえるでしょう。私たちが日々何気なく主体的に決定している、と感じている選択も、実はビッグデータをもとに構築されたサイバー空間からの影響により大きく左右されている、ともいえます。
このような私たちの生活に多大な影響を及ぼしているビッグデータを有効に活用するためにも、データサイエンスは欠かせません。データサイエンスは今や、マーケティングや企業経営といったビジネスだけでなく、国の政策立案、行政にも深く関わる重要な技術といえます。
データサイエンティストの需要、将来性
このような背景から、サイバー空間に蓄積されたデータを適切に扱うための人材として、データサイエンティストの需要は急激に高まっています。現在では多くの企業や組織において、データを活用した意思決定がビジネスの競争力を高め、生産性を向上させる方法として認識されています。データサイエンティストはこのトレンドを支える重要な役割を果たします。
ビジネスで扱うデータ量の変化も、データサイエンティストの価値を高めています。ビッグデータの時代に入ってデータ量は爆発的に増加しており、その中から適切なデータを抽出し、新しい価値を発見するには、極めて高い専門知識が不可欠です。データサイエンティストは、従来どおりの統計学的なアプローチに留まらず、機械学習・AIといった新しい技術を積極的に活用し、高度な予測モデルや自動化プロセスを構築できる人材であり、さまざまな分野で必要とされています。
今後も、企業や組織におけるデータ分析の重要性が下がることはなく、データサイエンティストが持つデータ関連のスキルと知識はキャリア形成に大いに役立つでしょう。したがって、データサイエンティストの将来性は非常に明るいといえます。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)データサイエンティストの平均年収
調査年度 | データサイエンティスト | ITエンジニア | 全職種平均 |
---|---|---|---|
2023年 | 532万円 | 452万円 | 414万円 |
2022年 | 513万円 | 442万円 | 403万円 |
2021年 | 512万円 | 438万円 | 403万円 |
2020年 | 516万円 | 452万円 | 409万円 |
2019年 | 522万円 | 457万円 | 408万円 |
出典 : doda「平均年収ランキング(2023年版)」
2023年12月に発表されたdodaの「平均年収ランキング」では、データサイエンティストの平均年収は532万円です。同データでの全体の平均年収は414万円、ITエンジニア全体に相当する「技術系(IT/通信)」の平均年収は452万円となっており、ほかの職種よりも年収が高めな職種といえます。5年間の年収推移で見てもこの傾向は変わりません。
データサイエンティストの年収分布
年収帯 | ITエンジニア | データサイエンティスト |
---|---|---|
300万円未満 | 13.9% | 5.3% |
300~400万円未満 | 30.6% | 18.9% |
400~500万円未満 | 24.0% | 24.8% |
500~600万円未満 | 13.3% | 20.8% |
600~700万円未満 | 7.6% | 11.6% |
700~800万円未満 | 4.2% | 8.1% |
800~900万円未満 | 2.6% | 3.2% |
900~1000万円未満 | 1.3% | 1.9% |
1000万円以上 | 2.5% | 5.2% |
出典 : doda「平均年収ランキング(2023年版)」
年収分布をITエンジニア全体と比較してみても、ITエンジニア全体の年収分布のボリュームゾーンが300~400万円の年収帯であるのに対し、データサイエンティストのボリュームゾーンは400~500万円の年収帯となっています。400万円以上の各年収帯の割合もデータサイエンティストのほうが高く、平均年収が高めなITエンジニア職の中でも水準の高い職種といえます。
ただし、高年収での募集は、データサイエンティストとしての実務経験者を対象としたものであることが多いです。異職種から未経験でデータサイエンティストへの転職を目指すような場合は、経験者採用よりも年収がダウンする可能性がある点は理解しておきましょう。
アメリカのデータサイエンティストの年収事情
職種 | 平均年収 | 最低年収 | 最高年収 |
---|---|---|---|
Data scientist | 124,949ドル(約1,829万円) | 82,424ドル(約1,206万円) | 189,414ドル(約2,773万円) |
System Engineer | 平均105,355ドル(約1,542万円) | 66,188ドル(約969万円) | 167,700ドル(約2,455万円) |
