転職・求人DODAエンジニア IT/トップ > 転職情報・成功ガイド > 三年予測 > 起業家兼エンジェル投資家 鎌田富久 氏
掲載日:2014.6.2
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三年予測ートップリーダーと考えるエンジニアの未来ー


iモード用ブラウザ開発という冒険

1997年、組み込み向けブラウザで実績を積み上げつつあったACCESSに大きなチャンスが巡ってきた。NTTドコモの「iモード」携帯電話向けブラウザの開発だ。
iモード携帯電話向けブラウザの開発は、それまでの製品開発とは「スケールが違っていた」。当時、NTTドコモが出した条件は「ブラウザの試作を依頼するが、商用化するかどうかは分からない」「一緒にトライアルして技術仕様を作り、共有する」というものだった。ここで鎌田は、開発した技術仕様を「むしろ標準として提案しましょう」と言ったのだ。このとき開発した技術仕様は「Compact HTML(CHTML)」として公開されている。
ベンチャー企業のACCESSにとっては、この開発は大きなリスクを伴っていた。開発した製品が携帯電話メーカーに採用される保証はない。苦心して作った技術仕様に基づいて、携帯電話メーカー各社が独自にブラウザ開発に乗り出す可能性もあった。
このとき鎌田はこう考えた。「失うものはない。あとはスピード勝負だ」と。「それまで10年の経験で学んだことは、ネットワークは進化が速いということ。進化の速度を考えると、同じものを後から追いかけて作るのは難しい」。
ネットワークプロトコルには、つなぐ相手がいる。技術仕様通りに作ることと実際に『つながる』ことの間に相当の違いがあることは、すでに経験済みだった。開発の初期段階から作る会社と、後から追いかけて作る会社との間には、大きな差が生じるのだ。
「メーカーがブラウザ開発に参入してくる可能性は怖かったが、なんとか振り切れた」。
「先行逃げ切り」の戦術がうまくいった背景として、1999年に、ベンチャー企業向け株式取引市場「東証マザーズ」ができ、ベンチャー投資の環境が整ったことも幸いした。ACCESSは海外のVCから資金調達し、人を集めて「NetFront」開発に投入できた。資金が必要なとき、投資環境ができるタイミングがあったことは「幸運だった」と振り返る。

「技術ベンチャーはタイミングが重要」

iモード向けブラウザの開発は、ベンチャー企業であるACCESSにとって冒険だった。だが「いけそうだ」という感触はあった。ACCESSが手を出さなくてもブラウザは誰かが作る。それならば、開発競争の先頭に立ってスピード勝負で振り切る──この作戦はうまくいった。タイミングも良かった。携帯電話の急速な進化と投資環境の整備という好条件が重なった。
エンジニアにとっても、この挑戦は良い経験だった。「いままでにないもの」を作るのは、エンジニアにとって純粋に面白いことだ。「当時は大量に採用したが、新しいものを作ることを面白がるエンジニアが大勢来てくれた。大変だったが、徹夜でも活き活きとしていた」
さらに、携帯電話という大勢が使う商品に入るものを作っていることも、技術者のやる気を高めた。「電車の中で、自分が作ったブラウザを使ってくれている。これはやりがいがある」。
「技術系ベンチャーは、タイミング良く大きな波に乗れるかどうかが大きい」。これが鎌田の実感だ。

「気がついたら」10社を支援

2011年、50歳になった鎌田はACCESSから離れる。学生時代から28年をACCESSとともに過ごした後だった。
鎌田がACCESSから離れた時の心境は、一言で語れるようなものではなさそうだ。だが、ヒントとなる言葉はある。
一つの理由は、世代交代だ。「50歳になって技術トップをやってるようじゃダメだよね」と話す。もっと若い世代がリーダーになる方がいい、という思いがあった。
もう一つは、鎌田自らの思いだ。2009年にACCESS創業者の荒川が亡くなった。50歳だった。
その自分が50歳になってみると、学生時代から「ACCESSしかやっていない」ことに気がついた。「このまま続けたら、それだけの自分になってしまう」。
ACCESSを離れることで、前提条件なしにベンチャーを支援できる立場になった。
「今、支援している会社の事業分野は、例えばロボットや人工衛星やゲノム(遺伝情報)などだ。ACCESSにいたとしたら、こうした会社を支援するには事業シナジーを考えなければいけないが、それでは面白い展開になりにくい」
ベンチャー支援という仕事を通して、日本の若者の変化も感じとっている。
「今は、10年ほど前のベンチャーブームの時と違う。変わり者ではなく、トップレベルの研究者や技術者が、大企業や研究所ではなくベンチャー企業を選ぶようになってきた」。
米国では、スタンフォード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)といったトップレベルの大学からベンチャー企業が生まれている。「彼らと戦うには、日本でトップクラスの優秀な人がいないと」というのだ。

「予定外だった」GoogleのSCHAFT買収

鎌田が支援するベンチャーの中で最近大きな注目を集めたのが、前述したロボットベンチャーのSCHAFTだ。2013年11月、創設から1年半でGoogleが買収した。その後、2013年12月にはDARPA(米国防総省高等研究計画局)が主催するロボットコンテスト「DARPA Robotics Challenge Trials」でMITやNASAのロボットを抑えて優勝した。2足歩行ロボットが災害現場を想定した課題を見事にこなす動画は世界中に配信された。
もっとも、Googleによる買収は「予定外」だった。当初の作戦では、コンテストで好成績を挙げて知名度を高め、そこで資金調達をする予定だった。ところが蓋を開けてみれば、コンテスト開催時にはすでにGoogleによる買収が決まっていたのだ。
ロボット開発には資金が必要だ。SCHAFTは「DARPA Robotics Challenge Trials」の選考の過程でDARPAから180万ドルの資金を得た。こうした実績を材料に、さらなる資金調達のため、ベンチャー投資家に声をかけはじめた。
投資先として声をかけた中に、米Google副社長のアンディ・ルービンがいた。鎌田とルービンは、年齢や専門分野が近いこともあり、旧知の仲だった。当時のルービンはAndroid部門の責任者から外れたばかり。「Android部門から外されて会社を辞めてしまうかもしれないが、個人的に資金を出してくれるかもしれないと考えて」連絡したのだ。
ところが、Android部門から離れたルービンが関わっていたのが、実はGoogleが極秘のうちに立ち上げたロボット部門だったのだ。Googleはその後、ロボットベンチャー8社を一挙に買収する。その中に鎌田が支援するSCHAFTも含まれていた。
「予定とは違う」展開だった。だが、SCHAFT創業者らはロボット事業を成功させたいという夢を持っていた。そこに、資金を出してくれて、「やりたいことをやらせてくれるスポンサーが目の前に来てしまった」のだ。
鎌田はこう話す。「相当、運が良い出来事だった。SCHAFTは『立ち上がった』ことでタイミングよくチャンスが巡ってきた。立ち上がらなければチャンスは来なかった」。
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