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現状維持より現状打破 進化を続けるエグゼクティブの転職成功事例

現状よりもさらに上のゴールを目指して、キャリアの付加価値や自己の成長を追求するエグゼクティブの転職成功事例を、キャリアアドバイザーが分析を交えつつ紹介します。

大手コンサルティングファームの経営計画を動かし、海外拠点を立ち上げるミッションを得た 転職前/大手グローバルコンサルティングファーム シニアマネジャー(年収1,800万円) 
→ 転職後/大手コンサルティングファーム 海外事業責任者(年収2,000万円)

Vol.3

2016年05月16日公開

  • 担当したキャリアアドバイザー

    担当したキャリアアドバイザー
    片山 いづみ

    得意分野:IT・インターネット・コンサルティング業界
    IT・インターネット・コンサルティング・監査法人などの担当として法人営業に従事。若手からエグゼクティブ層まで、250名以上の転職をサポート。現在は、エグゼクティブ層の転職支援に特化したグループでコンサルタントとして主にコンサルティングファーム、シンクタンク、監査法人を担当。コンサルタントや、シンクタンク職員、監査法人のアドバイザリー職、事業会社のCTO、新規事業開発職、海外事業職のサポートに強みを持つ。

  • 今回の転職成功したエグゼクティブ

    今回の転職成功したエグゼクティブ
    森山 健太さん(仮名)

    大手グローバルコンサルティングファーム2社で経営戦略やM&Aのコンサルティングに従事。2社目では、数年間にわたってインドネシアに駐在。日系金融機関の現地でのビジネス展開を支援した。インドネシア駐在中に「金融の本場である欧米を拠点に働きたい」と思い、転職活動を開始。2016年、欧米勤務の希望がかなうA社に転職した。

01森山さんは、この転職で何を“進化”させたのか

金融の中心都市で、事業の立ち上げを牽引する「ディレクター」に

森山さんは、大手グローバルコンサルティングファーム2社で、経営戦略、M&A、クロスボーダー案件の支援などを数多く担当していました。2社目ではインドネシアに駐在して日系金融機関のアジア進出をサポートするなど、国内外で実績をあげていました。そんな森山さんの長年の希望は、「金融の本場である欧米でビジネスに携わる」ことでした。転職先のA社での業務は、ニューヨークで事業を立ち上げていくというものです。ニューヨークで活躍することは、ご本人の希望に添うだけでなく、アジアと欧米双方の市場を知ることで、森山さんが今後グローバルに活躍する上で大きなキャリアアップになります。さらに、森山さんはこれまで、シニアマネジャーという一般企業でいう事業部長のような立場でしたが、A社ではディレクター(事業責任者)として活躍することになります。希望をかなえ、経験したことのない新しいミッションに責任者として挑戦する。まさに“進化”ではないでしょうか。

02森山さんはどんなビジネスパーソンなのか

引く手あまたのシニアマネジャー。判断は慎重、意思表示は明確

私は海外にいる森山さんに、電話でじっくりと面談を行いました。私が初回の電話面談で感じたことは、森山さんは多くを語らず思慮深いタイプの方だということです。当時森山さんは日本からアジアへ進出する企業のビジネス展開をインドネシアに駐在して支援していました。大手グローバルコンサルティングファームのシニアマネジャーというご経歴から、さまざまなヘッドハンターから声がかかる人物であることはすぐに想像できました。電話面談の目的は、大手コンサルティングファームのA社から出ていた求人のご紹介でした。A社はグローバル金融部門で活躍できるマネジャークラスの人材を探しており、森山さんの経歴を見た私がオファーをお送りしたのです。しかし電話でお話を伺うと、森山さんの勤務希望エリアは欧米であることがわかりました。A社の求人は「アジア駐在員」だったので、すでにインドネシアに駐在している森山さんには受ける理由がありませんでした。

それでも電話面談の時間を設けてくれたのは、オファーの内容以上に何か情報を期待してくださっているからだろうと判断しました。欧米勤務はグローバルコンサルティングファームにいるからと言って実現できるとは限りません。海外展開を進めるコンサルティングファームの中では、欧米の情報に精通した現地コンサルタントを採用する傾向があるからです。そのため私は海外、特に欧米駐在に強いこだわりをお持ちの森山さんには、「現職で本当に欧米エリアへ異動できるか確信が持てない」という課題感があるのではないかと考えました。それが森山さんの悩みと合致し、信頼を得ることができました。

03A社が抱えていた事業課題

欧米で日系企業のビジネスをリードできる基盤を確立することが必須

A社は、日系企業の海外進出案件を中心に、実績を多く持つ大手コンサルティングファームです。ただ、欧米に駐在しているコンサルタントの数は、外資系コンサルティングファームと比べると圧倒的に少ない印象があります。私は、今後欧米進出のニーズが高まったとき、すぐに対応できる人材がいないことは課題になるだろうと見ていました。

