イラストレーターになるには何が必要?未経験から目指す方法・向いている人の特徴など解説
イラストレーターは、書籍や雑誌、広告、ゲーム、Webコンテンツなど、さまざまな媒体で使用されるイラストを制作する専門職です。独自の画風や表現力を活かして、商品やサービス、物語やキャラクターの魅力を視覚的に伝える役割を担っています。
この記事では、イラストレーターの仕事内容や向いている人の特徴、求められるスキル、そして未経験からキャリアを築くための方法などについて、初めてこの分野を目指す方にも分かりやすく解説します。イラストを描くことを仕事にしたい方や、クリエイティブ業界への転職を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)もくじ
イラストレーターとは?仕事内容を解説
イラストレーターは、書籍の挿絵、雑誌のカットイラスト、広告ビジュアル、キャラクターデザイン、ゲームやアニメで使われるビジュアル作品、Webコンテンツ用のイラスト、商品パッケージなどを制作する専門職です。文章や製品のコンセプトなどを視覚的に表現して伝えるのが主な役割であるため、ただ絵を描くだけではなく、クライアントの依頼内容に合わせて絵のテイストや表現方法を工夫して、見た人の印象に残るイラストを創作することが求められます。
イラストレーターの働き方としては、出版社や広告代理店、ゲーム会社、デザイン事務所などの企業に雇用されるパターンと、特定の企業に所属せずにフリーランスとして直接クライアントから依頼を受注するパターンがあります。企業に所属する場合、イラストレーターが担う役割はそれぞれの業種によって少しずつ異なります。例えば出版社であれば、書籍の挿絵や、表紙イラスト、雑誌のカットイラストなどの制作が主な仕事になります。広告代理店であれば、ポスターやチラシ、Web広告のコンテンツ制作、ゲーム会社であれば、キャラクターデザインや背景イラスト、アイテムのビジュアル制作などを担当することになるでしょう。
イラストレーターの仕事の基本的なワークフローは下図のようになります。
イラストレーターとその他クリエイティブ職の違い
イラストレーターと似た役割を持つ職種には、グラフィックデザイナー、Webデザイナー、アートディレクターなどがあります。それぞれの違いを説明します。
グラフィックデザイナーは、ポスター、チラシ、雑誌の表紙、商品パッケージ、ロゴ、看板など、私たちの身の回りにあるさまざまな視覚的デザイン(ビジュアルデザイン)を作成する仕事です。イラストレーターの仕事が主に絵を描くことなのに対して、グラフィックデザイナーは写真、文字、図形、イラストなどさまざまな要素を組み合わせて全体のレイアウトをデザインする仕事になります。ただし、近年ではその境界があいまいになりつつあり、イラストも描けるグラフィックデザイナーや、デザインレイアウトもこなすイラストレーターが増えています。
Webデザイナーは、Webサイトのデザインを専門にする職種で、画面構成やユーザーインターフェースなどをデザインすることが仕事の中心になります。デザインの知識に加えて、HTML/CSSなどのコーディング知識や、画面のサイズに合わせてレイアウトを調整するレスポンシブデザインといったWeb特有の技術が求められる仕事です。
アートディレクターは、デザイン全体の方向性やコンセプトを定め、プロジェクトを管理する役割を担う職種です。ビジュアルだけでなく、伝えるべきメッセージを明確にしたり、ブランディングの設計を行ったりなど、事業として戦略的な判断をして、複数のデザイナーやクリエイターの仕事を統括します。
| イラストレーター | グラフィックデザイナー | Webデザイナー | アートディレクター | |
|---|---|---|---|---|
| 主な役割 | 絵(イラスト)を描くことを中心とする | 印刷物やWebなどの視覚デザインを制作する | Webサイトやアプリの見た目・操作性をデザインする | デザイン全体の方向性やコンセプトを決定し、チームを統括する |
| 担当する領域 | 書籍、広告、ゲーム、Webなどのイラスト制作 | Webページ、アプリ、ポスター、チラシ、雑誌、パッケージ、ロゴ、看板など | Webページ、Webサイトなど | 広告や制作物のビジュアル全体、コンセプトメイク、進行管理など |
| 必要なスキル |
|
|
|
|
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)イラストレーターの平均年収