Product Manager | 114,508ドル(約1,676万円) | 最低73,972ドル(約1,083万円) | 最高177,258ドル(約2,595万円) |
出典 : Indeed「Data scientist salary in United States」「System engineer salary in United States」「Product manager salary in United States」(各種数値は2023年9月11日時点のものです)
IT技術の本場であるアメリカ合衆国では、データサイエンティストはどのように評価されているのでしょうか。Indeedが公開している2023年9月11日時点の統計データでは、「Data Scientist」の年収は平均で124,949ドル(約1,829万円)、最低で82,424ドル(約1,206万円)、最高で189,414ドル(約2,773万円)となっており、日本よりもかなり高額であることが分かります。もちろん、日本とアメリカとでは物価水準や契約形態が異なるため単純に比較することはできませんが、それでも極めて需要が高い職種であることは明らかです。
同データで「System Engineer」を検索してみると、その年収は平均105,355ドル(約1,542万円)、最低66,188ドル(約969万円)、最高167,700ドル(約2,455万円)です。日本でも高年収に分類される「Product Manager」は、平均114,508ドル(約1,676万円)、最低73,972ドル(約1,083万円)、最高177,258ドル(約2,595万円)です。これらのデータから、アメリカでもデータサイエンティストの年収は高い水準にあることが分かります。
つまり、データサイエンティストは、日本だけでなくグローバルでも需要が高い職種だということです。
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転職タイプ診断を受けてみる(無料)データサイエンティストに必要な4つのスキル
それでは、データサイエンティストになるにはどうしたらいいでしょう。必要なスキルや素養からおさらいしてみましょう。
- 数学・統計の知識
- データベース関連の知識
- AI・機械学習の知識
- 業務知識・分析対象の知見
数学・統計の知識
数学や統計の基本的な知識が必要です。業務でデータ分析を行う場合、どうしてもコンピュータやツールを使う必要があります。RやMATLABのようなプログラミング言語の使い方も覚えておくとよいでしょう。コンピュータサイエンスやデータベースの知識も重要です。システムやアルゴリズム、それを機械、電子的に実装するコンピュータの基礎知識は、特定ツールやシステムに依存しないスキルとなります。
これらの知識は理学部などで勉強すれば、自然に身につくスキルです。それ以外に統計や数値解析に関する書籍、文献を調べることでも習得できます。近年では、オンライン教材やオンラインコース(Coursera、Udemyなど)で自習するスタイルも一般的です。
データベース関連の知識
大量のデータを処理するにはデータベースの知識も必要です。データベースは、コンピュータサイエンスの中でも独立した研究分野でもあり、標準的に使われているSQLは、平均的なプログラミング言語とは作法が違う部分があります。
また、ビッグデータ解析では、従来のレコードファイル型のデータベースでは処理しにくい多様な形式のデータを扱う必要があります。画像データ、動画データ、これらとテキスト、リンクなどが混在したSNSのライフログデータを扱うための新しいデータベース、処理方法の知識も必要です。
データベースというと、ITの世界ではリレーショナルデータベースマネジメントシステム(RDBMS)が標準的です。必要なデータを項目の関係性に着目して一元的に管理する考え方です。これに加え、膨大な画像データやSNSのデータなど、ランダムで特定のフォーマットで管理できないデータのデータベース(NoSQLなどといいます。Hadoopが代表的な実装)の知識もあるとよいでしょう。
SQLやデータベースの操作は、実際にプログラミングしたりツールを利用してデータにアクセスしたりしないとできるようになりませんが、利用するデータの構造、管理方法、自分が使うツールからの利用法は把握しておく必要があります。
ツールの具体例としては、「データレイク」という構造化データ、非構造化データを問わず、大量のデータをそのままの形で格納されているデータストレージがあります。Amazon S3、Azure Data Lake Storage、Google Cloud Storageといったデータレイクを構築・管理するためのサービスやツールなどがあり、これらを活用すれば、必要なデータを取り出し、加工・分析ができます。
