ベンチャー企業の定義とは
ベンチャー企業に統一された定義はありませんが、経済産業省の報告書には「大企業の枠組みでは取り組みにくい独自の技術や新しいアイデアを実践し、成長している企業」と記載されています(※)。名前は英語の「venture (冒険)」に由来しており、一般的には新しい視点や独自の能力・技術で革新的なサービスを提供する、設立数年ほどの若い企業を指すことが多いです。
「ベンチャー企業=小規模」とイメージする人も多いかもしれませんが、中には知名度・実績ともに十分な成果を上げている「メガベンチャー」も存在します。
※出典:経済産業省中国経済産業局「平成30年度 地方創生に向けたスタートアップエコシステム整備促進に関する調査事業報告書」
スタートアップ企業との違い
ベンチャー企業に似た言葉としてよく使われるのが「スタートアップ企業」です。こちらも明確な定義はないものの、先述の経済産業省の報告書では「新たな市場を開拓し、社会に新しい価値を提供したり、社会に貢献することによって事業の価値を短期間で飛躍的に高め、株式上場や事業売却を目指す企業や組織」と記載されています(※)。
ベンチャー企業とスタートアップ企業は混同されがちですが、一般的にはビジネスモデルと成長目標のスピード感に違いがあります。ベンチャー企業は、既存のビジネスモデルをベースに、独自性のある技術やアイデアを用いて事業を展開していく企業で、必ずしも株式上場や事業売却を目的としているわけではありません。それに対しスタートアップ企業は、まったく新しいビジネスモデルを構築して、早期の株式上場や事業売却を目指します。
※出典:経済産業省中国経済産業局「平成30年度 地方創生に向けたスタートアップエコシステム整備促進に関する調査事業報告書」
「スタートアップ転職」徹底解剖 セミナーアーカイブ動画
スタートアップに関する動向をはじめ、給与・就業環境など、転職にあたって知っておきたい実情を解説します。また、スタートアップに転職した方のリアルな事例も紹介。転職活動の状況やスタートアップを選んだ背景など、幅広くご紹介します。
アーカイブ動画の詳細を見る中小企業との違い
一般的に、中小企業とは「中小企業基本法」により定義された中小規模の企業を指します。対象となる企業規模は、資本金と従業員数の観点で定められており、製造業、サービス業などの業種分類ごとに異なります。ベンチャー企業であっても、中小企業基本法の基準に合致すれば、中小企業に該当します。
中小企業庁:「中小企業・小規模企業者の定義」
大企業との違い
大企業は中小企業よりも規模の大きい企業のことを指します。中小企業の基準(資本金や従業員数)を超える企業は、大企業に分類されると考えましょう。
大企業は中小企業と同様、企業の規模を表した言葉にすぎないため、上場の有無は関係ありません。そのため、ベンチャー企業であっても中小企業基本法の基準を超えれば、大企業に該当します。一般的に中小企業の枠組みを超えたベンチャー企業のことを「メガベンチャー」と呼びます。
ベンチャー企業で働くメリット・デメリット
ベンチャー企業への転職を検討するうえで押さえておきたい、一般的なメリット・デメリットについてご紹介します。
ベンチャー企業は企業ごとに組織の仕組みやその整備状況が大きく異なる傾向があります。ご紹介するメリット・デメリットはベンチャー企業によくみられるものですが、企業によっては当てはまらないこともあるので注意しましょう。
また、メリットとデメリットは表裏一体です。個人の価値観によってはメリットで挙げている項目をデメリットと、デメリットをメリットと感じる可能性もあります。どれもベンチャー企業の特徴だと考え、自分にとってはどうかを基準に判断しましょう。
ベンチャー企業で働くメリット
ベンチャー企業で働くことのメリットとしては、新しいことにチャレンジし続けられる環境が挙げられます。基本的にベンチャー企業は、新しいことに積極的に挑戦していく風土であることが多いです。社員一人ひとりに任される裁量が大きく、スピード感を持ってスキルアップできるでしょう。
また、社員間のコミュニケーションが活発で、周囲との意思疎通がとりやすい点もメリットです。経営層との距離も近いため、意思決定のスピードが速く、自分も企業の経営に携わっているという実感を持って働くことができるでしょう。
ベンチャー企業で働くデメリット
ベンチャー企業で働くことのデメリットとしては、業績が安定していない場合があることが挙げられます。一方で事業や組織を一緒に作っていくフェーズに携われるからこそ、自分が会社を作っている、大きくしていることが実感できるので、そういった手ごたえが欲しい方、環境に魅力を感じる人にはメリットになりえるでしょう。
また、一人ひとりの裁量が大きい分、担当外の業務も任されたり、抱える業務が多く、業務過多になることもあります。ただ新しいことにチャレンジしたり、自分の可能性を広げたい人には向いているかもしれません。
監修者からのポイント ベンチャー企業への転職で迷ったら?