dodaの2025年12月に発表された「平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)【最新版】」では 、 「グラフィックデザイナー/イラストレーター」の平均年収は349万円となっております。この数字はグラフィックデザイナーとイラストレーターの両方を含んだものですが、どちらの職種も平均的な年収に大きな差はありません。
実績やスキルが報酬に反映されやすい分野なので、キャリアを重ねることで年収アップが見込める職種でもあります。また、フリーランスの場合、イラストレーターの収入は得意分野や契約の結び方によって大きく変わります。自分が得意とする分野を見極め、クライアントに提供できる価値を高めることができれば、より高い報酬を得られるようになります。
簡単3分!あなたの本当の市場価値を診断
年収査定を受ける(無料)イラストレーターに向いている人の特徴
イラストレーターに求められる資質は業務の内容や働く環境によってさまざまですが、一般的な傾向として「イラストレーターに向いている」といえる人の特徴がいくつかあります。ここでは、代表的な5つの特徴を紹介します。もちろん、必ずしもこれらの条件を満たしている必要はありませんが、これからイラストレーターを目指すにあたって自分にどのような適性があるかを考える参考にはなるはずです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
イラストを描くことが「本当に」好きな人
実力が重視されるイラストレーターの仕事では、どれだけ経験を積んだとしても、継続的なスキルアップが不可欠です。その点、イラストを描く行為そのものを楽しめる人は、上達に必要となる反復練習や試行錯誤などが苦にならないでしょう。流行や新ツールへの好奇心も強く、資料集めやスケッチの習慣も自然に続けることができるので、スキルの引き出しが増えて仕事の幅が広がります。このようなタイプの人は、長期間にわたってイラストレーターとして活躍できる素養があるといえます。
また、イラストを描くことが好きな人は、締め切り細部の詰めにも粘り強く向き合うことができます。この粘り強さは、たとえマイナスな批評や細かい点の修正依頼を受けても、さらなる反復練習や試行錯誤の機会につなげて、自身のスキルアップの燃料に変えることができます。自主的に「もっと良くしたい」という気持ちがある人は、長期的に成果を出せる可能性が高いといえます。
コミュニケーション能力がある人
イラストレーターの仕事は一人で行う作業に見えますが、クライアントや制作チームのメンバーと協力して進めることが多く、要件のすり合わせやコンセンサスの獲得のためのコミュニケーション能力が高ければ、イラスト制作の助けになります。例えば、クライアントからの依頼の意図を正確に読み取って言語化したり、自分が描いたラフ案の意図や代替案を相手に分かりやすく提示できたりすれば、制作をスムーズに進めることができます。
また、納期や修正回数、制作物の使用範囲などといった条件面について、ていねいに交渉して合意を得る力も重要です。クライアントだけでなく、編集者やデザイナー、アートディレクター、エンジニアなど、さまざまな職種の人と連携する機会がありますが、それらの人々と齟齬なく意思疎通できる人はイラストレーターに向いています。
観察力・分析力がある人
良いイラストは、対象をよく観察し、絵にしたときに鍵となる特徴的な要素を見いだして理解することから生まれます。対象の形や構造、光の回り方、質感の手がかりを捉え、必要な情報を判断できる人は、イラストレーターとしての資質があります。
さらに、対象の特徴的な色や構図などの要素を分解して、自分が取り組んでいるイラストに向けて再構成できる分析眼があれば、依頼に合った表現へ落とし込みやすくなります。クライアントの事情や希望により、「明るい雰囲気の表紙にしたいので輝きがあり、暖色系の色合いが良い」「ポスターのキャッチコピーを最も訴求したいのでイラストは強調しすぎない位置付けで」など、イラストに求められるテイストや表現方法は依頼の都度、異なります。
クライアントが抱く希望や課題の本質を見極め、表現を選択してその理由を相手に説明できる人は、信頼されるイラストレーターになれるでしょう。
継続力と自律性がある人
イラストレーターは自主性の求められる職種で、制作の進捗管理や、案件の整理なども、すべて自分でこなさなければなりません。締め切りから逆算して計画を立て、作業に集中できる環境を整え、健康管理を行って自走できる自律性がある人は、制作の工程をスムーズにこなすことができます。複数の案件に対して、優先順位を付けて並行して進められる計画性も重要です。