AI・機械学習の知識
多様なデータ、大量のテキストデータを処理する場合、有効なツールにAIがあります。AIもデータサイエンティストには必須といわれています。機械学習の基本的な理解に加え、これらの学習モデルを利用するための知識です。PythonはAIに関するライブラリが整備されているので、AI研究者やデータサイエンティストの標準的なプログラミング言語になっています。
業務知識・分析対象の知見
技術的なスキル以外で重要な要素は、分析・解析対象の知識や経験です。データサイエンティストの仕事の目的はAIを使うことでもPythonを使うことでもありません。課題解決や新しい知見を得ることです。AIやPythonは手段、方法論のひとつでしかありません。
企業のデータサイエンティストとして働く場合は、その事業分野の課題を見つけ、戦略のヒントになるアイデアを出せるかどうかが問われます。その意味では、直感のようなひらめきが重要で、そのひらめきをソリューションへとつなげる洞察力も求められます。
ただし、特定の事業分野に強くなくても、分析・解析のエキスパートとして価値を発揮するデータサイエンティストも存在します。
データサイエンティスト求人の傾向
データサイエンティストはデータ処理に関する高度な専門知識に加えて、顧客のビジネスを理解するための実践的な業務知識が求められる仕事です。
理系学部・院の出身の第二新卒者を歓迎するポテンシャル採用の求人の募集もありますが、実務経験を求める求人の募集が中心です。特に、すでにデータ活用において何らかの課題を抱えている企業では、データサイエンティストに即戦力としての役割を期待しています。
ただし、自社サービスやプロダクトを持つ事業会社よりも、クライアントワーク中心の企業であれば未経験でも可とする求人の数は増える傾向にあります。こうした求人でもITエンジニアなどの関連職種での実務経験を求められるケースが多いでしょう。
未経験からデータサイエンティストになるには?
このような現状を踏まえると、データサイエンティストとしての就職を目指すには、中長期でのキャリアプランを立てて戦略的にキャリアを積んでいく必要があるといえます。それでは、実際に未経験からデータサイエンティストを目指すにはどのようにアプローチしていけばいいのでしょうか。
独学で必要な知識を身につける
どのようなキャリアパスを目指すとしても、まずはデータサイエンティストとして必要な最低限の知識を身につける必要があります。
もしIT系のスキルになじみのない職種からデータサイエンティストを目指すのであれば、まずはプログラミングや分析・統計といったスキルの勉強から始めるのがいいでしょう。特にデータサイエンティストの必要スキルにはプログラミングが絡んでくるものが多いため、初学者にとってはプログラミングの学習が大きなハードルになるかもしれません。
スキルの項で触れましたが、データサイエンスの分野で最もよく使われるプログラミング言語はPythonです。例えば、統計に関する知識を学習した上で、実際にそれをPythonで実装してみるといった勉強方法が考えられます。プログラミングを習得するためには、手を動かすことが大切であり、アウトプットにつなげることで選考の際に自己研鑽の証明にもなります。
データサイエンスやPythonについて無料で学べる入門編の教材としては、東京大学 数理・情報教育研究センターが提供する「リテラシーレベル教材」や「Pythonプログラミング入門」などが一例としてあり、まずはこうしたところから手をつけるのも一案です。
スキル領域が近い職種で経験を積み、データサイエンティストへの転職を目指す
たとえ独学で十分な知識を身につけたとしても、前述のとおり、職種未経験の状態からデータサイエンティストとして転職するのは難しいというのが実情です。そこで現実的な選択肢として、近い職種である程度の実務経験を積み、そこからデータサイエンティストへのキャリアアップを目指す方法が考えられます。
このアプローチで考えられるキャリアパスの例として、以下の2つを紹介します。
- データエンジニアや開発エンジニア職から目指す
- データアナリスト、マーケター、コンサルタントから目指す
データエンジニアや開発エンジニア職から目指す
ITエンジニアとしてシステム開発の経験があれば、データサイエンティストとしての実務経験は問わないという求人もあります。その中でも、PythonやRをはじめとする統計処理に強いプログラミング言語、SQLや各種データベース、機械学習などの使用経験は、採用選考でも特に重視されます。そこで、最初の一歩としてこれらの技術に関する実務経験が積めるデータエンジニアや開発エンジニアを目指すというキャリアプランが考えられます。
