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アマゾン ジャパン株式会社 ACES事業部 統括本部長 渡辺宏聡氏 interview/アマゾンが 「地球上でもっともお客さまを大切にする企業である」 という責任/売上やコストよりも、お客さまとのお約束を守ることが最優先
アマゾンが日本で最も利用されているインターネットサービスの一つであることは言うまでもない。
eコマース、ビッグデータ、電子書籍などのキーワードで語られることが多いため、“ITの雄” という企業イメージが強いが、アマゾンが競合他社を退けているコア・コンピタンスは、そのロジスティクスだ。
アマゾンのフルフィルメントセンターは受注後の物流を一手に担う、サービスの中枢部と言えるだろう。
そのFCの拠点拡大および業務改善の司令塔を務めてきたのが渡辺宏聡氏だ。
渡辺氏本人や、国内10カ所それぞれのFCを司るFC長の“あるべき姿”を通じて、アマゾンにおけるエグゼクティブ像を聞いた。
(聞き手は、パーソルキャリア エグゼクティブエージェント 事業責任者 木村浩明)

  • VOL.1 アマゾンへのキャリア
  • VOL.2 売上より優先すること
  • VOL.3 アマゾンのエグゼクティブ像

VOL.2 売上より優先すること

たとえ目の前のコストが目標を満たさないとしても、「お客さまとのお約束」 を守ること。この優先順位を間違えてはいけない。

渡辺 宏聡氏

― アマゾン、特にFCで働く方々のモチベーションをどう捉えていますか?

メーカーの社員が自社製品に思い入れを持つように、アマゾンは自分たちのサービスに思い入れを持っています。アマゾンでは目に見える“モノ”を作っていません。われわれが作っているのは“モノ”ではなくてサービスです。品揃え、低価格そして利便性を追求してお客さまのニーズに応えることがアマゾンのバリューです。どんな企業にとってもお客さまは大切ですが、中でもアマゾンは「地球上で最もお客さまを大切にする企業である」というビジョンがあり、それは大きな責任でもあります。FCのメンバーは、お客さまのご注文を見てお客さまのニーズを感じています。またカスタマーサービスを通してお客さまの声を聞きます。お客さまの近くで仕事ができること、それがわれわれのモチベーションとなっていることは間違いありませんね。同時に緊張感もありますが(笑)

― 具体的にどのように実現しているのですか?

アマゾンは、お客さまに喜んでいただきたいと思って新しいサービスを実現していきます。「それはお客さまに期待されるサービスなのか?お客さまの迷惑になる可能性はないか?」を考えながら。一旦スタートしたサービスに関しては、お客さまに迷惑をかけないように日々努力をしています。短期的な売上やコストよりも、お客さまとのお約束のほうが優先順位が高い。たとえコストがかかってもお客さまの迷惑を避けるように管理を徹底しています。例えばですが、100万個の出荷があってミスが10個なら、10 DPMOのミス。オペレーションの質として数字だけで考えると悪くない比率かもしれませんが、しかし、お客さまにとっては一つのご注文で一つのミスを経験されるのです。お客さまから見たらアマゾンによる100%のミスですから、忘れられない悪い思い出となります。

― その1個に当たったお客さまにしてみれば「他の99万9990個は大丈夫だった」は関係ないですからね

その通りです。オペレーションはその能力を数字で測定します。数字がないとオペレーションができませんし改善もできませんから。お客さまのニーズがいろいろある中で、それらを管理指標として期待値に応えられていない課題を捉え、絶えず改善のアクションを行う。シンプルですが改善活動が最も大切な仕事です。その改善を行ううえで重要なのは、数字の向こう側にお客さまがいること。それを絶対忘れてはいけないんです。お客様の声を代表する管理指標が改善していることは間違いなく良いことですが、その裏側でお約束に応えきれていないお客さまがいるのも事実です。短期的に目標を達成しなくても、お客さまのためにコストをかけて目の前の問題を解決することは正しい判断です。FCのサイトリードにはその権限が与えられています。同時にどうやってそのマイナス分を解消するかも考えなければなりませんが。

― 「赤字でいい」 というわけではなく、ですね(笑)

もちろんです(笑)。実際、会社の要求は厳しいので目標は常に高いです。短期的なコストのリークも中長期的にどのように取り返すのか考えなければなりません。それがわれわれマネジメントの発揮する価値ですね。でも高い生産性を出してオペレーションコストを下げることは単に会社の利益を出すためではないんです。低コストでオペレーションをしてマージンを確保し、そのマージンを使って低価格で商品を販売できるようにすることもFCの重要な使命です。コストの目標を達成することもお客さまの満足度を高める活動なのです。

― アマゾンが競合優位にある背景をどうお考えでしょうか?

競合他社のことはあまり意識していませんが、われわれのこだわりは常に徹底的な顧客志向であることですね。アマゾンは目の前の利益を最大化するのではなく、長期的な視野で事業を拡大し、顧客満足度を高めることを目指しています。これは創業者であるJeff Bezosの意思でもありますが、このビジョンが短期志向の事業会社が生み出し難い本質的なお客さまの価値を生み出す力になっていると思います。われわれ一人ひとりがお客さまのことを考えてお客さまのために行動できる職場であり、トップから現場まで一貫した顧客志向がアマゾンの強みでしょう。

もう一つはチームで変化を生み出す力でしょうか。アマゾンは失敗を繰り返しながら新しい事業やイノベーションを生み出します。今日と違うオペレーションを明日実現するために、現場やシステムを変化させています。そのような変化を全世界のネットワークで大規模かつスピーディーに実現する力もアマゾンの強みだと思います。自画自賛的ですが、そのような新しいオペレーションを日々の改善を通して安定化させるオペレーション力は確実にアマゾンのコアコンピテンシーです。アマゾンにはそのオペレーションを支える“人”があり“チーム”があります。グローバルも含めて素晴らしいメンバーがいます。皆がお客さまのことを考え、チームワークを発揮して改善とイノベーションを繰り返しています。

― では、課題があるとしたら何でしょうか?

課題はこのような顧客志向の組織文化を深めつつ、組織を拡大することですね。現在、日本国内のFCが10拠点ありますが、まだまだ成長途上であり、今後もお客様のニーズに合わせて拡大していきたいと考えています。この数年かなりのスピード感で拡大してきましたが、新規FCの人材確保には常に苦労してきました。適切なタイミングで人材が確保できていればもっとスピードアップできたでしょうし、お客さまの満足度ももっと早く高められたと思います。既存のメンバーには非常に負荷の高い数年間でしたが、チームで協力し合い、頑張ってネットワークを支えてもらいました。今後のFC戦略の上でFCのリーダーを任せられる人材をいかに見いだし、そして既存のメンバーをいかに育てるのか、これらは既存のリーダーに課せられた使命です。アマゾンのリーダーに期待されるリーダーシップ理念を体現するリーダーを生み出すことは、今後アマゾンが成長するために、最もクリティカルな課題とも言えます。

バックナンバー

レバレッジコンサルティング株式会社 代表取締役CEO 本田直之 氏

ビジネス界のカリスマが語る「これからのビジネスパーソンに求められること」

アマゾンジャパン株式会社 ACES事業部 統括本部長 渡辺宏聡 氏

売上やコストよりも、お客さまとのお約束を守ることが最優先

株式会社一休 代表取締役 森正文 氏

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