まずは、自分が人生において何を重要視しているか、何を成し遂げたいのかといった軸を明らかにすることが大切です。上記のメリット・デメリットや、これから述べるベンチャーに向いている人の特徴も考慮しながら、転職の意思決定を行いましょう。
- ベンチャー企業の転職に悩んだらまずは気軽に相談しよう
- エージェントサービスに申し込む(無料)
ベンチャー企業に向いている人の特徴
ベンチャー企業への転職を考えているのであれば、自分の適性を見極めたうえで、慎重に検討する必要があるでしょう。そこでここでは、ベンチャー企業に向いている人の特徴を5つの観点からご紹介します。
当事者意識を持って仕事をできる
ベンチャー企業は個人の裁量が大きく、自由度の高い仕事ができます。そのため、ベンチャー企業で大きな成果を上げるためには、日々の業務に対して「自分の責任」という当事者意識を持つことが重要です。
単なる企業の社員ではなく、自分を一人の経営者として捉え、強い当事者意識を持って仕事に挑める人にはベンチャー企業での業務の進め方がマッチするでしょう。
変化や挑戦を楽しみ、課題に対して前向きに取り組める
ベンチャー企業は変化の激しい環境です。急に新たなサービスの開発が始まったり、新規事業に参入することも珍しくありません。時には、前例のない業務や今までの経験・知識がまったく通用しない業務に対応しなくてはならないことも。新しい業務を進める方法を自分で考えながら、果敢に挑戦する姿勢が求められます。特に、変化に臆せず、楽しめる人であれば、ベンチャー企業で活躍できる可能性も上がるでしょう。
実践や経験を積み、自分の成長に貪欲になれる
ベンチャー企業は業務内容の面でも組織体制の面でも変化の激しい環境です。基本的にルーティンワークが少なく、常に新たなアイデアや価値観が求められます。また、企業の成長速度も速いため、社員一人ひとりの業務負担が大きくなることもあります。
スピード感のある状況を成長の機会と捉えられるような、自分の成長に貪欲な人であれば、ベンチャー企業で活躍しやすいでしょう。
会社や事業が成長するためのビジョンを持てる
ベンチャー企業は個人の裁量が大きく、自由に仕事を進めることが可能です。それだけに、自分の成果だけを追い求めるのではなく、経営視点を持ち、会社や事業が成長するためのビジョンを持って行動できる人が重宝されます。
組織の利益や存続を最優先に考えて行動できる人、将来的に独立や起業を考えている人であれば、ベンチャー企業が向いているといえるでしょう。
他者との視点の違いを楽しめる
ベンチャー企業では、社員同士はもちろん、経営層との距離も近く、コミュニケーションが活発です。周囲との意思疎通がとりやすい半面、時には価値観や考え方の違いなどから、意見がぶつかることもあります。
ただ自分の意見に固執して押し通そうとするのではなく、「自分にはない視点や発想を知る機会になった」と、他者との視点の違いを楽しめるような人であれば、ベンチャー企業が合っているでしょう。
監修者からのポイント 入社後に活躍するためには?