上記のスキルに加えて、企業の事業領域を踏まえたビジネス提案や分析モデルの提案まで結びつけられる人は、データサイエンティストの選考では高い評価を得やすい傾向にあります。 自社の業務をこなす中で、業務改善や課題解決、企画立案などを常に意識し、エンジニアリングの活用方法を考えることは、データサイエンティストとしての基礎能力を身につける上で極めて重要です。
データアナリスト、マーケター、コンサルタントから目指す
エンジニア職以外では、データの分析や解析の専門家であるデータアナリストを目指し、そこからデータサイエンティストにステップアップするというキャリアパスもあります。または、マーケターやコンサルタントとしてビジネスの知識を磨いた上で、そこにデータ処理やエンジニアリングの知識を上乗せしてデータサイエンティストを目指すというキャリアパスも考えられます。
具体的な業務の内容を知ることや、市場の原理を理解すること、現実のビジネスで使用するデータについて知ることは、データサイエンティストになる上で極めて重要です。最初のステップとして、これらの経験を積むことができる職種を目指すのは悪くない選択といえるでしょう。
ただし、現時点で上記いずれの職種にも就いていなければ、まずはエンジニア職を目指す選択をするほうが現実的かもしれません。エンジニアリングの知識・スキルは専門性が高いため、早めに実務で経験を積めたほうがキャリアプラン上、有利に働きやすいでしょう。
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)データサイエンティストになるために資格は有効?
未経験からデータサイエンティストを目指す上では、資格試験や検定の取得を目標にするのも良い手段です。「データサイエンティスト」と名乗るために何らかの資格が必要というわけでも、特定の資格を取ることでデータサイエンティストとしての就職が保証されるわけでもありません。しかし、資格試験や検定の合格を目指して体系立てた学習を行うことは、土台となる知識やスキルを身につける上で役に立ちます。
データサイエンティストに求められるスキルレベルは高く、必要となる知識も広範囲に及ぶため、初学者にとっては何から勉強を始めればいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。
資格試験や検定は、順序立てて学習を進めるための良い指標になります。また、不足している知識・スキルについて、受け身で教えてもらうのを待つのではなく、自らキャッチアップできる姿勢を示す材料の一つになるのもメリットです。
ここでは、データサイエンティストを目指す上で役立つ代表的な資格・検定として、次の3つを紹介します。
- データサイエンティスト検定 リテラシーレベル
- 統計検定
- G検定、E資格
データサイエンティスト検定 リテラシーレベル
「データサイエンティスト検定 リテラシーレベル(略称:DS検定)」は、一般社団法人データサイエンティスト協会が実施している、データサイエンティストの登竜門ともいわれる検定です。データサイエンティスト協会では、データサイエンティストとしてのスキルレベルを次の4段階に分けて定義しています。
スキルレベル | 目安 | 対応できる課題 | |
---|---|---|---|
Senior Data Scientist シニア データサイエンティスト |
★★★★ | 業界を代表するレベル |
|
Full Data Scientist フル データサイエンティスト |
★★★ | 棟梁レベル |
|
Associate Data Scientist アソシエート データサイエンティスト |
★★ | 独り立ちレベル |
|
Assistant Data Scientist アシスタント データサイエンティスト |
★ | 見習いレベル |
|
これからデータサイエンティストを目指そうとしている人は、最も基礎的なレベルである「アシスタント データサイエンティスト:★1(見習いレベル)」の合格を目標とすることで、実際のプロジェクトに加わる上で必須となる基礎知識を網羅的に学習することができるでしょう。
統計検定
「統計検定」は一般財団法人統計質保証推進協会が実施、一般社団法人日本統計学会が認定する全国統一検定です。統計に関する知識や活用力が問われます。DS検定に比べると、試験範囲は統計に関する内容に特化しており、データに基づいて物事を客観的に判断し、科学的に問題を解決する能力を見極める試験になっています。
2023年時点では、統計検定内でも難易度やジャンルに応じて複数の試験に分かれています。
検定種別 | 試験内容 |
---|---|
統計検定4級 | データや表・グラフ、確率に関する基本的な知識と具体的な文脈の中での活用力 |