時には思うように進められない時期もあるでしょう。そのようなスランプのときにでも、反復と検証を積み重ねて少しずつでも前進を続けることが大切です。独自のルーティンやチェックリストを持ち、坦々とクオリティを維持できる継続力は、イラストレーターとして活躍する上での強みになります。
柔軟性がある人
イラスト制作の上で、クライアントなど依頼者からの要件が途中で変わることは多々あります。また、ラフ案や納品物について、思いがけないフィードバックを受けることもあるでしょう。そのようなときに感情的にならず、正確に意図を読み解いて対応できる柔軟さがあれば、相手の信頼を得られます。自分のイラストに核となるスタイルを保ちつつも、必要に応じて方向修正して最適な落としどころを作り出せる人は、その柔軟性を武器にして活躍の場を広げることができるでしょう。
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)イラストレーターに求められるスキル
それでは、実際にイラストレーターになるためにはどのようなスキルが必要なのでしょうか。一般的に、イラストレーターに求められるスキルとしては次のとおりです。
それぞれ詳しく解説します
基礎的な画力やデザイン知識
イラストレーターとして仕事をする上で土台になるのは、描く物の形や質感、大きさの比率、遠近、陰影などを正確に表現できる基礎画力です。対象を正確に理解した上で、必要に応じて誇張や簡略化を行い、目的に合わせた見やすく印象深い絵に仕上げる力が、イラストレーターには不可欠です。
また、書籍やWebデザインなどどんな領域であれ、作ったイラストは多くの場合、デザイナーの手によりデザインされて最終的な成果物として仕上げられます。そのため、イラストレーターもデザインの基礎知識を身につけておくと有益です。見た人に伝えるべき情報を、重要度に応じて論理的に整理できるデザインの知識は、イラスト制作の領域でも、クライアントがイラストに求めている希望を理解する上で大いに役に立ちます。
デジタル作画スキル(Illustrator・Photoshop)
近年では、紙媒体のイラストの仕事は限定的になり、イラストレーターの活躍の場はデジタル媒体にシフトしています。そのため、これからイラストレーターとして仕事を得るためには、デジタルツールを利用した作画のスキルが不可欠になります。イラスト制作の現場で特に広く使われているツールが、Adobeが提供しているIllustratorとPhotoshopです。
Illustratorはベクター形式のイラストを描くためのソフトウェアで、イラストレーターにとっては必須のツールといえます。ベクター形式は、画像データを点と線の集合として保持する画像形式で、拡大縮小や変形に強いという特長があります。具体的には、ペンツールとアンカーポイント操作、パスファインダー、シンボル・アピアランスといった機能を使いこなして、目的の形を自在に描けるようにするスキルが必要です。さらに、アートボードやPDFの書き出し設定なども理解できれば、そのまま納品データを作ることが可能です。
Photoshopはビットマップ形式の画像を作成、編集するためのソフトウェアです。ビットマップ形式は、画像を色の付いた微細な点(ドット)の集合として表現する画像形式で、写真のように複雑で精細な画像を表現するのに適しています。写真編集でよく使われるツールですが、イラストレーターの仕事でも多用されています。具体的には、レイヤーやマスク、ブラシ設定、テクスチャ、カラーマネジメント、RGB/CMYKの変換などといったスキルが必要です。これによって、イラストの質感や画面上での色合い調整、印刷用の入稿データ作成などが可能になります。
相手の意図を汲み取ったうえで形にする力
イラストレーターの仕事の本質は、クライアントや依頼者がどのような効果を求めているのかを正確に理解した上で、その目的を達成するためのイラストを制作することです。そのためには、相手の言葉の裏にある本音を読み取ったり、明確に言葉にされていない前提や制約をヒアリングで引き出したりする力が必要です。ラフ案の段階で、「なぜこのモチーフと構図なのか」といった、アイデアの根拠を明確に説明できることも重要です。
デザインや配色などの決定にも根拠が必要です。例えば、「なぜここにこの色を使うのか?」を考えるだけでも、ブランドカラー、視認性、媒体の表示特性、文化的な背景など、さまざまな要素を踏まえなければなりません。その上で、代替案も含めてメリットやデメリットを明確に示せれば、クライアントからの信頼を勝ち取ることができるでしょう。
チームでの協調・連携力