とりわけ日本の金融機関は独自のシステムを構築していたり、長年積み上げた組織内の暗黙のルール・価値観を重要視するなど、独特な文化があります。海外進出する際も、「ここは大切にしたい」「この部分は利益追求ではなくこうしたい」など、細かな心情をくみ取るのは日本人同士のほうが向いています。欧米への進出を支援できる日本人コンサルタントがいれば、欧米人中心で構成される外資系コンサルティングファームと差別化できますし、A社の新しい強みになるはずです。金融機関の海外展開が進むにつれ、私は現地でプロジェクトを推進できる日本人コンサルタントの存在が重要になってくるだろうと感じていました。

04キャリアアドバイザーが見立てた森山さんの“進化”のシナリオ

日本人の感性×海外駐在の経験をフルに発揮できれば、欧米での新規ビジネス開拓も可能

森山さんは、欧米エリアという勤務地に強い希望はあったものの、どのコンサルティングファームに行けばそれが実現できるのかまでは判断ができていない状況でした。欧米勤務と聞くと本社が欧米にある外資系コンサルティングファームの方が可能性が高いとイメージしがちですが、コンサルティング業界を長く担当している私は「むしろ可能性は少ない」と考えています。本社が欧米にあるのに、わざわざ現地の事情に通じていないアジア人を配置するとは考えにくいからです。可能性があるとすれば、欧米の駐在人員が不足していて今後欧米でのビジネスを強化していく企業で、A社がまさにそれに当てはまります。A社の欧米でのビジネスはまだまだ未開拓です。A社なら海外駐在員として日系企業の進出を支援してきた森山さんがご経験を活かし、活躍いただけると考えました。

森山さんは、在籍企業である大手グローバルコンサルティングファームで欧米本社への異動を希望していました。もしその希望がかなったとしても、実際にする仕事は事業基盤が整った中で挑戦の要素が少ないものであることが予想されました。これまで海外プロジェクトを日本からではなく、海外に駐在して支援してきた貴重な実績をお持ちの森山さんですから、そのキャリアをさらに伸ばすべきだと私は思いました。A社に転職し、単身で欧米に乗り込みビジネスを開拓できれば大きな実績になります。森山さんは、将来、事業会社で活躍したいという考えもお持ちでしたので、その際の評価を高めるためにもA社への転職を強く勧めたいと私は考えました。

05森山さんがキャリアチェンジを決意するまで

およそ1年の時間をかけて、森山さんが納得できる条件をすべて揃えた

私は電話面談で森山さんに、「欧米に挑戦するならA社しかないと思います」とご提案しました。そして森山さんの了承を得てA社に匿名で森山さんの職務経歴書を送付。A社には、欧米進出の必要性をご理解いただき、森山さんのような人材であれば、欧米進出を推進できると推薦しました。A社からは「可能性はゼロではないので検討したい」とお返事をいただきました。それからおよそ2カ月の間に、森山さんとA社は国際電話でざっくばらんにお話しする機会を1回、森山さんの一時帰国のタイミングに合わせて対面での面接を1回行いました。双方が好感触で、お互いに新たな可能性を感じられたようでした。

その後4カ月間、選考は一時ストップしました。理由はA社が決算を迎えるにあたり中期経営計画の見直し時期に入ったから。また、森山さんの登場により本格的に欧米エリアへの進出を社内で検討することになったからです。当時のA社の海外戦略は、アジアへの注力は明確に打ち出す一方で、欧米での戦略は優先順位が低い状況でした。前提として、既存顧客のニーズから鑑みると「欧米に注力する必要はない」状況だったので、当然「いつかは」と考えていたでしょうが、そこまで急ぐ必要はありませんでした。しかしA社は森山さんを、その方針変更を検討するに値する人材であると見たのです。

4カ月後、A社の出した結論は「ニューヨークに責任者を配置し、ビジネスを展開する」というものでした。森山さんの存在が、会社の中期経営計画を動かしたのです。こうして正式に、A社の事業戦略としてニューヨークへの進出が決定、森山さん念願の欧米駐在が現実味を帯びてきました。

ポジションが用意された後、私がA社にはたらきかけたのは「森山さんの年収をダウンさせないこと」、そのためにも役職を上げて「ディレクターとして採用していただくこと」でした。森山さんにはA社の最新情報を常に共有し、継続的なフォローを心がけました。選考再開から4回の面談を経て、内定。森山さんは、希望していた欧米駐在を実現できることから入社を決意。結果的に年収と役職アップも実現し、最初の電話面接からおよそ1年かけて森山さんの転職は決まりました。

06そして“進化”した森山さん、迎えたA社の今

長年の希望であるニューヨークでの勤務に向けてスタートラインに立つ

森山さんは、最初の半年間は日本でお客さまとの関係づくりに注力し、その後単身ニューヨークへ異動する予定です。景気も後押しして、日系企業の海外進出意欲は高まっています。よい流れのなかで新天地へ赴くことができそうで、「プレッシャーはあるけれど楽しみ」だとおっしゃっていました。

一方A社は森山さんが入社することで、初めてニューヨークに専任者を配置することになります。A社内では米国でのビジネス展開に期待が高まっているようです。私は、A社はいずれ欧米に進出しただろうと予測しますが、森山さんの参画によって、進出する時期を数年早めることができたのではないかと思っています。

私は、今回の森山さんの転職が、森山さんにとってもA社にとっても、さらなる飛躍につながる重要な一歩になるはずだと確信しています。

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