ベンチャーで活躍するためには、単なる評論家ではなく、実務家でなければなりません。
自らが手を挙げ、主体となって推進していく力が必要とされます。
ベンチャーでは解のない問いに直面する場面も多いです。まだ開かれていない道・舗装されていない道の先にあるゴールに対して、いかに最短距離で到達できるか思考し、行動できるかが、活躍のための重要なマインドです。
ベンチャー企業に向いていない人の特徴
ここではベンチャー企業に向いていない人の特徴を3つの観点でご紹介します。
安定性にこだわって働きたいと考えている
ベンチャー企業は変化が激しいため、経営も不安定になりがちです。取り組んでいる事業がそもそも革新的なことも多く、事業が軌道に乗っているときもあれば、業績が悪化する可能性もあります。
また、ベンチャー企業は設立からの年数が短いため、内部留保(社内で蓄積しているお金)が少ないケースが多いです。業績と給与の連動性が強いので、給与・待遇の良し悪しに波があることもあるでしょう。
ただし近年はベンチャー企業の資金調達額も増加傾向にあり、給与水準を上げている企業も増えてきています。ベンチャー企業でも安定性を重視する方にマッチする会社はあるかもしれません。
変化や挑戦が得意ではない
ベンチャー企業は新しいことに積極的に挑戦していく風土なため、基本的に変化の激しい環境です。前例のない業務も多く、常に新しいアイデアや価値観が求められます。変化や挑戦に対して前向きになれない人であれば、ベンチャー企業に入社しても逆にストレスを感じてしまう可能性があるでしょう。
特定の業務に集中したい
ベンチャー企業では、担当していたプロジェクトが突然変更になったり中止になることも珍しくありません。また、ベンチャー企業は基本的に少数精鋭の組織であるため、1人が担う業務量も広く多くなりやすい傾向にあります。
1つの業務をじっくりと時間をかけて遂行したい、1つのスキルを極めたいという人には、ベンチャー企業は合わないかもしれません。
ベンチャー企業への転職は事前の情報収集が重要
ベンチャー企業は一人ひとりが大きな裁量を持って、常に新しいことに挑戦できる環境です。新しいことに挑戦するのが好きな人や自己成長に貪欲な人であれば、活躍できる可能性も高いでしょう。
ただし、一口にベンチャー企業といっても、社内体制や業務内容は企業ごとに大きく異なります。ベンチャー企業への転職も視野に入れているのであれば、事前の情報収集がより重要となってくるでしょう。各企業の情報をよく調べ、自分の個性や価値観とマッチするか慎重に見極めましょう。
いきなり大きく環境を変えるのが不安な方は、まずは副業などから始めてみるのも一つの方法です。副業や業務委託の求人なども選択肢にして、まずベンチャー企業で働く経験をしてみてから転職を検討するのもよいでしょう。
副業人材マッチングサービス「lotsful(ロッツフル)」の詳細を確認する(外部リンク) キャリアアップしたいあなたと、ベンチャーをはじめとする企業を専任のタレントプランナーがおつなぎします
ベンチャー企業への応募を迷っていたり、企業選びに困っている方は、エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。dodaではベンチャー企業だけでなく、業界最大級の求人情報を取りそろえています。幅広い選択肢の中から自分に合った会社をみつけましょう。
- まずはオンラインセミナーに参加して転職活動の準備を始めよう
- 直近の開催日程を見る
- ベンチャー企業への転職についてプロに相談してみよう
- エージェントサービスに申し込む(無料)
- dodaでベンチャー企業の求人を探してみよう
- ベンチャー企業の求人一覧を見る
この記事の監修者
浦上 楽(うらがみ・がく)
パーソルイノベーション株式会社
【経歴】
大学卒業後、リクルートグループに新卒入社。 IT・インターネット業界を中心に、大手企業からベンチャー・スタートアップまで幅広く採用支援に従事、1,000人以上の紹介実績を持つ。 また、新規組織立ち上げや、 チームリーダーとして業務設計、オペレーション改善、KPI設計等を実行。
パーソルイノベーション株式会社では、副業人材マッチングサービス「lotsful」に立ち上げ期から参画。大手企業やベンチャー・スタートアップを中心に、副業人材を活用したプロジェクトサポートを幅広く実施。現在はコンサルティング・セールス領域のマネジャーを務める。
【みなさまに一言】
ベンチャーでのキャリアは、裁量の大きな仕事や経営に近い仕事に携われるなど、やりがいを持って働ける魅力があります。また、近年は福利厚生や待遇にも力を入れる企業が一層増えてきています。
少しでも興味がある方は、転職サイトやエージェントに登録する、SNSなどを通じベンチャー関係者に話を聞きに行くなどアクションをすることで、結果的に転職という選択をしなかったとしても、今後のキャリア形成のためのヒントを得られることでしょう。