イラスト制作の仕事は一人では完結しない場面も多く、編集者、アートディレクター、デザイナー、エンジニアなどとの連携が必要になります。そのため、要件定義、ラフ案の共有、フィードバックの反映、再確認といった一連のサイクルを適切に管理しながら制作を進める姿勢が極めて重要です。相手の専門領域を尊重した上で、用語や工程、技術的な制約などについて前提を確認し、意思疎通に齟齬が生じないようにする配慮も必要になります。
現場では、急な方針の転換や、短期間での差し替え指示なども頻繁に発生します。そのような場合にも、優先順位を整理し、品質を守るための変更案や代替スケジュールを提示できる柔軟性があれば、チーム制作でも十分に実力を発揮することができるでしょう。また、利害の異なる関係者の間で、判断材料を提示して落としどころを探る調整力が求められることもあります。
営業・自己発信スキル
特にフリーランスの場合、イラストレーターとしての仕事を得るには、自分の作品を積極的に発信する姿勢も重要です。単に画力をアピールするのではなく、「クライアントのためのイラスト」を制作する力を示すことが大切です。SNSやポートフォリオサイト、ニュースレターなど、複数のチャンネルを使って幅広く発信できれば、その分だけ仕事を得る機会も広がります(インハウスのイラストレーターの場合は会社の規定によります)。また、展示やコンテスト、コミュニティへの参加などで業界関係者との接点を増やすのも効果的です。
問い合わせの導線を整えたり、アフターフォローをていねいに行ったりなど、営業面のスキルも身につけるように努力しましょう。フリーランスとして働く場合は、請求や契約、著作権などについての基礎知識も必要になります。イラストの実力を磨くだけでなく、営業や自己発信を継続的に行うことが、安定したキャリアを形成することにつながります。
マーケティングに関する知識
依頼の場合、イラストは書籍やチラシ、Webデザインなど制作物の一要素です。あくまで「このデザインで売り上げをアップしたい」といった目的の一環としてイラスト制作を依頼していることを、イラストレーターは忘れてはなりません。そのため、「どの市場やターゲット層に、どう訴求すれば、どんな宣伝効果があるか」といったクライアントが意識するマーケティングの視点を持ったイラストレーターは重宝されます。
季節やトレンド、法規やブランド規定への配慮も、イラスト制作に直接役立つわけではありませんが、知っておいて無駄にはなりません。これらのマーケティングに関する知識を身につけ、それを制作に活かす姿勢は、イラストレーターとしての価値を高めることにつながります。
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)未経験からイラストレーターになるための方法【6ステップ】
イラストレーターは実績が重視されやすい職種ではありますが、未経験からでも十分に目指すことができます。最初は分からないことが多くても、基礎を学び、手を動かし続ければ一歩ずつ前進できます。まずは基礎を身につけた上で、課題を設定して作品を作り、ポートフォリオにまとめて発信していけば、チャンスは広がっていくでしょう。
ここでは、6つのステップに分けて、未経験からイラストレーターを目指す方法とポイントを紹介します。
①イラストの知識やスキルを学ぶ
まずは、イラスト制作の基礎知識や基本スキルを体系的に学ぶことから始めましょう。イラストレーターに必要な基礎知識は、デッサン、パース、光と色、構図、タイポグラフィやインフォグラフィックなどの基礎に加えて、IllustratorやPhotoshopなどのデザインツールの操作など多岐にわたります。
学習の方法としては、独学で進めるやり方と、専門学校に通うやり方の2種類に大別できます。
独学で進める場合
独学の場合には、書籍やオンライン教材などを活用し、順を追って学習を進めるのが効果的です。ただ漠然と課題をこなすのではなく、目標と期限を明確に決めて学習計画を作り、制作→振り返り→改善のサイクルを繰り返して着実に実力を身につけるように意識しましょう。
独学のメリット・デメリット
独学のメリットは、費用を抑えつつ、自分の生活リズムに合わせて学習計画を組めることです。進みたい業界の必要なスキルに優先的に取り組むなど、無駄が少なく習熟速度を調整しやすいことや、時間に追われずに試行錯誤を繰り返せることなども魅力といえるでしょう。
一方でデメリットは、客観的な評価軸を得にくく、基礎の学習漏れや自己流の癖に気づきにくいことです。課題設定の基準が分からず、実務につながらない練習に陥りやすいという問題もあります。自主的な継続が前提となるため、モチベーションの維持も大きな課題です。毎日短時間でも継続し、SNSやコミュニティで添削を募るなど、制作と振り返りを習慣化することが重要です。