統計検定3級 | データの分析において重要な概念を身につけ、身近な問題に活かす力 |
統計検定2級 | 大学基礎統計学の知識と統計的問題解決力 |
統計検定準1級 | 統計学の活用力 ─ 実社会の課題に対して適切な統計学の手法を応用する活用力 |
統計検定1級 | 実社会のさまざまな分野でのデータ解析を遂行する統計専門力 |
統計検定 統計調査士 | 統計に関する基本的知識と利活用 |
統計検定 専門統計調査士 | 調査全般に関わる高度な専門的知識と利活用手法 |
統計検定 データサイエンス基礎(DS基礎) | 具体的なデータセットをコンピュータ上に提示して、目的に応じて、解析手法を選択し、表計算ソフトExcelによるデータの前処理から解析の実践、出力から必要な情報を適切に読み取る一連の能力 |
統計検定 データサイエンス発展(DS発展) | 数理、情報、統計など数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムのリテラシーレベルのモデルカリキュラムに準拠した内容 |
統計検定 データサイエンスエキスパート(DSエキスパート) | 計算、統計、モデリングなど数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアムの応用基礎レベルのモデルカリキュラムを含む内容 |
このうち、特にデータサイエンティストに関連するのはDS基礎、DS発展、DSエキスパートです。データサイエンスに関する基礎知識や実務能力を試されるのがDS基礎で、DS発展およびDSエキスパートではより高度で専門的な知識が求められます。
これからデータサイエンティストを目指す初学者は、まずはDS基礎の取得を目標にするのがいいでしょう。ただし、DS基礎でも理論部分では統計検定3級から2級レベルの知識が必要とされているので、先に統計検定3級ないし2級を取得し、その上でDS基礎に挑戦するという方法もあります。
G検定、E資格
「G検定」および「E資格」は、どちらも一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施・認定している試験です。ディープラーニングは機械学習の手法の一つに当たるもので、JDLAはディープラーニングを日本の産業競争力につなげていこうという意図の下で設立され、人材育成の一環として資格試験にも力を入れています。
G検定の対象者は「ディープラーニングの基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定する」ものとされています。G検定を取得することで、AIやデータサイエンスに関する幅広い知識を整理でき、ビジネスに役立てるための知見を取得できるでしょう。
一方のE資格は「ディープラーニングの理論を理解し、適切な手法を選択して実装する能力や知識を有しているかを認定する」ものとされています。G検定がAIを活用するビジネス寄りの内容になっているのに対して、E資格では発展的な数学の理解や具体的な実装について問われるなどエンジニア向けの資格となっています。
また、E資格については、受験するためにJDLA認定プログラム(JDLAが定めたシラバスに基づく講座)を修了している必要があるという条件がついています。
データサイエンティストの実務では、ディープラーニングを中心とする機械学習を積極的に活用する必要があるため、この分野の知識が不可欠になります。技術的な領域からデータサイエンスへの理解を深めたいという人は、G検定やE資格の取得を目指すのもいいでしょう。
まとめ
この記事では、データサイエンティストの定義や業務内容、必要なスキルなど多岐にわたり解説してきました。本記事をお読みの方の中には、さらに踏み込んだ情報を必要とされている方も多いことでしょう。
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国家資格キャリアコンサルタント
教育関連の企業に新卒で入社し、約5年間勤務する。その後、パーソルキャリア株式会社に入社。IT領域のアドバイザーとして約5年間従事し、その後キャリアアドバイザーを育成する部署で2年弱マネジャーとして勤務。その後、自身の希望により再びIT領域のキャリアアドバイザーとしてエンジニアの方々をメインに転職支援している。
技術評論社 デジタルコンテンツ編集チーム
理工書やコンピュータ関連書籍を中心に刊行している技術評論社のデジタルコンテンツ編集チームでは、同社のWebメディア「gihyo.jp」をはじめ、クライアント企業のコンテンツ制作などを幅広く手掛ける。
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