専門学校で学ぶ場合
専門学校で学ぶ場合は、進みたい業界に合った専門学校を選びましょう。まず王道は、イラスト専攻やマンガ専攻などの学科を備えたデザイン系の専門学校です。デッサンや色彩、構図といった基礎に加え、IllustratorやPhotoshopなどのデザインツール、誌面や広告での見せ方、インフォグラフィックの基礎などを横断的に学ぶことができます。商業イラストを広く経験したい人や、企業の実態に合わせた実践的な課題に触れたい人に向いています。
キャラクターデザインやコンセプトアートを専門的に学びたい人には、アニメやゲーム系の専門学校という選択肢もあります。また、タイポグラフィや編集デザイン、広告設計など、デザイン業務全般を学びたい場合には、グラフィックデザイン学科に入って、その中でイラストについて重点的に学ぶという道もあります。
専門学校の一種として、近年ではオンラインスクールという選択肢も有力です。録画授業とライブ添削、コミュニティを組み合わせた学習環境で、働きながらでも継続しやすいという強みがあります。オンライン授業と対面授業のハイブリッド型のスクールもあります。
専門学校のメリット・デメリット
専門学校のメリットは、基礎から商業制作までを体系的に学べることに加えて、講師の添削や定期課題、グループ制作などで効果的に成長できる点です。著作権や入稿など、実務に必要な知識も同時に身につけることができます。設備やソフトの環境が整っていること、産学連携やインターンなどで業界との接点が得やすいことも大きな強みです。
デメリットは、学費と時間の負担が大きく、学習速度や課題の難易度が必ずしも自分に合わない可能性がある点です。通学や時間割などの制約があるため、仕事をしながらでは通いにくいという問題もあります。一方、オンラインスクールでは自分のライフスタイルに合わせた受講もでき、指導方針やカリキュラムなどは学校によって大きく異なるので、デメリットがあってもそれは学校選びの際に調整することもできます。必ず事前に見学や授業体験で自分に合っているか確認することをおすすめします。
②作画の練習を始める
ある程度の基礎知識が身についたら、学習を進めながら、並行して作画の練習も始めましょう。練習にあたって大切なのは、自分の描きたいものを描くだけでなく、「相手の求めるもの」を形にできるように意識することです。仮想的なクライアントやターゲット、媒体を想定した上で、イラストの目的や訴求点、サイズ、締め切りなどを決めて取り組むと、実務に近い判断力が鍛えられます。
最初のうちは、既存のイラストの模写で基礎を固めるのがいいでしょう。ただし、単にコピーするだけでなく、色や構図などをよく観察して、どの要素がどんな効果を生んでいるのかを分析しながら模写するように心がけるのが大切です。慣れてきたら、それを自分の表現に再構成することで、課題への対応力が身につきます。
③作品を外に発信する
完成したイラストは積極的に外に発信しましょう。発信は評価のためだけでなく、検証と改善のサイクルを回すための場でもあります。説明文には課題の設定や狙いを添え、どの点が伝わったかを確認するといいでしょう。ただし、あまり反応に一喜一憂しすぎないように気をつけることも大切です。
SNSを活用する際は、クライアントが見に来る場所を目的別に使い分けます。代表的な発信先としては、X、Instagram、Behance、Pixiv、各種ポートフォリオサイトなどがあります。多くのクライアントに自分のイラストを周知するためには、曜日や時間、切り出し方などを変えて投稿してみるのをおすすめします。継続的な発信は、仕事の依頼につながる可能性もあります。
④ポートフォリオを作成する
イラストレーターとしての仕事を探す際には、ポートフォリオが極めて重要になります。ポートフォリオとは、自分がこれまでに制作した作品をまとめた作品集のことです。自分の画力やセンス、イラストへの考え方などを視覚的に伝える手段であり、就職活動や仕事の受注時には欠かせない資料になります。
実用的なポートフォリオを目指すのであれば、単なる作品カタログではなく、「問題解決の事例集」になるように心がけましょう。事例の1件ごとに目的、条件、解決アプローチ、成果などを記載し、ラフ案やカラースクリプト(シーンに合わせて色と光の変化具合を示した設計図・色彩演出)なども添えて、制作プロセスが分かるようにまとめます。継続的に作品を更新し続けることが重要です。
副業やSNS経由の小さな依頼でも、クライアントからの掲載許諾が取れる範囲で実績化し、ポートフォリオに盛り込んでいきましょう。似た案件の実績を並べれば、画力に再現性があり安定していることのアピールにつながります。
未経験者の場合には、専門学校などで出される自主制作課題でポートフォリオを構成するのが一般的です。ただし、採用担当者から見ると、どうしても実務で関わった作品が重視される傾向があります。そのため、少しでも実務に近い経験を積んでおくと、ポートフォリオの説得力がぐっと高まります。
⑤副業などで経験を積む
イラストレーターは実績が重視される職種なので、未経験でいきなり企業に就職するのは難しいこともあります。その場合、まずは副業として小さな案件をこなしながら、実務経験を積むのがいいでしょう。SNSでの継続的な発信に加えて、コンテストや合同誌、展示会への参加などを通じて、少しずつ人脈を広げるように努力しましょう。
クラウドソーシングサイトで小規模な案件を受注するという選択肢もあります。ただしその際には、相場から大きく外れるような低単価な案件は避け、使用範囲や二次利用について明記するなどの対策も必要です。そのほか、インターンやボランティアでのイラスト制作も立派な実績になるので、積極的にポートフォリオに載せていきましょう。
⑥企業の求人に応募する or フリーランスとして働く
本格的にイラストレーターとして仕事をする上での進路は、大きく「企業所属」と「フリーランス」に分かれます。企業で働くメリットは安定した収入と社会保険、チーム体制で大規模な案件に関われることなどが挙げられます。半面、担当領域や制作スタイルの自由度は限定され、スケジュールや意思決定にも制限が生じます。企業の求人に応募する際には、実務に近い課題解決の実例を前面に出しつつ、職務要件に合ったポートフォリオを提示することで実務能力をアピールするといいでしょう。
フリーランスの場合、自身で担当したい案件を自由に選択できるメリットがあります。また、案件の獲得しやすさや自身のブランディングなど、目的に応じて値付けも自分で調整・決定できます。自主性がある一方、収入が不安定になりやすいことや、事務作業の負担が大きいこと、自己管理能力が不可欠なことなどが課題になります。従って、イラスト制作のスキル以外に、契約や請求、税務などの基本を理解し、営業活動なども両立できることが、フリーランスとして働く前提条件になります。
どちらを選ぶにせよ、学習と発信、仕組みづくりを並走させることで、未経験からでも着実にプロとしての土台を築くことができます。
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)イラストレーターになるために必要な資格
イラストレーターの仕事では、実務経験やポートフォリオが評価の中心となるため、企業に勤める場合や案件受注のために特定の資格が必要なわけではありません。しかし、学習の指針として資格や検定を活用すれば、体系的な基礎知識を効率よく学ぶことができます。イラストレーターの業務に関連する代表的な資格・検定試験としては、次のようなものがあります。
| 資格・検定 | 概要 |
|---|---|
| 色彩検定 | 色に関する基礎的な知識や理論、配色の知識などを幅広く扱う検定試験。イラストでの使いの理解に役立つ。 |
| Illustrator®クリエイター能力認定試験 | グラフィックツール「Adobe Illustrator」の操作スキルとデザイン作成能力を測る実技中心の試験。 |
| Photoshop®クリエイター能力認定試験 | グラフィックツール「Adobe Photoshop」の基本操作や画像編集スキルを問う実技中心の試験。 |
| CLIP STUDIO PAINTクリエイター検定 | イラスト・マンガ・アニメーション制作ツール「CLIP STUDIO PAINT」の基礎知識や操作スキルを測る検定試験。 |
| CGクリエイター検定 | デザインや2次元CGの基礎知識、構図・カメラワークなどの映像制作の基本、 モデリングやアニメーションなどの3次元CG制作の手法やワークフローなどの知識を測る検定試験。 |
これらの資格は、イラスト制作に役立つ基礎知識や実務スキルを体系的に学べるよう設計されており、未経験の方やスキルの土台をしっかり固めたい方にとって良い学習指針になります。また、資格を取得しておくことで、基本的なスキルや学習意欲を客観的に示すことができるため、転職活動や社内での評価にもプラスになる可能性があります。
イラストレーターに関するよくある質問
イラストレーターになるには何年かかる?
スキルの習熟度は人によって異なるため、明確に何年ということはできませんが、最短では半年~1年ほど集中的に学べば初めての案件を獲得できるケースもあります。ただし、安定したスキルを得るには、継続して作品を作って実績を積んでいく必要があるため、営業活動を並走しながら2~3年程度はかかると考えたほうがいいでしょう。とにかく、毎日少しずつでもあきらめずに続けることが重要です。
イラストレーターを目指すのに年齢制限はある?
イラストレーターになるのに年齢制限はなく、採用・発注で重視されるのは実績とポートフォリオです。むしろ社会人経験や前職の専門知識は、強みになることもあります。
イラストレーターに将来性はある?
デジタルコンテンツの増加や、ゲーム市場の拡大、SNSやECの普及などにより、視覚表現の重要性が高まっており、それに伴ってイラストレーターの需要も増えています。従って、イラストレーターはまだまだ将来性が高い職種だといえるでしょう。
近年では、AIの普及によって量産的なイラスト制作の作業は効率化されつつありますが、そのことは必ずしもイラストレーターが仕事を失うことにはつながりません。ブランドや文脈に合わせた発想やディレクション、世界観づくりなど、まだまだ人の手が必要といえるクリエイティブな作業は数多くあります。また、AIが生成したイラストの価値を判断して効果的に活用するには、イラストレーターの専門知識が不可欠です。
AIはすでに制作ツールの一部に組み込まれつつあるため、今後はAIをうまく使って制作効率を上げ、自身の作品の価値を高めていける人が、市場価値を高めていくことになりそうです。
まとめ
この記事では、イラストレーターの仕事内容や平均年収、向いている人の特徴、求められるスキル、そして未経験から目指すためのステップなどを詳しく解説しました。紙媒体からWeb、SNS、ゲームなど、イラストレーターの活躍の場は広く、絵の力でクライアントの価値やメッセージを伝えるやりがいのある仕事です。画力だけでなく、課題解決力やコミュニケーション力、デジタルツールへの対応など、幅広いスキルが問われる職種ですが、実力次第で成長のチャンスが大きい分野ともいえます。
イラストレーターとして新たな一歩を踏み出したい方は、転職エージェントの活用も検討してみてください。dodaエージェントサービスでは、クリエイティブ職の求人紹介はもちろん、ポートフォリオのブラッシュアップや面接対策、今後のキャリア形成まで、専門のキャリアアドバイザーがていねいにサポートします。
自分に合った仕事探しのヒントを見つけよう
転職タイプ診断を受けてみる(無料)
dodaキャリアアドバイザー・手塚 成彬(てづか・なるあき)
前職では個別指導塾の教室長として、幼稚園生から既卒生を対象に学習指導や進路指導を実施。さらに幅広い年代のキャリアに伴走したいという想いから、パーソルキャリア株式会社へ入社。現在はクリエイティブ領域を中心に転職支援を行っている。

技術評論社 デジタルコンテンツ編集チーム
理工書やコンピュータ関連書籍を中心に刊行している技術評論社のデジタルコンテンツ編集チームでは、同社のWebメディア「gihyo.jp」をはじめ、クライアント企業のコンテンツ制作などを幅広く手掛ける。
- 自分の強みや志向性を理解して、キャリアプランに役立てよう
- キャリアタイプ診断を受ける
- ITエンジニア専任のキャリアアドバイザーに無料で転職相談
- エージェントサービスに申し込む(無料)
- キャリアプランに合う求人を探してみよう
- ITエンジニア求人を探す




